白石 範孝

教科指導
ここが知りたい
第1段階
全体の構成やイメージを
とらえる
「 文 章の読み取 り 」という と、
とき として「 文 」の単 位 までば
らしてしまい、
その一つひとつを読
んでいこうとするケースが見受け
「方法」が明確にされて
いない文章の読み取り
多くの先生方から 「子どもた
ちが教 科 書の文 章をなかなか読
み取れない」といった声が寄せられ
ています。その根底には、
そもそも
「 文 章の読み取り 方 」が 「 方 法 」
として明 確にされていないという
ことが あ げ られる と 思いま す。
「方法」がはっきりと示されていな
いのに、「 読み取りなさい」と言わ
れても無理な話です。
実際に小学
わたしはこれまで、
校の教壇に立っている多くの先生
方と一緒に、「文章の読み取り方」
について 研 究 を 重 ねて き ま し た
が、その中で「3段 階 」に分 けて
読むことが、
文章を的確に読み取
いかと考えるようになりました。
そこで今 回は、「3段 階で文 章
を読み取る」方 法 を、皆さんにご
紹介したいと思います。
全体→細部→全体が
3段階の読みの基本
「3段 階の読み」とは、文 字 通
り 作 品や文 章 を3つのステップで
読み解 く ものです。物 語 教 材や
説 明 文 教 材だけでな く、詩 教 材
や 伝 統 文 化 教 材 な ど、国 語の授
業で取り扱うすべての文章に当て
はめることができると考えていま
す。
おおまかにいえば、
発揮しあっているのかを理解する
どのように関 係 し あって機 能 を
いまま、
子どもたちにさまざまな
の一つに、
具体的な方法を示さな
あるいは、どんなイメージを表 現
どのような構成になっているのか、
るのですから、
まずは文章全体が
書き手は「文章」
の全
しかし、
体で一つのことを表そうとしてい
の頭からすべての文を細かく見て
ただきたいことがあります。文章
一文ずつ細かく見ていくことに
なるわけですが、一つ注 意してい
今度は細
全体像をつかんだら、
部に入っていきます。
と具 体 例の関 係 をつかむことな
あり、
説明文でいえば筆者の主張
章がわかりやすいのか、
どう書け
「 わかりや すい文 章 を 書 き な
さい」というのであれば、
どんな文
文 章を読み取るということも
まったく同じです。
ていってしまいます。
語 という 学 習からどんどん離れ
れば、子 どもたちの気 持 ちは国
方 法 を教 えてもらえないのであ
要があ り ま す。要 求だけされて
のかを具 体 的に示してあげる必
く とわかりにく く なってし ま う
ばわかりやすくなるのか、
どう書
イメージ
もう一度全体を読み、
の明確化を図ります。
もう一度全体を読み
イメージを明確化する
第3段階
のです。
あげられます。
構成を深
ただしこの段階では、
く分析したり、
イメージを深く掘
しようとしているのかをとらえる
第2段階で細部を読んだ後で
すので、
第1段階で全体を読んだ
ときとは読みの深さや、
理解の仕
最 初に読んだとき との違いを
確認することで、「文章を読み取
できません。
もたちは正しく 読み取ることが
方も変わってくると思います。
る」ということの意味を子どもた
読み取るための方 法を教 えら
れなければ、
いつまでたっても子ど
ちに認 識させることもできると
印象がぼけてしまいかねません。
例 えば機 械の仕 組みを調べる
場 合、ま ずは機 械 全 体の構 造 を
「用語を教える」
「方法を教え
る」
「原理原則を教える」は、
どん
機会があるたびに申し上げる
ことですが、
国語の授業の問題点
ます。 を行っていくことが大切だと思い
文 章の読み取 りにおいてもこ
の点を十分に認識した上で授業
ントだと思います。
な教科にも共通する指導のポイ
思います。
いて調べていくことになると思い
ますが、
このとき、小さなねじを
一つずつ細かく見ていたのでは、
い
つまでたってもその機械の仕組み
を理解することはできません。
大 切なのはそれぞれの部 品が
「要求」だけでは
子どもの心が離れていく
つかんだあ とに、細かな部 品につ
ませんし、
かえって全 体 としての
すべての文 を吟 味しよう とし
たら、時 間がいくらあっても足り
