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平成28年12月号
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今月のシンガポールトピックス
「東ティモール」
◆
今月のバンコクトピックス
「日本と結びつきを強めるベトナムについて」
千葉銀行
シンガポール駐在員事務所
バンコク駐在員事務所
今月のシンガポールトピックス
「東ティモール」
今回のシンガポールトピックスでは、先月取り上げた「ブルネイ」に引続き、今後
注目されるアジア諸国の紹介シリーズ第 2 弾として、「東ティモール」についてレポー
トしてまいります。
1. 東ティモール基本情報
東ティモールは、インドネシア東部に位置する
ティモール島の東部にあり、約 1 万 4,900 ㎡、四国
より少し小さい面積に約 120 万人が暮らしています。
インドネシアに隣接していますが、インドネシア
国民の多くがイスラム教徒であるのに対し、東ティ
モールでは 99%がキリスト教徒と言われています。
びゃくだん
16 世紀前半、ポルトガル人が香木の 白 檀 を求め
てティモール島に来航し、島を征服しました。ここ
から、東ティモールの「植民地としての歴史」が
(出典:外務省ホームページ)
始まりました。ポルトガル以外にオランダ、日本、インドネシアに支配されていた時
期もあります。東ティモールでは 20 世紀後半から度々独立運動が起きていましたが、
2002 年 5 月 20 日、ようやく独立の日を迎えました。
21 世紀最初の独立国であり、独立してわずか 14 年の東ティモールは「アジアで最も
若い国」と呼ばれています。
政
体 共和制
民
通
貨 米ドル。1 ドル以下については、独自の「セン
その他、マレー系、中華系、
ポルトガル系を主体とする欧州人
タボ」貨を使用(米ドルと同貨)
言
族 テトゥン族など大半がメラネシア系
語 国語としてテトゥン語及びポルトガル語
宗
実用語としてインドネシア語、英語
教 キリスト教(主にカトリック)99.1%
イスラム教 0.79%
在留邦人 124 人(2016 年 2 月)
元
首 タウル・マタン・ルアク大統領
(任期5年、2012年5月20日~)
G D P 4,175 百万米ドル(2014 年)
1人あたりGDP 3,644 米ドル(2014 年)
物価上昇率 0.4%(2014 年)
(出典:外務省ホームページ、IMF)
1
2. 独立までの歴史
東ティモールの独立までの歴史は、概ね以下のとおりです。
年
略史
16 世紀前半
ポルトガル人が白檀を求めて来航、ティモール島を征服
17 世紀半ば
オランダ、西ティモールを占領(ティモール島の西部)
1701 年
ポルトガル、ティモール全島を領有
1859 年
リスボン条約により、ポルトガルとオランダの間で東西ティモールを分割
1942 年
日本軍、ティモール全島を占領
1945 年
第二次世界大戦終了後、東ティモールではポルトガルの支配が復活
(西ティモールはインドネシアの一部として独立)
1974 年
ポルトガル本国でクーデター発生。植民地維持を強く主張していた旧政権崩壊を受け、
東ティモールで独立の動きが強まる
1975 年
独立派と独立反対派の対立が激化。独立派が東ティモールの独立を宣言するも、イン
ドネシア軍が東ティモールに侵攻し制圧
1976 年
インドネシア政府は東ティモールを第 27 番目の州として併合を宣言
1991 年 11 月 インドネシア軍による独立派虐殺事件(サンタクルス事件)発生
1998 年 5 月
スハルト・インドネシア大統領が退陣。インドネシアは東ティモール独立容認へ方向転換
1999 年 6 月
国連安全保障理事会は「国連東ティモール・ミッション」設立を決定
1999 年 8 月
独立についての直接投票実施。直後より、独立反対派の破壊・暴力行為が急増し、
現地情勢は急激に悪化。国連安保理は多国籍軍の派遣を決定
1999 年 10 月 インドネシア国民協議会(日本の国会にあたる立法府)は東ティモールからの撤退を
決定。国連安保理は「国連東ティモール暫定行政機構」の設立を決定
2002 年 4 月
大統領選挙実施。グスマン氏が当選
2002 年 5 月
17 日、国連安保理は「国連東ティモール支援団」の設立を決定
20 日、東ティモール民主共和国独立
(出典:外務省ホームページ)
