ポーラの原点は、今から80年以上前、「たった一人のために作ったクリーム」でした。創業者 鈴木忍が、手が荒れてしまった 妻のために独学でクリームを作り、使い方を説明しながら、お客さまを一軒一軒訪問して歩いたことが、ポーラの化粧品開発 と販売の始まりです。 「最上のものを、一人ひとりにあったお手入れとともに、直接お手渡ししたい」 創業者の想いを継承しながら「自ら創り、自ら販売する」という志を持って、一人ひとりのお客さまの肌に合った化粧品をお届 けすることにチャレンジしてきた、ポーラとポーラ化成工業の取り組みをご紹介します。 1937年以来、ポーラの化粧品は、「カウンセリング販売」を行うポーラ レディによって、お客さまの現在の肌の状態をポーラレディが自分の 目で確認しながら、使い方の説明とともに提供されていました。ポーラ レディがお客さまの肌に合った商品を選び、お手入れ方法とともに直 接お手渡しする。それは、まさに創業者の想いを受け継ぎ、お客さま 一人ひとりの肌に責任を持つ化粧品メーカーとしてふさわしい仕組み です。 創業以来の販売チャネル成長の一方で、商品によるポーラの個肌対 応も進められました。昭和30年代には「しっとり」「さっぱり」という2種類 の商品で「お客さまの「肌タイプ」への対応を開始しました。さら に1980年には「エスティナ」というブランドで4つの肌分類に基づいた商 品の提供を開始し、より自分の肌に合った化粧品を選んでご利用いた だけるようになりました。 87 しかし、化粧品の研究・開発を担うポーラ化成工業の研究員たちは、 現状に満足せず、理想的な個肌対応に向けてさらに研究を続けてい ました。肌研究や処方開発のプロフェッショナルたちは、既製の化粧品 を選んでお使いいただくよりも「一人ひとりの肌のために処方された化 粧品を提供する」ほうが、お客さまの肌により貢献できるという信念を 持っていました。 どうすれば一人ひとりの肌に合った化粧品を提供できるのか。科学に 裏付けられた「ポーラにしかできない」化粧品を生み出せるのか。 その答えは、「肌の細胞分析」にありました。 ある日、来る日も来る日も肌の角層研究をしていた研究者が「肌の細 胞を見れば、その人に会わなくても肌の状態がわかる」と自信を表しま した。お客さまの肌の細胞を採取し、分析すれば、その人に合った化 粧品が作れる。ポーラ化成工業にはそれを実現する技術がある ―――。 そう確信したポーラ化成工業の技術者たちは、長年の研究の成果を、 初の個肌対応化粧品「アペックス・アイ」に込めました(2014年「アペッ クス」に改称)。そうして開発されたアペックスが、テスト販売を経て全 国での販売を開始したのは1989年。創業から60年にわたって培ってき た想いと技術が具現化された商品が誕生しました。研究員たちの「一 つの夢がかなった」瞬間と言えるものでした。 肌細胞の分析技術を発揮するには、言うまでもなくお客さまから肌の 情報をお預かりすることが必要です。ポーラレディがお客さまのもとを 訪れ、お客さまの肌データをいただきます。その細胞を分析して、分析 に基づいて処方化された化粧品をお客さまのもとへお届けする。ア ペックスを契機として、ポーラレディによるカウンセリング販売と、ポー ラ化成工業による分析技術や処方化技術を結びつけるモデルが構築 されました。 折しも、女性の活躍が進むと同時にライフスタイルが多様化し、一人 ひとりの女性の美しさに応える化粧品が求められていた時代。アペッ クスをお客さまのもとへお届けするプロセスは、時代の要請に応える ための手法でもありました。 まず、ポーラレディの中でも専門の教育を受けたアペックスアドバイ ザーが1回目の訪問で、チェッカーと呼ばれる独自のツールとレプリカ を用いて、お客さまの肌表面の角層細胞や皮膚表面の凹凸などの データをいただき、「アペックス肌分析センター」へと送ります。 肌分析センターでは多くのスタッフが、染色して観察しやすくした角層 細胞の写真を現像し、分析結果の解説とあわせて、お客さま向けの 「アドバイスシート」にまとめます。あわせて、分析結果に基づいて、個 別の肌に合わせて処方されたサンプルがつくられます。 肌分析センターからアドバイスシートとサンプルを受け取ったアペック スアドバイザーがお客さまへお肌の状態とサンプルの使い方を説明。 そしてサンプルを1週間お試しいただいたのちに、ご満足いただければ 購入をおすすめします。その後、個肌対応した化粧品がお客さまのも とに届けられます。 88 このように、カウンセリングと分析技術・処方化技術・生産体制が最適 に組み合わさったモデルは、その二つの強みを持つポーラにしかでき ないモデルであり、アペックスがお客さまにとっての最上の化粧品にな り得るという自信の裏付けとなるものです。 