実践記録 - 山口大学教育学部附属山口小学校

【県小道研 夏期研修講座資料】
平成26年8月18日
複数時間の関連を図った道徳の時間の指導の工夫
−「
『友達を大切にする』とは」
【2-(3)信頼・友情】
(第 4 学年)の実践から −
山口大学教育学部附属山口小学校 藤元 崇彰
1
「複数時間の関連を図る」とは
重点的な主題の学習を進める場合や、主題や資料の性格等を考慮した結果によっては、一つの
主題について複数時間扱いの指導とすることが考えられる。その場合、複数の資料を連結させて用
いていく進め方、中心的な資料をもとに複数時間かけて深めていく進め方など、資料の位置づけの
仕方によって多様な学習過程が考えられる。また、年間にわたって複数時間取り上げる内容項目に
ついては、相互の関連を工夫することによって各時間の学習指導を多様に組むことができる。
(小学校学習指導要領解説道徳編 p.86)
(従来の展開)
(今回の展開)
1学期 1回目 → 2学期 2回目
1学期 1回目・2回目(2時間連続)
・間隔をおいて、同じ内容項目を取り扱う
・短い間隔で同じ内容項目を取り扱う
・2回の授業の関連が意識しづらい
・2回の授業を意図的に関連付けやすい
1回目
道徳的心情
道徳的判断力
道徳的心情
道徳的判断力
2回目
2
第4学年(中学年)における重点的な主題の学習
中学年では、集団や社会のきまりを守り、身近な人々と協力し助け合う態度を身につけることに
配慮することが求められる。
この段階の児童は、児童期の中でも最も活発になるといわれる。例えば、学校生活に慣れ、行動
範囲や人間関係が広がり、いたずらをすることが多く見られるようになる。他方、社会的認識能力
を始め思考能力が発達し、視野が拡大すると共に、内省する心も育ってくる。感性や情操も更に発
達する。低学年の重点を踏まえた指導の充実を基本として、特に身近な人々と協力し助け合う態度
への配慮が求められる。
(小学校学習指導要領解説道徳編 p.78)
本校の児童の実態も考慮し、
【2-(3) 信頼・友情】を重点的な主題と設定した。
【2-(3) 信頼・友情】
の内容項目の捉え
(参考:道徳授業ハンド
ブック∼道徳の
”内容”をどのよ
うに考えるか∼』
(光文書院)
)
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3
今回の実践について
指導計画(全2時間)
・主題 「友達を大切にする」とは 【2-(3) 信頼・友情】
・目標 道徳資料をもとに価値や在り方を話し合うことを
第1次 資料「ぼくらだってオーケストラ」を
もとに、価値や在り方を考える
① 友達を助け合うことの大切さについて理解すること
とおして、友達を理解し、信頼することの大切さに
気付き、互いに助け合おうとする道徳的心情や道徳
的判断力を養う。
第2次 資料「絵はがきと切手」をもとに、価値や
在り方を考える
① 友達を大切にするために、どのような行動をとるの
かを判断すること
・指導計画 右図参照
(1)第 1 次 友達を助け合うことの大切さについて
(導入)〇学習テーマ(主題)の提示
「友達と助け合って生活することができているか」
K児
僕は、できているときとできていないとき
があるな。面倒くさいときがあるから。
(展開)〇資料提示・内容確認
-
〈使用資料のあらすじ〉
「ぼくらだってオーケストラ」
てつおは、体育は得意だが楽器の演奏が苦手でリコーダーを何回練習してもうまく
吹けない。てつおは「穴が半分開いている」と声をかけるなつみを知らんぷりする
が、家に帰ってなつみが言ったことを思い出し、指の位置を確かめて吹いてみるとよ
い音が出るようになる。それからもなつみは少しも嫌がらず熱心に教える。てつおも
なつみから教わったことを一つ一つ確かめながら1週間練習を続け、吹けるようにな
「友達と助け合って生
活することができてい
るか」を、指を使って
表す。
5(よくできている)
る。自分のことのように喜ぶなつみを見て、(今度逆上がりを教えてあげよう)と考え