独立後も、治安情勢はなかなか安定せず、2006 年には差別待遇改善要求のデモを
きっかけに治安が急激に悪化し、15 万人にのぼる住民が国内避難する事態となりまし
た。また、2008 年には大統領及び首相襲撃事件が発生し、3 か月にわたって非常事態
宣言が発令されましたが、独立 10 周年となる 2012 年頃には、ようやく治安情勢も安
定してきました。
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3. 外資誘致策
現在、東ティモールで最も多くの国民が従事している産業は農業です。主に国内消
費用の米、とうもろこし、イモ類やココナッツに加え、輸出用のコーヒーなどが主な
品目です。コーヒーはプランテーションで大規模栽培されていますが、その他の作物
は零細農業と言われる小規模栽培が主流となっています。また、その他の産業として、
石油・天然ガスの開発が行われており、貴重な国家財源となっています。
ちょっとここでコーヒーブレイク…
19 世紀初頭より、ポルトガルから持ちこまれたコーヒーの本格的な栽培を目的に、巨大なプランテーション
が作られるようになりました。インドネシアによる武力侵攻後、インドネシア軍上層部がコーヒー会社を設立し、
生産を独占することになるも、当時コーヒーの生産は主要産業として重要視されず、図らずも昔からの農
薬や化学肥料に頼らない栽培方法が定着し、現在では貴重な有機コーヒーを育むことになったそうです。
東ティモールは、石油・天然ガス開発を背景に 2007 年から高い経済成長率を維持し
ており、2011 年には GDP 成長率 14.7%を記録しています。しかし、近い将来、石油や
天然ガスは枯渇する可能性が高いため、これらの資源に依存する経済構造の変革が喫
緊の課題となっています。そこで東ティモール政府は、持続可能な経済の構築と経済
の多角化のため、外資系企業の誘致に乗り出しました。
具体的には、法人税率を 10%とし、あらゆる業種の外資全額出資の会社設立を認め
ました。また、投資認可手続きの窓口である特別投資庁は、会社設立時の事業登録を
30 日以内に完了する体制も整えました。さらに、東ティモール政府はインフラ開発費
として年間 2 億ドル以上を充て、道路、港湾、空港の開発を進めています。
こうした政府の取り組みを受け、外資系企業の進出が増加しつつあります。東ティ
モール随一の近代的なショッピングモール「ティモール・プラザ」には、2011 年にオ
ーストラリア大手飲食店のグロリア・ジーンズ・コーヒー、2012 年にはアメリカ大手
飲食店のバーガーキングが出店しています。バーガーキングはティモール・プラザ以
外にも多店舗展開しています。また、大手飲料メーカーのハイネケンは国際ブランド
として初めて東ティモールに工場を建設し、まもなく生産を開始する予定です。
一方、日系企業では、どのような企業が東ティモールで事業を展開しているのでし
ょうか。
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現在、東ティモールに進出している日系企業の一例です。
名称
ゼンショーホールディングス
開始時期
概要
2007 年
コーヒーのフェアトレード事業。現地産のコーヒーをドリップバッグ
加工し、日本のすき家で販売
ヤマハ発動機
2012 年
現地特約店を通じ、バイク販売を本格的に開始
大塚製薬
2015 年
インドネシアのグループ会社(PT アメルタインダ大塚)の工場
で製造したポカリスエットを、現地流通代理店を通じて販売
麦の穂(永谷園グループ)
2016 年
地元の外食企業とフランチャイズ契約にて、シュークリーム店
「ビアードパパ」を「ティモール・プラザ」に出店
現在、東ティモールの人口の約 4 割が 15 歳未満であり、これらの若年層は近い将来、
豊富な労働力となるだけでなく、消費市場としての成長も期待されることから、製造
業だけでなく、外食産業などのサービス業の進出増加も見込まれています。
ただし、現時点では港湾や通関、物流は整備途上にあり、特に国内各地への物流は
不十分です。また、土地収用や金融関連の法整備、電力などのインフラ整備も不十分
であり、政府は課題解決に取り組んでいるところです。
東ティモールは、その経済面の将来性から外資系企業の進出が始まっている一方で、
手つかずの自然が多く残っており、穴場の観光スポットとなっています。将来的には、
