社会工学類都市計画主専攻卒業研究 2011 年度最終発表会 2012/1/26 大学キャンパスにおける電力消費の構成と節電可能性 都市空間解析研究室 B4 200811326 崎野 諒太 指導教員 鈴木 勉 1. 研究の背景と目的 近年,地球規模の環境問題が世界共通の課題として提起さ れており,特に地球温暖化問題の大きな要因の一つであり,二 酸化炭素の排出については地球全体で取り組まなければなら ない急務課題である. 日本では 1970 年代の二度の石油危機の結果,1979 年「エ ネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)を制定し, 1997 年に京都で開かれた「気候変動防止枠組条約の第三回 締結国会議(COP3)」(京都議定書)を契機に,1999 年には 「地球温暖化対策推進法」,2001 年には「循環型社会形成推 進基本法」を制定,第二次環境基本計画閣議決定,2008 年に は京都議定書で採択された6種類の温室効果ガスの 1990 年 比 6%削減する 4 年間の約束期間が開始されるなど環境問題 解決に対する取り組みが強化されている. また,省エネルギー対策強化の一環として 2003 年 4 月 1 日 に「改正省エネルギー法」が施行され,エネルギー中長期計画 の作成及び提出,エネルギー管理士の参画が義務付けられて いる.筑波大学においても同法の対象となっており,省エネ対 策の実施が求められている. 大学は知の拠点として優れた人材の育成や独創的・先端的 な研究成果の創出を通じ,社会に貢献し,国民の期待に応え るとともに,深刻化するエネルギー問題や地球温暖化の問題 においても社会をリードする先導的な役割を担って,教育・研 究を進める必要がある.(10)にあるように大学の社会的使命は 大きく,社会的にモデルとなるような省エネ対策を取る必要が ある. 筑波大学の省エネ対策の多くは設備面に向けての取り組み である.学生や職員に向けた取り組みは啓発活動のみとなっ ており,行動に関する対策はなされていない.筑波大学は学生 数 16,797 人(21)であり,学生一人一人が省エネ対策を行えば 全学で更に大量の電力消費を減らし大学にも環境にも良い影 響与えることができる.そこで,本研究は筑波キャンパス全体と 研究室におけるマクロとミクロの電力消費の構成を把握するこ とによって,最も効果のある学生に対する省エネ対策の提案を 行い,電力削減効果の試算により,全学における節電可能性 を明らかにすることを目的とする. 筑波キャンパスの 電力消費構成把握 研究室の 電力消費構成把握 建物別電力消費量の把握 電力消費行動調査 電力消費量構成把握調査 電力消費量と 電力消費機器の関係の分析 研究室における 節電可能性 大学における節電可能性 図.1 研究フロー 2. 筑波大学の現状取り組み 2.1. 削減計画と体制 筑波大学では全学を対象とした温室効果ガス排出抑制等の 対策として 2007 年 9 月に「地球温暖化対策に関する計画」策 定委員会及び同策定 WG を設置し,温室効果ガス削減対策 の検討を開始し,2008 年 3 月に「筑波大学における温室効果 ガス排出抑制等実施計画」と「削減計画」を策定した. その計画は,電気,都市ガス,A 重油の消費量を二酸化炭 素排出量に換算し,平成 20 年度を 100%として二酸化炭素排 出原単位(=二酸化炭素排出量/建物延べ床面積)を毎年少 なくとも 2%削減するものであり,現在,この目標を達成し続け ている. 2008 年 5 月にはこの実施計画に基づき「地球温暖化対策に 関する計画」策定委員会を発展的に改組再編し,「温室効果 ガス削減対策推進委員会」を設置し,2010 年度には,本学構 成員が一体となり地域にある関係機関と連携した削減活動を するため再度改編し,委員会名も「温室効果ガス削減対策委 員会」とした. エネルギー管理体制についてはエネルギーの使用の合理 化に関する法律に対応するため,エネルギー管理統括者およ びエネルギー管理企画推進者を新たに設けた.