海藻を基質に利用した発酵法による 水素生産の可能性について

水素エネノレギーシステム Vo
.
1
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研究論文
海藻を基質に利用した発酵法による
水素生産の可能性について
谷生重晴、菅沼剛
横浜国立大学
2
4
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8
5
0
1横浜市保土ケ谷区常盤台 7
9
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yofHydrogenProduction企omSeaweedsbyFermentation
ShigeharuTANISHOandTakesiSUGANUMA
YokohamaNationalU
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Hodogaya-ku,
Yokohama240・8501
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s
などが考えられている。メタン発酵によるメタンの発生
1.緒言
やゴミのJ焼却熱を利用した温水の供給などを除いて、こ
現在地球上には約 2兆トンのバイオマスがあり、さ
れらの利用法はまだ実用化されていないが、発酵法によ
らに毎年約2000
億トンずつ生産されているロ毎年生産
る水素化は非常に実用に近いところにある変換方法の一
されるバイオマスは全世界の年間エネルギー消費量の約
つである。
1
0
倍に相当し、バイオマスは、太陽光をエネルギー源
バイオマスは約2
1
3
が陸上で、約 1
1
3が水中とくに海水
として空気h 水、土墳の作用で生成されることから、無
1
]
0日本は四面を海に囲ま才1
ヘ
中で毎年生産されている [
限に利用可能なクリーンなエネルギーと言われている。
水中バイオマスの生産に非常に適した環境にある口また、
現在のところ、バイオマスのエネルギー利用法として
古くから海藻の利用が盛んで、紅藻類から作る干しノリ
は海苔として、褐藻類のコンブ、ワカメは調日料斗、食用
は
、
・バイオマスに含まれる石油成分を抽出する方法
として養殖、採取されており、よく研究されている海産
-海藻や農林廃棄物などをメタン発酵やアルコール発
作物類の一つでもある。これら海藻のうち、マコンブ、
オニコンブなどは非常に生産性が高く、さらに、水深
酵の基質に利用して燃料とする方法
5
白nから低潮線の聞で生育するので、沿岸域でエネル
・人間や動物の糞やし尿をメタン発酵する方法
-光合成で水素発生を発生する藻類や菌類から水素を
採る方法
・発酵法で炭水化物を水素に変換する方法
ギーバイオマス資源として栽培生産する可能性は非常に
高いと言える。
コンブ顎は図
1に示すようにマンニトールを主成分
.葉緑体で太陽電池をつくる方法
とし、アルギン酸をほぼ同量含んでいることカミ矢口ちれて
・高温高圧でバイオマスをガス化する方法
いる問。筆者らが発酵水素発生に利用している
1999年 4月 8日受理
- 19-
水素エネルギーシステム Vol.24,
NO.l
研究論文
品 抑w
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白ra
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sは、マンニトールを基質に使
用して水素発生を行うだけでなく、グルコースを基質に
-乳酸
CH
+NADH+H+
3COCOOH
したときの水素収率が1.0[
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H
/
m
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]で
、
あ
るのに対し、マンニトールでは1.6と効率よく水素を発
3
]。また、水素発生速度も 36m
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'
生する [
CH
+NAD+
3CHOHCOOH
(
2
)
-酢酸
CH
+H20+NAD+
3COCOOH
と非常に速く [
4
]、コンブ類のエネルギー利用には発酵
→
CH
+CO2+NADH+H+(
3
)
3COOH
l
水素発生法は最も適した変掛去のーっと考えられる。
→
-エタノール
CH
+NADH十 日 +
3COCOOH
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1%
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1%
→
CH
0H+2C02+NAD+
3CH
2
(
4
)
このように、生物は嫌支{状態下で NADH
を再酸化する
a
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7%
ために代謝産物を生成しているが、培地 pHが低くな
79%
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ると、バクテリアは細胞の近傍の pHを生育に適切な
8%
状態に保つために、一部のNADHを次のように反応さ
図
園 田 図
せて水素を発生すると言われている恒]。
ロ 悶
-水素
NADH+H+→ NAD++2H++ 2e
これまで、 E a
e
r
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g
e
n
e
sの水素発生では、塩化ナト
2H++2e
→ H2
