2011年 1 月号 隔月刊 (NPO法人)日本ビジネス航空協会 ◇ 巻 頭 日本ビジネス航空協会 会長 北林 克比古 新年あけましておめでとうございます。 会員のみなさまにおかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 さて、昨年 2010 年は混沌とした一年でしたが、航空を取り巻く環境は大きく変化し、 エポックとも言える年になりました。 3 月には成田空港の発着枠が22万回に増加し、更に段階を経て平成26年度には 30 万 回までの拡大も視野に入ってきました。 10 月には羽田空港の第 4 滑走路が完成し25年度には44.7万回までの増枠が計画され、 首都圏の空港容量は従来に比べ50%の増が期待されています。 また第4滑走路の共用開始と同時に羽田空港の国際化が実現し、米国とのオープンスカ イ協定も発効し、LCC の就航も現実のものとなるなど、わが国の航空業界は新たなビジネ スチャンスとグローバルな競争激化の時代に突入しました。 こうした変化にともない、わがビジネス航空の分野におきましても大きな進展がござい ました。 4 月に協会として従来の要望事項を整理、改訂し「ビジネス航空に関する要望書」を航空局 長宛てに提出いたしました。 5 月には国土交通省成長戦略においてビジネスジェットに係わる抜本的機能強化方針が打 ち出され、ビジネス航空に対する各方面からの関心の高まりが見られました。 具体的な進展としまして、成田空港において長年の懸案でありました5.7トン以下の ビジネス機の乗り入れ制限が撤廃され、更にビジネス機用のスポットの増加もはかられま した。 羽田空港におきましても、国際線就航開始時期にあわせてビジネスジェットの利便性向 上のための措置が講じられ、国際ビジネスジェットの昼間時間帯の利用をはじめとして、 利用条件の緩和、発着枠の拡充が図られました。 11 月には東京都より「首都圏におけるビジネス航空の受入れ体制強化に向けた取り組み 方針」が発表され、国土交通大臣もビジネス航空の振興に強力に取り組むための検討を指 示されました。 これを受けて 12 月22日には国土交通省において各界の代表からなる「ビジネスジェット 2 推進に関する委員会」が立ち上がり、今後更なる進展が期待されるところであります。 これまで諸先輩、会員の皆様が長年にわたり積み重ねてこられた地道な努力が結実し、 ビジネス航空推進に向けた動きが加速し、おおいに勇気付けられた 2010 年でありました。 しかし、要望書に盛り込まれた諸課題を解決し、わが協会の目指す「ビジネス航空の普 及、発展」を実現するにはまだまだ多くの努力が必要です。 しかも残った課題ほどハードルが高くなるように思われます。 今年は協会が活動を開始してから 16 年目に入りますが、昨今の動きを受けて協会に対す る関心、認知度も向上してきたように見受けられ、協会の活動も活発化してまいりました。 こうした状況に対応し得るよう協会の体制の強化につとめ、昨年来の動きを加速させ、さ らなる飛躍の年となるよう航空当局をはじめ関係諸機関のご協力を仰ぎつつ努力を続けて まいる所存でございます。 皆様の引き続きのご指導、ご支援をお願い申し上げます。 本年も皆様にとって良い年でありますよう、心からお祈り申し上げます。 ◇ ビジネス航空界のトピックス ・ 新着情報 東京都が「首都圏におけるビジネス航空受け入れ体制強化に向けた取り組み方針について」を発表 11 月 18 日に東京都より首都圏のビジネス機受け入れ体制強化の方針が発表されました。 東京都も首都圏(羽田、横田等)におけるビジネス航空受け入れ体制強化に積極的に動い ていただけることになりました。詳細は以下の都の HP を御参照下さい。 http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/11/20kbi100.htm 民主党「ビジネス航空推進議員連盟」発足 11 月 21 日に民主党「ビジネス航空推進議員連盟」の設立総会が衆議院第 1 議員会館で開 催されました。設立総会では、大島 敦衆議院議員(前内閣府副大臣)が会長に、加藤 学 衆議院議員が事務局長に選任され議員連盟が正式に発足致しました(11 月 21 日時点での議 連加入議員数は 25 名)。当日は協会の北林会長も同席の機会をいただき、挨拶並びにビジ ネス航空の現状について説明をさせていただきました。 成田国際空港におけるビジネス航空取り扱いの更なる改善が実現 7 月に 5.7t 以下の機体の成田国際空港乗り入れ制限の撤廃が実現したのに続き、やはり 従来から改善を御願いしていました以下が 12 月 16 日から実現する事になりました。 3 -ビジネス機等小型機用スポットの増設 今迄の 10 スポットが 15 スポットに増設 -駐機可能期間の延長 一部スポット(3スポット)の駐機期限を、7 日から 14 日に延長 東京都が「横田基地軍民共用化推進セミナー」を開催 12 月 17 日に東京都主催の「横田基地軍民共用化推進セミナー」がヒルトン東京で開催さ れました。 