また,省エネ 担当推進委員を筑波キャンパス以外の 18 の組織に新たに配 置し,管理体制を全学に拡大している. 2.2. 具体的な省エネ対策 筑波大学による省エネ対策は設備面への対策が多く学生に 対する対策はほとんどないという状況である.以下に具体的な 省エネ対策を載せる. 表 1 筑波大学省エネ対策(11) 照明 変圧器 水回り 送風機 空調 啓発活動 室内:一般型→Hf照明器具 外灯:水銀灯→エバーライト→LED 便所・廊下・階段等共用部:人感センサー制御 変圧器の更新:一般型→トップランナー変圧器 便所のフラッシュバルブを節水型に取り替え 高温水配管のバルブ等の断熱による放熱防止 手洗い水栓をセンサー式自動水栓に取り替え 運転時間短縮 共同溝吸気ファン:夜間・休日停止,10分運転/時 ファン等の動力伝達部の省エネベルトに取り替え 空調機の更新:水冷パッケージ→ヒートポンプ式 冷温水温度設定の変更 温水温度60℃→50℃ 冷水温度7℃→9℃ 時間の短縮 朝8:30→9:00 温度設定:暖房18℃ 冷房28℃ 病院地区:効率の良いターボ冷房機による 夜間・昼間期のベース負荷運転 筑波大学HPに月ごとの二酸化炭素排出量実績を掲載 省エネポスター (照明のこまめな消灯,昼休みの事務室照明一斉消灯, パソコン・プリンターの省エネモード設定) 3. 東日本大震災による電力不足と対応 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災により,東京電力 福島第一原発が停止するなど日本全国で電力不足となった. そのため,電力の需給バランスの悪化が懸念される東京電力と 東北電力の管内において,事業者と家庭において 15%の節電 義務を国が要請した.以下に各組織の取り組みについてまと める.ほぼ全ての企業や大学で蛍光灯の間引き,空調の抑制, エレベーターの一部停止,クールビズの早期実施,洗浄水保 温の使用停止,大規模イベントの平日以外での開催など,各 企業,各大学で独自の節電対策を行い,政府の要請する節電 義務 15%削減に向け最大限の努力が行われた. 3.1. 東日本大震災後の各企業の対応 表 2 各企業独自の節電対策 東芝 NTT ドコモ キャノン コカコーラ 昼間から夜間への生産シフト,秋以降の休 日を夏に振り替え,夏期に 2~3 週間の長期 休暇を設定(12) 7 月から 9 月の 3 ヶ月間,東京電力管内で 勤務するグループ社員の休日を土・日曜日 から月・火曜に変更(13) サマータイム導入(14) 東京電力管内の自動販売機約 25 万台の冷 却運転を午前 10 時から午後 9 時までの時間 帯に輪番で停止(15) 3.2. 東日本大震災後の各大学の対応 表 3 は各大学の東日本大震災後の対応について示したもの である.どこの大学も基本的には東日本大震災の特設ページ があり,節電の協力を呼び掛けている大学が多いが,大学でど のような節電対策を行っていくかといった具体的な対策を公表 している大学は少ないことがわかった.また,15%の削減以上 の目標を立てて節電に取り組んでいた大学は東京大学と筑波 大学のみであった.このことから,筑波大学は節電に対して非 常に積極的に取り組んでいることが伺える. 4. 筑波大学電力使用量の構成把握 4.1. 月別比較 図 3 は2008年から2011年9月までの筑波キャンパスの電 力消費量である.傾向として,7・8月と1月の時期に電力消費 量は大きくなる.それは空調の利用が大きく関係していると考 えることができる.また,2011年に関して,3月11日に起こった 東日本大震災による影響で3月からの電力消費量が大きく減 少した.2011 年の 7 月から 9 月にかけて電力消費量は増加し たものの,国の 15%の節電義務の要請を達成すべく,例年に 比べ大幅な電力消費量を削減した.10 月と 11 月には空調の 利用がなくなり,電力消費量は例年通り減少したが,12 月にな ると空調などの暖房器具の利用が増え例年と変わらない電力 消費量になった.これは,学生や教職員の節電に対する意識 が低くなってきていることも原因として考えられる. 