6.店頭での活用法には、どんな方法があるの?

6.店頭での活用法には、どんな方法があるの?
(1)ポスターを作るには?
今回、食品産業センターにおいて、小売店において掲示することを想定した、次の2種類
のポスターを制作しました。
見る側が“「食事バランスガイド」なんだろう?”と関心を持っていただけるデザインを心
がけ、また、“ご存じですか?食事バランスガイド”というキャッチフレーズを掲げることによ
り、見る側により関心を持っていただき、ポスター自体だけでも「食事バランスガイド」を理
解していただける第一歩になるよう工夫をしてみました。
図1−1 B3サイズポスター
図1−2 A全サイズポスター
また、コンビニエンスストアにおいては掲示スペースが限られているため、図1−3のよう
にポスター自体に関連する情報を記載することにより、空いたスペースを有効に利用する
ことが不可欠だと思われます。
図1−3 コンビニエンスストア「ローソン」での作成事例「ポスター(B2 ヨコ)と天吊り看板(POP)」
ポスターを、実際にスーパーマーケットで掲示した際にポスターを参考にしたお客様の
「食事バランスガイド」の活用度は、次のような結果となりました。
ポスターを掲示して1週目と2週目の活用度の回答を見てみると(イトーヨーカ堂の結果抜粋)
・・・
1週目:全体の0%がポスターを参考にして行動を変えた
約30ポイントアップ!
2週目:全体の約30%がポスターを参考に行動を変えた
⇒1 週間でポスターを参考に食事や買い物をしたお客様が約30ポイントも増加しました。
なお、この2種類のポスター制作にかかるコストは次のとおりですので、自社で制作され
る際の参考にしてください。
ポスター2種類を1万枚制作したと想定すると・・・
ポスター制作コスト=
デザイン費(約15万円×2=30万円)+印刷費(約60円/枚×1万枚=60万円)
のように、合計 約90万円程度のコストがかかります。
※ 食品産業センターでは、図1―1、1−2のデータ(PDF ファイル)をご用意してお
りますので、データをそのまま使用されるか自社名のみ加筆して使用される場合は、
センターまでご連絡ください。印刷費の実費のみで使用できます。
※ 自社独自で制作される際は、「食事バランスガイド」の基本形及びバリエーションの PDF フ
ァイルがダウンロードできるホームページ(http://www.j-balanceguide.com)を利用し、イ
ラストレーター(ソフト)を活用すれば簡単かつ低コストで制作することができます。
1
(2)看板等(POP)を作るには?
「食事バランスガイド」の料理区分をお客様に認知していただく方法として、図2−1、2−
2のように各売場において該当する料理区分の看板等(POP)を展開することが効果的で
す。
その際、お客様の購買行動に沿った展開をすることにより、1 つの導線がひかれ、認知
度も向上すると思われます。
図2−1 各売場での看板等(看板等(POP))の掲示例
図2−2 各売場で掲示した看板等(看板等(POP))の例
また、コンビニエンスストアではスーパーマーケットのように 1 つの導線を引くことができ
ないので、図2−3のように対象商品の陳列棚で情報提供をすることが効果的と思われま
す。
2
図2−3 コンビニエンスストアの陳列棚における看板等(POP)の例
なお、スーパーマーケットにおいて、実際にお客様がこれら看板等(看板等(POP))によ
り、どの程度「食事バランスガイド」を認知し、理解されたかの結果は次のとおりとなりまし
た。
POPにより食事バランスガイドをどの程度認知し、理解されたかを見てみると
(イトーヨーカ堂の結果抜粋)
・・・
1.見聞きしたことがある・・・・・27%
2.内容まで読んだことがある・・・17%
3.内容を理解できた・・・・・・・13%
⇒食事バランスガイドを展開していること自体を気づかせるには、十分効果的な手段となり
ました。
これら看板等(POP)制作にかかるコストは次のとおりですので、自社で制作される際の
参考にしてください。
各コーナーのB3サイズ看板等(POP)を制作したと想定すると・・・
看板等(POP)制作コスト=
デザイン費(約15万円)+印刷費(約4千円/枚×50枚=20万円)
のように、合計 約35万円程度のコストがかかります。
※ 自社独自で制作される際は、「食事バランスガイド」の基本形及びバリエーションの PDF ファ
イルがダウンロードできるホームページ(http://www.j-balanceguide.com)を利用し、イラスト
レーター(ソフト)を活用すれば簡単かつ低コストで制作することができます。
3
(3)リーフレットを作るには?
