臼蓋形成不全および脱臼の画像診断基準 1.X線計測値 (1)臼蓋角(AI) (2)山室b (3)飯野 a (4)各計測値の正常値(平均と 95%信頼区間) 女児 臼蓋角(AI) 24.9 度(17.8 - 33.7) 山室 b 8.6mm(6.5 - 11.1) 飯野 a 46.8%(39.1 - 55.3) 宮城県大崎保健所 (5)臼蓋縁形態 男児 22.4 度(16.4 - 29.8) 9.4mm(7.1 - 11.6) 46.1%(38.5 - 54.5) 平成2年度4カ月 女児 735 名、男児 843 名の計測結果 2.骨盤の不良肢位の検出方法 (1)閉鎖孔の左右差による骨盤左右回旋の指標(Tonnis) 正常値は 0.56∼1.8 (2)骨盤回旋が計測に及ぼす影響 前述の Tonnis の計測は、プロテクタ-で閉鎖孔が隠されて いる場合使えない。この場合は、坐骨と恥骨との重なり 具合から、回旋を判断する。 この Fig.では、骨盤は右回旋しているが、右大腿骨の 外側化が見かけ上増加し、右臼蓋角は減少する。一方、 左大腿骨の外側化は見かけ上減少し、左臼蓋角は増加し て計測される。 (3)閉鎖孔縦径による骨盤前後傾斜の指標(Ball & Kommenda) 正常値は 0.75∼1.2 プロテクタ-で閉鎖孔が隠されている場合は、坐骨上端と 恥骨上端の位置関係から骨盤傾斜を判断する。 恥骨より坐骨が 0.5∼1mm 高い時、中間位。 恥骨が高いときは、kyphotic(骨盤後傾) 坐骨が腸骨に重なるときは、lordotic(骨盤前傾) (4)骨盤前後傾斜による臼蓋角(AI)の変化 Kyphotic(骨盤後傾)では臼蓋角(AI)は増加、lordotic(骨盤前傾)では減少する。 3.臼蓋形態別の成長結果(栗原保健所での臼蓋形成不全股の長期観察結果) 4 ヵ月X線像 ――――>15∼6 才X線像 OE 角 α角 山室 b CE 角 Sharp 角 AHI 正常(n=90) 5.8° 22.1° 8.7mm 26.9° 42.5° 79.2% 急峻(n= 9) 0.7° 35.3° 9.6mm 26.3° 42.7° 79.9% 凸 (n=23) -0.6° 30.5° 9.2mm 25.5° 43.7° 78.9% 二重(n=22) -0.5° 29.1° 9.7mm 25.1° 44.0° 77.5% 欠損(n=12) -1.3° 30.5° 9.7mm 21.4° 45.7° 74.1% 下線が正常と有意に異なる(P<0.05) *臼蓋縁形態が二重・欠損を示すものは成人X線像が有意に劣る 4.脱臼股のX線診断 (1)X線像が読影に適しているか判定する a)骨盤の左右の傾きの影響 左右比較し、閉鎖孔が小さく見える方に傾いている。 傾斜反対側では大腿骨が坐骨と近づき、外側化が過小評価される 傾斜側ではこの反対に外側化しているように見える。 b)大腿骨の回旋(特に外旋) 大腿骨が外旋していると、外側化があるように見えることがある。 c)撮影時の児の態度 泣いている子を押さえて撮影すると、大腿骨の外側化が増長されることがある。 以上、左右の傾きで、傾斜反対側(閉鎖孔が大)での外側化の過小評価に注意する。 (2)脱臼股の画像による診断基準 a)Shenton 線,Parkins 線で外側化をチェック(これが最も重要です!) b)山室bの計測(女 12/男 13mm 以上は脱臼) c)骨盤の左右の傾き(見掛け上の外側化)の確認 d)外側化とは直接関係ないが臼蓋角(α)や臼蓋形態の異常も参考にする 5.臼蓋形成不全股の画像診断基準 (1)X 線像が読影に適しているか判定する a)骨盤の前後の傾きの影響 i)Kyphosis では臼蓋角(AI)は増加。===kyphosis dysplasia ii)Lordosis では臼蓋角(AI)は減少。 以上のことを、十分熟知すること。 b)骨盤の左右の傾きの影響 iii)傾斜側(閉鎖孔が小さく見える方)では臼蓋角(AI)が減少して見える。 iv)傾斜反対側(閉鎖孔が大きく見える方)では臼蓋角(AI)が増加して見える。 (2)臼蓋形成不全の診断基準 a)臼蓋縁形態異常 臼蓋縁の二重、欠損症例をまず選択(臼蓋縁形態を最重視する!) b)臼蓋縁形態正常 臼蓋縁正常で臼蓋角 30 度以上の症例を選択 c)骨盤傾斜(kyphosis,lordosis,左右の傾斜) 坐骨と恥骨との位置関係、閉鎖孔の左右差 特に kyphosis-dysplasia 症例の除外 5.参考資料(平成2年度大崎保健所検診結果) (1)X線診断結果 女 児 受診数 735 有所見 69 脱 臼 4 臼不全 65 男 児 843 14 3 11 (受診率 98.1%) 総 計 1578 83(5.3%) 7(0.4%) 76(4.8%) (2)X線計測結果 (受診者全員のX線を計測) 女 児(1470 股) 男 児(1686 股) 臼蓋角 24.9 度(17.8∼33.7) 22.4 度(16.4∼29.8) OE角 4.6 度(-8.3∼14.5) 7.1 度(-4.3∼15.8) 山室b 8.6mm( 6.5∼11.1) 9.4mm( 7.1∼11.6) 飯野a 46.8%(39.1∼55.3) 46.1%(38.5∼54.5) (3)脱臼股のX線診断基準でどの程度の児が診断されるか 大崎保健所の計測結果の分析 女 児 男 児 合 計 山室b(女 12/男 13mm) 5 関節 3 関節 8 関節(0.25%) 飯野a(男女 55%) 42 関節 38 関節 80 関節(2.5%) *飯野aでは完全に over diagnosis (4)臼蓋形成不全股のX線診断 女 児 男 児 総 計 α角 30 ゚以上 158 股(10.7%) 40 股(2.4%) 198 股(6.3%) α角 25∼30 ゚で 181 股(12.3%) 49 股(2.9%) 230 股(7.3%) 臼蓋縁異常も含める *α角 25 ゚以上+臼蓋縁異常では女児 12%+男児 3%で合計 7.3%が有所見
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