MOMO肝通信Vol. - 岡山大学病院 岡山県肝炎相談センター

岡山大学病院 肝臓病情報紙
発行元:岡山大学病院
岡山県肝炎相談センター
086‐235‐6851
発行日:2015.12.24
『岡山大学病院健康フェスタ』 消化器内科 下村泰之
11月24日にイオンモールおかやま未来ホールにて、「岡山大学病院健康フェスタ」を開催させて
いただきました。これは岡山大学まちなかキャンパスというイベントの一部で、肝疾患サポートチ
ームと糖尿病チームのコラボで参加し、無料肝炎検査や血糖測定、健康相談、講演、ミニレクチャー
など、盛りだくさんの内容になりました。
イオンモールでの開催ということで、実際にイオンモールで惣菜の買い物をしたムービーを作りました。
実際の商品が登場し、普段の講演とは一味違ったものになったのではないかと思います。
今回のイベントは、準備期間が短いなか院内外の多くの方に御協力いただき、無事に開催することが
できました。また平日の日中にも関わらず多くの方に来場いただきました。関わっていただいた全ての
皆様に感謝申し上げます。岡山大学病院肝疾患サポートチームでは、これからも院内外で様々な取り
組みをしてまいります。今後ともよろしくお願いいたします。
『身近な食材を工夫して健康生活を送ろう』
臨床栄養部 副部長 長谷川祐子
『あなたの生活習慣は大丈夫? 』
薬剤部 晴田佑介
今回は、おかやま未来ホールで身近な食材を工
夫して生活習慣を見直す話しをしました。事前に
下村医師の企画で看護師、理学療法士が食品売
り場で買い物をし、食材の選び方について解説す
る内容でした。仕事や家事が忙しく食事が作られ
ない時に惣菜を利用することもあると思います。
惣菜を選ぶときは栄養成分表示を確認し、エネル
ギー、食塩に気をつけることが大切です。揚げ物
に偏らず、野菜、海藻、きのこ類を意識して加え、
主食、主菜、副菜を揃えた食事にすると栄養のバ
ランスがとれます。日本人(成人)の食事摂取基
準では1日の食塩摂取量は男性8g未満、女性7g
未満となっています。調味料や漬物、練り製品な
どの加工食品を控えめにすると食塩を減らすこと
が出来ます。
生活習慣病を防ぎ、また重症化を防ぐためには、
食生活を見直し工夫して無理なく続けることが大
切です。
2型糖尿病は、遺伝因子と環境因子が影響し
て発症する、代表的な生活習慣病の1つです。
日本人では、糖尿病および糖尿病予備群を合わ
せると2000万人を超えると言われています。
糖尿病自体は自覚症状がほとんど無いため、予
防や治療の意義を感じづらいかもしれませんが、
真に怖いのは血管の合併症です。三大合併症と
言われている神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿
病性腎症のほか、心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性
動脈硬化症による下肢の切断などにより、生活
の質が大きく悪化する可能性があり、いかに合
併症を予防できるかが重要です。
予防および治療で大事なのは、食事と運動習慣
を見直すことです。食事については、規則正しく
摂ること、腹7分目としゆっくり食べることを意識
すると良いでしょう。運動については、有酸素運
動を無理のない程度で継続することが大事です。
生活習慣の見直しとしては、ストレスをためない
こと、できるならタバコをやめることが、動脈硬化
の予防につながるため、上記の合併症予防に有
効です。
B型肝炎と予防接種
小児科 藤井洋輔
皆さんは『VPD』という言葉をご存じですか?
VPDとは、Vaccine Preventable Diseasesと言って、ワクチンで防げる病気という意味
です。B型肝炎はワクチンで防ぐことができ、数年内にはB型肝炎ワクチンも定期接種
になる予定ですが、現時点ではまだまだ普及が進んでいません。
子供がB型肝炎にかかると、持続感染と言って、ウイルスが一生住みついてしまい、肝硬変や肝
がんなどの病気へ進んでいくことがあります。現在日本では、妊婦さん全員にB型肝炎の検査をし
て、陽性の妊婦さんから産まれた赤ちゃんに、感染予防を行なっており、母子感染は激減していま
す。しかし、お母さん以外からの感染(お父さんなどの家族や、保育施設での感染)は起こってい
て、B型肝炎は無くなってはいません!
