「殺虫剤」と言ってもその種類はたくさんあり、。昆虫学会には入れてもらえ

「殺虫剤」と言ってもその種類はたくさんあり、。昆虫学会には入れてもらえないダニ剤、センチュウ剤も含まれ
ます。登録農薬数は全体で 4535 件あり、その中で殺虫剤は 1288 件もあります。(2005 年 9 末現在)
登録は農薬を販売する会社がそれぞれに行う場合があり、また剤型毎、混合剤毎でもそれぞれ登録をお
こなうため大変数が多いように思いますが、現在使用されている有効成分数は 159 程度です。その化学
構造(或いは材料)からグループごとにまとめると下表のようになります。
種類
殺
虫
化学
合成
農薬
剤
生物
農薬
分 類
有機リン
作 用 機 構
アセチルコリンエステラーゼ阻害
薬剤の例
スミチオン乳剤
カーバメート
アセチルコリンエステラーゼ阻害
ランネート 45DF
合成ピレスロイド
神経軸索への作用
ゲットアウトWDG
ネライストキシン
シナプス後膜への作用
エビセクト水和剤
ネオニコチノイド
シナプス後膜への作用
アドマイヤー顆粒水和剤
IGR
キチン生合成阻害,ホルモン作用
アタブロン乳剤、マトリックフロアブル
その他
天敵農薬
微生物農薬
細胞毒,呼吸阻害,不明など
捕食,寄生
消化管破壊,養分吸収
プレオフロアブル
フローバック DF
化学農薬は大きくは 7 つに分類され、作用機構としては神経系をターゲットにしているものが多くあります。
ただ、近年は、その他に分類されるようなものが増えてきています。1990 年代に出たネオニコチノイド剤ま
でが大きなグループを形成していますが、それ以後このような大きなグループを形成するものは出ていま
せん。安全性、環境への影響、抵抗性対策などへの対応で新しい作用機構を求めて各社が研究開発し
ている結果でしょう。一方、生物農薬は 2 つに分類されます。もともと自然界にあるものであり、作用を及ぼ
す相手が極めて限定されていることなどから、化学農薬に比べ安全性が高いと考えられています。
神経系
作用機構の説明の前に神経系について簡単にふれておきます。キーワードは以下の 4 つです。
・ニューロン:神経組織を構成する細胞。樹状突起・
細胞体・軸索からなる。
・シナプス:ニューロンとニューロンの隙間。情報伝達
物質を放出する方を前膜、受け取る方を後膜という。
シナプスに は興奮を伝えるものと興奮を抑えるものが
ある。
・アセチルコリン:化学的な情報伝達物質。興奮を伝える
代表的なもの。
・アセチルコリンエステラーゼ:アセチルコリンを分解する
酵素。
普通の状態ではアセチルコリンがシナプス後膜に結合して興奮を伝えると、この酵素によって速やかに分
解されシナプスは元の状態にもどる。神経系は上述の通りニューロンによって構成されています。外から受
けた刺激(情報)は電気信号としてニューロンからシナプスを経て次のニューロンに伝達され、最終的に反
応に至ります。ニューロンの軸索内部は外部に対してマイナスに分極し、興奮はこれが一次的にプラスに
なることで軸索内を伝わり、シナプスでは隙間があるため、情報を化学的な伝達物質に変えて次のニュー
ロンに伝えています。伝達された情報は再び電気信号となり、これが繰り返され最終的に反応を起こしま
す。
(2007年6月 ワニ記)
神経軸索での興奮信号伝達の仕組み