close

Enter

Log in using OpenID

子どもの歌と音階の関わり

embedDownload
25
子どもの歌と音階の関わり
6 月の歌を中心として
林
1.
智草
はじめに
幼稚園教育要領において、音楽は「表現」の領域に属し、その活動を通して豊か
な感性や表現力を養うことを目標としている。そのために、幼稚園では子どもたち
の音楽への興味や関心を引き出そうと、童謡を歌う、楽器を演奏する、音楽を聴く
と い っ た 様 々 な 音 楽 活 動 を 行 っ て い る 。そ し て 、
「 幼 児 期 に お い て 、音 楽 に か か わ る
活動を十分に経験することが将来の音楽を楽しむ生活につながっていく」と幼稚園
教育要領にも記されているように、音楽との関わりは一時的なものではなく、生涯
にわたって音楽に親しむ姿勢を養うことを目指している。それは、幼稚園教育のみ
ならず中学校、高等学校での音楽科の学習指導要領においても生涯を通して音楽を
愛好する態度を育むことを目標としており、すなわち、学校教育での音楽が目指す
ところは「音楽に親しむ恒久的な姿勢を培うことである」と言える。
家庭での音楽環境の在り方にもよるが、多くの子どもたちにとって音楽との関わ
りは、おおよそ 3 歳頃から始まる。幼稚園や保育園で先生や友だちと一緒に歌を歌
う、音楽教室で学ぶなど、それまでの受動的な活動から能動的な活動へと変化して
いく時期である。それゆえ、幼少期の音楽体験は、その後の音楽との関わりを大き
く左右する重要な役割を担っている。そして、保育者養成校では子どもたちに音楽
の楽しさを伝えられるような保育者を育成するべく、音楽の基礎的な知識や実践的
な力を身につけるための科目が開講されている。その中で、童謡の弾き歌いは教育
実習、さらには就職後にも求められる重要なスキルである。そのため、養成校での
音楽実技に関する科目は童謡の弾き歌いを主軸として指導が行われている。
保育者養成校である本学も、
「 器 楽 Ⅰ 」、
「 器 楽 Ⅱ 」と い う 科 目 名 で ピ ア ノ レ ッ ス ン
を主体とする授業を開講している。このうち、2 年生を対象とした通年科目「器楽
Ⅱ 」 に お い て 、 約 100 曲 の 子 ど も の 歌 ( 以 下 、 年 間 課 題 曲 ) の 中 か ら 20 曲 以 上 の
習 得 を 目 指 し 、 授 業 を 展 開 し て い る ( 表 1 を 参 照 )。 こ の 年 間 課 題 曲 は 、『 簡 易 伴 奏
に よ る こ ど も の 歌 ベ ス ト テ ン 』( ド レ ミ 楽 譜 出 版 社 ) に 収 め ら れ て い る 65 曲 を ベ
ー ス と し て い る 1 。そ し て 、そ れ に 加 え て 保 育 現 場 で よ く 歌 わ れ て い る 曲 、ま た 時 代
の流行なども考慮し、選定されている。しかし、年間課題曲の中には現在、幼稚園
ではほとんど歌われていないと思われる曲も含まれている。この課題曲一覧が作成
こ の 曲 集 に は 85 曲 が 掲 載 さ れ て い る が 、流 行 歌 や 現 在 あ ま り 歌 わ れ て い な い 童 謡
な ど 20 曲 は 年 間 課 題 曲 か ら 除 外 し て い る 。
1
26
された時期については不明であるが、おそらく近年の実態との照らし合わせは行っ
ていないものと考えられる。
そこで、本稿では教育実習を行った学生からの聞き取り調査を通して、現在幼稚
園で歌われている童謡の実態について調査を行う。そして、その結果を基に年間課
題曲と照らし合わせ、今後の授業計画や展開について検討したい。
また、幼稚園でどのような曲を歌うかについては、各園の判断に任されており、
小学校以降のように共通教材と呼ばれるものは存在しない。日本における音楽教育
は 、1879 年 に 我 が 国 初 の 音 楽 研 究 機 関 で あ る 音 楽 取 調 掛 が 設 置 さ れ た こ と に よ っ て
開 始 さ れ た 。そ し て 約 140 年 が 経 過 し た 現 在 、日 本 に は 多 種 多 様 な 音 楽 が 流 布 し て
いる。そのため、幼稚園で歌われる曲も時代の流行を取り入れて選曲されているの
で は な い か と 推 測 す る 。そ こ で 、楽 曲 に 使 用 さ れ て い る 音 階 に 着 目 し て 分 析 を 行 い 、
それら楽曲ジャンルの大別を試みる。
なお、本稿の目的である子どもの歌の実態を解明するためには、1 曲でも多くの
作品を調査対象とした方が良いだろう。しかし、本学で定めている年間課題曲に限
っ て も 100 曲 に 上 り 、本 稿 の み で 全 て を 分 析 す る こ と は 困 難 で あ る 。そ こ で 、5、6
月に教育実習を終えた学生に対し、実習中に弾き歌いを行った曲について調査を行
った。
そ の た め 、 本 稿 で は 5、 6 月 に 歌 わ れ る 作 品 に 対 象 を 絞 り 、 分 析 お よ び 考 察 を 行
う。
2.