今からでも遅くありませんので、大切な家族をB型肝炎から守るために、家族みんなが予防接種を
受けましょう。そして、検査を受けたことのないお父さんたちは、ぜひ一度肝炎検査を受けてみま
しょう。
子どもと脂肪肝
臨床栄養部 林本 加奈枝
朝食抜き、魚や野菜を食べない、間食の摂り過ぎ、水代わりにジュースや牛乳を
飲む、遅い夕食、運動不足などの「誤ったライフスタイル」が育ち盛りの子どもの肥満
増加に影響を与え、小・中学生に脂肪肝・2型糖尿病が増加しています。
これらのライフスタイルは子どもが選択しているわけではありません。
「親は子の鏡」親の生活習慣が子どもの将来に影響を与えています、親の果たす役割は重要です。
食生活において更に心がけたいのは免疫力を高める食材を取り入れることです。
「まごはやさしいよ」毎日の食事に取り入れてはいかがでしょう。
「ま」豆、畑の肉と言われる大豆、豆腐
「ご」ゴマなど種実類
「わ」わかめなど海草類
「や」野菜、1日350g、幼児は200g以上
「さ」さかな特に青魚はEPA・DHAが豊富
「し」シイタケ他きのこ類
「い」芋類
「よ」ヨーグルトなどの発酵食品
腸の免疫力を高めることにも役立ちます。
子供と肝炎感染予防対策
岡山大学病院 感染制御部 渡邉都貴子
B型肝炎,C型肝炎は,血液を介して感染が拡大する疾患です。B型肝炎については,
母子感染予防プログラムの充実により母子感染は,ほとんどなくなっていますし,C型肝
炎の母子感染も稀です。
では,子供が家庭において肝炎の家族からどのように肝炎ウイルスが感染するのでしょう
か?考えられる可能性について述べてみますと,①歯ブラシの共用②肝炎の家族の血液が子
供の粘膜や損傷がある皮膚に付着した③出血がある手で子供の粘膜などに触った④注射器
の針が,子供に刺さってしまった,などが考えられます。このように列挙しますと,日常的に感
染が起こってしまうような錯覚を起こしてしまいますが,通常の日常生活で容易に感染するもの
ではありません。ただ,血液には気を付けましょう。特に,近年は糖尿病の方をはじめとして,家
庭で自己注射をされる方が増えてきています。子供が針刺しをしないように,針の取り扱いに
十分気を付けなければなりません。
C型肝炎ウイルスの新しい治療薬のお話~ハーボニー配合錠® ~
薬剤部 槇田崇志
2015年9月に新しいC型肝炎治療薬ハーボニー配合錠が発売となりました。
このお薬はC型肝炎のなかでもジェノタイプ1という日本人に多いタイプのC型肝
炎治療薬です。
治療は1日1回1錠を12週間飲めば終了です。高い治療効果が期待できるお薬
で、日本人を対象とした治験(発売前に薬の効果・副作用を確認するための試
験)において、治療終了12週間経過後のウイルス陰性化率が100%と全例で効
果を認めたことが報告されています。
その高い治療効果を期待するためには飲み忘れないことが大切です。飲み忘
れると薬が効きにくいウイルスが出てくる可能性があります。それは治療の失
敗や今後の治療を困難にする原因となる可能性がありますのでご注意下さい。
お薬の飲み合わせにも注意が必要で、事前に薬の飲み合わせを確認しても
らいましょう。また、胃薬などの市販薬や健康食品でも効果や副作用に影響を
与えるものがあります。使用する前には医師・薬剤師にご確認下さい。
岡山大学病院では、2014年10月より出張肝臓病教室を開催しています。
出張肝臓病教室では、【職場での肝炎に対する差別/偏見の解消】、【肝炎ウイ
ルス検査の受検の促進】を目的に実施しています。2015年12月の時点で、
20施設の企業/就労団体にお邪魔させてもらっており、10月3日に開催した
北川病院では、出張肝臓病教室の開催後にその場で肝炎ウイルス検査を実施
するという初の試みも行いました。採血は、健康づくり財団様により実施してい
ただき、一般市民ならびに北川病院の職員の方、併せて約70名の方に受検し
ていただきました。今後は、可能な限り、出張肝臓病教室の開催後に、肝炎一
次専門医療機関と連携し、肝炎ウイルス検査も実施していく予定です。
肝炎検診を受けましょう!
