最先端の研究現場から見える マイクロマシニング

2008年10月1日
株式会社トキメックは に 社名変更いたしました。
〒144-8551
東京都大田区南蒲田2-16-46
TEL.03-3732-2111 FAX.03-3736-0261
http://www.tokyo-keiki.co.jp/
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S U M M E R
Whole number 98
マイクロマシニングへの期待
1
特集
10
SCIENCE & TECHNOLOGY
科学技術基本計画
Interview
環境、エネルギーの
危機へ立ち向かうのは技術者の責務
16
Contents
13
マイクロマシニング
への期待
HOT LINE
ユニークな理美容心理テストアトラクションに
非接触式データキャリアシステムが活躍!
「マイクロマシニング」という先端テクノロジ
ーが浸透し始めている――。μ m(マイクロ
メートル= 1/1,000mm)以下の加工によ
り超微細な構造体を作り上げるこの技術は、
かつて夢のように思われていたマシンを実現
している。しかし、この先より多岐な応用を
目指すには、まだ課題が多いことも事実だ。
いま、マイクロマシニングはどこまで伸展し
たのか、その現況をレポートする。
特集 マイクロマシニングへの期待
し、また1個単位の生産となっていく。
つまり生産効率は低く、逆にコストは高
図 1 マイクロマシンの応用分野
光工学
機械工学
電子工学
くなる。
材料科学
etc......
マイクロマシニングでは、3次元構造
であってもマスクパターンのコピーで済
マイクロマシニング
み(フォトリソグラフィ)、構造の複雑
さが加工の複雑さとならない。1枚のウ
ェハから、組立工程無しに、例えば数ミ
センサやアクチュエータを備えた超微細構造体は、日本では“マイクロマシン”と呼称される場合が多
リ角のチップに数百万個の部品を集積さ
い。こうしたデバイスを作り出す技術がマイクロマシニングであり、基本的に半導体メモリ等の微細加
せるデバイスの、多量一括生産を可能と
工技術をベースとしている。具体的にはフォトリソグラフィ、エッチング、陽極接合技術などを用いて、
する。
3 次元的なマイクロ構造システムを作り出す技術だ。こうしたマイクロマシニング、マイクロマシンは、
今後のコア・テクノロジーとして応用への期待が高まっている。両者はいわば表裏一体にあるが、それ
ぞれ個別に捉えても、従来を革新する意義を持っている。それを「加工技術の側面」、「デバイスとして
の機能の側面」として概観してみよう。
光スキャナ
光スイッチ
アクチュエータ
プリンタヘッド
ディスクヘッド
ポンプ・バルブ
熱型赤外線
イメージャ
加速度センサ・
ジャイロ
もう一つ、マイクロマシニングの伸展
は、部品加工に必要な物理的スペースに
も影響を与える。従来では、ミリ単位の
部品加工でも、その製造ライン(スペー
ス)には数メートルという規模が要され
通信・
ネットワーク
プリンタ・
ディスプレイ
外部
記憶装置
医療
家電
計測制御
宇宙
自動車
る。しかし、上記のようなバッチプロセ
スの生産であれば、極端に言えば、加工
機械の大きさ分のスペースだけあればい
また、腹部に開けた数個の小さな穴から
度)、トラックを読むヘッドの正確な位
ーションという点については、様々なア
いことになる。これは、省スペース・省
内視鏡を入れ、胆のうを摘出する腹腔鏡
置決めが困難になる。マイクロマシニン
例えば、能動カテーテルがある。これ
プリケーションを開発する上で、いまの
エネルギーという点で非常なアドバンテ
下胆のう摘出術などの例が顕著なよう
グ用いμm オーダの微小なアクチュエー
とんどの場合、映画『ミクロの決死圏』
は2mm ほどの直径で、形状記憶合金の
マイクロマシニングにとっても重要課題
ージだ。ウェハ生産でも、一つの部屋や
に、マイクロマシンの活用は、患者・術
タを加工することで、超微細幅にも対応
が引き合いに出される。微細マシンとな
“筋”に通電して関節を模したリング部
の一つである。
建物を丸ごとクリーン設計にする必要は
者共に負担を軽減させながら、高度な医
させるものだ。
った潜水艇に決死隊メンバーが乗り込
を自在に曲げ、カテーテルを必要部位ま
なく、ごく限られたスペースだけクリー
療を安価に提供することにつながる。
<エネルギー効率利用>
み、人間の血管に入って体の内側から手
で導入しやすくするものだ(P5)
。こ
ン化していけばいい、といった発想にも
<マシン・メンテナンスの高度化>
術を施すというストーリーは、マイクロ
れに、直径100 μm 程度の光ファイバ圧
マシンを使った治療というロジックをイ
力センサや前方視用の超音波イメージャ
メージし易い。
を備えるような研究が進んでいる。
■ マイクロマシニングの現状について
マイクロマシンというと、おそらくほ
しかし、現段階で実用化されているマ
でいる段階だ。
この先、あるいは『ミクロの決死圏』
■従来の 生産技術を革新する
マイクロマシニングの、モノづくり
つながるだろう。
(機械製造)に与える影響をみてみよう。
半導体の超微細加工技術は、工程設計
■ 超微少マシンの利点
マイクロアクチュエータ開発では、エ
複雑な構造を持つマシンでも、マイク
ネルギー供給が問題の一つとなる。ただ
ロマシンを挿入し、わざわざ分解するこ
し、超小型であるゆえ、日常生活レベル
となく点検や部品交換が行なえる。高度
のエネルギー源としては非効率なもので
そのものが通常の(日用品レベル以上の
次に、様々な超微少な構造体(マイ
なメンテナンスを施せることで機器の廃
も、活用が見込める。例えば、身に付
イクロマシンは、ほとんどの場合、加速
のような自律走行型ロボットが製作さ
大きさの)加工と異なる。その特徴を簡
クロマシン)の実現は、どのようなリア
棄処分を減らし、ゴミの減量化にもつな
けるものであれば、マシンと皮膚の温度
度,圧力,流量等のセンサ、血中イオ
れ、治療用途で体中に入れることも可能
単に言えば、後工程(組立工程)なし
リティを持つことになるのだろうか。こ
がる。
差や歩く振動を電気エネルギーに変換し
ン濃度センサといったセンシング・デバ
となるかも知れないが、それはマイクロ
に、多数個の部品を一気に作り出すバッ
れはつまり、極端な小型化がもたらす利
<既存マシンの高スペック化>
利用するなどだ。マイクロマシン個々が
イスであり、既にさまざまな分野の製品
マシニングの進歩だけで達成されるもの
チ・プロセスにある。従来の加工ではあ
点を考えることになる。いくつかの視点
に組み込まれているが、必ずしも映画の
ではない。通信、制御、エネルギー供給、
る構造体(部品)を作り上げるのに、
潜水艇のような自律走行型ロボットとい