今回、食品産業センターでは、小売店において配布することを想定した、図3−1、3−2
のリーフレットを制作いたしました。
制作のポイントは、ポスターと同様に見る方が“「食事バランスガイド」なんだろう?”と関
心を持っていただけるデザインを使用し、「食事バランスガイド」の基本である“何を”“どれ
だけ”食べればよいかをわかりやすく理解できる内容にしました。
図3−1 リーフレット(外側)
図3−2 リーフレット(内側)
4
店舗での展開方法としては、店頭でお客様が手にしやすい場所に設置し自由にご覧い
ただく方法があります。また、従業員がお客様に「食事バランスガイドというのは・・・」と簡
単な説明を交えながら直接手渡しする方法は、認知して頂くという点ではより効果的です。
また、このリーフレット配布によるお客様の「食事バランスガイド」の活用度は、次のよう
な結果となりました。
スーパーマーケットでは、
リーフレットを配布して1週目と2週目の活用度の回答を見てみると
(イトーヨーカ堂の結果抜粋)
・・・
1週目:全体の40%がリーフレットを参考にして行動を変えた
10ポイントアップ!
2週目:全体の50%がリーフレットを参考に行動を変えた
⇒1 週間でリーフレットを参考に食事や買い物をしたお客様が 10 ポイントも増加するとと
もに、半数のお客様がリーフレットを活用している結果になりました。
コンビニエンスストアでは、
・・・
リーフレットを配布して1週目と2週目の活用度の回答を見てみると(ローソンの結果抜粋)
1週目:全体の25%がリーフレットを参考にして行動を変えた
25ポイントアップ!
2週目:全体の50%がリーフレットを参考に行動を変えた
⇒1 週間でリーフレットを参考に食事や買い物をしたお客様が 25 ポイントも増加するとと
もに、半数のお客様がリーフレットを活用している結果になりました。
なお、この2種類のリーフレット制作にかかるコストは次のとおりですので、自社で制作さ
れる際の参考にしてください。
リーフレットを1万枚制作したと想定すると・・・
リーフレット制作コスト=
デザイン費(約15万円)+印刷費(約20円/枚×1万枚=20万円)
のように、合計 約35万円程度のコストがかかります。
* 食品産業センターでは、リーフレットの版下をご用意しておりますので、自社での
活用をご検討されている場合は、印刷費の実費のみの負担となります。
* 自社独自で制作される際は、「食事バランスガイド」の基本形及びバリエーションの PDF フ
ァイルがダウンロードできるホームページ(http://www.j-balanceguide.com)を利用し、イラ
ストレーター(ソフト)を活用すれば簡単かつ低コストで制作することができます。
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(4)宣伝用DVDを作るには?
店内において、「食事バランスガイド」を理解していただく 1 つの手段として、動画を駆使
したDVDの制作はビジュアル的にもより効果的な手段になると思われます。
「動画を駆使したDVDを制作したいけど、難しそうだな」と思われるときは、「食事バラン
スガイド」のホームページ(http://www.j-balanceguide.com)から、基本形及びそのバリエー
ションを参考にしたり、ガイドラインを参照することにより、適切な「食事バランスガイド」のD
VDを制作することができると思われます。
図4 DVDによる食事バランスガイドの情報提供
もし、自社においてTV、DVDプレイヤーをお持ちであれば、制作コスト自体は約10万円
程度ですので、お客様に情報提供する手段としては十二分に効果があると思われます。設
置場所は、お客様が足を止めて見られるスペースのあるところが適しています。
また、店内での情報提供手段のみならず、社員教育の際に活用されることもお勧めしま
す。
6
(5)社員教育はどう行えばいいの?