消化器内科 桑木健志
肝臓は栄養の代謝・貯蔵、体の免疫、有害物の処理、必要な蛋白の産生などを行っています。
「沈黙の臓器」といわれますが、これは何らかの原因で肝臓が障害を受けても予備能力が高い
ため、症状として自覚できないことが多いからです。このため、慢性肝炎の初期の段階では自覚
症状に乏しく、気がつかないうちに肝硬変となっている場合があります。
わが国におけるHBVのキャリアは110‐140万人、HCVのキャリアは190‐230万人と推定されてい
ます。体がだるい、手足がむくむ、体がかゆいなどの症状はありますか?これらは肝硬変のサイ
ンです。
肝炎ウイルス検査は通常の健康診断ではまだ行われていないため、自発的に検診を受ける必
要があります。県内の保健所や、肝炎一次専門医療機関(平成27年12月8日時点で県内に116
か所)・二次専門医療機関にて無料で肝炎検査を受けることができます。検査の日程につきまし
ては各医療機関にお問い合わせください。
岡山県肝疾患診療連携拠点病院等連絡協議会
肝炎相談センター
笠原郁子
平成27年11月11日(水)岡山市内で開催されました。
岡山県肝炎相談センターからの活動報告を行い、合わせて、8月21日(金)イオンモール岡
山・未来スクエアで行われた無料肝炎検査キャンペーンを実施した模様を報告しました。
当日の様子を収めたDVD(6分間)の上映をはじめ、アンケートの一部を解析した結果など、
確実に啓発活動が県民の皆様の元に届いたことなどの実感をお伝えしました。
議題「肝炎対策協議会の構成員に関わること」、「医療費助成制度の一部改正」等について
議論がされました。
また、年2回開催している医療従業者研修会と地域肝炎対策サポーター研修の講師や
講演予定内容も報告されました。
様々な職種が研修会に参加しています
【第16回岡山県肝炎医療従事者研修会 感想】 検査部 大久保新之介
人間ドックを受ける方への肝炎ウイルス検査の受検勧奨など肝炎ウイルス検査をしてもらうためにそれぞれ
のご施設で行っている工夫や、肝臓病教室の取り組みを紹介されていました。当院の消化器内科助教であり
ます池田房雄先生のご講演では、近年発展のめざましいHCVの治療薬の歴史や9月に発売となった新薬の治
験の結果などについてお話しされました。HCVに対する新薬の登場によりC型肝炎の治療ガイドラインが1年に
2、3回変わるという点が衝撃的でした。しかし次々出てくる新薬のおかげでインターフェロンが効かなかった方
にも治療できる可能性が高まってきており、その点はとても喜ばしいことだと感じました。
【地域肝炎対策サポーター研修会 感想】 医事課 犬山奈穂美
平成27年度第1回地域肝炎サポーター研修会が、10月19日倉敷芸文館にて開催され、当院の新医療研究
開発センター 難波助教が当院の肝炎ウイルス検査受検勧奨の活動について講演し、肝炎相談センターから、
山﨑、笠原、犬山が出席しました。岡山医療センターの松下先生が最新の肝炎治療について講演され、まず
1度は受検して頂き、陽性ならば肝炎専門医療機関を紹介し精査、その人に合った治療を行う必要があり、ウ
イルス性肝炎は治る病気になりつつある、その治療には助成制度が(B型・C型共に)ある事を知ってもらう。
陽性でも放置している方については特に、受診勧奨、啓発活動が必要である事を痛切に感じました。
陽性で放置されている方を一人でも多く受診に繋がられるようしていくのが今後の課題です。