アペックスの販売がスタートした当初、写真の分析から、アドバイス シートの作成、個肌対応のサンプル及び商品の製造、出荷にあたって のピッキングに至るまで、ひとつひとつ丁寧に、手作業で行われていま した。一人でも多くのお客さまに合った化粧品をお届けするための、い わば「多品種少量生産」と言える体制もまた、他社に真似できない革 新的な強みと言えます。 個肌対応化粧品の提供、画期的なモデルの構築を実現できたのは、 アペックスに関わった者たちが「お客さま一人ひとりに合った最上の化 粧品を届けたい」という想いを抱き続けたからに他なりません。 アペックスがもたらした画期的な個肌対応は、技術と販売が連携しな がら、つねに進化を続けています。技術面では、肌分析力の目覚しい 高度化が挙げられます。1989年当時、分析技術の中心であった角層 分析から、シワ進度分析、メラニン分析に展開。そして現在では、肌を 傷つけることなく肌の奥の基底層凹凸構造(肌幹フォルム [ポーラ造 語])や真皮まで分析が可能となっています。肌幹フォルムとは、肌の エイジングの兆しがわかるとされる新指標。ポーラ化成工業の肌分析 は、表面を見るだけで「今の肌」だけでなく「未来の肌」を予測できる段 階へと到達しています。 また、より緻密になった分析結果をもとにした、化粧品そのものの個肌 対応力も進化しています。現在では、約1,500万件の肌分析データの 研究から生まれた「256万通りのスキンケア」と「3,600通りのメーク」か ら、お客さまの10年後の美しい肌に必要なものが凝縮された商品とお 手入れを設計・提案できるようになっています。 一人ひとりのお肌の状態をとらえて、その科学的な分析結果をもとに、 最適な化粧品を厳選し、お客さまのもとへお届けする。理想の化粧品 のための完璧な仕組みともいえるアペックスは、ポーラレディのカウン セリング販売のレベルを向上させることにもつながりました。キャリアを スタートしたポーラレディは、まず「アドバイスシート」を用いたカウンセ リングの技術を学びます。それにより、科学的分析に基づいた客観的 かつ科学的で確度の高いカウンセリング技術を身につけ、お客さまに 満足いただけるアドバイザーとして成長することができます。 アペックスの核となる肌分析センターも、大きく進化しました。かつて は、多くの労力を割いて行われていた作業が、独自に開発したデジタ ル画像処理や顕微鏡撮影の自動化技術などによって効率化され、よ り多くの肌データ分析を行うことができるようになりました。データに基 づいて処方を選ぶ論理プログラムなどの技術も導入され、今では、肌 89 情報を受け取った翌日には分析結果とサンプルが発送できるように なっています。 このように、アペックスのモデルは、長年にわたって蓄積してきた肌分 析や化粧品処方のノウハウと最新技術、そして販売力という二つの強 みを支え、長期にわたって進化を続けることができるモデルとなってい るのです。 一人ひとりの美しくありたい、という気持ちに応える。それは、ポーラが 社会に対して果たす約束です。アペックスがもたらした革新は、その約 束を果たす上で、大きな実績をもたらし、ポーラの自信となりました。 健やかできれいな肌は、時代によって変化していきます。お客さまの 肌の状態も、季節や環境、生活によって変化し続けます。こうした変化 をとらえ、いつでも最良の商品を、最良のかたちでお客さまにお届けす るために、ポーラとポーラ化成工業は、ずっとお客さまの肌に寄り添い 続けてきました。 これまでも、そしてこれからも。科学的に裏付けされた商品とカウンセ リングで、創業の志を実現しつづけるために、ポーラとポーラ化成工業 は理想の化粧品とサービスを追求していきます。 90 2014年8月、オルビスは日本最大級の顧客満足度調査「JCSI」において通販業界で4年連続No1を獲得しました。名だたる ネット通販事業者を押さえて、「利用した際に感じる品質」や「品質と価格の納得感」など、さまざまな指標で高い評価を獲得 したオルビスのお客さま満足と、それを支える「誠実」と「進化」をご紹介します。 オルビスのコールセンターに寄せられるお客さまのご相談、お問い合 わせは、一日数百件、月間では約7,000件にのぼります。お問い合わ せの内容は、肌のトラブルに対する相談をはじめ、商品の原材料情報 の問合せや、返品交換の連絡、苦情など多岐にわたり、電話やメール に加え、WEBからもお問い合わせが寄せられます。 コールセンターでは、そうしたお客さまの声一つ一つをデータベース化 し、オペレーターが確実に対応しています。