6 月期における子どもの歌
2. 1. 調 査 の 目 的
幼稚園において 6 月期(初夏)に歌われて いる童謡について、その実態を把握す
ることを目的として、調査を実施した。
2. 2. 対 象
2014 年 5 月 お よ び 6 月 に 3 週 間 の 幼 稚 園 教 育 実 習 ( 本 実 習 ) を 行 っ た 111 名 の
学生を対象とした。なお、6 月末から 7 月に実習を行った者については本調査から
除外した。
2. 3. 内 容
実 習 前 の 幼 稚 園 で の オ リ エ ン テ ー シ ョ ン に お い て 、園 か ら 実 習 中 に 歌 う 曲( 童 謡 )
の指定があったか否かを問い、指定があった場合はその詳細を記入させた。
27
また、事前に指定された曲以外に実習中で演奏(弾き歌い)した曲がある場合に
は 、 そ れ も 併 せ て 記 入 さ せ た ( 付 録 1 を 参 照 )。
表 1
平成26年度 器楽Ⅱ 年間課題曲一覧
年間指導課題曲一
覧
4月
5月
6月
7・8月
9月
10月
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
せんせいとおともだち
あくしゅでこんにちは
山のワルツ
めだかのがっこう
やぎさんゆうびん
おはながわらった
森のくまさん
はたけのポルカ
チューリップ
ちょうちょう
手をたたきましょう
こいのぼり
そうだったらいいのにな
こぶたぬきつねこ
ことりのうた
おかあさん
ゆりかごのうた
すうじの歌
とけいのうた
はをみがきましょう
かたつむり
あめふりくまのこ
アイスクリームのうた
すてきなパパ
大きな古時計
ニャニュニョの天気予報
あまだれぽったん
みずあそび
たなばたさま
うみ
南の島のハメハメハ大王
アイアイ
シャボンだま
とんでったバナナ
おつかいありさん
ありさんのおはなし
ぞうさん
おばけなんてないさ
きらきら星
虫のこえ
山の音楽家
夕焼け小焼け
ふしぎなポケット
とんぼのめがね
ドコノコキノコ
大きな栗の木の下で
七つの子
宇宙船のうた
ちいさい秋みつけた
まっかな秋
10月
11月
12月
1月
2・3月
生活のうた
楽しいうた
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
77
78
79
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
96
97
98
99
100
おなかのへるうた
大きなたいこ
おんまはみんな
こおろぎ
どんぐりころころ
まつぼっくり
バスごっこ
線路は続くよどこまでも
いぬのおまわりさん
たきび
やきいもグーチーパー
小ぎつね
北風小僧の寒太郎
ジングルベル
あわてんぼうのサンタクロース
きよしこのよる
お正月
おもちゃのチャチャチャ
コンコンクシャンのうた
ゆき
雪のペンキやさん
雪の小ぼうず
まめまき
赤鬼と青鬼のタンゴ
手のひらを太陽に
うれしいひなまつり
いちねんせいになったら
おもいでのアルバム
カレンダーマーチ
ありがとう・さようなら
さよならぼくたちのようちえん
春がきたんだ
おはようのうた
おはよう
おべんとう
よいこのあいさつ
おかたづけ
おかえりのうた
さよならのうた
おててをあらいましょう
おやつ
となりのトトロ
夢をかなえてドラえもん
アンパンマンのマーチ
小さな世界
ビビディ・バビディ・ブー
ミッキー・マウス・マーチ
はらぺこあおむし
にんげんていいな
ぼくのミックスジュース
2.
28
4. 実 施 時 期
2014 年 6 月 、 教 育 実 習 終 了 後 に 行 っ た 。
2. 5. 調 査 の 結 果
調 査 を 実 施 し た と こ ろ 、5、6 月 期 に 実 習 を 行 っ た 学 生 111 名 中 、108 名 か ら 回 答
が 得 ら れ た 。回 答 率 は 97.3% で あ っ た 。ま ず 、教 育 実 習 先 を 表 2 に 示 す 。な お 、複
数の実習生がいる園については「1 園」としてカウントした。
表 2
地域別実習園数
地域名
実 習 先 (園 )
地域名
実 習 先 (園 )
群馬県
46
秋田県
2
栃木県
19
福島県
2
埼玉県
10
長野県
2
新潟県
6
宮城県
1
茨城県
3
福井県
1
本学は群馬県南東部に位置し、栃木県、茨城県、埼玉県との県境にも近いため、
学生もその周辺から通学している。学生の多くはそれぞれの出身地で教育実習を行
っているため、実習先地域も群馬を筆頭とし、栃木、埼玉と続く。
そして、教育実習中の童謡の弾き歌いを行 ったか否かについて、表 3 に調査結果
をまとめた。教育実習前に実習園でのオリエンテーションにおいて、実習までに童
謡 を 練 習 し て お く よ う に 言 わ れ 、曲 を 指 定 さ れ た 学 生 は 77 名 お り 、回 答 者 の 71.2%
であった。一方、オリエンテーションではそのような指示を受けなかったが、実習