AI ……といった、異分野の技術統合が
まず個別の構成要素(パーツ)を加工
うわけではない。現在は、そうしたセン
必要不可欠である。そういう意味におい
し、その後にパーツを組み上げた。この
一つには、先ほどの能動カテーテルの
増やすにはより多数のデータ・トラック
マイクロマシンの開発・実用は、これ
サ部にアクチュエータ部が付加された、
て、
『ミクロの決死圏』は現在のところ
方式ではパーツが微細に、そして複雑な
ような医療応用。あるいは微量流体計測
を持てば良いが、伴ってデータ・トラッ
から本格化を迎える。図1 にその代表的
限定されたシステムとしての研究が進ん
現実的ではないのだが、ことインテグレ
構造になるほど、組立に熟練と時間を要
により、少量の血液で即時分析を行う。
ク幅は微小になり(現在約 2 ミクロン程
応用分野を示したので参照頂きたい。
2
IBM では、HDD(ハード・ディス
エネルギー源を備えれば、複数マシンに
は次の通りだ。
ク・ドライブ)の記憶容量を高める研究
よる自律的協調作業といった高度な活用
<医療応用>
を進めている。1ディスクの記憶容量を
が可能になる。
3
特集 マイクロマシニングへの期待
ミクロな力がマクロな仕事を実現する
分散制御型デバイス
マイクロマシンには制御を行う電子回路、仕事を行うアクチュエータ、それを駆動する動力源の3つの機構が集約されている。
すると、小型の発電機やジャイロとして単体で機能させたり、逆にたくさんの要素を組み合わせて機械内部の故障箇所を分解せ
ずに修理させたりすることも可能になる。ここで課題になるのが、アクチュエータや駆動力の性能向上、そして制御の方法だ。
多数のマイクロマシンを連結して作業させるためには、中央管制より局所的な分散制御がより理想的だといわれている。
能動カテーテルは、全体がシリコンラ
授の藤田博之
バーのチューブで覆われた太さが約2
氏は繊毛運動
mm の装置で、管の中に形状記憶合金
システムを開発
のコイルがアクチュエータとして内蔵さ
中だ。一個の大
れている。このコイルを伸縮させるため
きさが 6 0 μ m
に、関節にあたる部分に集積回路が組み
のマイクロリニ
込まれ、通電による発熱を行ってコイル
アモーターを
を屈曲、ねじれ回転、伸縮させることが
1 0 0 0 個以上集
できる。チューブの中に一列に並ぶ回路
めて絨毯のよう
能動カテーテル(屈曲・ねじれ回転・伸縮)
血管内治療に応用される能動カテーテル
設置スペースがわずかで済むため、必要
■ 力持ちの分布型マイクロマシンも登場
どうしは3本の共通線で連結され、電源
に並べたデバイ
マイクロマシンは行わせる仕事のやり
に応じたきめこまかな発電をその場で行
一方、マイクロマシニング技術で作ら
供給や通信制御のために使用されてい
スは、巻き付き
方で大きく2種類に分けられる。つまり
えるのが特長だ。資源の有効活用の面で
れた多数の要素が集まって、全体でひと
る。一般的なカテーテルは手元でトルク
などの運動によ
ひとりでどんどん仕事をするタイプと、
も注目される。一個所で集中発電すると
つの仕事を行う「分布型」システムの可
をコントロールするため、複雑な構造の
って約10g の力
多数で協力しあい巨視的レベルの仕事を
送電線のようなネットワーク設備が不可
能性も追究される。人間の筋肉では、
中での操作には修練が必要だ。能動カテ
が出せる。また、熱膨張率の異なる2種
て、あるまとまったデバイス群がまわり
行うタイプである。それぞれどんな特徴
欠だが、こうしたエネルギ源をたくさん
分子レベルの無数の筋繊維がいっせいに
ーテルは多関節を有し、自由に操作でき
類の材質の薄膜の間にマイクロヒーター
の状況を認識し、連鎖反応することで局
があるのだろうか。
集めたシステムを分散させればそれも不
滑りあって、大きな力を発生すると考え
る上、カテーテルの先端を取り替えて機
をサンドウィッチ状に挟み込んだデバイ
所的に運動できるようなシステムが作れ
要になるかも知れない。
られる。さらに各種神経がセンサとなり、
能を拡張できる。たとえば、小型の圧力
スを平面状に多数敷き詰めた繊毛運動
ないかという着想が生まれている。分散
■ 実用化が進む単体型のシステム
まず、
「単体型」のシステムのうち、研
究が進むものにマイクロタービンとマイ
単体で機能を発揮する種類のマイクロ
多数の関節とも連動、最適な動きを学
センサや血管を拡張するためのバルーン
システムは、加熱によってデバイスの向
制御であれば、ネットワークは身近なデ
クロ慣性センサがある。マイクロタービ
マシンには、静電力を駆動力にしてロー
習した結果、柔軟で強靭な可視レベルの
やレーザーメスを搭載する研究が進む。
きを個別に変えられるため、上に物を乗
バイス同士を結合する分だけで済む。
ンは現在、エアタービンの試作が進んで
タを回転させて、静電容量の変化から加
動きを行っている。これによって、わず
いる。東北大学で研究中のデバイスは、
速度や角速度を検出するマイクロ慣性セ
か5kg 程度の“細腕”で倍以上の物体
直径5 mm、翼高さ0.3mm の小型のシ
ンサがある。小振りで高精度な計測装置
を持ち上げることもできるわけだ。重厚
リコン製ロータを内蔵するものだ。この
は、屋外でもウェアラブルに利用できる
ロータは毎分1万回転の性能を持つが、
今後このロータに耐熱性を持たせて発電
せて移動させることができる。流体中を
たとえば、物を移動させるシステムで
高速移動する物体の表面をこうした分布
あれば、出発地点と目的地点に場所を
多数のマイクロマシンを集めると、規
型デバイスで埋め尽くして、外界の空気
知らせる信号を定期的に発信させて、遠
な産業用のロボットアームと比較する
模の大きな仕事を実現させることもでき
や水などの相互作用から生じる乱流の影
距離になるにつれ減衰するそれらの信号
センサという発想を具現化することがで
と、その機構の精巧さはこれまでの機械
る。その一例が、米テキサス インスツル
響を相殺しようという提案も行ってい
の強弱を各デバイスのセンサが感知す
きる。
システムの延長上にはない考え方が要請
メンツ社が開発したデジタル マイクロミ
る。
る。さらに、隣接するデバイスの動きの
されるという言い方もできるだろう。
ラー デバイスだ。これは約1cm 四方の
ところで、要素となるマイクロデバイ
情報と総合的に評価した上で動きを決定
■ 多数の駆動要素を分散制御する試み
できるガスタービンとして発展させよう
たとえば、人間の体に装着して他の情
という試みが行われている。シミュレー
報機器と連動させながら、姿勢情報をセ
こうした生物のメカニズムを参考にし
シリコンチップ上にアルミニウム合金製
スの数が膨大になると、制御の方法が問
させるメカニズムも考えられる。前述の
ションによるガスの流れ解析の結果、毎
ンシングする技術も不可能ではない。セ