NADH+H+ → NAD++ H
2
リウムを含まない培地で実験が行われてきたカミ海藻を
ゆゆ一切
図1 コンブの構成成分組成
大量に使用するなら、塩水培地で水素発生を行うことが
コストを抑えた工業的水素生産のために必要になると考
3
. 実験方法
素発生
えられる。科医では、種々の塩濃度下での発酌k
をしらベ、海水環境下での水素生産の可能性を検討した
o
b
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加r
実 験 に 使 用 し た バ ク テ リ ア は 、 品2担r
a
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.E
.82005である [
4
]。表 1に示した前培養
ので報告する。
液組成で準備した滅菌液に菌を植え付けた後、 3
8Cの
0
2
. 発酵水素発生
恒温槽で樹半しながら 1
7時間菌体を培養した。この前
培養菌液 1ml
を表 1に示した本培養食塩液 3
5mlに加
発酵により水素を発生する微生物は、グルコースなど
え、マグネティックスターラーで開半しながら一定時間
の糖類を代謝分解することにより、水素と有機酸を生成
毎に水素の発生量を測定したロ培養前と培者麦の培地は、
する。代表的な糖の代謝経路としては、 E M(
E
mbden-
液体クロマトグラフ(信和化工鰍 ul
廿o
nPS
・
80
町で分
Meyerhoh)経路、 ED (
E
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D
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的経路、 PP
析し、代謝産物濃度を測定した。菌体重量はH
及光光度計
(
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e
)経路の 3つの経路があり、生物に
表 1 培養液蹴立
τ'
P(
A
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e官 1
とってのエネルギー源である A
p
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)を生産している。品2白w
o
b
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r科の微生物
催路で、グルコー
は、酸素が無い嫌気状態下で、は主に E1
前培養
成分
G
l
u
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e
5
]、水素発生に関与する NADH(N
i
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出 1・
スを分解し [
Manni
旬l
amideAdenineD
i
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ロn
)とピルビン
Pep
加n
e
酸
、 ATP
を次のように2
モルづっ生成する。
C6H1206+2N
AD++2AD
P+2
P
i
→
2CH
+ 剖ADH+却 + +2A
TP (
1
)
3COCOOH
ピルビン酸はさらに反応して、次の例のように最終の代
謝産物に変イじする。
- 20一
オヰ音養
g
/
l]
[
g
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l1 [
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5
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Mg
S04
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HP0
1
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2
P0
6
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1
.5
KH
2 4
官一部の実験では7
.
5
g
/lの濃度で、行った。
水素エネノレギーシステム Vo
.
1
2
4,
N
O
.
1
研究論文
を用いて測定した。また、培養途中の菌体濃度、代謝産
続していた。培養終了後のマンニトールの消費量を比較
淀は、 21の培謝習で1.81の培養液を用い
物濃度の担i
すると、初めに8
2
.
3mmo
l/lあったマンニトールが、塩
て行ったロ
濃度 1%では20
時間ですべて消費されたが、 3%では 45
時間後でも 6
7
.
2mmolll
が消費されただけで、あった D 図
4
. 実験結果
中の期皐は次式で表わされる修正ロジスティック曲線で、
問、実視!日直と近似曲線値とは非常によく一致しており、
図 2は各食塩濃度における水素発生量の経時変イむの
図を示したものである。この図から、食塩濃度が高くな
るにつh-水素発生量及びグラフの傾きとして表れる水
素発生速度が悪くなっていくことがわかるロ食塩を加え
水素発生の安繍時間、水素発生速度、水素発生量の推定
には利用できる。
作 品 即 日 却 {-m
甲[品問 xe/
品 1axX(L-t
)
+1
)
]
}(
8
)
ていないグルコース培地からは培養開焔麦約 2時間で水
V
:水素発生量 [mmolJ
素を発生したが、食塩を加えて培養を行うとNaCl
濃度
B
ηax:最大水素発生量 [mmol]
1%では約 3時間後、 2%では約 4時間後、 3%では約 6
e:
2
.