るてつおだった。
(出典 東京書籍「どうとく 4 ゆたかな心で」)
1(できていない)
0(わからない)
〇中心発問
「自分のことのように喜んだなつみを見て、てつおはどんなことを考えたでしょう」
〇話し合い
(類別の観点…下線を中心に問い返した)
●自分の成長に喜ぶ思い
・吹けるようになって嬉しい
●なつみの行為に感謝する思い
・なつみのおかげで吹けた
●なつみのように行動しよう考える思い
・なつみが困っていたら助けよう
●なつみの行為に疑問をもつ思い
・なぜ僕のことなのに喜んだのかな
中心発問に対する子どもの考え
(終末)〇振り返り
「友達のことを本当に考えながら、助け合って生活することができているか」
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なつみはすごいなと思いまし
K児
た。僕だったら楽譜に書いてあ
げたりはしなかったな。今度か
ら助け合いたいと思いました。
僕はあまり教えることはない
けど、いい気持ちで教えてあげ
N児
られたら相手もいい気持ちにな
るかなと思いました。
第 1 次の振り返り
第 1 次の板書
(2)第2次 友達を助け合うことの大切さについて
(導入)〇第 1 次の振り返りの紹介
Y児
僕は、人に教えるときは少しだけ面倒くさいと思ってしまうことがあって、少し悪い
ことをしているから、今度から人に教えるときは、自分が説明を聞いていると思って
人に説明をしたいな。
〇学習テーマ(主題)の提示
「友達を大切にすることができているか。
」
(展開)〇資料提示・内容確認
〈使用資料のあらすじ〉「絵はがきと切手」
9月に転校していった仲良しの正子から広子に絵はがきが届いた。その絵はがきは普通のはがきよりもずっと大きく、1
20円の料金が必要だった。しかし、絵はがきには50円切手しか貼られておらず、広子の兄が不足料金を支払うこととな
った。広子は、紅葉のきれいな高原に行ってきたという正子からの絵はがきを読み、返事を書こうとするが、「絵はがきの
お礼だけ言っておいた方がいい」と言う母と、「70円不足だったことを言ってあげた方がいい」と言う兄の話を聞き、ど
ちらがよいのか迷ってしまう。
(出典 文部省「道徳の指導資料とその利用3」)
〇中心発問
「あなたが広子なら、70円不足のことを書きますか。それはなぜですか。
」
〇話し合い
(類別の観点…下線を中心に問い返した)
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●書く
・正子のため
・別の人にも同じようにしてしまう
・優しい言葉で
●書かない
・正子が悲しむ
・友達ではなくなる
・友達なら直接伝える
・書いたら形に残る
中心発問に対する子どもの考え
・二回目があったら伝える
中心発問に対する子どもの考え
(終末)〇振り返り
「友達の気持ちを考えて、声をかけ合った
り一緒に取り組んだりして、大切にす
ることができているか」
K児
手紙だともらった人がどういう
感じで書いて送ったかが分から
ないから、直接思ったことを言
いたいです。
第2次の振り返り
第2次の板書
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実践を振り返って
(1)成果
・第1次で学んだ友達の大切さをこれまでの経験と結びつけながら第2次で考えようとする子どもの姿
や、関連する価値とのつながりでめざしたい在り方を考える子どもの姿が見られた。
・道徳的心情、道徳的判断力の観点を意図的に焦点化したことで、中心発問が精選された。
(2)課題
・1時間単位での道徳的心情・道徳的判断力の育成を意識して授業構想をする
・子どもの反応に対する問い返しの精選をし、子どもの反応の道徳的意味を明らかにする
®子どもの反応と授業のねらいとの関連を明らかにする(例:友情って?友情が深まるって?)
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