て、マイクロマシンでこれを実現できな
の鏡を独立に駆動するシステムだ。1本
題になる。現在では、個々のデバイスに
藤田教授は、たくさんの搬送ルールを用
分 10 ∼ 100 万回へと回転数を上げると
ンサを携帯電話に内蔵しておくことで、
いかという研究が重ねられている。単体
の細い支柱で支えられた小さな鏡は、数
番地を割り当てて、それを集中制御して
意し、それらを一部組み合わせたり、変
小型エネルギ源として実用化されるとい
持ち主が起きているのか、倒れているの
型と違って、全体の統合的な制御をする
十万∼100 万個以上配列されて、それぞ
いるものが多いが、マイクロマシンの回
更したりしながら世代交代を進める遺伝
う試算が出ている。
かを遠隔地から分かるようにするアイデ
ための仕組み作りも興味ある課題のひと
れが静電力により約10 μs の短時間に角
路は小さいために、要素間を結ぶ物理的
的アルゴリズムの手法を用いて、ローカ
アもある。
つだ。
度を変えて光を反射できる。高輝度で原
な配線を際限なく用意できる空間がそれ
ルな繊毛運動システムに、理想とする搬
まず、分布型のシステムの好例として、
画像を忠実に再現する投影技術として、
ほどあるわけではない。すると少ない回
送経路を自己学習させるシミュレーショ
の小口径トンネル測量用の高精度小型
東北大学で研究される能動カテーテル、
プロジェクションディスプレイなどへ応
線にトランザクションが集中して負荷が
ンを行って成果を上げている。
熱形エンジン方式の動力源には、超小
センサなど産業機械制御への応用も期待
米テキサスインスツルメンツ社が製品化
用が進められている。
かかったり、計算量が天文学的レベルに
無数のアクチュエータの駆動制御を分
型人工衛星の姿勢制御に用いるマイクロ
される。マイクロ慣性センサの仕組みに
したデジタルマイクロミラーデバイス、
さらに、単純なルールで動作するたく
なったりして機敏な運動制御ができなく
散化させるこうした研究の行く末には、
ロケットスラスタも研究者の間で開発が
ついては次章(P6)で詳述したい。
東京大学生産技術研究所で研究される
さんの要素を集めたシステムについて研
なる心配もある。そこで、マイクロマシ
より生物に近い動きができるマシンの可
繊毛運動システムなどがあげられる。
究している東京大学生産技術研究所教
ンに搭載させる各自のセンサを利用し
能性が感じられる。
現在、材料に高温強度に優れた炭化
珪素を用いて、半導体加工技術によっ
て作製できるところまで来ている。
姿勢制御については、直径3∼4cm
進められている。マイクロマシンならば
4
5
特集 マイクロマシニングへの期待
ガラス
共通電極
容量検出回路
枠(Si)
P++Si
従来の設計思想の常識に挑んだ
ウェアラブルなマイクロ慣性センサ
ガリレオによる重力加速度の計測実験や、フーコーの振り子による地球自転の検証など、慣性空間における加速度や角速度を検
出するセンシングの研究の歴史は長い。こうしたテクノロジーがマイクロマシニング技術の応用によって、今また新たな発展を
遂げそうな兆しだ。開発が進む高精度マイクロ慣性センサは、今後、自動車、医療や福祉、ロボット、アミューズメントなど、
さまざまな分野のアプリケーションに組み込まれて、広い用途が期待されている。
■ マイクロマシニング技術と
シリコン回転子
ガラス
制御電極
リード線
ゲッタ
静電浮上型マイクロ慣性センサとロータ
角速度、加速度を1つで計測する慣性センサは、マイクロマシニングの伸展により、マイクロ化、低コスト化が図られるようになった。これにより、自動車用やビデオ用
(手ぶれ防止)など、一般民生品における活用が進んでいる。
とともに小型化のための手段として、マ
おり、ただサイズを縮小しただけでは、
センシング技術の融合
イクロマシニング技術の活用がいち早く
検出機構と支持機構との接触による外
加速度計がその一例だ。これは、静電
ジャイロや加速度計は、動く物体に搭
注目されており、1990 年代には実用的
乱値は無視できない。しかも、μ m 単
力によって球形のセンサを浮き上がらせ
ミクロの世界では、巨視的世界で使わ
載することで位置や姿勢の情報などを制
なものが登場している。加速度計にもジ
位の世界では摩擦の影響が巨視的世界
て、支持機構との摩擦を回避しているた
れる電磁力が弱くなり、アクチュエータ
御システム側にフィードバックできる装
ャイロ同様に各種の計測方式があるが、
より格段に大きくなるために、回転機構
めに、誤差が少なく高精度計測が可能
を動かすには代わりに静電力や熱膨張、
後 は、 マイクロマシニングのさらに
置である。しかし、精度情報の質は高く
小型化する場合にはそれらの本質的な原
が作動しない場合も出てくる。そこで、
になっている。
圧電効果(ピエゾ効果)などを利用す
1/1,000 オーダーの加工技術であるナノ
ても、高価であったり、装置自体が大型
理を変えないで、全体の部品をウエハ上
単純に従来方式の機構を縮小設計する
るしかない。ロータを浮かせて駆動する
マシニングの領域に進むことも念頭に置
だったりしたため、搭載できる対象が制
に作り込み、マイクロ化しようという考
だけの方向に見直しを図る必要がでてき
のに静電力を用いるのはそのためだ。
いている。
限される場合が少なくなかった。ジャイ
え方が多く採用された。最初に実用化さ
た。そして今注目されるのが静電力など
計測する慣性センサ
ロでいえば、計測方式によってもさまざ
れたのが、米アナログデバイス社が開発
を利用した、摩擦のない構造を持つ計測
ミクロの世界では、日常的な世界と異
タ 第2研究グループではそのほかにも
まな長短がある。たとえば、レーザーを
した加速度計で電子回路も一緒に集積
システムだ。
なり、摩擦力が大きくなったり、駆動力
様々な課題を制することが求められた。
応用した方式は、高精度かつ小型化が
していながら、IC チップ並みの大きさを
たとえば、トキメックが、米 B a l l
として利用される電磁力が弱まったりす
それらはいずれも原理的には知られて
可能になったもののコスト面にやや課題
実現、強震計などで利用されるmG クラ
Semiconductor 社(ボール状Si にIC を
る性質が知られている。センサの小型化、
いたが、例えば反応時のガス圧力設定や
を残す。また、回転運動や振動を利用
スを検出できる精度を持っていた。振動
作り込もうとしているメーカ)
、東北大
高精度化、低コスト化という課題をこう
電圧設定、ガスの混合比などをどうする
■ 真空中に浮上するロータで
の低電圧化や軽量化などを実現できる見
グと陽極接合だ。
通しだ。
さらに、精密な加工を行うために、今
開発に携わったトキメックMRD セン
ミレニアムプロジェクト
「革新的な技術開発の提案公募」
に採択決定!!