実際に店舗において「食事バランスガイド」を活用した取組みを実施する際には、次の点
からも社員教育は必要だと思われます。
・ お客様に、本社からの指示でやっているという姿勢ではなく、従業員 1 人 1 人が理解
し、取り組んでいるということを知っていただくため
・ お客様に質問された際に的確にお答えするため
・ 従業員自身の食生活の改善と業務に対する意識を向上させ、自分の食生活と健康
を見直すきっかけとする
上記のことを遂行することにより、お客様に対する新たなストアロイヤリティにつながるこ
とも考えられます。
また、社員教育の際の講師としては、自社の管理栄養士や各自治体(各都道府県の保
健所、または市町村の健康づくり担当)、管理栄養士・栄養士会などに相談し、なるべく負
担のかからない方法を模索することも可能です。なお、各自治体等の管理栄養士に講師を
お願いする際、場合によっては、日当や交通費が発生することもあるので、事前に相談を
してみましょう。
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(6)サービング数をどう計算して表示すればいいの?
サービング数の掲示は、スーパーマーケットでは惣菜コーナー、コンビニエンススト
アでは弁当・サラダ・おにぎりコーナーで行うことが取り組みやすいことから、ここでは
惣菜、弁当の計算・表示方法について解説します。
1.惣菜の場合
惣菜は、ある程度まとまった量(1kgなど)で調理されるため、1パックの量に換算
し、1パック当たりのサービング数を計算する必要があります。また、エネルギー量
等その他の情報を表示しない場合には、調味料等はサービング数の計算には不要
なので、「主材料」(主材料の考え方についてはp の表参照)に着目して計算を行い
ます。以下、手順を示します。
① 素材重量を1パック当たりのものに換算
② 素材の「主材料」を主食、副菜、主菜の料理区分ごとに区分
③ 料理区分ごと※に素材重量を合算
④ 合計した重量からサービング数を計算
※ 次ページの「サービング数換算早見表」を参考に計算してみましょう。副菜の場合
は、サービングの基準が主材料の重量70gを1つ(SV)とするとされているので、計
算が容易ですが、主食、副菜などの場合でも、簡単に計算することが可能です。
【数量の整理の基本ルール】
主材料の量的基準の2/3以上から1.5未満=1つ(SV)
2つ(SV)以上は四捨五入で処理
【例】ひじきの煮物
料理区分
副菜
材料名
1パック分
芽ひじき
660g
46.2g
れんこん
50g
3.5g
40g
2.8g
50g
3.5g
ー
56g
50g
3.5g
50g
3.5g
椎茸
にんじん
副菜 合計
主菜
1kg分
揚げ
水煮大豆
8
56÷70≒0.80≒1つ(SV)
合わせても1つ(SV)未
満なので、省略
「サービング数計算 早見表」
主材料(食品)(g) 1つ(SV)
70∼140
パン
4∼6枚切り食パン
1枚、ロールパン
2~3個
3つ(SV)
190∼270
270∼380
主
ごはん(炊飯)
2つ(SV)
備
考
140∼190は1.5SV(中盛
り)。コンビニで販売されて
いる「おにぎり」1個は1つ
(SV)になる。
食
うどん、そうめん、中華麺、
マカロニ、スパゲッティ
副
菜
ゆで麺
100∼230
230∼380
380∼530
生麺
50∼110
110∼180
180∼250
うどん、中華麺
乾麺
40∼80
80∼140
140∼200
うどん、そうめん、中華麺、
マカロニ、スパゲッティ
葉野菜を除く野菜
等(乾物を除く)
50∼110
110∼180
180∼250
葉野菜(調理前重
量)
50∼110
110∼180
180∼250
葉野菜(調理後重
量)
30∼70
70∼120
切干等乾燥野菜、 10∼20
きのこ(乾物)
乾燥わかめ
20∼30
120∼170
30∼40
20∼40
40∼60
100∼210
210∼350
肉
20∼50
50∼80
80∼110
ハム、ソーセージ等
30∼60
60∼90
90∼130
魚
20∼50
50∼90
90∼120
魚介練り製品
30∼70
70∼120
120∼160
卵 (g)
30∼80
80∼130
