11月号

せきなん
学校だより
武蔵野市立関前南小学校
平成 25 年 11 月号
「かわいがること」と「大切にすること」
副校長
水井美智子
世界で昔から親しまれているシャルル・ペロー原作「眠れる森の美女」。先日の 10 月 22 日に、3
年生は武蔵野市民文化会館でこの劇を鑑賞しました。黒の妖精が王女に死の呪いをかけ、白の妖精
達が王女を守るために 100 年間王女を眠らせてしまうというお話です。王女は、100 年の眠りの中
で素晴らしい夢を見て、今までの自分の傍若無人な振る舞いに反省し、美しい心に目覚めていきま
す。
このお話の中に、二人の人物が登場します。一人
3 年生の演劇教室「眠れる森の美女」
は王女、わがままで思いやりのない娘です。王様と
お后様は、王女を大変かわいがって育て、何不自由
ないくらしをさせていました。もう一人は料理番の
娘、毎日小皿一杯の料理だけの貧しい暮らしをして
いました。両親は娘を大切に育て、王様の命令に背
いて代々受け継がれた糸車を残してやりました。娘
は、古い糸車を大切にする心の優しい娘に育ちました。
さて、どちらも一生懸命に娘を育てているのに、どうして育ち方に違いが出てしまうのでしょう
か。娘の育った環境の違いからでしょうか。私は、親の子どもへの対し方の違いによるのではない
かと思いました。
「かわいがって育てる」と「大切に育てる」ということの違いです。
「かわいがる」
というのは、動物や孫をかわいがるように“溺愛”や“盲目的に愛する”
“甘やかす”という意味合
いが含まれます。一方「大切にする」には“その子の将来のことを考えて一番良い選択をしていく
こと”だと思います。王様とお后様は、王女をかわいがっていましたが、やがてどんな大人になっ
ていくのかということまで考えて子育てをしていませんでした。それに対し、料理番の両親は、代々
受け継がれてきた糸車をこれからも大切にしていく心を伝えながら子育てをしてきました。何でも
自分の思い通りにならないと不満に思う王女と、一つの物で十分満足できる料理番の娘との違いは、
王女と登場人物
この育て方の違いからではないかと思いました。
観劇の後、ある児童に感想を聞きました。すると王女が両親に最後に
話した場面が感動したそうです。王女は、両親に言いました。
「人は一つでも譲れないものがあれば幸せです。」「大切なものは目に
見えません。心の目で見なければ見えません。」王女の心を変えたのは、
王子を含めた登場人物との出会いでした。王女は自分にはない尊いも
のや誤りに気付いたのです。この 3 年生の児童は劇のメッセージをし
っかりと受けとめられたのではないかと思いました。
11 月 15 日・16 日は、関前南小学校の展覧会です。一人ひとりの個性を大切にした作品が体育館
に展示されます。一つの作品をつくるのに多くの時間と努力を要しました。じっくりと鑑賞をして
いただき、子どもの良さを大切に受けとめて温かいお言葉を掛けていただけると嬉しいです。