ミレニアムプロジェクトは、人類が
直面する課題に応え、新しい産業を生
した特殊な世界のルールに則りながら行
かといった、実際の加工技術上に難しい
変化としてとらえる原
うためには、発想の転換が必要だった。
問題があった。しかし、多角的な研究と
を目的として政府主導で推進される国
けられず、検出精度に限界があるのでは
理で、水平2軸方向
「マイクロ慣性センサ」の画期的な点
そこから獲得したノウハウを駆使して静
家プロジェクトです。その一環として
ないかとも指摘されている。それでも、
の検出が可能であるの
は、回転ロータを静電気で浮かせて機械
電力の制御に関する常識に挑戦し続け、
科学技術庁から「革新的な技術開発
さまざまな技術上の改善により、小型か
で、路面走行する自
的摩擦をなくし、高精度の計測を実現
一通りの成果を得たものだ。
プロジェクト」の提案公募が発表され、
つ安価で精度の高いセンサを提供しよう
動車の車体制御に最
しているところだ。さらに、浮上するロ
特殊な装置を要する技術などは東北大
という企業努力はさかんに行われてい
適として多用されてい
ータがジャイロと加速度計の役目を同時
学の研究施設を使わせてもらい、共同で
る。近年、圧電素子を応用した村田製
る。
に果たすため、3軸の加速度と2軸の角
研究を進めてきた。浮上させたジャイロ
可能性という観点から厳しい審査を受
した方式では、軸受けや振動検出部と支
によって生じるマスの変位を静電容量の
持機構の接触で引き起こされる摩擦が避
学とともに開発中の静電浮上型の3軸
み出す大胆な技術革新に取り組むこと
当社では「高精度ウェアラブル慣性セ
ンサに関する研究」を提案しました。
社会性、市場性、技術革新性、実現
作所の「ジャイロスター」が登場すると、
このように、主に加
速度をこれひとつで検出することが可能
による角速度の検出精度は、将来的に
け、応募総数 2 1 0 0 件の中から採択
カーナビゲーションシステムやビデオカ
速度計を中心にして、
である。ロータの回転速度は毎分 2000
は地球自転の1/1,000 である毎時0.015
提案としての認定を受けました。トキ
メラの手ぶれ防止用としてジャイロが身
慣性センサの小型化に
回転を超えている。このマイクロ慣性セ
度クラスも視野に入れている。
近な家電製品の中にも浸透し始めてき
マイクロマシニング技
ンサは、シリコン製ロータと、それを上
現在、トキメックでは、マイクロ慣性
た。
術が有効であることが
下から真空密閉するパイレックスガラス
センサの機構にさらなる改善を施したタ
よる明るく住みやすい最適化社会の実
の3層からなる。これに使われているキ
イプも開発中である。ロータの回転性能
現にチャレンジして参ります。
ーテクノロジーが反応性イオンエッチン
などは従来以上でありながら、いっそう
一方の加速度計も、小型化・高精度化
次第に認識されてき
はテーマになっていた。こちらは圧力計
た。しかし、先述のと
6
トキメックが開発中のマイクロ慣性センサ
7
メックは、マイクロマシニングを応用
したウェアラブルな慣性センサの研
究・開発を通じ、産学官共同事業に
特集 マイクロマシニングへの期待
最先端の研究現場から見える
マイクロマシニング技術の未来
半導体微細加工技術を用いて、微小な立体構造や運動機構を作るマイクロマシニング技術。その分野を先駆的に切り拓いてきた
のが、東北大学未来科学技術共同研究センターの江刺正喜教授だ。1995 年、全国のいくつかの大学内に設立されたベンチャー・
ビジネス・ラボラトリ(VBL)の、東北大学における初代所長を務め、マイクロマシニングを中心とした技術研究を進めてきた。
現在まで産学の壁を越えた幅広い共同研究の拠点となってきた。
くとわずかなエネルギでも、すばやく動
江刺 ベンチャービジネスラボラトリ自
作させることが可能になります。つまり、
体がそもそもオープンな共同研究の場で
振動や熱に対する感度や応答速度が高
す。装置も管理サイドに都合のよい使い
まる性質が現れてくるんですね。これを
方を押し付けないで、研究する学生達の
利用すると、現行のレーザー光によるビ
自主的な運用に任せています。基本的に
ットの読み書き精度よりもさらに小さな
もっともよく使うグループが責任を持っ
ナノスケールでの分解能を有する記憶装
て装置を維持して、他のグループがそこ
置に応用できる可能性があります。
にいって借りるようにしています。実験
現在、次世代ハードディスクの開発を
設備は、ブラックボックス化されてしま
―早速ですが、現在取り組まれている
研究の概要を教えてください。
維のような運動機能を司る組織や器官と
うシステムができるのではないかと考え
韓国のプロジェクトチームと一緒に取り
うと、プロセスの本質が見えにくくなる
みなせます。さらに、人間は活動のため
ています。さらに研究が進むと、将来的
組んでいますが、記憶ディスクの記憶密
というデメリットがありますから、装置
江刺 現在、次の4つのテーマを軸とす
のエネルギ源を肝臓に化学物質の形に変
には、自前で発電を行って自律的に運動
度を高めると同時に、読み書きを行うヘ
を自作したり汎用型の装置を導入して、
る研究グループを作って仕事を進めてい
えて蓄積していますが、マイクロタービ
する小さな生物型ロボットができあがる
ッドの針を複数化して転送速度を上げる
それを自分たちの手で改良を加えていく
ます。
(下表参照)
ンなどの小型エネルギ発生装置を組み込ん
かも知れません。
工 夫 を行 っています。 具 体 的 には、
ようにしています。
とになったのは、およそ20 年前に行っ
研究で網羅している内容をひとつかみ
だ機械はこれに近いものと考えられます。
必要な仕事を必要な場所だけで行うと
0.1mm 四方の平面に約 100 万本の針を
一方で、装置自体も実際の半導体製
たFET 型イオンセンサの開発がきっか
にイメージするために、人間の身体の機
このように、生物のもつシステムは参
いう発想は、エネルギ分野だけでなく医
均一に並べるような高度な技術が求めら
造に使えるような仕様の機械を多く揃え
けでした。イオンセンサを約 60 μ m と
能にそれぞれの分野を当てはめて考えて
考にできる要素がたくさん含まれていま
療分野でもあてはまります。能動カテー
れます。
ています。試作工場として機能させたい
いう小さな針先にも形成しました。こう
みるとよいかも知れません。
す。エネルギ源についていえば、人間の
テルのようなきめ細かい施術を可能にす
さらに、微細なプローブで原子の表面
という考えがあるからなんです。一般的
した微小センサをたとえば血液検査など
たとえば、視覚、触覚、嗅覚のよう
身体では蓄積した化学エネルギを効率的
る医療器具が登場すると、皮膚などを大
をなぞる場合、接点となる微小突起は、
に試作品は短期間で作る必要がありま
に利用すれば、採取する血液の量などを
な人間の五官にあたるのが超音波センシ
に変換して運動を行えるようになってい
きく開かなくても患部の治療を行える低
超高真空中でシリコン原子を電界蒸発
す。幸い半導体製造技術は、ウエハレ
少なくすることができます。当時からこ
ングや慣性センサです。また神経組織の
ます。マラソン選手のように何十km も
侵襲医療を後押しすることになります。
させたものを堆積して作ります。ここま
ベルでのバッチ生産ができますから、多
のようにマイクロマシニング技術の研究
ような情報伝達系には通信機能などを有
走ることができるわけですね。マイクロ
これによって、必要な部位だけを適切に
でくるともはやトンネル電流など量子力
量に生産でき、コストを相対的に安く抑
には異分野との融合や、シーズだけでは
する電子的な回路が該当するといえま
マシニング技術では、小型エネルギ源に、
処置できるので、ほかの健康な部位にダ
学的な効果も利用した分子のレベルの技
えることが可能です。それでも、実際の
なくニーズ発想が不可欠でした。現在も、
す。また伝えられた信号によって動かさ
たとえば分布型の静電マイクロアクチュ