中 に 童 謡 の 弾 き 歌 い を 行 っ た 者 は 27 名 で あ っ た 。 そ し て 、 実 習 中 に 弾 き 歌 い を 一
切 行 っ て い な い 学 生 は 全 体 の 3.7% 、 4 人 の み で あ っ た 。 つ ま り 、 全 体 の 96% の 学
生が実習中に童謡の弾き歌いを行っている。教育実習生が本実習で取り組む活動の
うち、ピアノの弾き歌いは多くの園で求められるものであり、重要な位置を占めて
いると言える。また幼稚園教育要領において、音楽は「表現」の領域に位置し、生
活の中で音楽に親しむ態度を育てることをねらいとしているが、実習生の多くが教
育実習中にピアノの弾き歌いに取り組んでいることからも、幼稚園教育に占める音
楽の役割やその重要性を窺い知ることが出来る。
29
表 3
教育実習での弾き歌いの有無
質問
回答
人数
割合
オリエンテーションで曲の
指定があった
はい
77 人
71.3%
いいえ
31 人
28.7%
はい
104 人 2
96.3%
いいえ
4人
3.7%
実習中に弾き歌いを行った
さらに、教育実習中に弾き歌いを行った曲 を回答者の多い順から並べ、表 4 にま
とめた。同一の園に複数の実習生がいる場合もあるが、配属クラスや年齢によって
歌っている童謡が異なることもあるため、そのような状況は考慮せずにカウントし
た 。な お 、調 査 結 果 を 集 計 し た と こ ろ 曲 目 は 総 勢 97 曲 に 上 っ た が 、紙 面 の 都 合 上 、
同 一 の 曲 目 を 2 名 以 上 が 回 答 し た も の の み に 絞 り 、50 曲 の タ イ ト ル を 一 覧 に 掲 げ た 。
また、実習先の「園歌」を弾き歌いしたとの回答もあったが、幼稚園独自の歌は除
外した。
2. 6. 考 察
本 学 の 教 育 実 習 は 、例 年 6 月 の 第 1 週 か ら 第 3 週 に 行 わ れ て い る 。そ の た め 、
『か
たつむり』や『あめふりくまのこ』といったように梅雨の時期にふさわしい曲が多
く 歌 わ れ て い る 。 ま た 、 6 月 4 日 は 「 虫 歯 予 防 デ ー 」、 6 月 10 日 は 「 時 の 記 念 日 」、
そ し て 6 月 第 3 日 曜 日 は「 父 の 日 」で あ り 、表 か ら も そ れ ら 記 念 日 に 合 わ せ た 曲 が
歌われていることが見て取れる。
表中の網掛け文字は、本学の 2 年次科目「 器楽Ⅱ」の年間課題 曲に含まれている
曲 目 で あ る こ と を 意 味 す る 。 表 4 に 掲 げ た 50 曲 の う ち 、 年 間 課 題 曲 の 約 7 割 を 占
めている。また、6 月の歌に限った場合、本学の年間課題曲と幼稚園で実際に歌わ
れいる童謡はおおよそ一致していると言える。
し か し 、『 か え る の が っ し ょ う 』 は 約 3 割 の 学 生 が 実 習 中 に 弾 き 歌 い を 行 っ て い
るが、本学の年間課題曲には含まれていない 。この曲は約 4 割の実習園で歌われて
おり、6 月の定番曲であることがわかる。今後は課題曲に含めることが望ましいと
考えられる。
104 人 の う ち 、
「 オ リ エ ン テ ー シ ョ ン で 曲 の 指 定 が あ っ た 」と の 質 問 に 対 し て「 は
い 」 と 答 え た 77 人 を 含 む 。
2
30
表 4
実習中に弾き歌いを行った曲目
曲目
季節
回答数
曲目
季節
回答数
かたつむり
6 月
50
森のくまさん
4 月
4
あめふりくまのこ
6 月
41
宇宙船のうた
10 月
3
おべんとう
生活
35
ことりのうた
5 月
3
かえるのがっしょう
-
34
ドレミのうた
-
3
時計のうた
6 月
33
虹の向こうに
-
3
おかえりのうた
生活
32
はたけのポルカ
4 月
3
はをみがきましょう
6 月
25
ミッキー・マウスマーチ
その他
3
すてきなパパ
6 月
21
むすんでひらいて
-
3
おはよう
生活
15
ゆりかごのうた
5 月
3
さよならのうた
生活
15
アイスクリームのうた
6 月
2
大きな古時計
6 月
14
ありさんのおはなし
7・8 月
2
おはようのうた
生活
14
いつでもなかよく
-
2
あまだれぽったん
6 月
12
歌えバンバン
-
2
12
お父さん
-
2
きらきら星
あなたのお名前は
-
9
子犬のマーチ
-
2
ちょうちょう
4 月
7
小鳥の結婚式
-
2
しゃぼん玉
7・8 月
6
そうだったらいいのにな
5 月
2
おたまじゃくし
-
5
たなばたさま
7 月
2
おむねをはりましょう
-
5
チューリップ
4 月
2
さんぽ
-
5
名前っていいな
-
2
手をたたきましょう
5 月
5
ねむれ
-
2
ニャニュニョの天気予報
6 月
5
ぼくのミックスジュース
その他
2
アンパンマンのマーチ
その他
4
虫歯建設株式会社
-
2
くじらのとけい
-
4