130∼180
豆 腐
70∼160
160∼260
豆 乳
110∼250
野菜ジュース
60∼80
350∼490
主
菜
260∼370
250∼420
420∼580
牛乳・
乳製品
油揚げ、厚揚げ
30∼70
70∼110
110∼150
ゆで大豆
30∼60
60∼90
90∼130
牛 乳
60∼130
130∼220
220∼310
ホワイトソース
30∼60
60∼90
90∼130
いも、海藻、きのこ、春
雨を含む
葉野菜はゆで等の調理
により重量が減り生重
量の0.7倍程度になる
乾燥重量に対して約6
を掛ければ、おおよそ
の生重量に換算できる
乾燥重量に対して約3を
掛ければ、おおよその生
重量に換算できる
重量の1/2を掛けた値で
計算している
卵1個(約50g)で1SV
豆腐1/3丁(100g)で1SV
※ 各欄の数字の見方; 「70∼140」とある場合は、70以上140未満ということを表しています。
※ めん類を半玉増量させた商品の場合は、0.5つ(SV)を足して計算するようにしてください。
9
⑤ 表示方法を検討する
惣菜のサービング数を表示する場合に、表現方法として、コマのイラストを活用す
る場合、文字情報で示す場合、イラストと文字情報の双方で示す場合が考えられま
す。
また、文字情報で表現する場合、「副菜1つ(SV)」といった整数での表現とともに括
弧書きで、小数点第一位まで示すといった方法も取ることができます。
例えば、下の例のように小パック、大パックといったサイズの異なるものでも、整数
表現では、「1つ(SV)」になってしまう場合、整数での表示とともに、括弧書きで小数
点第一位まで示すことで、厳密には副菜の量が異なることを表現できます。
⑥ 看板を合わせて設置する
プライスカードの表示の読み方を解説する看板を設置すると、お客様の理解がより
得られます。なお、参考までにこれまで紹介した看板等(POP)にかかる印刷コスト
は約6万円程度です。
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2.弁当の場合
次に、弁当のサービング数の計算・表示方法について解説します。基本的には惣
菜と同様の方法になりますが、弁当の場合は、多用な食材が使われているので、①
の主材料の区分の作業がやや煩雑になります。
① 弁当の素材の「主材料」を主食、副菜、主菜の料理区
分ごとの区分
② 料理区分ごと※に主材料の重量を合算
③ 合計した重量からサービング数を計算
※P.20の「サービング数換算早見表」を参考に計算してみましょう。主食、主菜につ
いては、使用されている原材料によってサービング数の基準が異なる場合がある
ので注意しましょう。
弁当については、1食当たりの原材料の使用量から、サービング数を計算する必
要があります。「1.惣菜」と同様、エネルギー量等その他の情報を表示しない場合に
は、調味料等はサービング数の計算には不要なので、「主材料」のみに着目して計
算を行って下さい。
【例】幕の内弁当
(g)
1.5以上になれば整数で
2つ(SV)と表示できるの
で、もう少し副菜の量を増
やすとよりヘルシーなお
弁当に!
103.9÷70≒1.48≒1つ(SV)
1つ(SV)
2つ(SV)
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④ 表示方法を検討する
弁当のサービング数を表示する場合も、表現方法として、コマのイラストを活用す
る場合、文字情報で示す場合、イラストと文字情報の双方で示す場合が考えられま
す。下の例は、プライスカードに文字情報で示したものです。主食のイメージカラー
黄色、副菜のイメージカラー緑、主菜のイメージカラー赤を使ってわかりやすく表現
されています。さらに、弁当に直接シールを貼れば、お客様が持ち帰った後でも、食
べているお弁当のサービング数を確認できます。
※ パソコンを使って材料とその重量を入力するだけで、サービング数やエネル
ギー量、食塩相当量等の栄養計算までできるソフトが市販されることになっている
ので、このソフトの活用が可能な場合は、 使用していただくとより正確な数字が把
握できます。
売場でのサービング数の表示
12
(7)レシピを作って提案するには?