メージを与えずに済むわけです。遺伝子
術、ナノマシニング技術が要求されてき
企業では、生産設備にかける投資と開発
研究テーマが異なっていてもグループ同
れるアクチュエータは生体でいえば筋繊
エータを連動させて、滑らかな動きを行
の解析研究が進む現在、副作用などを
ます。
リスクからなかなか思い切った研究がで
士お互いに情報を公開しあい、それぞれ
●平成12年の研究テーマ(抜粋)
「半導体加工技術によるマイクロマシニング システム」
少なくする個々人にマッチしたオーダー
こうしてできた触針の検出部は、共振
きないケースも少なくありません。しか
が研究を進める上でのヒントを得たり、
メイドの医療がやがて実現するだろうと
周波数がメガヘルツという高さになり、
し、そうした試行錯誤なくして新しい技
提案したりできる環境作りを心がけてい
いわれています。このように分散処理的
走査性能に優れているため、ナノ世界の
術は生まれてこないのもまた事実といえ
ます。新しい技術を育むために、今後は
■能動カテーテルと超音波プローブ
■慣性計測とマイクロ構造体
な発想や技術は今後ますます重要になる
画像をほぼリアルタイムに表示させる顕
ます。そこで、国立大学という公共性の
ますます研究情報のマネジメントが重要
能動カテーテル、カテーテル先端の位置・
慣性計測システム、容量型真空センサ、半
のではないかと感じています。
微鏡にも応用できるようになってきまし
ある場所を使って、こういう研究を進め
になってくるものと考えて取り組んでい
姿勢制御センシング、前方視超音波内視鏡
導体加速度スイッチと電気接点、シリコン
超音波イメージャ用マイクロリレー、高周
ジャイロ、静電浮上回転型高精度慣性セン
た。
られれば産業界の活性化や社会貢献にも
ます。
波スイッチ…
サ、マイクロプローバ、光スイッチ…
■マイクロエネルギ源と流体制御
■高密度記録と高感度センシング
マイクロエネルギ源、マイクロタービン発
ナノマシニングと高感度センシング、近接
電、マイクロエンジンとSiC CVD、微量
場光プローブ、ナノ計測・処理用マイクロ
分析制御システム、画像マーキング、
プローブ、極薄振動子、炭素系ナノ構造体
DNAチップ…
、赤外線ガスセンサ、分子層エピタキシ…
なるのではないかと考えてきました。
ます。シリコン以外に、耐熱性、圧電
江刺 課題となるテーマはたくさんあり
性、磁性などを有する機能性材料が用
ますから、この研究に終わりはないと思
いられることで、これから応用範囲がさ
―必要とされる情報をすぐに提供できる
環境を整えていると伺いましたが。
います。まず、小さくすることで、思い
らに広がってくるのではないでしょうか。
江刺
がけないさまざまな現象が起こってきま
―先生のところでは、研究設備のオー
プン化を図られていますが。
をずっと行ってきましたが、私がマイク
す。たとえば、部品を小さく加工してい
8
また、加工できる材料も多様化してい
―微細加工技術はどこまでミクロな世
界に迫ると考えられますか。
学生時代から半導体技術の研究
ロマシニングの研究に本格的に携わるこ
9
国立研究機関による兼業許可件数は
科学技術基本法が施行されて約 5
要である」と記されている。
み込んだ内容になっている。
達成状況をみてみると、まず、96
これらの中から現行計画の反省点
国立大学では同30,829 件から36,925
年度から99 年度までの総額が13.3 兆
と考えられるものを拾ってみると、主
ず完了する。現在、2 0 0 1 年度から
件と、少なくとも一割以上の増加が
円となっている。これに、今年3 月に
に次の二点が挙げられる。
2005 年度までを対象とする次期計画
みられる。これも順調と判断してい
成立した2000 年度予算のうちの科学
まず一つは、
「論点整理」の文言か
を策定しようという新たな段階に入
いだろう。
技術関係経費総額3.3 兆円をプラスす
ら引用すると、
「現行の計画は、国家
ると、16.6 兆円ということになる。
として重点的に取り組むべき科学技
年。同法に基づいて策定された科学
96 年度 130 件から97 年度 177 件に、
技術基本計画は、2000 年度でひとま
このほかにも、研究者等の評価に
っている。
術目標について明確に示しておらず、
そこで今回は、この「科学技術基
関して97 年 8 月に「国の研究開発全
微妙な額である。合格とも不合格
本計画」とはどのようなものか、そ
般に共通する評価の実施方法の在り
とも言い難いが、財政が逼迫してい
戦略的・重点的な取り組みが不十分
である」という点である。
して現行計画はどこまで達成されよ
月に施行された科学技術基本法に基
未成熟な段階といえるが、科学技術
方についての大綱的指針」が策定さ
る現状などを考えると、目標値にこ
うとしているのか、それを踏まえて次
づき、
「科学技術の振興に関する施策
の世界において、研究開発を活性化
れたこと、大学院在籍者数が95 年に
こまで近付けたことだけは評価して
期計画をどのような視点でとらえた
の総合的かつ計画的な推進を図るた
させるには任期制など人材を流動化
15 万3,000 人だったのが98 年には17
もよいのではないだろうか。
らいいか、をレポートする。
め」
(同法第9 条)に政府が策定した
させる変革が不可欠との判断に基づ
万 9,000 人に増えたこと、連携大学
以上ことからすると、基本計画は
でなない」ものを、果たして「計画」
ものである。計画全体としては「10
いたものである。
院制度の活用実績が95 年度 12 件だ
順風満帆に進んでいるように見える。
と呼べるかという、きわめて根源的
が、果たして本当にそうだろうか。
な問題提起につながるからである。
5 年間の支援総額は
16.6 兆円
年程度を見通したもの」とされてお
達成状況はどうかというと、97 年
ったのが98 年度には37 件に増えたこ
り、現行計画では 96 年度から 2000
から98 年の間に「大学の教員等の任
となど、さまざまな成果が得られて
そもそも、科学技術基本法および
年度までの間に達成しようとした目
期に関する法律」など三つの法律
いる。
科学技術基本計画が作られた背景に
標が多岐にわたって掲げられている。
(改正法含む)が施行された。制度面
では、目標を二つに分けたうちの
は、政府サイドの日本の科学技術に
これらの目標は、大まかに二つに
ではひとまず順調に遂行されている
と言っていいだろう。
うなことが挙げられるのか、また基本
が策定した「科学技術の振興に関す
もう一つ、
「政府の研究開発支援の拡
計画自体にどの程度意義があるのか、
る施策の総合的かつ計画的な推進を
充」に関してはどうだろうか。これ
より掘り下げるために、次期計画に
図るため」のものである。国が施策
は、基本法および基本計画の出発点
向けてどのような議論がなされている
を行うにも、その資源(行政・立法
かをチェックしてみたい。
機関のマンパワー、国の財源など)
特に基礎研究の水準が著しく欧米に
発システムの構築のための制度改革
立ち遅れていること、国立研究機関
等の推進」に関するもの、すなわち
拡充を図るための「ポストドクター
となった、基礎研究の立ち遅れや劣
の研究環境が欧米に比べて劣悪であ
ヒト、モノ、情報に関わる部分。も
等 1 万人支援計画」である。該当者
悪な研究環境などの問題にも関係す
ること、若者の科学技術離れが深刻
う一つは「政府の研究開発支援の拡
数は、95 年度に4,739 人だったのが
る重要な課題である。
であることなどで、基本法および基
充」
、すなわちカネに関わる部分であ
98 年度には9,811 人と倍以上に伸び
すでに92 年の科学技術政策大綱な
本計画は、環境問題等がより顕在化
る。以下、この二つのそれぞれにつ
ている。なお、その後、確定的な数
どでも政府研究開発投資の「早期倍
する新世紀に向けて、科学技術の振
いて、どういう目標が掲げられ、そ
値ではないが、99 年度は予算ベース
興を日本の最重要課題の一つと位置