いくのではないということです。
細部を読み
関係をつかむ
第2段階
ことができればいいと思います。
活 動に取 り 組 ませていることが
第3段階
ことです。
→もう一度全体を読んだり、 イメージを明確化したりする。
り下げたりする必要はありませ
という流れです。
第2段階
ん。全体像をざっくりと押さえる
→細部を読み、関係をつかむ。
白石 範孝
これが物 語でいえば人 物や 出
来 事の因 果 関 係 をつかむことで
るための方 法につながるのではな
→全体の構成をつかんだり、
イメージをつくったりする。
しらいし のりたか*1955 年鹿児島県生まれ。
東京都の小学校教諭を経て、現職。國學院大
學栃木短期大學講師、使える授業ベーシック
研究会会長、
全国国語授業研究会理事、
国語
ICT研究会会長。著書には、
『おいしい国語授
業レシピ』
(文溪堂)
ほか多数。
必要があります。
られます。
第1段階
筑波大学附属小学校教諭
今年度から完全実施となった新しい学習指導要領では
「読解力」
が重視されています。
しかし、小学校の現場からは
「読解力の前提となる文章の読み取りができない子どもが多い」
「読み取り方をどう教えていいかわからない」
といった声も多く聞かれます。
そこで今回は筑波大学附属小学校の白石範孝先生に、
文章の読み取り方の「具体的な方法」
を教えていただきます。
16 *
誰でも確 実に文 章が 読み取れる
誰でも確 実に文 章が 読み取れる
* 17
る
が読み取れ
章
文
に
実
誰でも確
文章の種類別
●第1段階
物語教材
3段階の読みの具体的方法
3段 階の読みについて、その概 略
を説 明し ました。大 きな流れはど
んな文章でも共通ですが、
細かい部
3つの場面に分ける読みを行いま
す。
「 物 語 教 材の の観 点 」を活 用
して、
読みの共通の土俵づくりを行
分は文 章の特 性によって変わってき
ます。
います。
語の基 本 構 成などについて、子 ども
「 読みの共 通の土 俵 」とは、授 業
で物 語 を 読んでいくに当たって、物
それぞ
授業を行うに当たっては、
れの違いを認 識した上で指 導に当
たっていただきたいと思います。
心となります。
文章がどのよう
説明文の場合は、
に構 成されているかも 重 要な学 習
のポイントになり ます。この段 階で
の通し 読みを通じて全 体 像 をつか
んでおくことが、
その後の学 習に役
立ってきます。
●第2段階
筆 者の意 図を読み取ることが中
心 となり ます。ここで役に立つのが
第1段 階で行った文 章 構 成の把 握
です。頭 括 型か尾 括 型かなどの文
章構成を正しく把握することがで
きれば、
その中で筆者が最も主張し
たかったことは何なのかが見えてき
ます。
●第3段階
もう一度 全 体に戻 り ます。第2
段階で読み取った「筆者の意図」が
文 章 全 体に通じていることを認 識
し、読み取りが正しかったことを確
認します。
受けるかを大切にしてください。
●第2段階
技 法や、使われている言 葉 一つひ
とつを詳しく吟味していきます。詩
の場 合は物 語や 説 明 文に比べて作
者はさまざまな効果を考えながら
言葉を選んだり、
技法を使ったりし
ています。その部 分をしっかり と読
み取ることで、
作者が描こうとした
世 界 を深 く 理 解 することにつなが
るのです。
① 時・場所
⑤ 事件
⑥ 大きく変わったこと
⑦ 3部構成
⑨ 一文で書く
⑩ おもしろさ
識 しながら、古 典 を 楽 し む 素 地づ
の考 え方の共 通 点や異なる点を認
であることや、
昔の人と現代の自分
歴 史の中ではぐ く まれてきた文 化
いまの
古典にふれることによって、
わたしたちの扱っている文 章が長い
はまったく異なります。
小学校での伝統文化教材の学習
は、
中学校での古典や漢文の学習と
いようです。
扱ったらいいのか戸惑っている方も多
今回の学習指導要領改訂で新し
く入った内容です。それだけにどう
伝統文化教材
ります。
ていたイメージの理解がさらに深ま
す。これによって作 品が描こう とし
第2段 階で学 習したことを念 頭
に置きながら、
全体を通して読みま
●第3段階
基本的には物語教材と共通して
います。
説明文教材
ば、
難しいことではありません。