勇 気 1 0 0%
-
2
めだかの学校
4 月
4
よいこのあいさつ
生活
2
同様に、
『 あ な た の お 名 前 は 』も『 か え る の が っ し ょ う 』ほ ど で は な い が 、
約 1 割の園で歌われている。調査結果の中に、群馬県前橋市内で実習を行
った学生から、
『 あ な た の お 名 前 は 』は『 お は よ う 』な ど の 生 活 の 歌 と 同 じ
く、毎日の生活の流れの中に出てきたとの回答があった。この曲が歌われ
る 場 面 の 具 体 的 な 内 容 に つ い て は こ の 回 答 の み で あ り 、他 の 8 名 が ど の よ
う な 時 に こ の 曲 を 歌 っ た の か 詳 細 に つ い て の 調 査 は 出 来 な か っ た 。し か し 、
中村、白石らは、新年度のクラス替えの頃に「先生が歌いながら子どもの
名前を呼び頬や頭をなでてスキンシップをする」ため
31
の 歌 で あ り 、手 遊 び 歌 の 一 つ と し て い る 3 。ま た 、村 田 も 4 歳 児 の 1 学 期 に
取 り 組 む 活 動 と し て『 あ な た の お な ま え は 』を 挙 げ て い る こ と か ら 4 、こ の
曲の役割は中村、白石らと同様であると考えられる。学生からの回答にあ
ったような「生活の歌」としての用いられ方は稀である可能性もある。し
かし、いずれにせよ保育者と子どもたち、もしくは子どもたち同士のコミ
ュニケーションを図るための曲であると言える。保育者の呼び掛けに対し
て返事をすることは、
「 表 現 」の み な ら ず「 言 葉 」の 領 域 に も 関 わ っ て く る
活動であり、この曲のもつ役割を考慮して年間課題曲に含めることを検討
したい。
一 方 、『 ち ょ う ち ょ う 』 は 年 間 課 題 曲 で は 4 月 の 歌 と 指 定 し て お り 、 多
く の 童 謡 集 で も 春 の 歌 と さ れ て い る 。し か し 、
『 ち ょ う ち ょ う 』の メ ロ デ ィ
ーのみを残し、歌詞を「おきよ」と替えて歌われているとの回答がいくつ
か存在した。学生への聞き取り調査によると、子どもたちに活動の区切り
や転換を知らせるための、一種の生活の歌として歌われていることが明ら
か と な っ た 。現 在 、こ の 曲 の 歌 詞 は 1 番 の み で あ る が 、1 8 8 1 年 に 音 楽 取 調
掛によって編纂された『小学唱歌集
ており、そこに「おきよ
おきよ
初編』には、2 番の歌詞も掲載され
ねぐらの
すずめー」という歌詞があ
る 5 。替 え 歌 の「 お き よ 」と 歌 詞 が 部 分 的 に 一 致 し て い る た め 、元 の 歌 詞 の
流れを汲んでいるようにも思えるが、偶然なのか否か定かではない。今回
調査を行った中で、このような替え歌の例は『ちょうちょう』のみであっ
たが、よく知られた童謡の歌詞を替えて歌うことは、慣習として行われて
い る よ う に 思 わ れ る 。既 に 述 べ た よ う に 、
『 ち ょ う ち ょ う 』は 春 先 に 歌 わ れ
る曲であるが、幼稚園では季節の歌として以外の歌われ方(用いられ方)
が な さ れ て い る 。実 習 に 向 け 、と か く 実 習 時 期 に あ っ た「 季 節 の 歌 」、そ れ
に加えて朝、お昼、帰りに歌われる「生活の歌」の 2 点に絞って準備を行
浩 美 ・ 白 石 景 一 2013 「 保 育 者 養 成 校 に お け る 音 楽 指 導 法 の 研 究
第 7 報」
『 長 崎 女 子 短 期 大 学 紀 要 』 第 3 7 号 長 崎 女 子 短 期 大 学 p. 95
4村 田 健 治
2 011 「 幼 児 期 か ら 小 学 校 へ の 接 続 期 に お け る カ リ キ ュ ラ ム
の具体」
『 奈 良 県 立 教 育 研 究 所 個 人 指 定 研 究 』 第 19 号 奈 良 県 教 育 委 員 会
5音 楽 取 調 掛 ( 編 )
1884 『 小 学 唱 歌 初 編 』 文 部 省 p. 17
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー
ht tp : // kin da i.n dl .go .j p/ info :nd lj p/ pi d/ 9 9 2 05 1 / 20
3中 村
32
いがちであるが、日頃から季節を問わず、幅広く童謡を習得するよう努め
ることが求められると言える。本学では「器楽Ⅰ」においてピアノ演奏に
関する基礎を学び、
「 器 楽 Ⅱ 」に お い て 童 謡 の 弾 き 歌 い の レ パ ー ト リ ー を 増
や し て い く が 、本 実 習 は 2 年 次 の 6 月 に 行 わ れ る た め 、1 年 次 の「 器 楽 Ⅰ 」
の中で 1 曲でも多くの童謡を習得させることが大切であると考える。
3.