れらがどの程度達成されたのか(さ
付ける政策としてスタートした。
れそうなのか)をみていこう。
まず、前者の「制度改革等の推進」
であるが、実際には、内閣総理大臣
に関するもののうち代表的なところ
の諮問機関「科学技術会議」がまと
を三つほど取り出してみる。
本稿の冒頭で示したように、科学
技術基本計画というのは、政府(国)
分類できる。一つは「新たな研究開
基本計画の策定を行うのは「政府」
て重点的に取り組むべき目標が明確
が、現行計画の反省点としてどのよ
対する危機感があった。具体的には、
二つめは、若手研究者層の育成、
ややフライングになるかもしれない
この指摘は重要である。
「国家とし
には限りがある。当然、種々ある課
「目標が明確でない」とは
どう意味を持つか
題のうちどこから着手するかという判
断が必要であり、それがなければ実
科学技術会議政策委員会は、99 年
効性のある計画とは考えにくい。す
増」ということは指摘されてきた。
4 月に「科学技術基本計画のフォロ
なわち、
「国家として重点的に取り組
で10,187 人という推計値が出されて
基本計画ではこれを具体的な目標の
ーアップ(中間とりまとめ)
」を公表
むべき目標が明確でない」ならば、
いる。1 万人計画はほぼ達成であろ
レベルに発展させている。基本計画
して一段落つけたあと、ワーキング
基本法第9条の規定にある「総合的」
う。
の本文には、
「21 世紀初頭に対 GDP
グループを設けるなどしてさらに検討
比率で欧米諸国並みに引き上げると
を進め、2000 年3 月24 日に「科学技
である。もちろん具体的な方法はた
の考えの下に、本計画の期間内に倍
術基本計画に関する論点整理」とい
う文書をまとめている。特に後者は、
三つめは、「産官学交流の活発化」
「計画的」の両方とも怪しくなってく
るのである。
もう一つは、主として研究者の雇
め、それを内閣がチェックし閣議決
一つは、大学や研究機関における
くさんあるが、例として国立・民間
増を実現させることが強く求められ
定という形で策定するのが通例とな
「研究者の任期制の導入」である。終
研究機関間において、共同研究促進
ている。この場合、平成 8 年度より
身雇用が一般的な日本社会では、優
のための「兼業許可」
(実際には各省
12 年度までの科学技術関係経費の総
と次期計画の検討にあたっての基礎」
いう点である。先に、三つの法律が
秀な人材を流動化させることがまだ
庁の通知などによって実現)をみる。
額の規模を約 17 兆円とすることが必
として位置付けられており、より踏
整備されたことを挙げたが、これら
っている。
科学技術基本計画は、1995 年 11
10
「現行計画のさらなるフォローアップ
11
用に関する問題で、競争的かつ流動
性のある研究環境の整備が不十分と
「科学技術の進展と高度経済成長によっ
て日本は世界に冠たる工業立国となり、
私たちの生活は確かに豊かになった。し
かし、反面で、環境破壊やエネルギー・
食糧危機といった問題が顕在化していま
はあくまで「制度面でのひとまずの
成果」であって、現実には“まだま
だ”という面があるようだ。
なお、これについては、
「論点整理」
という意味である)
。
確かに基本法には「国の責務」と
創造性教育
す。このうちのある部分は、はからずも
“技術の伸展”が生み出したもので、私
して、
「国は、科学技術の振興に関す
も含め、技術に携わる人間には、これら
る総合的な施策を策定し、及びこれ
に対処する責務があります」
。
のなかで、
「個人も機関も一層の競争
を実施する責務を有する」(第 3 条)
的環境におくことが重要」
「若手研究
と規定されてはいる。しかし、そも
者を中心に任期制の普及拡大を図る
そも科学技術を進展させていく主体
べき。これは国のみならず産業界も
は個々の研究者である。極端に言え
含めた取り組みが重要」などの具体
ば、個々の研究者の研究活動まで国
的な課題が提示されている。
がコントロールすることを認めるべき
●
環境 、 エネルギーの
危 機 へ立 ち向 かうのは
技術者 の責務
黒川氏は、深刻化する環境問題等を、
これまで前ばかり向いてきた「技術」の、
地球・社会に対する“負の遺産”と位置
付け、技術者側からのアプローチが必要
であることを主張する。さらに、今後数
十年後にわたり種々の課題に対処できる
これら二つの反省点から学べるこ
なのか、それとも研究費等の金銭的
とは、基本法および基本計画におけ
な支援にとどめるべきなのか。選択
る「国の役割」が明確でない、とい
肢はほかにもあるはずであるが、現時
可欠であることを説き、大学内の教育改
うことではなかろうか。反省点の一
点で「国が介入可能な範囲はどこま
革にも取り組んでいる。
点目でいえば、
「取り組む“目標”が
でか」についての社会的コンセンサ
明確でない」以前に「取り組む“範
スが得られているとは言い難い。ま
囲”が明確でない」ということであ
ずはこの点から問い直してみてはどう
り、二点目でいえば、
「任期制の導入」
だろうか。
人材を育成するには“創造性”教育が不
「創造性」の芽を摘んできた、
これまでの教育を改める
は終身雇用制という日本の雇用慣行
そこから、国の施策としての“基
の根幹にも関わることであり、法的
本計画”と、現実に進む種々の研究
――そもそも「創造性」ということに目を
な整備だけでは実効性に乏しい、と
課題とが、実効性を持ってリンクし
向けるようになったのはどういう理由から
考えられる(補足すれば、各大学や
ていくのだろう。
ですか。
企業の「任期制の導入」にまで国が
黒川 実は、ここ数年、学生の質がうん
[参考文献]
関与することを前提とした議論がな
▼ 科学技術庁ホームページ
されているが、それが妥当なのか、
http://www.sta.go.jp/
と下がってきたのではないかと感じてい
るんです。たとえば、留年率が、従来は
2、3割程度だったのが、近年は3割を
超えるようになって4割に近づいている。
普段の講義でも、私が何か間違ったこと
を言ったり書いたりしたとき、5年くら
い前だったら、「先生、それ間違ってま
すよ」って言われたんですが、最近は全
然それがない。
それで、留年生を全員呼び出して、一
人30 分ずつ面接をやったんです。すると
彼らの多くが、「一年生のときは高校の
延長でついていけたけど、だんだん分か
横浜国立大学 工学部 生産工学科 教授
黒川淳一
らなくなっていって、サボるようになっ
た」と答えていました。
氏(工学博士)
一言で言えば“無思考化”です。自分
12
13
すべきことです。
の考えを持っていないし、教えることを
ったと浮かれておりましたが、日本が新
鵜呑みにして自分で考えないから、何一
世紀に向けた新たな目標を設定できずに
一方で、非常に気になる点もあります。
つ頭に入らない。数学や化学でさえ暗記
いるあいだ、アメリカはIT技術という
子供たちの遊びのなかに、家庭用ゲーム
科目になっている。この現状に、非常に
見事な目標を打ち出して、日本との立場
機の占める比重が高まり、実体験が減っ
危機感を持つようになりました。
を逆転させてしまいました。これは、日
てきていることです。私たちが子供の頃
――「創造性」とは、具体的にはどのよう
米の教育システムの違いに強く根ざした
のように、外で木を切ったり、虫をとっ
なものを指すのでしょうか。
出来事だったと思います。決して日本人
たり、友だちとケンカをしたりしていれ
黒川
の創造性が、欧米に比べて劣るわけでは
ば、自然とはどういうものか、友だち、
ありません。
つまり人間とはどういうものか、といっ
科学技術の分野について言えば、
創造性には二種類あると思っています。
たことを実感できます。自然や人間は、
一つは超高度の創造性で、従来この世に
従って、個々人の自由な発想を育てる
存在しなかった新しい技術や原理原則を
こと、それがこれからの教育の本質だと
けして自分の意のままになりません。そ
生み出すもの。もう一つは、既存の技術
