放射線生物研究 ( ) 総 説 テロメラーゼ活性を標的とする抗腫瘍ウイルス製剤の 臨床開発 放射線感受性の増強作用 岡山大学病院 岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 遺伝子・細胞治療センター 消化器・腫瘍外科学分野 藤原俊義 1.はじめに 進行癌に対する術前あるいは術後放射線化学療法は、局所制御による切除率の向上と顕微鏡的 な遺残腫瘍の根絶で予後を改善する可能性がある。しかし、放射線治療には癌細胞への選択性が なく、定位放射線治療や多分割照射など物理的な感受性増強が試みられているが、周囲の正常組 織への影響を避けるために照射線量と照射野は制限される。正常組織の放射線感受性を抑制した り、癌細胞の感受性を高めたりできれば、副作用を軽減して抗腫瘍効果の増強を期待することが できる。癌細胞の には放射線照射によって鎖切断が生じ、その ば細胞死に至るが、癌細胞が 阻害する薬剤や 損傷が修復されなけれ を修復すると放射線抵抗性となる。したがって、 修復を 修復タンパク質を失活させる温熱処理などは、その放射線増感作用に基づ き臨床応用が検討されてきている( )。 ウイルスによる腫瘍融解療法( )は、新たな癌治療戦略として積極的に 開発が進められている。ウイルスは、本来ヒトの細胞に感染して増殖複製し、その細胞を様々な 機序により破壊する。組織学的に診断された した直後に完全寛解した症例報告もある。また リンパ腫の黒人少年が、麻疹に罹患し治癒 年代の初めより、癌細胞でその殺細胞効果を 期待して野生型のウイルスを用いた癌治療も積極的に試みられてきている( )。子宮癌や黒色腫 に対する狂犬病ウイルスの投与や、コクサッキー 型ウイルス、ミクソウイルス、アルボウイル スなどによる固形癌の治療が行われてきた。 年には、進行癌患者へのムンプスウイルス投与 の本邦での研究成果が報告されている( )。しかし、これらのウイルスはあらゆる細胞で増殖能 を有する野生型であったため、毒性などにより一般的な治療としては使用されるには至らなかっ た。 岡山市北区鹿田町 @ キーワード テロメラーゼ、アデノウイルス、プロモーター、 修復、放射線感受性
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