この自然環境を活かし、ビーチリゾートの建設などの観光都市開発の構想も出始めてい
ます。
4. おわりに
東ティモールへの日系企業を含めた外資系企業の進出はまだ多くはありませんが、
言い換えれば、今後の参入の余地が大きいということになります。東ティモールのア
セアンへの加盟が実現すれば同国のメリットは大きく、オーストラリアやインドネシ
アへのゲートウェイとなることも期待されるなど、さらに注目を浴びるものと思われ
ます。
千葉銀行シンガポール駐在員事務所は、今後も、シンガポールを初めとした ASEAN
地域の様々な情報をご提供してまいります。お気軽にご相談ください。
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今月のバンコクトピックス
「日本と結びつきを強めるベトナムについて」
近年、日本とベトナムの結びつきは、ODA のような政府間の結びつきだけでなく、国
民間にも浸透しています。今回のレポートでは、ベトナム国民と日本の多方面におけ
る結びつきについて紹介します。
1. 訪日ベトナム人増加
日本政府観光局の調査によると、2015 年の訪日ベトナム人は、前年比+49.2%増の
18 万 5,400 人となり、過去最高を更新しました。訪日ベトナム人が急増した背景には、
ベトナム人に対するビザ発給要件の緩和、留学生や技能実習生の増加等が挙げられま
す。
また、訪日ベトナム人は、旅行支出額が多いことでも注目されています。2015 年の
訪日ベトナム人 1 人あたりの旅行支出額は約 24 万円と、爆買いで有名な中国(同
231,753 円)と同水準となっています。
2. ベトナムでの日本語・日本式教育の導入について
(1) 第 1 外国語としての日本語教育が開始
本年 9 月より、ベトナムの小学校で「第 1 外国語」として日本語教育が開始さ
れました。在ベトナム日本国大使館及びベトナム教育訓練省は、日本語を英語と
並ぶ「第 1 外国語」として、日本語教育の導入に向けて調整をしてきましたが、
今般、ハノイ市の 4 校、ホーチミン市の 1 校で試験的に日本語教育が導入される
こととなりました。2016~2017 年度に同 5 校で試験的に実施した後、順次ベトナ
ム各地にも導入される見通しです。
(2) 日越大学の開校
本年 9 月、日本とベトナムの両政府が共同で設立した「日越大学」がハノイに
て開校しました。日越大学は、ベトナム国家大学の 7 番目の傘下大学として位置
づけられ、日本式の教育によって、日系企業等が求める優秀な人材を育成するこ
とを目的としています。
まずは修士課程(大学院)の 6 コース(公共政策、ナノテクノロジー、地域研
究、社会基盤、環境工学、企業管理)から開始され、将来的には学部の設置も計
画されています。授業は日本語、英語、ベトナム語の 3 ヶ国語で行われ、カリキ
ュラム作成や教員派遣等において、東京大学をはじめとした日本の複数の大学が
協力しています。
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初年度となる今年は 73 名が入学しましたが、将来的には 6,000 人程度の学生数
を目指しています。
(3) ベトナム人技能実習生について
日本で職業技術を学ぶことを目的とした技能実習生の訪日も増えています。
ベトナム人技能実習生は、一般的なケースでは日本に 3 年滞在し、製造業(機
械加工、電子機器等)や食品・水産加工、縫製業、建設業等で実際に仕事をしな
がら技術を学びます。ベトナム人技能実習生を受け入れる日本の企業側も少子高
齢化や若者の建設業、製造業離れによる労働力不足を補完することができ、双方
にメリットがあると言われています。
3. 日越友好イベントの開催について
先月ホーチミン市にて「ジャパンベトナムフ
<ブース出展エリアの様子>
ェスティバル」(第 4 回)が開催されました。
本フェスティバルは、日越両国が相互に伝統・
文化を理解し、観光・物産・技術の紹介や交流
を行うイベントとして、日越外交関係樹立 40
周年となる 2013 年に第 1 回が開催されました。
2013 年は約 6 万人、2014 年(第 2 回)は約 10
万人、2015 年(第 3 回)は約 15 万人が来場し
ました。
ブース出展エリアでは、訪日プロモーション、
自社商品(製品・物産)の PR 及びマーケティ
<ステージエリアの様子>
ング(試食・試飲・デモ)を目的とし、本年は