私は思っています。ではどうすればいい
こから子供は、他人に対する思い遣りを
アや技術を、保護し、評価するシステム
き追い越すことに執着して、次世代に日
ムを開発できていません。原子力は、化
や原理原則を基にして、新たなアプリケ
かというと、考え方としては極めてシン
学び、ものを考え、工夫する機会を得る
を構築すること。そして研究成果を「一
本的情緒を引き継ぐことを疎かにしてき
石燃料への依存を脱する点で有力な手段
ーションを作り上げることです。
プルです。自分で考える、自分の意見を
わけですが、用意されたシナリオをなぞ
企業の利益のため」だけではなく、「広
たことです。
ですが、同時に社会へのリスクもありま
大ざっぱに、後者は日本人が得意とす
持つ、そうした訓練を小さい頃から積み
るだけのゲーム機が遊びの中心になると、
く社会に還元する」システムを構築する
るところです。歴史的にみても、たとえ
重ねていくことです。ですから、今すぐ
創造するチャンスを失ったまま育つこと
ことが必要です。
ば日本は中国からたくさんの文化を吸収
従来型の教育を改めたとしても、「目標
になります。特に創造性というのは、自
し改良していく、そんなことをずっと続
設定型」の人間が育つには15 年から20
けてきたわけで、高度成長期においても
年くらいはかかることになります。
二つめは、日本という国家を代表する
す。ここで問題なのが、原子力がいい悪
各界のリーダーたちが、こうした日本の
いではなく、効率・費用という観点だけ
一方、企業の側も、大学を単に“専門
歴史や国民性を踏まえて、世界に貢献す
に立ち、他のエネルギー開発を消極的に
分でものを考えることが前提の行為で
家供給機関”ととらえず、大学の研究体
べき明確な哲学を持ち得ていないこと。
する姿勢です。本当に、原子力を代替で
す。受け身のメディアであるゲーム機、
制と実効ある連携をしていく。たとえば、
三つめは、私を含めた当の技術者たち
きるエコエネルギー・システムは確立で
同じことがいえます。この点において日
では、今の大学生では間に合わないの
テレビもそうなのでしょうが、それらが
学会などにもっと積極的に関わり、産業
が、「環境やエネルギー、食糧などの問
きないのか。もっとそうした研究への積
本は世界のトップクラスだと思います。
かというと、必ずしもそうではない。一
子供社会に氾濫している現状には危惧せ
界から「いま困っている問題」をオープ
題」を解決しうる方法を身に付けている
極的な取り組みが、また別な選択肢を持
一方、新しい技術や原理原則を生み出
人ひとりが生まれながらにして持ってい
ざるを得ません。
ンに投げかける、という方法も考えられ
し、また解決する責任があるにもかかわ
つことにつながります。そしてこれが、
すのは苦手な部分です。なぜ苦手かとい
る創造性という能力は、埋もれていても
ます。いずれにせよ、閉じた系の中だけ
らず、その責任を全うしてこなかったこ
創造性の問題でもあると思います。
うと、近年の日本の教育システムが、自
ちゃんとあるわけです。自分自身でも、
では、産学双方ともに創造性は生かされ
とです。
由な創造性の芽を摘んできたからだと思
教育する側でも、それを掘り起こして伸
います。学校では、奇抜な行動や考えは
ばす。何でもいいから何か一つ自信を持
得てして顧みられず、均質な優等生を育
つと、そこから創造性は育っていきます。
てることを目標としてきました。家庭で
これは私自身が経験してきたことです。
も、成績の向上が教育の目標になってい
地球環境の危機に
日本の技術者が担う役割とは
こうしたことを、技術者は責務として、
このうち、私でいえば、責任があるの
社会に対してきちんと情報を発信してい
――環境、エネルギー、食糧の危機は、そ
は一点目と三点目です。多くの技術者、
いくべきです。まずは個々の技術者が、
――個々の創造性を結集し、実際の成果と
の対応が、大学や企業はもとより「国家」
特に40 歳代以上の人たちも同様に、こ
「国が危機管理をできるか否か、それに
して社会に反映させていく舞台が「大学」
というところにまで至ります。このなかで、
の二つに当てはまるのではないかと思い
関与できる立場にある」ことを、認識す
もう一つ大事なことが、忍耐力。忍耐
と「企業」だと思われます。現在の産学共
特に日本の技術者が担うべき役割とはどの
ます。一点目は先ほど触れた通り、そし
るべきだと思います。そうあることで、
ます。欧米の教育はこれと対照的です。
強く努力する姿勢を持たせることです。
同研究システムのなかで創造性を維持、発
ようなことだとお考えですか。
て三点目は、まさに技術者全般に責任が
子供の頃から、自分の意見を持つ、他人
一つのことを深く考え続けるうちに「ひ
展させていくためにはどうしたらいいとお
黒川 日本人の世界観というのは、本質
ある問題です。
との違いをはっきりさせることを家庭で
らめき」を得て、問題を解決できるケー
考えですか。
的に「人間と自然との調和」を根底にし
も学校でも求められる。日本で従来型の
スは多々あります。その「ひらめき」を
黒川 現在の産学共同研究システムの最
ており、欧米が「自然は征服するもの」
げ、殊に日本は高度経済成長と相まって、
教育が続く限り、新しいものや原理原則
得るまでがんばり続けられるかどうか。
大の問題点は、個々の教員と企業との一
としてきたのと対照をなしています。こ
私たちは豊かな生活を享受できるように
を創造するという発想自体が育ち難いと
創造的なアイデアの獲得は、ここにかか
対一の結びつきによって成り立っている
の点において、むしろ「日本人は人類の
なりました。しかし同時に、環境問題な
思います。
っていると思っています。
例が多いことです。しかし、このやり方
持続的発展に最も貢献しうる立場にい
ど“負の遺産”をも抱えました。地球環
――学生が無思考化していると言われまし
――すると当面は、日本が創造的な仕事を
ではもう、技術が複合化・複雑化する課
る」というのが私の基本的な認識です。
境の破壊という人類全体が初めて直面す
たが、まず自分の考えを持ち、そこから目
するのは困難ですか?
題に対応できないはずなんです。そこで、
しかし現在、人類の持続的発展という課
る大問題に対して、政治家に任せておく
標設定をすることが重要だ、という認識で
黒川 ただ、現在向かっている方向とし
大学の側では、個々の教員が対応するシ
題に対して日本は世界をリードできてい
のではなく、技術者が積極的に発信して
すか。
ては、兆しが見えてきているとは思いま
ステムから、複数の教員連合や学科、学
ません。その理由は三つあると思います。
いく必要と責任があると思います。
そうです。1985 年頃、アメリカ
す。たとえば、学歴信仰が崩れつつあり、
部、あるいは大学間連合としてプロジェ
一つは、繊細な感受性と豊かな情緒は
1つの例ですが、先頃ドイツ政府は35
は自動車やコンピュータで日本に負けた
グローバリゼーションがさらにそれを後
クト研究に取り組む、そんな体制に転換
いまの若い世代のなかにも息づいている
年以内に原発を撤廃することを打ち出し
と、自覚した時期がありました。その後
押しして、真に実力のある人材を要求す
すべきだと思います。そのためには、研
はずなのに、われわれはこのことを正し
ました。ただ、現在のところ、原子力に
95 年くらいまで日本は世界のトップにな
るようになってきているのは、大変歓迎
究のなかから生まれてくる新しいアイデ
く認識してこなかったし、欧米に追い付
取って代われる有効なエネルギーシステ
黒川
14
ないと思います。
「産」でも「学」でも、例えば、政策決
定に有効な情報を提示していく、そんな
今世紀、科学技術は大変な進展を遂
15
流れが出てくるのではないでしょうか。
●
創造性教育
information
イラストロジック クイズ
パレットタウン・ネオジオワールド東京ベイサイド「シザースマジック」
ユニークな理美容心理テストアトラクションに非接触式データキャリアシステムが活躍!
