close

Enter

Log in using OpenID

問題文の内容について

embedDownload
解答のヒント
[問題文の内容について]
さっそく、問題文の内容を確認していきましょう。短い問題文ですが、筆者の鋭い問題
意識が垣間見られる文章です。社会の問題について皆さんが自分で文章を書くときの参考
になると思います。
問題文は5つの段落から成り立っています。第1段落では、この記事が書かれた当時、
韓国の旅客船沈没事故についてのニュースがよく報道されていたことが述べられています。
つまり、冒頭で一つの「現象」を提示しているのです。この現象については、第2段落で、
そこには日本人が同情しているという単純な理由ではなく、もっと別の理由があるのでは
ないかと述べられています。ここで筆者は、現象について独自の観点から「分析」を試み
ようとしているわけです。そして第3段落では、テレビ局の知人の話を引いて、ここ数年、
韓国と中国の「悪いニュース」を流すと視聴率が上がり、逆に「良いニュース」を流すと
視聴率が下がる傾向にあると述べられています。第1段落で示された「韓国の旅客船沈没
事故のニュースはよく報道されている」という個別の現象を、
「ここ数年韓国や中国の悪い
ニュースは軒並み視聴率が上がる」という、より一般的な現象につなげているわけです。
この第3段落ではニュースを見る人々の側について述べられていますが、第4段落では、
そのニュースを提供する側について述べることで、分析をさらに深めています。先の知人
は、いまの日本社会の「偏狭なナショナリズム」について、実はその傾向をマスメディア
が助長(=よくない傾向をさらに推し進めること)しているのではないか、と指摘してい
ます。テレビ局では、視聴率の稼げるニュースが分かったら、そればかりを大きく取り上
げてしまうというのです。つまり、
「韓国や中国の悪いニュースは視聴率がとれる」と判明
すれば、そのニュースをできるだけ放送しようとするのです(韓国の旅客船沈没事故のニ
ュースがよく報道される理由はここにある、と筆者は考えています)。その結果、人々のも
とには限定された情報、それも自分たちの好みに合う情報ばかりが届けられ、社会に対す
る見方が狭まってしまうというわけです。
視聴率というのは、私たちがどのようなニュースを見ることを選択したか、その結果が
反映されたものです。現代では、このように私たちの行動や情報があらゆるところにデー
タとして蓄積されています。第五段落では、これまでのテレビ局の話題をより 一般化して、
「個人の趣味や思想を拾い上げ、活用するビッグデータ時代」という、非常に広い話題へ
とつながっていきます。
ここで出てきた「ビッグデータ」について解説します。例えば、ネット通販でものを買
うと「あなたにお勧めの商品」が自動的に示されます。それが可能なのは、ネットでの購
入履歴のデータから、その人の好みや関心をコンピュータが分析しているからです。ネッ
ト通販だけではなく、ブログ等の閲覧履歴やコメント、配信サービスの利用履歴なども、
データとして企業などに採取されています。また、皆さんはポイントカードなどのICカ
ードをお持ちだと思いますが、そうしたカードを通して、各人の行動履歴が会社やお店に
データとして蓄えられていきます。このように社会に蓄えられていった巨大なデータの集
積のことを「ビッグデータ」と呼びます。
第五段落では、このビッグデータを活用した事例として、あるアメリカのドラマが紹介
されています。ビッグデータには個人の好みや関心が蓄積されていますから、そのデータ
に沿って設定や配役等を決めていけば、自然と視聴率がとれる番組ができるだろうという
わけです。実際にこのドラマは大ヒットしましたが、それでいいのだろうか、そこに創造
性はあるのだろうかと筆者は違和感を抱いています。また、そうしたものを消費する私た
ちも、一見自分の意志で自由に選択しているように見えたとしても、それは実は「自分た
ちの過去の行動データ」に選ばされているのではないか、という懸念を示しています。
[答案を作る]
では、問題文を踏まえて答案を作っていきましょう。
「問題文を踏まえて」と言いました
が、要するに筆者が最も問題意識を持っている部分に 対して意見を述べるということです。
問題文の解説でも見てきましたが、この文章は、
「韓国の旅客船沈没事故の報道がよく流れ
る」→「韓国と中国の悪いニュースは視聴率がとれる」→「視聴率を踏まえてニュースが
選択される」→「現代ではビッグデータを使って好みや関心に沿った情報やモノが提供さ
れる傾向にある」という流れで書かれています。筆者は最後の部分について違和感を示し
ていますから、この部分に関して意見を述べることになります。
問題文に対する見方は様々ですが、ここではまずその背景について考えてみましょう。
ビッグデータという言葉から想像がつくように、現代社会ではそうした巨大なデータを利