百万kWh 12 10 8 6 4 2 0 1月 筑波大学 東京大学 京都大学 東北大学 九州大学 北海道大学 大阪大学 名古屋大学 神戸大学 東京工業大学 一橋大学 千葉大学 横浜国立大学 早稲田大学 慶應義塾大学 明治大学 立教大学 成蹊大学 青山学院大学 帝京大学 東日本大震災特 設ページの有無 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × 大学で取り組む 節電対策の公表 ○ ○ ○ × × × × × ○ × × × × × × × ○ × ○ × 節電の 協力呼びかけ ○ ○ ○ × × × × × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ × ○ × 3.3. 筑波大学の震災後の具体的な対応 筑波キャンパスにおいては削減率 25%を目標に節電に取り 組み,法令に基づく電気の使用制限として措置される 15%削 減を確実に実現することとすると公表.期間は 6 月下旬から 9 月上旬の平日 9:00~20:00 とする.(20) 具体的取り組みは以下の通り. 表 4 筑波大学震災後の節電対応策 照明 冷蔵庫 コピー機 エレベーター 天井灯は1/2に間引き,昼間は消灯 稼働台数を1/2にする 稼働台数を1/2にする 間引き運転を行う 階段利用促進を促す 見える化 電力情報システムTEMSの導入 (電力管理地区毎の1時間単位の電力使用状況を web上にモニタリングするシステム) 緑のカーテン 図書館,2A棟に設置 省エネうちわ 各支援室で省エネ(節電)喚起うちわの配布 3月 4月 2008年 表 3 東日本大震災後の各大学の対応について 大学名 2月 5月 6月 7月 2009年 8月 9月 10月 11月 12月 2010年 2011年 図 2 筑波大学月別電力消費量 4.2. 最大/最小電力 図 4 は平成 23 年と平成 22 年の 3 月 1 日から 10 月 31 日ま での筑波キャンパスでの 1 時間単位で計量される電力量のそ の日の最大値である最大電力とその逆の最小電力を表したも のである。3 月 11 日の東日本大震災から特に 7 月から 9 月に かけて、前述した(3.2.1.筑波大学の対応より)筑波大学の目標 としている削減率 25%の 17145kw に最大電力が限りなく近づ いている様子がうかがえる。また、最大電力は平日に高くなり、 休日に低くなる。筑波大学は 7 月 5 日から夏休みに入っており、 最大電力、最小電力が変わっていない点から授業の有無で大 学の電力量への影響は少ないということがわかる.問題は研究 施設,支援室など大学で常に動いているものや,夏休み中は 研究室の利用が増え、学生個人の判断で行動できるため,冷 房の設定温度の管理など全体として統制することができない状 況であり,学生の行動も大きく電力消費に影響しているのでは ないかと考えられる。 筑波大学目標の電力を超えた 9 月の中旬には二学期の授 業が開始した 9 月 12 日からの一週間であり,気温が高く教室 での空調利用が増え,電力消費が昼間に集中したことが要因 として挙げられる.また,10 月 15 日・16 日は全学停電が行われ たため電力消費量が大幅に減少している.12 月になるにつれ 千kW て,最大電力は例年どおりに近づいていき,学生や教職員の 25 節電に対する意識が低下していることが考えられる. 千kW 東電契約電力 25 20 20 筑波大学削減目標 15 15 10 10 55 0 3 0 3月 9月 44月 55月 H23最大電力[kw] 66月 77月 8 8月 11月 10月 H23最小電力[kw] 9 9月 10 10月 11 11月 12 12月 12月 H22最大電力[kw] H22最小電力[kw] 図 3 筑波大学最大/最小電力 4.3. エリア別電力消費量 筑波大学では 1 つの電気室から数棟の建物に送電される システムであり,図 5 のように筑波キャンパスでは北地区,中地 区,南地区,西地区,春日地区に分けられている.