たとえば、限定商品が早期 に完売して購入できなかったお客さまから苦情が寄せられた場合、苦 情の内容は社内システムにより共有され、当該商品の再販が決まっ た折には、再販の情報を事前に案内するなどのフォローが行われま す。 こうしたきめ細かなお客さま対応の根底にあるのが、オルビスが創業 時から受け継いできた「誠実」という基本思想です。創業当時より「お 客さまの声は知恵の泉である。全社員閲覧すべし」という方針が掲げ られ、徹底されてきました。現在では、システムによってお客さまの声 をよりすばやく共有し、全社員が閲覧できるとともに、お客さま対応の 精度向上、サービスの改善に役立てられています。 「誠実」は、商品やサービスはもちろん、人や組織など、オルビスの事 業活動のすべての根底に流れる「DNA」といえます。 91 オルビスのオペレーターは、お客さまからのご注文を受け付けるだけ の存在ではありません。問合せやご相談など、さまざまなやりとりに柔 軟に応じながら、お客さまが楽しくお買い物いただけるよう努める役割 を担っています。サンプル商品の名前を忘れてしまった方からの問合 せには、すみやかにCRM(顧客関係管理)システムにアクセスし、お送 りしたサンプルの商品名を調べてお伝えし、購入意向をお伺いしま す。また、お客さまとの会話しだいでは、商品の購入理由を質問する など、より深いコミュニケーションをとるよう心がけます。 オルビスでは、オペレーターの対応に単に完璧なマナーばかりを求め ず、「お客さまが一番気持ちのいい対応」「お客さまのペースに合わせ ること」を重視しています。オルビスのオペレーターたちは、「寄り添う 力」「真意を聞き出す力」を磨きながら、電話の向こうのお客さまと誠実 に向き合い続けています。 こうしたコミュニケーションを心がけているのは、オルビスがお客さまか らの声を「知恵の泉」と捉え、オルビスの商品・サービスに活かすこと で、進化してきた歴史があるからです。 オルビスが事業をスタートした1984年当時、通信販売はそれほど一般 的ではなく、多くの方が安心して利用するサービスではありませんでし た。そこでオルビスは、「誠実であれ」という信念に基づき、お客さまに 安心して利用いただけるよう、「30日間返品交換可能」「配送・手数料 無料」を打ち出しました。お客さまから返品のご連絡をいただくと、理由 に関わらず返品・交換を受け付け、「商品のイメージが違った」というお 声をいただけば、オペレーターが「どんな点でイメージと違ったのか」を お尋ねし、お詫びした上で、お客さま都合による返品であっても、「返 送料金」はオルビスが負担しました。 さらに、化粧品を試用してから購入したいと思われるお客さまのご要 望に応えるため、通信販売でも、店舗販売のように気軽に試用いただ けるように、無料のサンプルを提供する「サンプル制度」も導入しまし た。 最近では、全国最短翌日配送、コンビニでの商品受取など、物流体制 を強化することで、お客さまの利便性を高めるための進化も遂げてい ます。 販売から対応、物流に至るサービスのあらゆる段階で、お客さま視点 を追求し、誠実さを貫いたことが、現在の高いお客さま満足度につな がっていると言えます。 92 また、オルビスは、商品を通じてもお客さまと誠実に向き合ってきまし た。肌へのやさしさや安全性を求めるお客さまの声に応えて、創業時 から「オイルカット(油分を一切使わない)」「無香料・無着色」をコンセ プトとした商品を展開。そして、多くの方がエコなライフスタイルを求め るようになる中で、環境配慮にもこだわってきました。そのシンボルと いえるものが「極限までシンプル化した包装」と「つめかえ用商品の展 開」です。豪華なパッケージが多かった化粧品をフィルム包装でお届 けすることは、オルビスにとって大きなチャレンジでしたが、「ゴミが少 ないからうれしい」、「中身がわかりやすい」というお客さまの声に後押 しされ、ほとんどの商品にフィルム包装を採用しました。「つめかえ用 商品」についても、販売を開始した1991年にはまだ珍しいものでした が、スキンケアにはじまり、メイク商品、栄養補助食品など幅広いアイ テムで展開しています。また、2014年以降は、さらなるエコ化のため に、一部商品でフィルムをなくすなど、フィルムレス化も進めています。 お客さま視点を追求し、変化を重ね、進化する――。 オルビスが行っ てきた様々なサービスは、お客さまに誠実に向き合い、お客さまの声 を資産として活かしてきた進化の結果です。ただ変わるだけではなく、 進化することで、さらなるお客さま満足を生み出し、オルビス自らを変 革していくことにつながっています。 