その席上、冒頭の石原都知事の御挨拶や杉山成城大学教授(前一橋大学長)の基調講演等 でも共用化にあたってのビジネス航空の重要性が強調されていました。 航空局内に「ビジネスジェットの推進に関する委員会」設置 2010 年 5 月に公表された国土交通省戦略会議報告書で、ビジネスジェットに係る抜本的 機能強化の 方針が打ち出された事等を受けて、ビジネスジェットの更なる振興に強力に取り組んでい くため、関係者からなる委員会が航空局内に立ち上げられることになり、その第 1 回の委 員会が 12 月 22 日に国土交通省で開催されました。 本委員会には協会の北林会長も委員として参加しております。 MEBA(Middle East Business Aviation Show)2010 at ドバイ MEBA(Middle East Business Aviation Show)2010 が 12 月 7 日から 9 日までアラブ首長 国連邦ドバイ(ドバイ国際空港に隣接する Dubai Airport Expo)で開催されました。 MEBA はビジネス航空に特化した中東のビジネス航空 Show で、2 年毎にドバイで開催されて おり今年が 4 回目の開催になります。 今回の MEBA は最近の中東における目覚ましいビジネス航空の発展を反映し、大変盛況な Show となりその規模はビジネス航空に関する Show としては現在すでに NBAA Annual Meeting & Convention 、EBACE に次ぐ、世界第 3 の規模になっています。 MEBA は MEBAA(Middle East Business Aviation Association)が主体となって開催(実 際の運営は show organizer の F&E Aerospace 社に委託)されていますが、今回の出展社数 は 338 社、屋外展示機 53 機、入場者数 6200 名(一般参加はなく全て業務関係者)と、そ の規模は一地域の Show の域を超えたものになっています。しかも世界経済の落ち込みに伴 い、NBAA の Annual Meeting & Convention 等が一時落ち込んだのに較べ MEBA の規模は毎回 大幅に伸び続けており中東におけるビジネス航空の目覚ましい発展を強く印象付けられる ものです。 しかも BBJ、ACJ 等の大型機が NBAA や EBACE よりも多数展示されていること、又機体展示、 屋内展示ブース共に単なる展示というよりも商取引の場そのものという感じの Show になっ ていることが注目されます。 次回の MEBA は 2 年後の 2012 年 12 月に開催される予定ですが、開催場所としては今迄のド 4 バイの他、最近ビジネス機用専用空港が整備されたアブダビ等も候補地にあがっています。 今迄日本ではあまり注目されることのなかった Show ですが、世界のビジネス航空の流れ を知る上で重要な場になっていく可能性があります。 屋外実機展示 屋内展示 ◇ 協会ニュース 電子航法研究所主催の国際ワークショップへの協力 11 月 10-12 日に秋葉原で開催された電子航法研究所主催の「ATM/CNS に関する国際 ワークショップ」にポスター展示等で協力させていただきました。 航空宇宙産業技術展 2010(at 名古屋)を支援 11 月 25-27 日に名古屋のポートメッセ名古屋で開催された 「航空宇宙産業技術展 2010」 を後援団体としてパネラーを派遣する等で支援させていただきました(ビジネスジェット シンポジウムに事務局長を派遣、他に会員会社(朝日航洋、エアバスジャパン)からもシ ンポジウムのパネラーを派遣していただきました) 。又今回も会報にご寄稿いただいていま す青木美和 Pilot もパネラーとして参加されました。シンポジウムには約 300 名の参加者が あり大変盛況でした。会員企業(商社等)にはビジネス航空のブース展示でもご協力いた だきました。 会場風景 左 モデレーターの石原会員 5 IBAC 第 52 回理事会 at ドバイ IBAC の第 52 回理事会が上記 MEBA2010 に合わせて 12 月 10 日にドバイで開催され当 協会事務局長が理事会メンバーとして出席しました。 日経フォーラム支援について 前回の会報で日経フォーラム(ビジネス航空フォーラム)が 12 月 14 日に開催されるこ とになっておりそれを全面的に支援させていただく予定であるとお知らせしましたが、諸 般の事情から開催が延期されることになりました。新たな開催の予定が決まりましたら、 又ご案内させていただきます。 入会勧誘の手紙の発送等について 協会の活動基盤強化のため、更に多くの企業、団体等に協会活動を御支援いただくこと を目指して現在入会勧誘活動を強化し、会社、団体等を訪問させていただいたり、勧誘の 手紙の送付等を行っています。会員の皆様にも会員増への御協力を御願い致します。 