7
1
8
2
8
時間麦に水素発生が始まり、水素発生までに時間を要し
Rmax:最大水素発生速度
た口また、食塩濃度 1%で、は水素発生が20
時間で終了し
L
:
水素発生までに要する時間[h
l
たカミ 2%
、3%
では30
時間結晶してもまだ水素発生を持
t
:培 養 時 間 阿
[mmo
1
/
h
]
1
4
0
表2に示すように、食塩濃度が濃くなると、水素発生
言120
。
量、発生速度、発生までの時間、発生終了時間、収本
マンニトール消費量のどの比較要素も悪くなったが、食
i100
塩濃度 1%と3%について、水素発生終了時の菌体濃度を
ロ
品 80
消費マンニトール量当たりで比較すると、それぞれ 14.&
0
晶
.
260
。
1
5
.
9[mg
・
世y c
e
l
l
/
mmol
・
manni
加l
Jでほとんど変わらな
匂『
S40
かった。このことから、 NaClはマンニトールの取り込
占 20
水素発生速度なども遅くなったと考えられる。
みに影響を与え、その結果、菌の増殖速度カヨ屋くなり、
;
:
j
これらの結果から、海水を直接培養液に利用するこ
O
O
とは生産性の観点から適当ではないが、収穫した昆席に
1
01
5 20 25 3
0 35 40 4
5
C
u
l
t
i
v
a
t
i
o
n[h]
付着している海水が混ざる程度で、あれば、水素発生に大
NaCl1% mNaCl2%.
.NaCl3%• NaCl0%
きな影響を与えないと言えるであろう。
4・
図 2 各食塩濃度下での水素発生状況
表2 水素発生特性に及ぼすNaCl
濃度の影響
NaCI
近似曲線による予測値
実
担
、
引
直
濃度
水素発生量
水素発生速度
収率
[
%
]
[
m
m
o
l
l
l
]
・
l
(h
)
]
[
m
m
o
l
l
[
m
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l
l
m
o
l
]
[
m
m
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l
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l
]
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1
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8
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3
6
7
3
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5
1
.0
基質消費量 菌体濃度 水素発生量 水素発生速度 始発時間
6
7
- 21 ー
[
g
I
日
1
.2
0
1
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7
収率
[mmo
l
/
l
]
[mmo
]
j
(
l.
h
)
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[
h
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[
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.3
3
9
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1
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7
水素エネルギーシステム V
o
.
1
2
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o
.
l
研究論文
100
0S+NADH+CS
H1
0S+NAD+→C日H1
r
r(
,
句
4
2
CeH12
0s+2N
AD+→
2CH
+2H (
1
0
)
3COCOOH+2NADH
十
06 +3NAD+→
C6H1
4
2CH
+3NADH+3H (
1
1
)
3COCOOH
十
図3に示す代謝産物濃度から、式(り 切などに示す
20
。
代謝同志式を使用すれば、マンニトールの分骨平により生
成したピルビン酸量とNADH
量、代謝産物生成に使用
O
1
0
戸
リ
1
5
20
C
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h]
M
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i
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l
一
対
←
-Acetate
一哲ト百
されたNADH
量が分かるので、余ったNADHは全て水
素発生に使われたとして、計算で求めた水素量と実演1
'
で
a
c
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.
{
}
.
.
.