音階に関する分析
3. 1 . 分 析 方 法
音階に関する研究として、木暮が小学校歌唱共通教材を対象とした分析
を行っている。これは、柴田南雄の骸骨論と呼ばれる音階分析法に基づい
ている。本稿ではその判定方法に基づき分析を行う。その観点は、楽曲の
使用音、使用頻度、総音価の 3 点である。総音価は 4 分音符を 1 として算
出する。そして、使用頻度、総音価の値を基に、有力性の高い使用音から
順に並べ、その結果からどの音階に基づいて作曲されているのかを判別し
ていく。
なお、使用音は前奏や後奏を除き、1 番のみ(歌詞のある部分のみ)を
カウントする。また、リピート記号によって繰り返された後に結尾部へ移
行するものは、1 番と結尾部を合わせてカウントする。
3. 2 . 調 査 対 象
前 章 で 行 っ た 調 査 か ら 、6 月 に 歌 わ れ て い る 曲 の 実 態 が 明 ら か と な っ た 。
ここでは、そのうち 4 名以上が実習中に弾き歌いを行ったと回答した曲、
計 26 曲 を 対 象 と す る 。
3. 3 . 分 析 結 果
(1) か た つ む り / 文 部 省 唱 歌
使用音
頻度数
総音価
優先順
レ
6
3.5
4
ミ
7
3.75
3
♯ファ
10
6
1
D dur
ソ
1
0.25
7
4 分の 2 拍子
ラ
11
5.5
2
シ
1
0.5
6
レ
2
1
5
ヨナ抜き長音階
第 4 音の「ソ」が使用されているものの 経過音 であり、また 1 回のみで
あるため、効力は低い。
(2) あ め ふ り く ま の こ / 鶴 見 正 夫 (作 詞 )・ 湯 山 昭 ( 作 曲 )
D dur
4 分の 2 拍
33
子
使用音
頻度数
総音価
優先順
シ
4
2
6
♯ド
2
1
7
レ
2
2.75
5
ミ
8
3.75
3
♯ファ
6
3.5
3
ソ
1
0.75
8
ラ
6
4.25
1
シ
8
4
2
レ
2
1
7
ヨナ抜き長音階
ソは和声音であるが、優先順位を見ても効力は低い。
(3) お べ ん と う / 天 野 蝶 ( 作 詞 ) ・一 宮 道 子 ( 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
4
3.5
3
レ
4
3.5
3
ミ
9
5.5
2
ソ
14
7.75
1
ラ
5
3
5
C dur
4 分の 2 拍子
ド
2
0.75
6
ヨナ抜き長音階
(4) か え る の が っ し ょ う / ド イ ツ 民 謡
使用音
頻度数
総音価
優先順
ファ
9
4.5
1
ソ
5
2
3
ラ
7
3.5
2
♭シ
5
2
3
F d ur
ド
2
1
4
4 分の 4 拍子6
レ
1
0.5
5
長音階
(5) 時 計 の う た / 筒 井 敬 介 (作 詞 ) ・ 村 上 太 郎 (作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
レ
4
3.5
5
ミ
12
9.5
2
♯ファ
15
12.5
1
ソ
3
2.5
6
ラ
10
5.5
3
シ
7
4.5
4
D d ur
4 分の 4 拍子
レ
4
2
7
ヨナ抜き長音階
ソ は 経 過 音 と し て 2 回 、逸 音 と し て 1 回 現 れ 、い ず れ も 非 和 声 音 で あ る 。
(6) お か え り の う た / 天 野 蝶 ( 作 詞 )・ 一 宮 道 子 (作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
4
6.25
2
レ
6
3
5
ミ
6
4.5
4
ファ
1
0.25
7
ソ
12
7.75
1
ラ
9
4.75
3
C d ur
4 分の 4 拍子
ド
3
2
6
ヨナ抜き長音階
1 回のみ現れるファは経過音であるため、重要性は低い。
(7) は を み が き ま し ょ う / 則 武 昭 彦 ( 作 詞 ・ 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
6
ド
3
2
5
レ
4
2.25
4
ミ
11
6.25
1
ソ
7
5.25
2
ラ
5
3
3
ド
2
1.5
6
4 分の 2 拍子で書かれている楽譜も存在する。
C dur
レ
1
0.25
7
4 分の 2 拍子
34
ヨナ抜き長音階
(8) す て き な パ パ / 前 田 恵 子 ( 作 詞 ・ 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
シ
3
1.5
8
ド
6
3.5
5
レ
14
7.25
1
ミ
14
6.75
2
C dur
ファ
9
4.25
4
4 分の 2 拍子
ソ
8
4.5
3
ラ
6
2.75
6
シ
2
1
9
ド
2
2
7
長音階
(9) お は よ う / 増 子 と し ( 作 詞 ) ・本 多 鉄 磨 ( 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
4
1.75
4
レ
3
1.5
6
ミ
6
3
3
ソ
13
4.75
1
ラ
4
1.75
4
C dur
シ
1
0.25
7
4 分の 2 拍子
ド
5
4
2
ヨナ抜き長音階
シは経過音としての扱いであり、効力は低い。
(1 0) さ よ な ら の う た / 高 す す む ( 作 詞 ) ・渡 辺 茂 ( 作 曲 )
C dur
4 分の 4 拍
子
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
4
6.5
4
レ
9
10.25
2
ミ
8
8.75
3
ファ
7
4.75
7
♯ファ
1
0.25
9