お客さまと誠実に向き合うオルビスの進化は、お客さま対応の最前線 であるコールセンターのオペレーターたちの体制にも表れています。 コールセンターのフロアには「オルビスでよかったと思ってもらえるよう に、お客さまに寄り添った対応をします」などと手書きされた30枚ほど のカードが張り出されています。これは、「シスターチーム」と呼ばれる チームごとの目標が掲げられたものです。 オルビス独自の「シスター制度」では、業務経験、スキルの異なるオペ レーター3~4人からなるチーム(シスターチーム)を編成し、チームのメ ンバー同士がフォローしあいながら業務を行っています。チームごとに 毎月、目標を設定し、モニタリングやチームディスカッションを重ね、接 客品質の向上を図っています。また、もしも新人が不安や悩みを抱え ていたら、チーム内の先輩が相談に応じ、アドバイスするなどのコミュ ニケーションが取られます。こうした関係に支えられて、新人のオペ レーターでも、安心してお客さまと向き合うことができます。 シスター制度がもたらすのは、相互支援だけではありません。各メン バーが自分の目標とする先輩や上司の身近で働くことで、自身のス テップアップへのモチベーションを高め、さらにチーム同士が、互いに 目標を掲げて競い合うことにより、オルビスのコールセンターには常に 自分の成長と顧客満足の向上を目指すという活気が生み出されてい ます。 「シスター制度」もまた、お客さま視点を追求するオルビスにとっ て、多くのお客さまに対応するオペレーターたちを支え、最適で、働き やすい職場環境を生み出すための進化と言えます。 93 お客さまに支えられてきたオルビスにとって、愛用いただくお客さまに 対して感謝を伝え、つながりを感じていただくためのコミュニケーション も重要な課題です。オルビスは、ソーシャルメディアを通じたコミュニ ケーションにいち早く対応し、ツイッター、Facebook、LINEなど、多くの お客さまに対するチャネルを設けています。その一方で、これまでコー ルセンターを通じて培ってきたお客さま対応のスキルを活用し、お客さ まとのつながりを深めています。 「誠実」な対応はソーシャルメディアでも発揮されています。ツイッター では、オルビスなどの言葉を含むつぶやきを観測し、たとえばWEBサ イトから注文ができないといったつぶやきに対しては「ご迷惑をおかけ して申し訳ございません、よろしければ原因をお調べしますのでお知ら せくださいませ」とご連絡します。また「新製品がすごいので、買ってみ た」というつぶやきには、「ご購入ありがとうございます。気に入ってい ただけますように」とすかさず感謝のメッセージをお送りします。 オルビスのツイッターの公式アカウントのフォロワー数は、約4万2千人 (2015年3月現在)と2年間で4倍に増加しました。これは、お客さまがオ ルビスのコミュニケーションへ寄せる期待の表れでもあり、オルビスの ファンづくり、つながりを強める取り組みの結果でもあります。手段は 変化しても、お客さまの気持ちに誠実に向き合い、対応するオルビス のコミュニケーションの姿勢は揺らぐことなく、進化を続けています。 2014年からは、長く愛用いただいているお客さまに向けたサービスの 一環として、「ポイント制度」を導入しました。年間の購買金額に応じ て、ステージが上がるほどポイント還元率が上昇する仕組みです。長く ご使用いただいたお客さまに対して、より大きな還元を行うことで、こ れまでの「価格」でのつながりから「価値」でのつながりへと変化させ、 購買力を高めると同時に、お客さまの継続率、ロイヤリティを高めてい ただくという「お客さまとの"つながり"の変革」を目的としています。 このように、お客さま対応、サービスの仕組みの面から様々な取り組 みを行い、オルビスとのつながりを深めていただくためのコミュニケー ションの手法、内容を進化させています。 94 2015年、オルビスはブランドとして社会に対して何を約束するのかを改 めて明確にし、ブランドの価値を際立たせるために、新しいコーポレー ト・メッセージ「変わる人は、美しい。」を策定しました。そこには理想に 向かうための進化を続けるという決意が込められています。常にお客 さま視点を追い求め、お客さまのために事業を進化させてきたオルビ スは、これからも誠実のDNAを受け継ぎながら、より満足いただける商 品・サービスを提供する企業、ブランドを目指していきます。 95
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