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~験- B
u
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e
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o
lーや品目 E
t
h
a
n
o
l
得た水素量とを比較することで、この式が正しいかどう
はその結果を示している。計算によ
か判定できる。図 5
る水素量と実測の水素量の経時変化が非常によく合って
図3 r
、
J
a
C
l
存在下でのマンニトールの代謝
いることから、マンニトールの分解反応には、 3mol
の
NADH
が関与していることカ羽万らかになった。
1
0
0
日
1
1
H
I
I
0
1
I
F
F
C
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C
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。
ト
E
@ 岨
回
図4 D・グルコース、 D・マンノース、 D・マンニトールの
2
0
構造式
O
、 1%
塩濃度下での培養におげる液体クロマト
図3は
10
5
O
グラフで分析した培地中のマンニトールと代謝産物の濃
1
5
20
25
C
u
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n[h]
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dH2-彊ー m
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n
i
t
o
l
度を示したものである。この図から分かるように、主な
0
-m
easuredH2 •
代謝産物は字国愛、酢酸、コハク酸、エタノール、ブタン
ジオールであった。図4
はマンニトール、 D
-グルコース、
図5 マンニトール代謝の計算による水素発生量と
D-マンノースの構造式を示している。グルコースの解
実視J1i直との比較
1
糖系における代謝反応では、 2モルのピルビン酸と 2モ
ルのNADH
が生成される。ピルビン酸とNADHは、代
謝産物生成過程で更に反応し、手Ij変など種々の代謝産物
が生成するが、余ったNADHは水素を発生することで
NA
l
Yに再酸イじされる。
のタンパク質
トンを 5g/l加えていた。コンブには約 1%
が含まれているが、コンブのタンパク質は Ea臼η~enθS
の増殖には適さず、ペプトンを加えない培地では水素発
とグールコースやマンノースよ
マンニトールはCSH14
0S
りも水素原子が 2つ多い分子式で、表わされるため、解
糖系における分解の式は次式のようになるのではないか
と考えられる。
表1に示したように、本培養液には窒素源としてペプ
e
m
g
e
n
e
s
生が見られなかったためである。しかし、 E a
の塩水下での水素由主では窒素源がどれくちい必要であ
るか、あるいは窒素源の多少が水素発生に影響するのか
どうかについてはまだ明らかではない口
- 22一
水素エネルギ}システム Vo
.
12
4,
N
O
.
l
研究論文
し取った誹縄本培養漸H
成のマンニトールの代わりに
表3 NaC
l1%下での水素発生特性におよぼす
加えて、 NaCl濃度 1%
で、実験を行ったロその水素発生
べプトン濃度の効果
ペプトン濃度
最大水素発生速度
I
g
l
l]
0
.
7
2
.
0
5
.
0
6
.
7
1
3
.
3
2
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.
0
2
6
.
7
[
mmo
l
J
(
lh
)]
0
.
7
2
.
8
9
.
2
8
.5
7
.
5
7
.
6
7
.
5
水素収率
状況を図7に示した。この時、液体クロマトグラフで測
Imo
l
J
mo11
0
.
2
0
.
5
1
.3
1
.
2
1
.2
1
.3
1
.
4
定した初期マンニトール濃度は 1
2
.
2m
m
o
l
l
l(
2
.
2
2
g
l
l
)
で、マンニトール量はかなり少なかった。しかし、水素
発生速度は 7
.9mmoll
c
u
l
t
u
r
eh
.1と、マンニトール
.
2mmoll
・c
u
l
t
u
r
eh
.1より遅い
を用いたときの最大値 9
けれども、高濃度ペプトンの時と比べるならほぼ同じ速
.4を示し、マンニトー
さで、あった。また、水素収率は 1
ルを用いた時と同じであった o したがって、コンブには、
そこで、食塩濃度 1%におけるべブトン濃度と水素発
マンニトール以外にアルギン酸、灰分、蛋白質などが含
生活性の閥系を調べた結果を一覧に示したのが表3であ
まれているカミマンニトール以外の成分が水素発生の収
る。水素収率は、培地のマンニトールがすべて使用され
本発生速度に与える影響は少ないと思われる。ただ、
たと仮定して計算した値であるから必ずしも正確ではな
実験後、培謝普底部にアルギン酸と思われる粕性のある
いが、ペプトンが少なすぎると水素発生量が少ないこと
物質が沈澱しており、樹宇動力などへの影響が今後問題
を明瞭に表しているロ一方、最大水素発生速度はペプト
になると思われる口
ン濃度が 5
.
