Embargoed Advance Information from Science The Weekly Journal of the American Association for the Advancement of Science http://www.aaas.org/ 問合せ先:Natasha Pinol ______________________________________________202-326-7088 [email protected] Science 2007 年 9 月 14 日号ハイライト 最古の星達が暗黒物質の謎解明のカギに 民族間の抗争は境界線に起因? サケから生まれるマスの赤ちゃん 驚くほど選択的な免疫受容体 ワンツーパンチで腫瘍をやっつける方法 Science は米国科学振興協会(AAAS)発行の国際的ジャーナル(週刊)です。以下に記載す る次号掲載予定論文に関する報道は、解禁日時まで禁止します。 論文を引用される際には出典が Science および AAAS であることを明記してください。 Oldest Stars May Shed Light on Dark Matter(最古の星達が暗黒物質の謎解明のカギに): 宇宙で最古の星達が暗黒物質(ダークマター)の正体を解明するカギを握っている可能性が あることが報告された。暗黒物質は宇宙の物質のほとんどを構成しているが、光とは相互作 用を行わない謎の物質である。Liang GaoおよびTom Theunsによると、初期宇宙で最も早く 現れた星は中程度のエネルギー量の「熱い」暗黒物質で満ちており、長いひも状に発達して いったと考えられる。これとは対照的に、動きが遅く冷たい暗黒物質を用いたシミュレーシ ョンでは、通常、一番最初の星達は塊状に形成されたことになっている。これら古代の星達 を探すための努力が現在も続けられており、発見されれば、宇宙が熱い暗黒物質でできてい るのか、冷たい暗黒物質でできているのかが明らかになるであろう。地球上に暗黒物質の候 補粒子を探求する実験の多くは、地下で実施されてきたが、今回の新たな発見から夜空から も手掛かりを期待できることがわかった。 論文番号10:"Lighting the Universe with Filaments," by L. Gao and T. Theuns at Durham University in Durham, UK; T. Theuns at University of Antwerp in Antwerpen, Belgium. 論文番号 2:"From Darkness to Light," by V. Bromm at University of Texas in Austin, TX. Ethnic Violence, a Matter of Boundaries? (民族間の抗争は境界線に起因?):化学者が使う 試験管の中の分子のように、異なる民族あるいは文化が混ざり合うと、混合の程度によって 反応が変化することが新たにわかった。化学の相分離に例えて、May Limらは、異なる民族 同士が暴力に走るか平和に共存するかは、グループの間を分ける境界線がはっきりしている かどうかで説明することができることを明らかにした。著者らは、混合が進んでいる地域で は、似たタイプのグループは強力な集団としてのアイデンティティを発達させるほど大きく ないため、暴力が起こらないという仮定を元にモデルを考案した。また、グループが混合し ておらずお互いに干渉し合わない地域でも、暴力に発展しにくい。逆に、はっきりとした境 界線がなくて分断されている地域では、争いが起こりやすい環境になっていた。このモデル をユーゴスラビアやインドに適用したところ、過去に発生した紛争地域を正確に予測できた と著者らは報告している。 論文番号 14: "Global Pattern Formation and Ethnic/Cultural Violence," by M. Lim, R. Metzler and Y. Bar-Yam at New England Complex Systems Institute in Cambridge, MA; M. Lim at Brandeis University in Waltham, MA; R. Metzler at Massachusetts Institute of Technology in Cambridge, MA. 。 Salmon Sprout Baby Trout(サケから生まれるマスの赤ちゃん):Brevium 記事で、不妊の サケを用いてニジマスの配偶子、つまり生殖細胞を作ることに成功し、魚の種を遺伝学的に 保存するというきわめて高度な技術が紹介された。マスやサケを含むサケ科の魚の多くは絶 滅したり絶滅の危機に瀕しており、研究者はこの傾向を食い止めるために研究を続けている。 サケとマスの交配種は長く生きることができず、またヒトにも用いられる卵子の冷凍保存法 を行うにも魚の卵子は大きすぎ、また脂肪分も高すぎる。奥津智之ら日本の研究チームは代 理親魚養殖法(surrogate brood techniques)に着目し、成熟したニジマスから採取したオスの 生殖物質を無精子症のオスのサクラマスに移植したところ、ニジマスのオスの配偶子のみを 作り出すことに成功した。オスの生殖物質で同様の移植プロセスを受けたメスのサケはマス の卵を産んだ。奥津らはサケとこれら生殖技術を使ってドナー由来の世代を作り出すことに 成功したが、このことから生殖物質を保存することができれば、絶滅に瀕した種あるいは絶 滅種の魚を生み出せる可能性が示唆された。 論文番号 8: "Production of Trout Offspring from Triploid Salmon Parents," by T. Okutsu, S. Shikina, M. Kanno, Y. Takeuchi and G. Yoshizaki at Tokyo University of Marine Science and Technology in Tokyo, Japan; Production of Trout Offspring from Triploid Salmon Parents ," by G. Yoshizaki at Japan Science and Technology Agency in Tokyo, Japan. A Surprisingly Selective Immune Receptor(驚くほど選択的な免疫受容体): TLR3と呼ばれ る免疫細胞受容体の突然変異により、ヒトは単純ヘルペスウイルスI型脳炎(herpes simplex virus 1 encephalitis)に罹患しやすくなるが、この変異はそれ以外には免疫系に影響を及ぼさ ないようであることが新たに報告された。