最も電力消 費量の多かった 2011 年 9 月の地区ごとの総電力消費量を比 較すると中地区 54%,西地区 17%,南地区 24%,北地区 3%, 春日地区 2%という結果になり,中地区の割合が筑波キャンパ スの半分以上を占めていることがわかった.2010 年度もこの内 訳はほとんど変わらず,震災の影響でどこの地区も平均的に 電力消費量を削減していることがわかる. BBL 2% 講義棟 30% 総合研究棟 B 34% 理科系修士棟 11% 工学系学 系棟 23% 図 8 3 学電力消費量棟別構成 万 kWh 4.5 中地区における機器数と電力消費量の関係 中地区にある棟の電力消費量とその棟にある電力消費機器 (冷房,サーバ,デスクトップ PC,ノート PC,プリンター,照明, 冷蔵庫,実験機器)の台数をもとに推定を行う. 回帰分析の結果は表 5 である.決定係数の値が高くあては まりが良いことが分かり,電力消費量と機器の台数は密接に関 係があることがわかる.また,中地区においては冷房とサーバ の影響が大きいことがわかる.しかし,ノート PC の回帰係数が 負の値になっているため,機器の台数だけでは電力消費量を 表すことは難しいと考えることができる. 1000 900 800 700 52% 600 55% 500 400 300 25% 23% 200 18% 100 17% 0 春日地区 西地区 中地区 図 4 地区分け 表 5 回帰分析結果 南地区 xi 北地区 図 5 地区別電力消費構成 4.4. 中地区内訳 中地区は多く講義棟や研究棟,食堂など多くの施設が集 まり,筑波大学で最も学生や職員が多く集まる中心地区であ る. この地区を図 7 のように 1 学,2 学,3 学エリアに分ける.そ して最も電力消費量の大きかった 2011 年 9 月の総電力消費量 を比較すると 3 学エリアが 44%と最も多く,その次に 1 学, 2 学と続いている(図 9 参照).なお,1 学には計算物理学研 究センターという棟にスーパーコンピュータがあり,今回の研究 では言及しないため 1 学の総電力消費量から計算物理学研究 センターの電力消費量を除いている. また,図 8 より 3 学エリアの電力消費量を棟ごとに分けると工 学系学系棟・理科系修士棟・総合研究棟 B が約 7 割を占めて いることがわかる.これらの棟は研究室や実験室を多く含む棟 である. 万 kWh 300 250 3学 2学 200 43% 150 34% 100 1学 50 23% 0 1学 図6 エリア分け 2学 3学 図 7 中地区電力消費構成 回帰係数 冷房 サーバ ノートPC プリンタ類 サンプル数 決定係数R2 調整済みR2 1,360.15 259.29 -587.75 277.99 t値 有意確率 5.22 2.05 -2.05 1.42 171 0.899 0.000 0.060 0.059 0.178 0.870 2011年9月棟別電力消費量=b+Σaixi 5. 研究室における電力消費行動調査 前述したように大学の電力消費の内訳を細分化して掘り下 げていくと研究室での学生の行動が電力消費量に深く関わっ ているのではないかという考えが生まれた.そこで都市計画主 専攻の17研究室を対象に研究室で学生がどのように電力消 費を行っているのか把握すべく調査を行った. 5.1.電力消費行動調査 考察 照明に関して余分な点灯ケースを多く確認することができた. 全体の約4割で無駄と思われる点灯が行われていた. 空調に関しては筑波大学の推奨する夏の 28 度設定は約6 割で守られており,27 度設定も含めると 9 割以上の空調の温度 設定が行われていた. PC に関して 17 研究室で計 158 台の PC が設置されており, 調査時在籍人数とサーバ台数が稼働台数である.都市計画主 専攻の研究室では PC の台数が比較的多く,電力消費に大き な影響を与えていると考えることができる. プリンターはどの研究室も必要な時以外は 1 台のみの稼働 で常に電源が付いた状態で設置されている. 