R3-07 地形解析・調査ボーリング・高密度電気探査・空中電磁探査

R3-07
地形解析・調査ボーリング・高密度電気探査・空中電磁探査
ならびに水文観測を組み合わせた崩壊危険斜面の特性把握
京都大学農学研究科
同
上
京都大学防災研究所
筑波大学農林技術センター
朝日航洋株式会社
応用地質株式会社
大日本コンサルタント株式会社
小杉賢一朗○・高見友佑・正岡直也
Cristobal Padilla・水山高久
松四雄騎
山川陽祐
安井 秀・安永一樹・田中利和
山内政也・山根 誠・小松慎二
影浦亮太・奥村 稔・河戸克志
1.
はじめに
降雨に伴う深層崩壊は,基岩の内部に存在する地下水の水位(山体地下水位)が臨界レベルを超える
ことによって引き起こされると考えられる。既往研究は深層崩壊発生のタイミングに大きなばらつきが
見られることを明らかにしているが,これは,降雨に対する山体地下水位の応答に流域間や地点間の大
きな違いがあることを示唆している。よって,個々の斜面の山体地下水の挙動を知ることが,崩壊危険
箇所の抽出や警戒・避難体制の整備において極めて重要になると考えられる。
山体地下水の挙動の解析においては,調査ボーリングを実施して地下水位を計測することが最も直接
的な手法であるが,経費や労力の問題から,調査地点数には限りが生ずる。このため,地形解析や,地
上および空中からの物理探査に基づく広域調査が必須となる。ただし,これらの調査によって地質・水
文構造の把握がどの程度正確に行えるのかについては,検証事例が極めて少ないのが現状である。
そこで本研究では,詳細な水文観測,調査ボーリングが実施されている斜面において,地表面地形のレ
ーザープロファイラ計測,高密度電気探査,空中電磁探査を実施し,それらの有用性について検討を行った。
2.
調査地と調査手法
調査を行ったのは大津市葛川の葛川試験地(図-1)である。A 級活断層である花折断層沿いを北流する
安曇川の右岸に位置し,比高差は最大で約 880 m,最大斜度 85.9°(平均斜度 35.0°)の大起伏急峻斜面であ
る。地質は丹波帯の付加体堆積岩であり,南北走向で西に傾く砂岩,泥岩,チャートから成り,層理面に対する
流れ盤構造を持っている。
計 12 地点の湧水に三角堰を設置して流量計測を行うとともに,23 地点において計 44 本の調査ボーリング孔
(深度 4.5~61.7 m)を掘削し山体地下水位の変動を 10 分インターバルで計測した。また,現地の地形や露頭の
詳細な調査を実施した。加えて,ヘリコプターを用いたレーザープロファイラ計測を行い,精密な地形データを整
備した。図-1 中に示した側線沿いでは,2013 年 10 月に測線下部において,2015 年 1 月に測線上部において高
密度電気探査を実施した。さらに 2014 年 12 月には,本調査斜面を北端とする面積 5.7 km2 の領域を対象として
空中電磁探査を行った。
3.
結果と考察
地形解析の結果,調査斜面には多数の変形崖や滑落崖が存在することがわかった(図-1)。現地踏査結果と
併せて検討したところ,これらは重力変形ならびに深層崩壊の痕跡であると判断された。さらに,斜面に多く見ら
れる湧水点は,崩壊地の中・下部あるいは重力変形段差末端部に位置し,花折断層に平行した派生断層に沿っ
て分布することが判明した。このことから,地質構造およびその変形によって形成された構造が山体地下水の流
動に大きな影響を与えていることが示唆された。すなわち,断層粘土(ガウジ)により遮水された山体地下水が,
断層線の斜面上流側にプールされ,断層沿いに水位が上昇して湧水群を形成していることが推察された。
図-2 は,高密度電気探査により得られた比抵抗分布ならびに調査ボーリング結果を示したものである。ボーリン
グ孔の位置・深度を表す黒線に重ねて示した長方形は,無降雨時にも常時存在する水位を表している。ここで,
内部を塗潰した長方形は深層地下水,枠線のみの長方形は浅層地下水の水位に対応している。図-1 で推測し
た断層線に対応する位置において,低比抵抗部が縦方向に伸びる構造が存在していることがわかる(図-2 の黒
色矢印)。またボーリング孔 d0 の斜面下方では,地形図に現れた線状凹地(図-1)と対応して低比抵抗部が縦方
向に伸びる構造が認められ(図-2 の灰色矢印),断層の存在を示唆している。そしてボーリング孔内水位は,これ
- B-100 -
50 m
50 m
らの断層の直上流に位置する地点(d0 や d2)では浅く,断層よりも下流側の地点(d1,d3,d4)では深くなっており,
「断層の遮水による地下水のプールならびに断層線に沿った地下水位の上昇」という水文構造の存在を確かめ
ることができた。
図-2 の比抵抗値分布をより詳しく見ると,
断層を示す縦構造より斜面上方側では比
湧水点
抵抗等値線が水平であるのに対し,斜面
高密度電気探査
調査ボーリング孔
下方側では比抵抗等値線が傾斜し,斜面
を下るほど地表面付近の高比抵抗部の幅
粘土を伴った
が次第に厚くなっていることがわかる。そ
d0
断層線
して比抵抗値およそ 800 Ω・m の等値線
(推測)
d1
の形状が,地下水面の分布と概ね一致し
d2
ているといえる。この様に,高密度電気探
d3
査結果から,地下水流動を遮蔽する断層
d4
線の存在と,その影響を受けた山体地下
水の分布特性を的確に把握することがで
きた。
次に図-3 には,電気探査測線と
同じ測線において,空中電磁探査
により得られた比抵抗値の二次元
分布を示した。比抵抗の絶対値は
図-1 調査地の地形と測点・測線の配置
高密度電気探査による値とは異な
っており,変化幅(最大値と最小値
7000 2500 800 300 120
50
10
の差)が小さいことがわかる。また,
比抵抗 (Ω・m)
高密度電気探査で得られた詳細な
d0
比抵抗分布構造は検出できていな
d1
い。しかしながら,d2 地点付近では
d2
d3
浅層部が低比抵抗値を示しており,
d4
断層によって地表面近くにまで地
下水位が上昇していることと良好に
対応している。また断層の斜面下方
に位置する d3,d4 地点では,再び
50 m
地下水位が低下しているが,この水
文構造が,低比抵抗部の深部への
図-2 高密度電気探査結果
沈み込みと地表面付近の高比抵抗
値として表されている。さらに d0 地
点よりも斜面上方側では高比抵抗
729
605
510
387
256
118
値が深部まで及んでいるが,この傾 1344
向も図-2 に示した高密度電気探査
d0
比抵抗 (Ω・m)
結果と一致している。この様に,空
d1
中電磁探査によって大まかな地質・
d2
d3
水文構造の把握は十分に可能であ
d4
ると考えられる。
今後は,検証事例を増やすことで,
空中電磁探査結果の解釈に関する
ノウハウを蓄積していきたい。また,
降雨による地下水位変動の解析を
行い,地形解析や物理探査を動的
な水文構造の把握に如何に応用す
るかについて検討していきたい。
50 m
本研究は,JST CREST プロジェクト
の一環として実施したものである。
図-3
- B-101 -
空中電磁探査結果