「食事バランスガイド」を店舗で展開する方法の1つとして、「食事バランスガイド」を基本
としたレシピの提案が考えられます。レシピはお客様にバランスの良い献立作りをわかり
やすく伝える重要な手段であり、お客様のニーズも高いものです。これらバランスの良い献
立を提案するだけでなく、例えば“手軽に作れる!”といったお客様ニーズに合った要素を
盛り込むと、より効果的に活用されることでしょう。ここでは、「食事バランスガイド」の考え
方に基づいたレシピの作成方法の基本を説明します。
①レシピ作成前の確認
・ レシピを使ってもらいたい対象者は誰か。その設定に基づいて、必要なエネルギー
量を P.6の図で確認し、P.7の表で、各料理グループから1日にとりたい「つ(SV)」を
確認しましょう。その上で、1食当りの「つ(SV)」を設定しましょう。レシピを使う対象
が特に、特定できない場合は、基本形(2000-2400kcal)を使うのが原則です。ま
た、1食の目安は、1/3 となります。
・ 対象地域の食環境(食物入手状況など)および特性をつかみましょう(その地域で好
まれている、またはよく売れる食材料、料理、家族構成など)
・ 企業との連携、特に、提供した食材をもちいたときのレシピの制限について(イトーヨ
ーカ堂の実証試験ではキッコーマンの商品を使ったレシピを提案=食品メーカーと
連携)
②レシピ作成時の注意点
・ 1食分のレシピを作成する場合は、主食・主菜・副菜、それぞれ別立ての料理として
何にするか考えましょう。複合的な料理では、各料理グループからとりたい量(つ
(SV)のイメージを持ってもらう上で、あまり適した情報とはいえません。もちろん、結
果として、主菜の肉料理の付け合せの野菜が「1つ(SV)」を超える場合は、そのサ
ービング数も数えていくことになります。
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・ 料理毎に、使用する主材料の重量をしっかり把握しましょう。そして、目安としたサ
ービング数に照らして、適切な料理なっているか、確認しましょう。(サービング数の
計算は、専用の計算ソフトを使用すると簡単にできます。ご関心のある方は、P.60
の「マニュアル全般におけるお問合せ先」までご連絡ください)
・ 料理のサイズは、誰にも共通にイメージできる標準サイズにしましょう。(図5、6、7
参照) 標準サイズがわからない場合は、検討会の報告書や専門マニュアル(日本
栄養士会監修「食事バランスガイドを活用した栄養教育・食育マニュアル」)に、日本
人が平均的に食べているサイズが載っていますので、参考にしてください。
・ 出来上がったレシピの栄養価が食事摂取基準の照らして適正な範囲になっている
か、栄養価計算をして確認しましょう(管理栄養士などの専門職がいない場合は、
地域の保健所などに相談しましょう)。その結果を使えば、サービング数「つ(SV)と
合わせて、カロリーや食塩相当量の表示もできます。カロリー等の表示はお客さま
のニーズが高いものでもあります。
・ 献立の全体的な味や色等のバランスを考えましょう(図6参照)
食品産業センターが実証試験をした際に展開したレシピでは、「主食 1.5∼2つ(SV)、
副菜 2∼3つ(SV)、主菜2つ(SV)」、バランスの良い献立の一例を掲載し、お客様にバラ
ンスの良い献立のイメージを持っていただくように心がけました。図5はその一例です。
図5 レシピに記載するバランスのよい献立例
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③レシピの内容
・ 作りやすく、価格も低く抑えることができる料理で、気楽に“作ってみよう”と思える内
容にしましょう。
・ 実際に店頭に立つ人(クッキングサポーターやインストラクター、店員の方)に分かり
やすく、かつお客様に正確に伝わるような内容にしましょう。
・ 季節の食材、地域の食材を取り入れたレシピ内容にしましょう(イトーヨーカ堂の実
証試験では旬の魚“鮭・さんま・ぶり”を使ったバランスのよいおすすめレシピを展開
(図6参照)。
・ 対象が持っている食生活上の課題の解決に役立つような、食育のメッセージを盛り
込んだ内容にしましょう(イトーヨーカ堂の例では、魚が苦手で、旬を知らない子ども
たちのために、図5、6のようなメニュー提案を行いました)。
④レシピ作成後
・ (管理)栄養士が説明するのか、クッキングサポーターやインストラクター、従業員が
説明をするのかによって、説明内容、説明できる守備範囲が違うので、その範囲を
考え、それに合った情報提供を行いましょう。
・ レシピの料理を示すときのディスプレイにつかうアイテム(食器や食材、出来上りの
料理、店頭惣菜)が、サービング数や分量を正確に示すものになっているかを確認
しましょう。