0g
l
lで最大値を示し、水素収率が 5
.0
g
1
l
以
上でほぼ一定の傾向を示すのとは非常に異なった結果を
得た。この原因についてはまだ不明なところが多く、今
18
可
0
1
.4
16
.-;
i
12g
ロ 12
1
.0
14
Q)
後の成果を待つ必要があるロ
るか調べた結果を表したものであるロ窒素源が多くなる
にしたがって増殖量も多くなるが、 1
0g
,江以上ではほぼ
E
コ
.-;
6
43
匂4
O
4
0
0
0
.
2 戸
?
同じ増殖量であると言える。表3とこの図から、窒素踊
,
;
g
0
6
3
E
'
+
<
0
0
8
己
0
.
8
210
図6はペプトン量が菌体の増殖量にどのように影響す
0
'
"
"
'
0
0
は 5g
l
l以上あれば充分であることがわかった D
C
u
l
t
i
v
a
t
i
o
n[h1
図7 NaC
l1%濃度下で、コンブを基質に使用した時の
水素発生状況
ご 40
0
,
.
.
•
日
.
同
問
S30
5
. 考察
C
i
•
S20
この実験からコンブが非常によい水素発生を示すこ
とが分かったロそこで、栽培バイオマスからどれほどの
戸
国
E
810
電気tエネルギーカ鴇られるか、現在の耕音昆高の収穫状
ω
況を基に試算を試みた。生昆布の栽培収穫量は 1
4
.
5
U
O
30
O
kg/m2、マンニトールの含有量は湿重量の 8%と報告さ
れている問。水素の高位発熱量を 6
8
.
3k
c
a
l
J
mol
、水素
Concentrationofpeptone[
g
/
l
]
l1%下で、のペブ トン潤支と菌体濃度との関系
図6 NaC
o
エネルギーを電気tエネルギーに刻集する燃料電也の総合
2
あたりか
効率を 60%とすると、コンブ栽培面積 1km
コンブを基質に使用する場合には窒素源を加えなけ
ら穫れるコンブ量、マンニトール量、発生水素量、総合
ればならないことがわかったので、市販の乾燥昆布2
9g
発電力量は表4のように計算される。同様の計算をサト
をミキサーで粉砕し、水切りゴミ袋で未粉砕コンブを漉
ウキピに含まれるスクロースを基質とする場合について
も行い表4に示した。
- 23-
水素エネルギーシステム Vo
.
12
4,
N
o
.
I
研究論文
表4 コンブとサトウキビを基質の供給源としたときの
3. グルコースの解糖系では 2molのNADH
が関与し
水素生産量とエネルギー生産量の比較
K
e
l
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u
g
a
r
c
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n
e
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i
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i
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l
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2
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l
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2
2
9
,
0
6
1
Power
3
0
4
,
6
0
3
度であれば、水素発生に大きな影響を与えない。
ているのに比べ、マンニトールの分解反応では 3
U
n
i
t
1
6
9
合[旬n
/h
a
]
2
1
6,
9
0
0[
加n/km
]
2,
5
3
5[
t
o
n
/
l
剖1
守
molのNADHが関与し、そのために水素収率が高
くなる。
4
. コンブを基質に使用するときには窒素源を加えな
ければならないが、窒素源は 5g
/l以上あれば充分
3
4
1
5
,
0
8
8[
N
m 伽叶
2
6
7
1,
2
0
8[
k
W.hlkm
]
である。
5
. コンブに含まれるマンニトール以外の成分が水素
*
“RenewableEnerg
y
"
,e
d
.Johanssone
ta
1,
発生の収率、発生速度に与える影響は少ないが、
E
a
r
t
h
s
c
a
nP
u
b
.Lt
d
.
,1
9
9
3,
p
.