主要協会活動(11-12 月) 11 月1日 本田航空局長訪問 11 月 1 日 四役会開催 11 月 10 日 電子航法研究所主催国際ワークショップに参加 11 月 22 日 航空局総務課長、企画室長訪問 11 月 22 日 民主党関係者と民主党ビジネス航空推進議員連盟発足について打ち合わせ 11 月 24 日 成田国際空港会社訪問(運用担当役員、企画担当役員等と協議) 11 月 25 日 民主党「ビジネス航空推進議員連盟」設立総会に参加 11 月 26 日 経団連を訪問 11 月 26 日 「航空宇宙産業技術展 2010」at 名古屋に参加 12 月 2 日 航空局企画室と会議 12 月 6 日 理事会開催 12 月 7-9 日 MEBA2010 参加 12 月 10 日 IBAC 第 52 回理事会出席 12 月 12 日 内閣府行政刷新会議規制・制度改革担当事務局と会議 12 月 17 日 東京都主催「横田基地軍民共用化推進セミナー」に参加 12 月 20 日 航空局企画室と会議 12 月 22 日 航空局「ビジネスジェットの推進に関する委員会」に出席 6 ◇ 投 稿 - Hello from Guam 第一回 “Guam! Here I come” Trend Vector Aviation International 青木美和 一年ぶりに青木美和さんに再登場願いました。1,2の会員企業で事業化されていますが我 が国では何かと制約が多く、ビジネスメリットを生かしきれない Evacuation Business の「救 急搬送ドクタージェット」、近年わが国でも注目され始めています。いまグアムをベースに最前 線でご活躍の様子を美和さんご本人の筆致で紹介しましょう。 本号、次号の連載です。 “Guam Departure, Life Guard November niner won won Golf Uniform, Two thousand for niner thousand runway heading.” っと。(グアム出発管制へ、ライフガード N911GU 機は滑走 路方位を維持して 2000 フィートを通過 9000 フィートへ上昇中) 私は慌しくサイパン空港を離陸し、タワーの指示でグアム Departure にコンタクトした。 もちろんコールサインは 「ライフガード」緊急専 用救急ジェット(日本ではドクタージェットの名で 知られている)の仕事で、私はグアムから緊急患者 をピックしにサイパンに来ていた。そしてたった今、 救急車で病院から輸送されてきた患者を乗せ、患者 受け入れ施設のあるマニラ、フィリピンに向けて離 陸したところだった。 エンジンナセルに書かれた登録番号 アメリカで 911 は日本で言う 119 番。なんて奇妙なテール番号なんだと初めてみた時は苦笑した。 サイパンには設備の整った病院がない。緊急患者だけは政府が全額負担するとあって、サイパ ンの人達は安心して海外の病院、主にマニラの病院へと輸送されていく。私の仕事は患者、それ に医者と看護師、並びに患者の付き添い家族を安全に目的地の空港まで運ぶ事だ。 輸送中は患者の状態はもちろん専属医師達が意を尽くして安静にさせる。私達は彼らの仕事に は一切口を挟まない。コックピットの中はパイロットの仕事、キャビンの中は専属医師達の領分。 お互いのプロフェッションを完璧にこなす事が Team Work の最低条件。 この部分 Air Ambulance も Airline で働いていた時の Cabin attendant との関係と同じだ。 当直になると 24 時間 On call で待機してなければならず、お酒も SCUBA Diving も On call の日はご法度。それに加え、緊急患者の輸送の電話が入ったら出来るだけ短時間で離陸をしなけ ればならない。ほとんどのフライトは外国になるため、International 7 フライトプランを File し、Landing 許可を目的地の空港から取らなければならない。それらは会社側で準備をしてく れるとしても、私たちには Flight Plan, Weight and Balance, Runway analysis, Weather そし て Fueling とやる事が山ほどある。ほとんどの仕事はキャプテンと私で分担して行うが、それ でも、緊急患者を目の前にして寸分も無駄に出来ないので、テキパキと仕事に取り掛かる。プリ フライトまでやっとたどり着いたところで Estimated Departure を無視して、救急車が格納庫 に到着してしまい、あたふたする事も多々ある。 「患者がもう到着している、すぐに飛び立ってもらえないか」と Estimated Departure タイム を無視してプレッシャーをかけてくるマネージメント側。 「Flight Plan を File した時刻になら ないと Clearnace は出ないんだ、Landing Slot に合わせるように離陸しなければならない。気 持ちはわかるが Estimate Departure Time に合わせて患者を空港まで連れてきてくれるように 配慮してくれ!」と応じるキャプテン。 私たちには当たり前の事なのだが、病院側はあまりピンとこないのか、このオペレーションを 始めた頃は、何度かプリフライト中に口論になって時間を無駄にしていたそうだ。私がこの Team に参加した今では「口論している暇もない」と言う現実が、経験を重ねるうちにわかっ てきたようだ。 