・ 実際にお客様の意見や感想をきき、取り入れましょう。
それでは実際に上記作成方法に基づいて作成したレシピを含め、バランスのよいメニュ
ー提案方法としては、どのような方法があるでしょうか。次のようなツールを活用することも
1 つの有効な方法と思われます。
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(バランスのよいメニュー提案方法)
・レシピを利用したもの
・食品や料理の(実物)サンプルを利用したもの
・各売場での看板等(POP)を利用したもの
・実演コーナーを利用したもの
などを上手く活用することが有効です。
図6はレシピを活用したバランスのよいメニュー提案を示しており、簡便な主菜の作り方
から、それに見合った献立の提案。そして、その裏面には1日3食の食事をどのように摂れ
ばバランスが良いかを、「食事バランスガイド」のイラストを用いながら分かりやすく提案し
ています。
図6 レシピを活用したバランスのよい献立の提案とバランスのよい 1 日の食事の提案
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また、図7のように、食品や(料理)のサンプルを設置することにより、お客様が日頃、家
庭で食する献立と比較して、その量が多いか少ないかの確認や、適切な量を視覚的(感覚
的)に捉えてもらうことができます。
その他、図8のように、各売場において、看板等(POP)を活用し、その売場にある食品
を食べることを想定したバランスのよい献立を提案することも、お客様にわかりやすく情報
発信する手段として有効であると思われます。
図7 食品サンプルの設置
図8 売場における看板等(POP)を活用したバランス献立の提案
また、これらのツールによるお客様の「食事バランスガイド」の活用度の回答は、次のよ
うな結果となりました。
バランスのよいメニュー提案をして1週目と2週目の活用度の回答を見てみると
(イトーヨーカ堂の結果抜粋)
・・・
1週目:全体の20%がバランスのよいメニュー提案を参考にして行動を変えた
約13ポイントアップ!
2週目:全体の33%がバランスのよいメニュー提案を参考にして行動を変えた
⇒1週間でバランスのよいメニュー提案を参考に食事や買い物をしたお客様が約13ポイント
も増加した結果になりました。
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なお、このバランスのよいメニュー提案のうち、レシピ制作にかかるコストは次のとおりで
すので、自社で制作される際の参考にしてください。
レシピを1万枚制作したと想定すると・・・
レシピ制作コスト=
デザイン費(約15万円)+印刷費(約13円/枚×1万枚=20万円)
のように、合計 約35万円程度のコストがかかります。
* 自社独自で制作される際は、「食事バランスガイド」の基本形及びバリエーションの PDF ファ
イルがダウンロードできるホームページ(http://www.j-balanceguide.com)を利用し、イラス
トレーター(ソフト)を活用すれば簡単かつ低コストで制作することができます。
その他、店舗に実演コーナーが併設されている場合は、次のような方法が考えられます。
従業員がメニューを提案するとともに、そのメニューをお客様に試食してもらうといった実演
には、人と人との交流が生まれます。そこで、提案するメニューがどのようなものであるの
かを、より理解していただくことができ、提案する側の意図を十二分に伝えることができま
す。もし、実演するスペースがない場合は、ホットプレートなど簡易的なものを活用すること
も1つの方法だと思われます。
なお、実演によるバランスのよいメニュー提案をする際は、自社で制作したレシピと連動
させるとより効果があがります。
図9 クッキングサポートコーナーとレシピ等のレイアウト
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また、関心を持っていただいたお客様には、実演している料理のレシピを持って帰ってい
ただくことにより、その内容がより理解していただけると考えられます。したがって、レシピ
は実演場所、もしくはその付近に設置することが望まれます(図9参照)。
なお、実演する献立は食品メーカーとタイアップしてその食品メーカーの食品を使用する
ことにより、お客様に簡便な献立を提案することができるとともに、食品メーカーにとっては
売上げがあがるといった効果が期待されます。スーパーマーケット、お客様、食品メーカー
それぞれにメリットがある方法を検討することも 1 つの方法だと思われます。
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(8)食生活相談コーナーを設けるには?
