第91号 2015年3月1日発行 「試用期間の設定と運用のポイント」

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メディカル人事レポート
第 91 号 2015 年 3 月 1 日発行 発行:社会保険労務士法人 名南経営
■ 【メディカル人事労務基礎講座】 第 91 回 試用期間の設定と運用のポイント
無用な労働トラブルを防止するため、職員を採用する際、多くのクリニックでは就業規則や雇用契約書等
により「試用期間」を設定しています。しかし、せっかく試用期間を設定したものの、その後の管理や注意
指導等が効果的に行われず、いつのまにかその期間が終了していたということが少なくありません。そこで
今回は、試用期間とその設定方法、試用期間を効果的に運用するポイントについて解説していきます。
Ⅰ.試用期間とその設定方法
試用期間とは、新規採用する際に、クリニックの職員としての適性等を判断するために設定される一定の
期間です。法律等で設定が義務付けられているものではありませんが、職員としての適性や勤務態度、能力
等を判断するために、多くのクリニックにおいて採り入れられています。この試用期間中に職員を本採用せ
ずに解雇することは、通常の職員を解雇することに比べて広く認められると考えられています。ただし、客
観的に合理的な理由があり社会通念上相当と認められるものでなければ、試用期間中といえども解雇するこ
とはできません。
次に、試用期間を設定する場合についてですが、就業規則等において、試用期間の長さ、試用期間中の解
雇、試用期間中の取扱い等をあらかじめ定めておくことが必要になります。
<就業規則等への記載例>
第○○条(試用期間)
新たに採用した者については採用の日から 3 か月の試用期間を設ける。ただし、医院が必要と認めるとき
は、試用期間を延長または短縮することがある。
2.本採用の可否は、試用期間中の勤務態度、健康状態、発揮された能力等を総合的に勘案し、原則として
試用期間満了日までに決定し通知する。
3.次の事項に該当し、試用期間中もしく試用期間満了時に本採用とすることが不適当と認められた職員に
ついては、本採用を拒否し、解雇することがある。
① 遅刻、早退、欠勤が複数回あり、出勤状況が不良の場合
② 上長の指示に従わない、協調性が乏しい等の勤務態度が不良の場合
③ 必要な指導教育を施したものの医院が求める能力に足りず、改善の見込みが薄い場合
④ 経歴を偽っていた場合
⑤ 反社会的勢力もしくはそれに準ずる団体や個人と関係があることが判明した場合
⑥ 健康状態が思わしくなく、今後の業務に耐えられないと認められる場合
⑦ 就業規則第○○条に規定する懲戒事由に該当したとき
⑧ その他、前各号に準ずる場合
4.試用期間は勤続年数に通算する。
Ⅱ.試用期間を効果的に運用するポイント
①定期的に職員の業務状況等を確認する
たとえば採用から 1 週間の時点、1 か月の時点において、定期的に管理者等
から業務状況や勤務態度等について報告をさせるなど、気がついたら試用期間
が満了していたということのないようなしくみや体制をあらかじめ作っておく
ようにしましょう。
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②問題がある場合には、注意指導を行い、記録に残す
試用期間中の職員の業務状況や勤務態度等に問題があれば、すぐに注意や指導を行うようにします。その
うえで、あとで言った言わない、聞いていないなどといったトラブルにならないよう、その内容を記録して
おくことが非常に重要です。あわせて、クリニックの求める業務水準や人物像を伝えたうえで改善を促しま
しょう。
③試用期間中であっても解雇するのであれば、早めに判断のうえ、職員へ伝える
たとえ試用期間中であっても解雇する場合には、
「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であるこ
と」ならびに「就業規則等の解雇事由に該当すること」が必要です。これに該当し、最初の 14 日間以内であ
れば即時に解雇することができますが、その後 14 日を超えて雇用したのちに解雇する場合には、原則として
30 日以上前に予告するか、平均賃金の 30 日分以上の解雇予告手当を支払うことになります。本採用するか
否か(=解雇するか否か)の判断はできるだけ早めに行ったうえで、すみやかに職員へ伝えるようにしまし
ょう。
④本採用をするのであれば、「本採用通知書」を渡す
試用期間が満了し本採用をするのであれば、職員へいつから本採用とするかなどを記載した「本採用通知
書」を渡しましょう。試用期間中は比較的不安定な身分であったものから、本採用となることで、職員自身
のモチベーションアップにもつながります。他の職員の前にて発表したうえで渡す、院長等と面談をしたう
えで渡すなどいろいろな手段がありますので、クリニックに合った方法で伝達することをお勧めします。
本採用通知書(例)
この度、試用期間(○月○日∼○月○日)の勤務実績や勤務態度等を評価した結果、平成
年
月
日
付で本採用することを通知いたします。
当院の一員として、引き続き誠実にその職務に精励し、今後一層ご活躍くださる様、期待しております。
クリニックや医療機関で疑問を持つことが多い試用期間に関するFAQ
Q1.試用期間の長さはどれくらいまで認められますか。また延長することは可能でしょうか。
A.試用期間は、一般的に 3 か月から 6 か月程度と定められていることが多く、期間の長さについて定めら
れた法律はありません。しかし、職員としての地位を不安定にすることから、あまり長い期間を試用期間と
することは好ましくないとされています。
また、試用期間を延長する際には、就業規則にその旨が定めてあることが前提となります。もし延長する
場合には、職員に対して「延長の理由」「延長期間」「本採用とならないときの要件」等を事前に伝えておく
ことが重要です。
Q2.試用期間中は社会保険、雇用保険に加入しなくてはならないでしょうか。
A. 試用期間中は「お試し」だからといって社会保険や雇用保険に加入しないというクリニックがあります
が、たとえ試用期間であっても、クリニックとの労働契約は成立していることになります。したがって、通
常の職員と同様、入社日から社会保険、労働保険に加入しなくてはなりません。
最近は社会保険の調査が頻繁に行われていることもあり、試用期間中だからといって社会保険加入させて
いない点を指摘されるケースが増えているため、手続き漏れがないよう注意しましょう。
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