8
4
7
.
粉砕イ麦アルギン酸を除去しなければ、アルギン酸
による粘性の増加が携持動力などに影響を与える
2
1km
の耕音面積から得られる電気tエネルギー量はあ
ことが示唆された。
まり多くなく、平均的家庭 1
∞軒程度を賄える量にしか
ならないことがわかった。これは基質からの水素エネル
ギーへの変換効率が悪いためで、今後、
α'08的 ;dium
h
u
t
y
r
i
c
u
mのような水素収率の高いノ t
クテリアを使用
6
.E a
e
r
o
g
l
.
羽田よりさらに収率の高いバクテリアを
発見または改良する必要が示唆されたロ
7
.代謝廃液をメタン発酵でさらに利用し、今一段の
エネルギー回収を図る必要性が示された。
するか、このバクテリアよりさらに収率の高いバクテリ
アを発見または改良する必要があるだろう[問。さらに、
有樹搬を多く含む代謝廃液をメタン発酵に利用して今一
7
. 参考文献
段のエネルギー回収を図る必要があるロ
同時に、バイオマスには太陽エネルギーが高々 5%変
1
) 動k
幸
丸
, “自然エネルギー利用学パワー社, p
p
.
1
2,
25,
123(
1
9
9
3
)
換固定されただけであり、サトウキピで約 2%と見積も
られることから、コンブのアルギン酸、サトウキピのパ
,Y.:“ S
t
u
d
i
e
so
ft
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e growth o
ff
o
陀 e
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2
) Sanbonsuga
目白" ,
B
u
l
l
.H
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k
a
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d
o
.Reg
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i
s
h
.Res
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.,49,
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ガスを有効に利用して総合的な効率の向上を図る必要が
1
0
1
3(
1
9
8
4
)
.
あるだろう。アルギン酸は非水溶性で、粘度を増加させ
たり乳イ七組織を安定させる作用を持つため、フィルム、
o
b
a
c
t
e
ra
e
r
o
g
e
n
e
sの発
3
) 谷生重晴ら:発酵工学会誌,官n胎 r
酌k
素発生と利用基質について"67,
2
9
3
4,
(
1
9
8
9
)
ゴム、リノリューム、化粧品、カーワックス、塗料など
の製造に使われており、また、アルギン酸レーヨンは、
.,andY
.I
s
h
i
w
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t
a
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n
t
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.HydrogenEnergy
,
4
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h
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手術糸その他の医療用として用いられるなど付加価値は
t
e
r
o
b
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ra
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g
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s
",
19,
807
81
2(
1
9
9
4
)
.
b
a
c
t
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r
i
u
mEn
高い。
5
) 日本生他学会編:生他学データプ、ツク I
I
,東京化学同人,
p.
87
8(
1
9
8
1
)
6冊結論
.,e
ta
l
.
:B
i
o
c
h
i
m
.B
i
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p
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.Acta
“
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e
p
e
n
d
i
n
g on
以上の結果から、コンブを基質に用いた水素生産に関し
山ち p
H",
973,
1
6(
1
9
8
9
)
c
u
l
t
て次のようなことが明らかになった。
1
. NaCI
濃度が濃くなると、水素発生量、水素発生速
,J
.
J
.,e
ta
l
.
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a
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.Res
.,I引 1
ei
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l
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ni
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i
g
h
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度、水素発生までの時間、水素発生終了時問、水
s
o
l
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l
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i
g
e
s
t
i
o
n
",
3
1,
1
5
1
8
・1
524(
1
9
9
η
が
素収率、マンニトール消費量のどの要素も NaCI
8
) Tanisho, S
.
:
無い培地での水素発生より悪くなる。
2
. 海水を直接培養液に利用することは適当ではない
が、収穫した昆布に付着している海水が混ざる程
- 24一
官
y
d
r
勺g
e
n p
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o
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",i
nB
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2
7
3279,
e
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o
r
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PlenumP
r
e
s
s(
1
9
9
8
)
聞