臨海副都心「お台場」のシン
いるのは、6/24 にオープンし
らのデータを基にして入場者の
ック。生まれ変わった新しい自
ボルであり、いまや東京のラン
たばかりの体験型アトラクショ
キャラクターにマッチしたヘアス
分の姿にビックリすること請け
ドマークと言っても過言ではな
ン「シザーズ・マジック」です。
タイルを提案してくれるという
合いです。最後のカルテコーナ
い大観覧車。
これは、理美容シミュレーショ
仕掛けです。
ーでは、先ほどのヘアスタイル
「ネオジオワールド東京ベイ
ンに心理テストをミックスした
ハイライトは何と言ってもビ
が合成されたカラー画像や心理
サイド」は、この大観覧車が目
アトラクションで、自分では気
ューティサロンのブース。鏡の
判断、行動のアドバイスなどが
印のパレットタウン内にある屋
づいていない本当の姿と、それ
前の椅子に座ってパスポートを
記されたカウンセリングシート
内型総合エンターテインメント
を表現するためのヘアスタイル
ホルダーに入れると鏡の中に予
が発行されます。
パークです。このアミューズメ
を提案してくれるというユニー
約してあった美容師が現れ、あ
これからが夏休み本番。親し
ント空間でトキメックの非接触
クなものです。データキャリア
たかも本当にヘアデザインをし
いお友達やご家族で「ネオジオ
式データキャリアシステム ID-
の電子コインは受付けで渡され
ているようなパフォーマンスを行
ワールド東京ベイサイド」にご
5000 が活躍しています。ID-
るビューティーパスポートに内
います。すると、いつの間にか
来場いただき、ぜひ「シザース
5000 は、データ通信をスペク
蔵され、入場者はこれを持って
入場者本人の鏡像に新しいヘア
マジック」を体験されてみては
トラム拡散方式によって非接触
会場内の各ブースを廻ります。
スタイルが合成されて現れてく
いかがでしょうか。
で行う新しいタイプの情報通信
そこでは、お気に入りのカリス
るのです。まさにシザースマジ
機器。データを記憶した電子コ
マ美容師を選んだり、カウンセ
取材協力:株式会社 SNK 殿
《 ご 案 内 》
インを移動体に取り付け、それ
リングコーナーで生活習慣や嗜
をフロントエンド(アンテナ)
好など数々の質問などに答えて
に近づけるだけで情報の送受信
いきます。パスポートに内蔵さ
を行うというものです。
れた電子コインには回答したデ
お台場海浜公園駅から徒歩約 7 分
ータが書き込まれ、最後にそれ
臨海高速鉄道 東京テレポート駅から徒歩約 3 分
この ID-5000 が採用されて
1
1
1
12
312
32
2
場 所:「パレットタウン」ネオジオワールド東京ベイサイド内
営業時間: 10:00 ∼ 23:00
交 通:新交通「ゆりかもめ」 青海駅から徒歩 0 分
12
28
3 10
1 12
2 13
1 13
37
25
14
43
7
12
4
6
8
8
9
10
9
7
3
6555
339223 5721347 67 1
2 3 4 4 5 6 7 8 8 6 6 3 1 1 1 1 11 9 7 5
by S.Hattori
●問題
マス目を以下のルールに従って塗りつぶしていくとイ
ラストが表れます。それが何のイラストかをお答えく
ださい。
●ルール
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1.非接触式データキャリアシステム ID-5000
2.データキャリアの電子コインが内蔵された「ビューティパスポート」
3.実在する8人のカリスマ美容師の中からお気に入りを予約。
4.趣味や嗜好などの設問を、YES、NOで回答。
5 .鏡の中に現れた美容師がパフォーマンスを行い、新しいヘアスタイルを合
成画像として見せてくれる。
6.ヘアスタイルの合成写真と共に、性格判断やファッションアドバイスなど
が記されたビューティカルテが出される。
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①縦列、横列に並んでいる数字の1つ1つは、それぞ
れの列の中で連続して塗るマスの数を表わします。
②1つの列に2つ以上の数字があるときは、その数字
の並び順通りに、数字が指定しているマスの数を塗っ
ていきます。ただし、違う数字の指定によって塗られ
たマス(のかたまり)同士は、その間に1マス以上の
空きを作ることが条件です。
●ヒント
イラストは“夏の風物詩”を描いています。
※数字の合計が大きく、また連続して塗る数の大きな
列に注目。塗るマス(のかたまり)をこの列のどこに
配置するにしても、1)
、2)のルールから、必ず塗れ
るマス(絶対に塗れないマス)というのが存在する。
これを順次見つけていくのがポイント。
■回答と応募の方法
答えを、ハガキ、FAX、Eメールいずれかの方法で、
(株)トキメック 総務部 広報グループ宛にお送り下さ
い。その際、本誌へのご感想も添えて頂ければ幸いで
す。
ご応募頂いた方の中から、抽選で100名の方に、弊社
オリジナル・テレホンカードを差し上げます。締切
は、2000年8月31日と致します。
●解説用の例題
①右図の場合、まず上側の数字の「5」に注目。タテ列のマス目
3
6
の数は5、指定の数も5だから、この列は全部塗りつぶすことに
なる。②次に左側数字の一番上、
「1」に注目。このヨコ列にお
いて1マス塗るという指定だが既に①で1マス塗れているから、
このヨコ1列は他のマスは塗られないことがわかる。そこで全
部×を付けておく。③次に左側の上から2番目「4」に注目。既
に塗られている1マスが、数字が指定する4マスの内の1つである。ということで、この列にも絶対に塗られな
いマスが存在するのでそこに×を付ける。このようにして、塗れるマスを論理的に見つけていく。
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TOKIMEC REPORT
2000 SUMMER
「IT 革命」が流行語になっている。直訳すれば
「情報提供技術」ということになるのだろうが、その
「情報」は「意味」を伴わなければ価値が無い。
意味をくみ取れない情報はノイズに等しい。あたかも
技術と“意気込み”だけが上滑りしている感がある。
騒音公害のように情報過多状態に慣れてしまい、価
理由の1つに、何をインフォメーションするのか、コ
値ある情報に対してまで無反応になってしまうという
ミュニケーションの目的は何なのか、という肝心なビ
のでは悲劇だ。IT はこうした膨大な情報を上手にコ
ジョンが不明瞭なことが挙げられる。
ントロールする術を与えてくれる。しかし、大事なの
確かにストックされる情報量は多いほどよく、しか
はあくまでも実現すべきビジョンや理念だ。それを置
も検索システムの高度化によって、テキストだろうが
き去りにしたまま、いくらハードやインフラが充実し
画像だろうが、計算結果であっても、リアルタイムに
ても、
「革命」など絵空事であるかのようだ。
欲しいものだけを簡単に取り出せる。モバイル端末を
日本のインターネットユーザはおよそ1,500 万人。
利用すれば、いつでもどこでも誰とでもアクセスでき
そしてホームページは無尽蔵のごとくある。しかし、
る。しかし、それは果たして「革命」と呼べるものだ
その両者が強くバインド(結合)されている例は非常
ろうか。
に少ない。ただ情報を提示するというだけでは、それ
情報があまりにも過多に、無方向に溢れすぎると、
こそB to Cのビジネスなど成立し得ないことはもはや
光の波長のでたらめな氾濫が白色光を生み出すよう
明白だ。どの情報を使い、どんなコミュニケーション
に、相互の特色をうち消し合う。個々の情報は意味
を築き上げるか、そうした明確な設計思想のもとに道
を持っているのにかかわらず、無秩序な集合によって
具としてのIT が構築され、そうして初めて“革命的
混沌が生まれてしまう状態だ。
な”成果が生じるのだろう。
平成 12 年 7 月発行(通巻 98 号)
発 行/
株式会社トキメック 総務部 広報グループ
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発 行 人/ 鈴 木 富 雄
編 集 人/ 田 中 伸 幸
編 集 協 力/
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