冷蔵庫は1つの研究室を除いた 16 研究室では 1 台設置さ れており,基本的に 1 研究室・実験室に 1 台設置されている. これらの結果から,研究室での電力消費に関して,照明と PC での省エネ対策を行うことで大学全体の電力消費量を大き く削減できるのではないかと考えられる. 5.2. 研究室電力消費量構成把握 研究室での消費電力を計測し,電力消費の構成を把握する. 方法として,スマート電源コンセントとゲートウェイという機械を 用いて明らかにする. この調査は小規模研究室(研究室所属人数 5 人以下)として 研究室規模 名称 場所 所属人数① 大規模 都市交通研究室 工学系学系棟F1035 10人 2011/12/13~ 2011/12/20 調査期間 一週間の 消費電力量②[kWh] 一日の 平均消費電力[kWh] 一人当たりの 電力消費量(②/①) [kWh] 中規模 都市防災研究室 総合研究棟B714 6人 2012/1/14~ 2012/1/20 小規模 都市空間解析研究室 総合研究棟B722 3人 2011/11/1~ 2011/11/7 116.91 170.98 80.18 16.70 24.43 11.45 11.69 28.50 26.73 図 9 各研究室の機器別の電力消費量 5.3 研究室の節電可能性 スマートコンセントによる結果から常に PC を稼働させたまま であったケースが多くみられた.また,研究室の訪問調査から 1 人で研究室にいるにも関わらず全ての照明を点灯しているとい う無駄利用が多くみられた.ただし,照明に関してはスマートコ ンセントを用いての計測が不可能であるため,PC モニターによ る電力消費量があるときはその PC で作業をしている人がいると 仮定し,一人以上在室者がいればすべての照明をつけると仮 定している.この仮定は,研究室における電力消費調査で多く 確認できている. 図 10 は都市交通研究室の現状である無駄利用の実態であ り,赤い部分が左は PC,右は照明による無駄利用である.PC に よる無駄利用が非常に多いことがわかる.照明に関しては在籍 人数の多い研究室であるため,同じ時間に多くの人が在籍す るため無駄と考えられる場合は少なかった. この無駄利用の削減により,三研究室で一週間 74.18kWh, 一研究室平均 24.73kWh の消費電力の削減を行うことができ る. kWh 400 kWh PC実測値 0:00 無駄利用をなくした場合 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 0 12:00 100 0 0:00 200 100 12:00 300 200 0:00 300 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 0:00 12:00 400 12:00 都市空間解析研究室,中規模研究室(研究室所属人数 6~10 人)として都市防災研究室,大規模研究室(研究室所属人数 10 人以上)として都市交通研究室の 3 研究室を対象とする.な お,この調査は研究室のすべてのコンセントの電力消費量を 明らかにする調査であり,集中で管理されている空調の電力消 費量は含まれていない.また,照明の消費電力は総合研究棟 B に設置されている電力計とスマートコンセントの値から蛍光灯 1 本当たり 18kWh として計算をしており,モニターが付いている かどうかで研究室の在籍人数を決定し,在籍人数が1人以上 の時には研究室の全ての照明をつけたと仮定して計算を行っ た. 図 9 をみると研究室の在籍人数に関わらず電力消費行われ ていることがわかり,研究室における電力消費量は,学生の一 人暮らしの平均電力消費量は 62.5kWh/週であるので研究室 での電力消費量は非常に高いことがわかる.また.PC 本体と 照明の電力消費量が高いことがわかる.都市防災研の電化製 品についてはハロゲンヒーターと加湿器による電力消費の影 響である. 表 6 各研究室概要と電力消費量結果 照明現状 無駄利用をなくした場合 図 10 都市交通研究室の PC と照明の無駄利用 6.