【肝炎ウイルスに関する相談員養成研修会 感想】 西6病棟 二宮 美咲
11月に虎ノ門の発明会館で厚生労働省の健康局疾病対策課肝炎対策推進室により開催された肝炎ウイル
スに関する相談員養成研修会に肝炎相談センターの犬山事務員と共に参加してきました。
この研修では、我が国の肝炎対策の動向についてと肝炎ウイルスに関する疫学について、また、急性肝炎・
慢性肝炎・肝硬変・肝がん・NASHの疾患と最新の治療方法についての講義が行われました。特に豊食、無運
動の時代ために最近日本で増加しているNASHに関する講義は興味深いものでした。現在日本では肝炎ウイ
ルスの新規感染者は少なくなってきていますが、感染を知らないまま潜在しているキャリアは約80万人、また、
感染していることを知っているが継続的な受診をしないままでいるキャリアは約50~120万人とまだまだ多い
状況にあります。今後は様々な職種の方が肝炎コーディネーターとして肝炎ウイルスに関する正しい知識を
広め、検査や受診の必要性の普及や動機付けをしていくことが大事なのだと改めて思いました。
活動予定
活動報告
●研修会・協議会等
9/27 第16回肝炎医療従事者研修会(アークホテル岡
山) (池田、難波、大久保、小山、犬山、笠原、山﨑)
10/19 地域肝炎対策サポーター研修(倉敷芸文館アイシ
アター)(犬山、笠原、山﨑、難波)
10/22-23 肝炎ウイルスに関する相談員養成研修会(東
京) (二宮、犬山)
11/9 就労支援モデル事業班会議(東京)(池田、小山、
笠原)
11/11 岡山県肝疾患診療連携拠点病院等連絡協議会(岡
山)(岡田、高木、池田、山﨑、小山、犬山、笠原)
11/17 第7回院内肝臓病教室「子供と肝臓」 当院西6
階病棟
11/24 岡山大学病院健康フェスタ(イオンモール岡山)
12/4-5 肝炎・免疫研究センター看護師向け研修会(国
府台病院)
(難波、山下)
●出張肝臓病教室
9/25
岡山ふれあい介護サービスセンター
(下村、大久保、山﨑)
10/3
北川病院
(桑木、晴田、長谷川)
10/30 岡山県介護福祉士会(下村、岩井、長谷川)
11/21 銘建工業株式会社(高木、蟻正、野澤)
12/8
社会法人恵風会 (池田、佐藤、山﨑)
12/17 MSD株式会社 (竹内、三浦、犬山)
●出張肝臓病教室
1/21 (木)18:00~19:00 アッヴィ合同会社
1/26 (火)19:15~20:15 RSK
1/29 (金)16:00~17:00 津島小学校
2/19 (金)12:30~13:30 SAPIX
●院内肝臓病教室「肝臓と糖質」
2/16(火)13:00~14:00 当院西6階病棟
●地域肝炎サポーター研修 ピュアリティまきび
2/20(土)14:00~16:30
●第17回肝炎医療従事者研修会 ピュアリティまきび
3/6(日)13:00~15:00 B型肝炎の診断と治療、
高齢患者さんへの栄養支援の実際
編集後記
早いもので、今年も終わりですね。
皆様にとって今年はどんな一年でしたでしょうか?
私たちは今年様々なことに挑戦し、たくさんの新しい仲間と
出会うことのできました。これも多くの皆様の支えがあって
こそ、と感謝しております。
これからも皆様に役立つ情報を発信
していきたいと考えております。
寒い日が続きますが、お体に気をつ
けて、良いお年をお迎えください。
下村泰之,難波志穂子