ソ
12
14.25
1
ラ
9
6.5
4
シ
3
2.75
8
ド
5
6
6
ヨナ抜き長音階
ファは経過音として 3 回、残りは和声音である。1 回のみ現れる♯ファ
は刺繍音として、シの 1 回は経過音として、2 回は和声音として使用され
ている。
(11) 大 き な 古 時 計 / 保 富 庚 午 ( 作 詞 )・ ワ ー ク (作 曲 )
G dur
4 分の 4 拍
子
使用音
頻度数
総音価
優先順
シ
4
2
7
レ
21
12
3
ミ
9
7
6
♯ファ
11
9.5
4
ソ
31
31
1
ラ
18
12.5
2
シ
15
8
5
ド
4
2
7
レ
2
2
7
長音階
(1 2) お は よ う の う た / 田 中 忠 正 ( 作 詞 )・ 河 村 光 陽 ( 作 曲 )
拍子
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
3
2
5
ヨナ抜き長音階
レ
4
2
5
ミ
11
6.75
1
ソ
15
6.5
2
ラ
6
3.75
3
ド
3
2.25
4
レ
1
0.75
7
C dur
4 分の 2
35
(1 3) あ ま だ れ ぽ っ た ん / 一 宮 道 子 ( 作 詞 ・ 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
9
7
1
レ
5
3.5
3
ミ
5
4.5
2
ソ
6
3
4
ラ
4
2
5
C dur
4 分の 2 拍子
ド
2
1
6
ヨナ抜き長音階
(1 4) き ら き ら 星 / フ ラ ン ス 民 謡
使用音
頻度数
総音価
優先順
F dur
4 分の 2 拍子
レ
ミ
♯ファ
ソ
ラ
シ
6
10
4
6
10
4
8
16
2
8
16
2
10
18
1
4
8
6
長音階
(1 5) あ な た の お 名 前 は / イ ン ド ネ シ ア 民 謡
使用音
頻度数
総音価
優先順
ミ
2
1
5
ファ
6
6.5
3
ソ
11
8
1
ラ
11
8
1
♭シ
6
4.5
4
F dur
4 分の 4 拍子
ド
2
1
5
長音階
第 6 音である「レ」が一切使用されていないが、全音階において重要な
主音、属音、下属音、導音が用いられていることから長音階と見なす。
(1 6) し ゃ ぼ ん 玉 / 野 口 雨 情 ( 作 詞 ) ・中 山 晋 平 (作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ラ
1
0.5
7
レ
8
3.75
2
ミ
6
2.75
6
♯ファ
6
3
3
ソ
1
0.5
7
ラ
9
4.5
1
C d ur
シ
6
3
3
4 分の 2 拍子
レ
6
3
3
ヨナ抜き長音階
ソは和声音であるが、頻度数、総音価から判断するに重要性の低い音と
言える。
(1 7) ち ょ う ち ょ う / ス ペ イ ン 民 謡
使用音
頻度数
総音価
優先順
ファ
3
1.5
5
ソ
12
6.5
2
ラ
24
14
1
♭シ
6
3.5
4
F d ur
4 分の 2 拍子
ド
11
6.5
2
長音階
(1 8) お た ま じ ゃ く し / 望 月 ク ニ ( 作 詞 )・ 田 中 銀 之 助 (作 曲 )
の 2 拍子
使用音
頻度数
総音価
優先順
レ
7
4
3
ミ
10
5.5
2
♯ファ
8
3.5
5
ラ
13
8.25
1
シ
7
4
3
♯ド
1
0.25
7
レ
1
0.5
6
D d ur
4分
36
ヨナ抜き長音階
(1 9) お む ね を は り ま し ょ う / 不 詳 ( 作 詞 ・ 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
レ
11
8
1
ミ
11
6
3
♯ファ
10
6.25
2
ソ
5
2.5
5
ラ
13
5.75
4
D dur
4 分の 2 拍子
シ
1
0.5
6
ヨナ抜き長音階
長 音 階 と も 考 え ら れ る が 、レ 、ミ 、♯ フ ァ 、ラ が 優 位 に 立 っ て い る た め 、
ヨナ抜き長音階と考える。
(2 0) さ ん ぽ / 中 川 李 枝 子 ( 作 詞 )・ 久 石 譲 ( 作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
4
4
6
レ
2
1.75
9
ミ
5
6.75
5
ファ
3
3
8
C dur
ラ
13
9.25
4
4 分の 4 拍子
ソ
15
19.25
1
♭ラ
4
4
6
シ
10
10.25
3
C dur
4 分の 4 拍子
ド
10
11
2
レ
1
1
10
長音階
(2 1) 手 を た た き ま し ょ う / 外 国 曲
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
3
3
5
レ
5
3
5
ミ
23
20
1
ファ
7
5.5
4
ソ
15
11.5
2
ラ
9
8
3
ド
3
3
5
長音階
(2 2) ニ ャ ニ ュ ニ ョ の 天 気 予 報 / 小 里 恵 子 ( 作 詞 ) ・宇 野 誠 一 郎 ( 作 曲 )
F dur
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
3
2
5
レ
2
0.5
8
ミ
2
1
7
ファ
8
5.75
4
ソ
25
14
1
ラ
13
8
3
4 分の 4 拍子
♭シ
2
1.75
6
ド
3
9
2
長音階
(2 3) ア ン パ ン マ ン の マ ー チ / や な せ た か し (作 詞 ) ・ 三 木 た か し (作 曲 )
G dur
使用音
頻度数
総音価
優先順
ソ
5
5