用できるまでに情報技術が発達しました。みなさんもブログやツイッター、ラインなどの
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じていろんな人とやりとりをし
ていると思いますが、いまやそのようにコミュニケーションのツールが次々と登場してい
ます。そして、膨大な情報やデータを解析するシステムも発達しています。
また、資本主義の論理が背景に控えていることも忘れてはなりません。資本主義社会の
中では利益を追求しなければ生き残ることができません。テレビ局の場合、提供するニュ
ースや番組で視聴率がとれなければ、資金を提供してくれるスポンサーがいなくなってし
まうのです。そのために視聴率を優先してニュースを選別するようになるのです。以上に
より、情報技術の発達と資本主義の論理という二つの要素が背景にあると考えられます。
では、そうした背景のもとでは、どのような問題が生じるのでしょうか。問題文では、
テレビ局が視聴率を優先するあまり、人々の「知りたいこと」ばかりを流し、
「知るべきこ
と」を流さなくなりつつあるという事例が紹介されていました。つまり、利益を追求する
ためにデータを活用する際、そこから「売れそうなもの」や世の中に「受け入れられそう
なもの」だけを単純に導き出して、そうしたものばかりを人々に提供してしまうのです。
その結果、社会の多様性へと人々の目を開いていく役割を担っているはずのマスメディア
が、逆に限定された情報、それも人々の好みや関心に合った情報を提供することで、人々
の見識を狭めることになってしまうのです。
このように、情報技術と資本主義の両輪が「悪い方向」に進むと、物事の機能や価値が
失われてしまいます。では「良い方向」に進むためには何が必要になるでしょうか。そこ
で私は、問題文の末尾で触れられていた「創造性」に注目しました。本来データ自体は善
悪を語るものではありません。そこに価値判断を加え、今の社会の問題を指摘したり、そ
の解決策を考えたりするのは人間の仕事です。例えば、韓国と中国の「悪いニュース」に
人々は食いつき、逆に「良いニュース」になるとチャンネルを変えられるということが視
聴率のデータから判明したとします。その場合テレビ局は、そのデータから今の日本社会
にはナショナリズムの気運が高まっているという分析をし、世の中に問いかけることがで
きます。これは、視聴率が稼げるかどうかとは無関係に、マスメディアとして当然果たす
べき社会的な役割を行っているということになります。
また、問題文の中では、ビッグデータを活用して、多くの人の嗜好に合うように作られ
たドラマが紹介されていました。これについては、娯楽なのだから利益を優先してよいの
であり、ニュースや報道のように機能や価値を議論するのは無意味だという意見もあるか
もしれません。しかし、私が懸念するのは、人々の嗜好に即した作品が今後も増えていく
ならば、そこに文化的な発展や成熟は見込めないのではないかということです。人々がそ
れまで思いも寄らなかった世界の見方や考え方を提示しようとする創造性を断念し、社会
に迎合しているだけでは、文化は人々にとっての単なる消費の対象に過ぎなくなるでしょ
う。
もちろん、
「創造性」が社会には必要だと言っても、企業は同時に利益も追求しなければ
ならないので、それは非常に困難な要求だという意見もあるでしょう。それならば、お金
を出してモノや情報を得ている私たち一人ひとりのあり方も問われていることになります。
意見を述べるにしろ、何かを買うにしろ、人々の考えや行動は今やデータとして社会に採
取・蓄積されています。そのデータを参照して企業活動が行われるので、私たちはややも
すれば、自分の価値観、考え方、好みなどに即したモノや情報を消費し続けることになり
かねません。そうならないためにも、私たちは、自分がただ欲求を満たすだけの消費者に
堕していないか、思考停止に陥っていないかなどを点検する必要があるでしょう。そうし
て、自分とは異なる価値観や認識、新しい発想などを積極的に求める人が増えれば、そう
した人たちの需要に応えるために、独創的なモノや多様な情報が社会に提供されるように
なるのではないでしょうか。
[最後に]
お疲れ様でした。以上の流れを指定字数の内にまとめたのが今回の解答例です。今回の
問題文は単に事実関係が記された新聞記事ではなく、世の中の現象に対する書き手の問題
意識が込められた文章でした。このような場合、筆者の問題意識がどこにあるのかを見極
めながら文章を読解していく必要があります。その際、本文解説で示したように、段落ご
とのテーマを把握し、文章全体がどういう展開になっているのかを考える ことが大切です。
(篠原
圭佑)
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
0
File Size
226 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content