店頭での掲示物によって、お客様にバランスのよい食生活を推奨するだけでなく、実際
に管理栄養士といった専門家からのアドバイスを受けられれば、お客様がより自らの食生
活を省みることができます。
ここで例としてあげる食生活・栄養相談コーナーでは、小売店が地域と密着した取組み
を行うということと、お客様の健康を食卓からお手伝いをしていこうという趣旨で、自治体と
連携して管理栄養士を店舗に派遣していただき、「食事バランスガイド」を使った食生活に
関するアドバイスを行っていただきました(図10参照)。
図10 食生活チェックコーナーの看板等(POP)と食生活・栄養相談コーナーの様子
また、食生活・栄養相談コーナーにお越しいただいたお客様の「食事バランスガイド」に
対する感想を他のコーナーの感想と比較すると、次のような結果となりました。
食生活・栄養相談コーナーにお越しいただいたお客様の「食事バランスガイド」に対する
感想を聞いてみると(イトーヨーカ堂の結果抜粋)・・・
相談コーナー:“とてもわかりやすい”の回答者は40%
⇒40%といった高い数値を示したことから、管理栄養士に詳しく相談していただくこ
とにより、より一層、お客様にわかりやすく認知していただける結果としてあらわれま
した。
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食生活・栄養相談コーナーを担当する専門家は、自社の管理栄養士が担当することが
望ましいと思われますが、自社で採用していない場合は自治体や栄養士会と連携すること
が必要でしょう。その際にかかるコストは目安として次のとおりとなりますが、自社の実情に
合わせて有効な実施方法を検討しましょう。
管理栄養士を配置した場合のコストは・・・
・ 自社の管理栄養士が担当する場合 ⇒ 日常業務の範囲内としての人件費
・ 自治体や栄養士会と連携する場合 ⇒ 各自治体の管理栄養士に相談すると良い。
場合によっては、日当や交通費が発生するた
め、事前の話し合いが必要
21
(9)バランス弁当を開発するには?
「食事バランスガイド」を活用した弁当の開発と展開方法については、山崎製パングルー
プのコンビニエンスストア「デイリーヤマザキ」及び「ヤマザキショップ(Yショップ)」が業界で
初めて自主的に取り組まれています(図11参照)。
ここでは、山崎製パングループにご協力いただき、取り組む上でのポイントや反応などに
ついて、紹介させていただきます。
図11 バランス弁当と店頭での看板(看板等(POP))を活用した情報提供
①社員教育
開発するにあたって管理栄養士が「食事バランスガイド」の内容を正確に理解することが
必要であり、展開する売場の従業員においても、お客様に応対することから、その理解は
必要不可欠となります。そのため、本社スタッフが全国に社員教育を実施することにより、
その周知の徹底を図りました。
②顧客層
女性をはじめ、50歳以上の健康を意識する世代に浸透し、また、病院内での店舗でも
同様の意識を持ったお客様が顧客層となりました。その他、「食事バランスガイド」を活用し
た弁当ということで、日頃から意識を持った顧客層から発注を受けることもありました。
22
③弁当を開発するにあたって
副菜(野菜)を多くとりいれ主菜(肉・魚等)を減らすことが、販売価格やお客様の嗜好等
の面で難しいところがありました。品目が多く、お客様のなかには好き嫌いが多い人も存在
し、そういうお客様にも受け入れられる弁当開発に苦労しました。なお、弁当開発はルーチ
ンワークの範囲内であるため、新たな負担は想定されません。
④サービング数の表示について
「食事バランスガイド」を参考にした弁当を展開していることから、すでにサービング数は
計算してあり、表示する際の負担はありません。ただし、表示するタイミングは、お客様が
自らサービング数を考えて、商品を選択することができるよう、「食事バランスガイド」がもう
少しお客様に認知されてからの方が良いと判断しています。
⑤自社のメリット
バランス弁当を展開することにより、お客様の健康に軸足を置いているといった、会社と
しての姿勢をお客様に認知していただけることが大きなメリットです。また、新たな商品展
開の方向性が見出せないなか、バランス弁当の展開が“健康”という新たな商品展開の切
り口となりました。
⑥今後の課題
コンビニエンスを展開する上で、直営店とオーナー店の2通りがあり、前者であれば自社
の方向性を打ち出すことができますが、オーナー店での展開となると、ある程度の売り上
げが見込まれないと難しいという問題があります。直営店、オーナー店の両方で展開する
ことができるような、新たな商品開発と情報発信が課題です。
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