8
ラ
15
12
6
シ
15
10.5
7
ド
8
5
9
レ
18
19.5
3
♯レ
6
3
11
ミ
29
21.5
2
2 分の 2 拍子
♯ファ
13
10.5
7
ソ
20
26
1
ラ
13
16
4
長音階
(2 4) く じ ら の と け い / 関 和 男 (作 詞 )・ 渋 谷 毅 (作 曲 )
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
3
1.5
6
レ
5
3.75
5
ミ
8
5.75
3
ファ
1
0.75
8
ソ
36
20.25
1
ラ
13
7.75
2
G dur
シ
2
1.25
7
ド
10
5.5
4
4 分の 4 拍子
レ
1
0.75
8
シ
17
14
5
37
長音階
(2 5) め だ か の 学 校 / 茶 木 滋 ( 作 詞 ) ・ 中 田 喜 直 ( 作 曲 )
D dur
4 分の 4 拍
子
使用音
頻度数
総音価
優先順
レ
8
6
5
ミ
8
7
3
♯ファ
8
9.5
1
ラ
7
6.5
4
シ
14
9
2
レ
2
1
6
ヨナ抜き長音階
(2 6) 森 の く ま さ ん / 馬 場 祥 弘 (作 詞 )・ ア メ リ カ 民 謡
C dur
4 分の 2 拍
子
使用音
頻度数
総音価
優先順
ド
4
5.5
2
レ
2
3
5
♯レ
1
0.5
9
ミ
7
7.5
1
ファ
1
1
1
♯ファ
2
1.5
6
ソ
7
4.5
3
ラ
5
4
4
シ
2
1
7
ド
1
1
7
長音階
3. 4 . 考 察
2 6 曲 に つ い て 、使 用 さ れ て い る 音 階 を 分 析 し た 結 果 、ヨ ナ 抜 き 音 階 と 長
音階の 2 つのグループに分かれることが明らかとなった。ここで、2 つの
音階 の 定義 を 改め て 確認 し たい 。ま ず 、長 音階 は 7 音か ら 成り 、第 3 音 と
第 4 音 、第 7 音 と 第 8 音 の 間 が 半 音 で 、そ れ 以 外 が 全 音 と い う 並 び の 音 階
を 指 す( 譜 例 1)。西 洋 音 楽 の 音 階 の 一 つ で あ る が 、明 治 期 に 唱 歌 教 育 を 試
み よ う と し た 際 、音 楽 の 根 底 と な る 理 論 を 西 洋 か ら 取 り 入 れ た こ と に よ り 、
こ の 音 階 が 日 本 で も 知 れ 渡 る こ と と な っ た 7。
譜例 1
長音階
長
長
短
長
長
長
短
一 方 、ヨ ナ 抜 き 長 音 階 は 、第 4 音 と 第 7 音 が 省 か れ た 5 音 か ら 成 る 音 階
を い う( 譜 例 2)。こ の 音 階 は 西 洋 音 階 と 日 本 に 古 来 か ら 存 在 す る 5 音 音 階
との言わば和洋折衷されたものであり、明治以降の唱歌で多く用いられた
音 階 で あ る 。た だ し 、こ の 音 階 は 明 治 期 に 突 如 と し て 現 れ た わ け で は な く 、
7
千葉潤之介
pp . 4 7 9- 48 3
2 0 02
「日本」の項
『新編
音楽中辞典』
音楽之友社
38
奈 良 時 代 に 中 国 か ら 輸 入 さ れ た「 呂 旋 法 」と 同 じ 構 成 音 を も つ 音 階 で あ る 8 。
譜例 2
ヒ
ヨナ抜き長音階
フ
ミ
イ
ム
26 曲 中 、 長 音 階 に 基 づ く も の は 12 曲 、 ヨ ナ 抜 き 長 音 階 14 曲 で あ り 、
つ ま り 半 数 以 上 が 5 音 音 階 の 作 品 で あ っ た 。 そ し て 、 注 目 す べ き は 25 曲
全 て が 長 調 と い う 点 で あ る 。伊 澤 修 二 は『 音 楽 取 調 成 蹟 申 報 要 略 』の 中 で 、
長調の曲は勇壮活発にし、短調の曲は柔弱憂鬱にするため、幼児期には勇
壮活発な発育し、有徳健全な心身を育成するために、長調(長音階)を用
い る べ き だ と 述 べ て い る 9 。幼 児 が 歌 う 曲 で あ る こ と か ら 、短 調 の よ う な 暗
い曲よりも明るい長調の曲の方が好まれることは自然なことに思うが、音
楽によって心身を鍛錬するという明治期以降の考えに基づくものと考える。
既に述べたように、現在の日本には世界各国の多種多様な音楽があふれ
ており、若い世代にとってはヨナ抜き音階のような 5 音音階よりも、西洋
音階の方が明らかに馴染みがある。しかし、幼児期に歌う曲に限ってみる
と、現在、私たちの生活に浸透している西洋音楽の流れよりも、ヨナ抜き
音階といった世俗的、大衆的な音感が深く根付いていることがわかる。も
ちろん、童謡の成立過程において、多くの作品がヨナ抜き音階に基づいて
作曲されたため、子どもの歌がヨナ抜き音階によることは必然的なことと
言える。だが、どのような曲を歌うかはそれぞれの幼稚園、保育園に判断
に委ねられており、その選択は自由である。西洋に倣った音楽教育が明治
期 か ら 開 始 さ れ た が 、 140 年 が 経 過 し た 今 、 日 本 は 西 洋 音 楽 の 理 論 に 基 づ
いた音楽が流布し、日本の古くから存在する音楽は存在を薄くしている。
しかしながら、子どもの歌に限っては、今も次々と新たな曲が作り出され
ていながらも、古く歌われている童謡を歌い継いでいく姿勢が見受けられ
る。
小 方 厚 2 00 7 『 音 律 と 音 階 の 科 学 』 講 談 社 p . 4 3
東 京 音 楽 学 校 (編 ) 1891 『 音 楽 取 調 成 蹟 申 報 要 略 』 大 日 本 図 書
1 43- 1 4 4
8
9
p p.
39
4.