85 企業・団体が出展し、多くの来場者で賑わ
っていました。
また、ステージエリアでは、日越の歌手によ
る音楽イベントやアニメキャラクターの登場、
日本伝統芸能のパフォーマンス、ベトナム人に
よる日本語カラオケのど自慢等が実施され、会
場は盛り上がっていました。
なお、日本でも日越両国の交流イベントである「ベトナムフェスティバル」が、日
越外交関係樹立 35 周年となる 2008 年以降、東京・代々木にて継続的に開催されてい
ます。
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4. おわりに
日本とベトナムは、経済・文化・教育等の多方面で結びつきを強めています。ベト
ナムは親日国として知られていますが、このような多方面でのより強い結びつきによ
り、ベトナム国民の日本に対する理解や好感度の高まり、延いては日本企業のベトナ
ムにおけるブランド価値向上が期待されます。
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アセアンニュース短信
インドルピー紙幣の一部廃止
【インド】
インドのモディ首相は、11 月 8 日の午後 8 時(現地時間)、テロの資金源とも言わ
れる偽造紙幣の防止に対する措置として、9 日の午前 0 時より 1,000 ルピー紙幣(約
1,600 円)と 500 ルピー紙幣(約 800 円)を無効にすると突然発表しました。
発表を受け、9 日は銀行が休業となり、10 日まで ATM が使用不可となりました。そ
の後、GPS チップを埋め込んだ新紙幣(2,000 ルピー、500 ルピー)が流通を開始しま
したが、在庫が十分でないため、年内は旧紙幣からの交換は 1 日あたり 4,000 ルピー
(約 6,400 円)、預金の引き出し自体も 1 週間 20,000 ルピー(約 32,000 円)といっ
た制限が設けられています。
銀行は週末も営業を行うなど対応に追われていましたが、銀行窓口や ATM には旧紙
幣の交換や預金、必要な現金の引き出しのため、12 月半ばになってもかつてないほど
の長蛇の列ができています。
シンガポール人材獲得競争激化
【シンガポール】
米系人材紹介大手ロバートハーフの調査で、シンガポール企業の 79%が「高度なス
キルを持つ人材を雇用するにあたり海外企業と争うことが増えている」と回答したこ
とがわかりました。この傾向は中小企業で特に顕著に見られており、94%が「人材獲
得競争が激化している」と答えています。
また、金融サービス業界では特にコンプライアンスやリスク管理などの技能を持っ
た人材の需要が高いものの、人材市場におけるスキルギャップが大きく、人員の少な
くとも 10%を海外から採用する計画としている企業が 44%にのぼることが明らかにな
りました。
高度なスキルを持つ人材の獲得競争が激化する一方で、シンガポール内では小売店、
飲食店といったサービス業における人材確保も非常に困難になっています。シンガポ
ールでは企業の規模に応じて一定のシンガポール人を雇用しなければならないことか
ら、シンガポール人は比較的容易に就職が可能であり、結果としてシンガポール人の
離職率が高くなっています。シンガポール人を雇用できなければ外国人の雇用も進ま
ず、常に人材不足に悩まされています。
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お知らせ
千葉銀行シンガポール駐在員事務所及びバンコク駐在員事務所では、アセアン地域
への進出等を全面的にサポートしております。
現地法人設立の手続きやオフィス・工場物件のご紹介、税制等の情報、販路・調達
先のご紹介など、幅広いサービスを提供させて頂いておりますので、弊行お取引店を
通じ、お気軽にご相談ください。
以
上
※ここに掲載されているデータや資料は、情報提供のみを目的としたもので、投資勧誘等を
目的としたものではありません。投資等の最終決定は、ご自身の判断でなされるようお願
いいたします。
※また、弊行は、かかる情報の正確性や妥当性については、責任を負うものではありません。
本レポートに関するお問い合わせは、千葉銀行 市場営業部 海外支店統括グループ
(Tel:03-3270-8526、e-mail:[email protected])までお願いいたします。
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