と 第2 段 階 をしっか り 行ってお け
最後に物語の主題である中心人
物の変 容 を押さ えま す。第1段 階
●第3段階
は焦らずしっかりと読み込みます。
係によって起こるわけですから、
ここ
す。中 心 人 物の変 容はこの因 果 関
登場人物や出来事の因果関係に
着 目しながら細 部 を読んでいき ま
●第2段階
変容もとらえやすくなります。
強 く 認 識 することで、中 心 人 物の
しまいます。物語のはじめと結末を
でついてこれなくなる子どもが出て
この共通認識がないと、
学習の途中
たちが共通の認識をもつことです。
② 登場人物
くりが大切になります。
■説明文教材の3段階の読み
●第1段階
3つの部分に分ける読みを行いま
す。やはり 「 説 明 文 教 材の の観
⑩ 要旨(主張)
第3段階の読み ○文章全体をとらえ、筆者の意図を読む。 ⑨ 事例(具体と抽象)
てきたことを感じ取らせます。
や考え方が、
長い歴史の中で培われ
古典作品の作者の世界と自分と
を重ね合わせることで、
現代の文化
伝統文化教材ならではの特徴的
な部分です。
●第3段階
う。
感じ取ることができればいいでしょ
味 を 説 明 しながら、全 体の意 味 を
せん。わかりにくい部分は教師が意
に現代語訳をさせる必要はありま
細部を読んでいきますが、
中学校
の古 典の学 習ではないので、逐 語 的
●第2段階
ば十分です。
として古 典 を楽しむことができれ
らないかもしれませんが、まずは音
り ま す。はじめは意 味 もよく わか
「 音 読 」によって、現 代 文 との違い
を音 として感じることが大 切にな
●第1段階
点」を使った共通の土俵づくりが中
10
2011年春からの
新教材分析を
緊急追加!
詩教材
⑧ 文章構成図
●B5判144ページ2色刷
●定価 2,100円(本体2,000円+税)
00円+税)
●第1段階
⑤ 要点
第2段階の読み ○筆者の意図を読む。
⑦「問い」と「答え」
白石範孝
「 詩 教 材の5の観 点 」で読みの共
通 土 俵 をつく り、「 詩の3つの手 立
⑥ 3部構成
編著
筑波大学附属小学校
て」を活 用して最 初のイメージをつ
かむことからはじめます。
この段 階では表 現 技 法などにこ
だわる必 要はあ り ません。あ く ま
でも全 体 としてどのような印 象 を
④ 形式段落の主語
18 *
誰でも確 実に文 章が 読み取れる
誰でも確 実に文 章が 読み取れる
* 19
③ 意味段落
第1段階の読み
○「説明文教材の10の観点」を活用して読みの共通の土俵を
つくる。
○3つの部分に分けて全体の構成を読む。
○課題、話題の内容をつかみ、書かれている内容を予測する。
② 形式段落
③ 中心人物
人物
⑧ お話の図・人物関係図
○自分と重ねて読み、
イメージを明確化する。
① 題名・題材
大好
評
新刊
③ 自分のイメージをつくる。
関係
づける
第3段階の読み ⑤ 技法と効果
第3段階の読み
物語教材・説明文教材…もう一度全体を読む
詩教材・伝統文化教材…イメージを明確化する
事件
○細部を読む。
第3段階の読み ○中心人物の変容を読む。 ②「問いの文」の答えを求めて読む。
○イメージを明確化する。 ④ 語り手
■説明文教材の10の観点
教材がわかる
! 授業ができる!
!
① 題名から「問いの文」をつくる。
第3段階の読み ③ 中心語・文
細部を読む
④ 語り手
第2段階の読み 第2段階の読み ○因果関係を読む。
■詩の3つの手立て
○細部を読む。
② リズム
第2段階の読み 設定
第1段階の読み
○音読して、作品全体の
イメージをつくる。
10
第1段階の読み
○「物語教材の10の観点」を活用して読みの共通の
土俵をつくる。
○3つの場面に分けて全体の構成を読む。
○中心人物の変容過程の概要を読む。
第2段階の読み ① 題名
第1段階の読み
○3つの手立てで、最初の
イメージをつくり、作品
全体からイメージをつくる。
第1段階の読み
物語教材・説明文教材…3つの場面・3つの部分に分ける
詩教材・伝統文化教材…作品全体からイメージをつくる
■物語教材の10の観点
■伝統文化教材の3段階の読み
■物語教材の3段階の読み
■詩教材の5の観点
■詩教材の3段階の読み
■3段階の読みの基本パターン