おわりに
本 稿 で は 、 6 月 に 幼 稚 園 で 歌 わ れ て い る 子 ど も の 歌 の 実 態 に つ い て 、 5、
6 月に実習を行った学生からのアンケート調査を基に分析を行った。その
結果、本学で定めている年間課題曲と幼稚園で実際に歌われている曲はお
およそ一致しており、年間課題曲は現場での実態を反映した内容であるこ
とが明らかとなった。ただし、一部では 6 月の定番曲とされる曲が年間課
題曲に含まれていない例も存在したため、今後それらの曲も含めることを
検討したい。また、実習中には実習時期に合った「季節の歌」だけではな
く 、年 間 課 題 曲 で 4 月 や 5 月 の 歌 と 定 め て い る 曲 も 歌 う こ と が あ り 、実 習
生には幅広い童謡のレパートリーが求められていると言える。本学では 1
年次にピアノの基礎を、2 年次に童謡の弾き歌いを学ぶが、2 年次の 6 月
に教育実習(本実習)を行うことを考慮すると、1 年次から童謡のレパー
トリーを可能な限り増やしていく必要がある。
また、音階という視点から上記の調査によって精査された 6 月の歌の楽
曲 ジ ャ ン ル を 大 別 す る こ と を 試 み た 。 調 査 し た 26 曲 の 半 数 以 上 が ヨ ナ 抜
き音階であり、残りは長音階であった。現在、日本の流行曲の多くは西洋
音楽の理論を根底としているが、幼稚園で歌われる「子どもの歌」はその
流 れ と は 相 反 し て 、日 本 人 に と っ て 古 く か ら 馴 染 み の あ る 5 音 音 階 に 基 づ
く曲が多く歌われていることが明らかとなった。つまり、幼児期に歌う曲
と児童期以降に好んで歌う(聴取する)曲は、音楽の根底となる理論が全
く異なっていると言える。
今 回 の 調 査 で は 6 月 に 対 象 を 絞 っ た が 、今 後 は 6 月 以 外 の 時 期 に つ い て
も同様の調査を行い、幼稚園現場で歌われている曲の実態を明らかにした
い。そして、教育実習に向けた準備として、学生により効果的な指導が行
えるよう、その教授方法について検討したい。
【参考文献】
1)海 老 澤 敏 ほ か (監 修 )
2 00 2
『新編
2)小 川 宜 子 ・ 妹 尾 美 智 子 ・ 麓 洋 介 ( 編 著 )
でうたえる歌曲集
3)小 方 厚
2007
子どものうた村
『音律と音階の科学』
中音楽辞典』
2 0 08
音楽之友社
『保育者のためのピアノ
保育の木』
講談社
ドレミ楽譜出版社
40
4)音 楽 取 調 掛 ( 編 )
1884
国立国会図書館
『小学唱歌
初編』
文部省
近代デジタルライブラリー
ht tp : // kin da i.n dl .go .j p/ info :nd lj p/ pi d/ 9 9 2 05 1 / 20
5)木 暮 朋 佳
2 00 9
「 小 学 校 歌 唱 共 通 教 材 の 日 本 音 階 に 関 す る 一 考 察 -- 柴
田南雄の分析法を中心に用いて」
要 』 第 54 号
6)小 林 美 実 ( 編 )
p p . 4 7- 53
美作大学
19 7 6
『 こ ど も の う た 2 0 0』
7)小 林 美 実 ( 監 修 )/ 井 戸 和 秀 ( 編 )
ど も の う た 1 0 0』
8)小 林 美 実 ( 編 )
『美作大学・美作大学短期大学部紀
1984
『いろいろな伴奏でひける
こ ど も の う た 20 0 』
『続
9)高 御 堂 愛 子 ・ 植 田 光 子 ・ 木 許 隆 ( 監 修 ・ 編 著 )
楽しい音楽表現』
1 0) 東 京 音 楽 学 校 (編 )
国立国会図書館
こ
チャイルド本社
19 9 6
育士をめざす
チャイルド本社
18 9 1
チャイルド本社
2 0 09
『幼稚園教諭・保
圭文社
『音楽取調成蹟申報要略』
大日本図書
近代デジタルライブラリー
htt p: / /dl .n dl .go. jp /inf o: ndl jp / pid / 8 54 7 8 1
11) 中 村 浩 美 ・ 白 石 景 一
究-第 7 報-」
20 1 3
「保育者養成校における音楽指導法の研
『長崎女子短期大学紀要』
第 37 号
長崎女子短期
大学
1 2) 板 東 貴 余 子 ( 編 )
訂 版 〉』
2 0 01
『簡易伴奏による
こ ど も の 歌 ベ ス ト テ ン〈 改
ドレミ楽譜出版社
1 3) 松 井 み さ
20 0 5
国学園紀要』
1 4) 村 田 健 治
ムの具体」
「創成期の童謡とその音階についての一考察」 『中
第 4号
20 11
中国学園大学
pp . 1 0 7-11 0
「幼児期から小学校への接続期におけるカリキュラ
『奈良県立教育研究所個人指定研究』
第 19 号
奈良県
教育委員会
htt p: / /w ww.np s .e d. jp /n ar a -c /g aku shi /k iyo u/h 2 3/ 2 6_k oji n_you kyou .p d
f
1 5) 文 部 科 学 省
2008
『幼稚園教育要領』
ht tp : // ww w. mext .go .j p/ a _men u/ sho tou /n ew -cs /youry ou/y ou /you .p df
41
付録 1
教育実習についてのアンケート
平成 26 年度 教育実習についてのアンケート
学籍番号
氏名
1. 実習園はどこでしたか?
〔
(所在地:
幼稚園〕
市・町・村)
2. 実習前のオリエンテーションで、園から実習中に歌う曲(童謡)の指定はありましたか?
はい(→問 3 へ) ・ いいえ(→問 4 へ)
3. 園から実習までに練習するように言われた曲を教えて下さい。
4. 実習中はどのような曲を弾き(歌い)ましたか?
問 3 を答えた方は、園から指定された曲以外に、実習中に弾いた曲があれば、それを答えて
下さい。
Author
Document
Category
Uncategorized
Views
11
File Size
668 KB
Tags
1/--pages
Report inappropriate content