大学における節電可能性 研究室において使わない PC は消して帰る,不要な照明は 消すという無駄利用を抑えるだけで 24.73kWh の削減を行うこ とができる.筑波大学内には研究室,実験室が 2,949 室あり, 研究室での電力削減量の計算を行うと約 3,501MWh の削減を 年間で行うことができる計算になる.これは三人家族の年間電 力消費量,972 世帯分である.研究室と実験室以外でも無駄 利用は必ず行われているのでこれ以上の効果が予想される. 7. まとめと今後の課題 震災の影響により今年度の電力消費量は大幅に減っている. どこかの棟で大幅に電力消費削減を行っているのではなく全 体が平均的に電力消費削減を行っていると考えられる. また,電力消費の構成を掘り下げて考えていくと,研究室や 実験室での電力消費が大きく大学に影響を与えていることが わかる.そして,都市計画専攻の研究室に限っては PC 関連と 照明による電力消費が大部分を占めることがわかった. しかしながら,研究室では PC や照明の無駄利用が多く行わ れており,この無駄利用を大学全体で無くすだけで 3,501MWh の電力消費の削減を行うことができる. LED 照明導入など近年では設備における省エネ対策が多く 行われようとしているが,電力消費を主体的に行っている学生 に対する行動を変化させる対策も必要である. 今後の課題として,機器の台数などでその棟や教室の電力 消費量を定量化させることでおよそどれだけの電力を消費する のか,削減できるのかということができると,この研究の幅が他 大学,オフィスでも同様に示すことができる点,また,行動を変 化させるにはどのような取り組みが効果的であるかという点を挙 げる. 8. 参考文献 1)ECCJ 省エネルギーセンターHPhttp://www.eccj.or.jp/ 2)筑波大学 HPhttp://www.tsukuba.ac.jp/ 3)筑波大学電力情報システム TEMS http://tems.tsukuba.ac.jp/ 4)筑波大学施設部 HP http://www.sakura.cc.tsukuba.ac.jp/~shisetsu/ 5)筑波大学環境報告書 2011 6)木村宰(2011)「地方自治体による節電対策の進め方」電力中央研究所ディスカ ッションペーパー 7)溝渕健一,竹内憲司(2011)「家庭にどう節電を進めるか:東日本大震災後の節 電対策」 8)谷口元,恒川和久,松岡利昌,田中裕伸(2009)「国立大学における省エネル ギー使用の特性に関する考察」日本建築学会大会学術講演概要集 9)野中俊秀,林徹夫,野村幸司,深田孝徳(2006)「大学キャンパスのエネルギ ー消費量に関する研究―九州大学筑紫キャンパスの電力消費実態と省エネ対 策―」日本建築学会大会学術講演概要集 10) 文部科学省発行:大学等における省エネルギー対策の手引き P.4より引用 11) 筑波大学施設部施設環境課「筑波大学施設部の省エネ対策」 12)東芝 HPhttp://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm 13)NTT ドコモ HPhttp://www.nttdocomo.co.jp/ 14)キャノン HP http://canon.jp/ 15)コカコーラ HPhttp://www.cocacola.co.jp/ 16)広島大学 HPhttp://www.hiroshima-u.ac.jp/index-j.html 17)上智大学 HPhttp://www.sophia.ac.jp/ 18)早稲田大学 HPhttp://www.waseda.jp/top/index-j.html 19)東京農工大学 HPhttp://www.tuat.ac.jp/ 20) 筑波大学企画室「夏期節電の実施準備について」 21)筑波大学 HP 内,大学案内より http://www.tsukuba.ac.jp/public/booklets/pdf-details2011/p19-27.pdf
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