さっき交通事故で正面衝突してしまったティーンネージャーの娘の横で泣きながら付き添っ ている母親を目前にして、私はキャプテンと目を合わせ、暗黙の了解で事を急がせる。通常の 8 時間どころか、2 時間警告(前通告)で準備は出来るか?と頼まれる事もあった。出来るだけ早 く、そしてミスの無いように Pre Flight を進めないといけないのがこの世界の常である。 この仕事には常に緊迫感と慌しさが付いてまわるが、やりがいのある仕事には違いない。この 仕事に関わって一般に言われているパイロットの仕事以外にいろんなことを学んだ。経験豊かに なるのは確かだ。 グアムに引っ越してこの仕事を始めてもう1年が経った。毎日を忙しくしていると本当に一年 はあっという間に過ぎてしまう。そう、私はこの土地 Guam に Seattle から 2009 年の春に引っ 越してきた。 Aviation の仕事を始めて10年が過ぎていた。 まさか Air Ambulance の仕事に携わるとは思っ ていなかった私。グアムに来てすぐに、この Air Ambulance と言う仕事をさせていただく事に なった。Westwind II と言うイスラエル製のジェ ット機。とても面白い姿をした飛行機に興味を惹 かれ軽い気持ちではじめた仕事。Air Ambulance という仕事がどれだけ大変なのかを知らずに始 めてしまったのが本音である。 (笑) Westwind Ⅱ ビジネスジェット 8 この連載(2回)では、皆様にあまり日本では知られていない Air Ambulance の仕事の現場 を紹介していきたいと思います。私の Guam 発 Air Ambulance 奮闘記。私は常に Aviation か らいろんな事を学び、そして今の自分があります。常夏の島グアムを拠点にこのマリアナ諸島上 空と太平洋の空を飛びながら、紙面から皆様に私の経験談をお届けしますのでよろしくお願いし ます。 アメリカ大陸の空でしか飛んだ事のなかった私がグアムからマニラまで初フライト!その様 子を次回にお伝えしましょう。お楽しみに! また、皆様からのご意見、感想をいただけたら幸いです。E-mai;[email protected] までお 便りをお寄せください。楽しみにしています。 ============================== 青木美和氏のプロファイル アメリカで活躍するスーパーウーマン機長。愛知県豊橋市出身。高 校卒業後、米国東部の大学の ESL で英語を学んだあと、ワシントン 州グリーンリバーコミュニティカレッジで航空学を専攻。その後セ ントラルワシントン大学航空学科 Professional Pilot Course に転入、 航空学で学士、工業エンジニアリングで修士号を取得。卒業と同時 に同大学の操縦教官に、7年間教官を務め、その間ビジネスジェッ トのパイロットとして Cessna Encore に乗務。その後 Horizon 航空 ファーストオフィサーとして CRJ700 に乗る。2009 年よりグアムに 移動、トレンドベクターエビエーションの次席操縦教官として日本 人顧客を中心に操縦を教える傍ら、Air Ambulance のパイロットと して WestwindII のフライトデッキでご活躍。Off には紺碧の海で SCUBA を楽しむ、マリアナ海域はご自分の庭のようだと。 Westwind II フライトデッキの筆者 P S : 青木美和氏はこの投稿を終えられた後、休職中のホライゾン航空(シアトル市)に復帰され、今は アメリカ本土で Bombardier Q400 機に乗務、再び Airline パイロットとして活躍されています。 事務局 柳井記 =============================================== 9 ◇ ホームページのご案内 協会ホームページ http://www.jbaa.org/ ホームページで、新着情報等より詳しい情報を提供させていただいておりますのでご利 用下さい。 ◇ 入会案内 当協会の主旨、活動にご賛同いただける皆様のご入会をお待ちしています。会員は、正 会員(団体及び個人)と本協会の活動を賛助する賛助会員(団体及び個人)から構成され ています。 詳細は事務局迄お問い合わせ下さい。入会案内をお送り致します。 入会金 正会員 賛助会員 年会費 正会員 賛助会員 団体 50,000 円 個人 20,000 円 団体 30,000 円 個人 1,000 円 団体 120,000 円以上 個人 20,000 円以上 団体 50,000 円以上 個人 10,000 円以上 ◇ ご意見、問い合わせ先 事務局までご連絡下さい。 (NPO)日本ビジネス航空協会 事務局 〒100-8088 東京都千代田区大手町 1 丁目 4 番 2 号 Tel:03-3282-2870 丸紅ビル3F Fax:03-5220-7710 web: http://www.jbaa.org e mail: [email protected] 本年もどうぞよろしくお願いいたします 事務局 10
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