TLR系の受容体はこれまで抗ウイルス免疫の中で 幅広く活性化されていると考えられてきたが、TLR3はもっぱら特定の一種類のウイルスか ら体を防御しているだけで他の病原体にはあまり影響を及ぼさないようであることがShenYing Zhangらによって発見された。これらの発見から、単純ヘルペスI型ウイルスがTLR3受 容体の進化を決定づけてきたことが考えられる。このウイルスが小児に感染した場合、口腔 から鼻腔へ、さらに中枢神経系へと広がって脳炎を引き起こすことがある。 論文番号9:"TLR3 Deficiency in Patients with Herpes Simplex Encephalitis," by S-Y. Zhang, E. Jouanguy, A. Smahi, G. Elain, V. Sancho-Shimizu, L. Lorenzo, A. Puel, C. Picard, A. Chapgier, S. Plancoulaine, H. von Bernuth, C-L. Ku, A. Casrouge, C. Hamilton, F. Geissmann, L. Abel and J-L. Casanova at INSERM in Paris, France; S-Y. Zhang, E. Jouanguy, A. Smahi, G. Elain, V. SanchoShimizu, L. Lorenzo, A. Puel, C. Picard, A. Chapgier, S. Plancoulaine, H. von Bernuth, C-L. Ku, A. Casrouge, C. Hamilton, F. Geissmann, L. Abel and J-L. Casanova at University Paris René Descartes in Paris, France; S-Y. Zhang, E. Jouanguy, X-X. Zhang and J-L. Casanova at Shanghai Jiao Tong University in Shanghai, China; S. Ugolini, C. Cognet and E. Vivier at Marseille-Luminy Immunology Institute in Marseille, France; P. Romero at University Hospital in Lausanne, Switzerland; P. Romero at Ludwig Institute for Cancer Research in Lausanne, Switzerland; D. Segal and J. Leonard at National Cancer Institute (NIH) in Bethesda, MD; C. Picard, J-L. Casanova, A. Smahi, G. Elain and F. Geissmann at Necker Hospital in Paris, France; M. Titeux and A. Hovnanian at INSERM in Toulouse, France; M. Titeux and A. Hovnanian at University Toulouse Paul Sabatier in Toulouse, France; L. Barreiro and L. Quintana-Murci at CNRS in Paris, France; L. Barreiro and L. QuintanaMurci at Pasteur Institute in Paris, France; B. Héron at Trousseau Hospital in Paris, France; L. Vallée at University Hospital in Lille, France; M. Tardieu at University Paris Sud in Kremlin-Bicêtre, France. Throwing Tumors the One-Two Punch(ワンツーパンチで腫瘍をやっつける方法): 今回新 たに行われた研究から、新たに登場した抗ガン剤が有用であるこが明らかになった。いわゆ る「標的療法」とは、ガン細胞の制御不能な増殖を手助けしているシグナルタンパク質であ る受容体型チロシン・キナーゼ (RTK) の活性を個々に抑制することで作用する。これまで、 このような療法は臨床試験で有望な結果を出している。しかし、悪性の脳腫瘍である多型性 神経膠芽腫といったある種の固形ガンはこれらの薬に対してあまり反応しない。実験的腫瘍 モデルを使って、Jayne Stommel らは、多型性神経膠芽腫では様々な種類の RTK が過剰に活 性化されており、一種類の RTK を狙った単一の薬剤ではなく、複数の RTK を標的とする複 数の薬剤を併用する方法で良い反応は得られることを発見した。この治療法のヒト腫瘍に対 する有効性については現在、臨床試験が行われている。 論文番号 20:"Co-Activation of Receptor Tyrosine Kinases Affects Response to Targeted Therapies," by J.M. Stommel, A.C. Kimmelman, H. Ying, R. Nabioullin, A.H. Ponugoti, R. Wiedemeyer, A.H. Stegh, J.E. Bradner, K.L. Ligon, L. Chin and R.A. DePinho at Belfer Institute in Boston, MA; J.M. Stommel, A.C. Kimmelman, H. Ying, R. Nabioullin, A.H. Ponugoti, R. Wiedemeyer, A.H. Stegh, J.E. Bradner, K.L. Ligon, L. Chin and R.A. DePinho at Dan-Farber Cancer Institute in Boston, MA; J.M. Stommel, A.C. Kimmelman, H. Ying, R. Nabioullin, A.H. Ponugoti, R. Wiedemeyer, A.H. Stegh, J.E. Bradner, K.L. Ligon, L. Chin and R.A. DePinho at Harvard Medical School in Boston, MA; C. Brennan at Memorial Sloan Kettering Cancer Center in New York, NY.
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