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膜による新食品の創造 - 食品膜・分離技術研究会

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分離技術の複合化・高度化と
食品膜・分離技術研究会への入会御案内
食品膜・分離技術による
新食品の創造・改質、機能性成分の分離
新潟大学大学院
教授(MRC会長)渡辺敦夫
1 食 品 工 業 で利 用 される分 離 技 術 の現 状
育 児 用 粉 乳 および醤 油 の製 造 工 程 を図 1および図 2に示 した。両 食 品 ともに日 常 生 活 で普 通 に見 か
ける食 品 であるが、極 めて多 種 類 の分 離 技 術 が利 用 されていることがわかる。
育 児 用 粉 乳 の製 造 では,遠 心 分 離 ,蒸 発 濃 縮 ,晶 析 ,乾 燥 ,粉 体 分 離 のためのサイクロン等 の従 来
技 術 に 加 え , 粉 乳 の 組 成 を 母 乳 に 近 づ け る た め 電 気 透 析 ( ED ) や ナ ノ 濾 過 ( NF ) に よ る 脱 塩 , 逆 浸 透
(RO)や限 外 濾 過 (UF)によるホエイ蛋 白 質 の回 収 ・添 加 ,さらにクロマトや UF によるラクトフェリンの回
収 ・添 加 等 が行 われている。
1
我 が国 の伝 統 食 品 である醤 油 も圧 搾 ,浮 上 分 離 ,沈 降 分 離 ,珪 藻 土 濾 過 等 の従 来 技 術 に加 え,UF
や精 密 濾 過 (MF)によるオリの分 離 ・除 菌 ,さらに ED による減 塩 醤 油 の製 造 ,NF による淡 色 醤 油 風 調 味
料 の製 造 などが行 われている。
このように,食 品 工 業 では従 来 の分 離 技 術 に膜 技 術 を組 み合 わせることにより,
① 新 しい食 品 の創 造 或 いは改 質 および
② 新 しい機 能 性 成 分 の分 離 がはかれる
ようになったことが最 近 の進 歩 の特 徴 と見 ることができる。
食 品 産 業 における膜 技 術 の実 用 例 等 については,「食 品 膜 技 術 ―膜 技 術 利 用 の手 引 き−」を参 照 い
ただきたい 1 ) 。また,1989 年 (平 成 元 年 )に産 官 学 の有 志 により設 立 された「食 品 膜 技 術 懇 談 会 (MRC)」
2)
が年 2回 発 行 する「MRCニュース」は 33 号 まで発 行 されており,食 品 膜 技 術 16 年 間 の発 展 過 程 を記
録 しているので是 非 参 照 いただきたい。
本 稿 に述 べるように,膜 技 術 は膜 とそれを取 りまく分 離 技 術 との複 合 化 のなかで新 食 品 ・新 食 品 素 材
の生 産 や新 機 能 性 成 分 の分 離 を行 っている現 状 に合 わせ,MRC は 2005 年 度 より「食 品 膜 ・分 離 技 術
研 究 会 (MRC)」と発 展 的 に名 称 変 更 し,濾 過 ,抽 出 ・超 臨 界 流 体 抽 出 ,濃 縮 ,乾 燥 等 他 の分 離 技 術 を
活 動 範 囲 に取 り込 み,技 術 の複 合 化 ・高 度 化 に対 応 した新 たな歩 みを始 めた。
2
本 稿 では食 品 工 業 における上 記 2項 目 に関 する新 しい膜 技 術 の応 用 例 を紹 介 する。
2 新 しい食 品 の創 造
膜 技 術 を利 用 した新 食 品 の創 造 に関 しては、
① 膜 技 術 利 用 による野 菜 ジュースの改 質 および、
② 無 菌 化 濾 過 技 術 を用 いたフレッシュ食 品 の製 造 技 術 の進 歩 が著 しい。
①に関 しては、消 費 者 の健 康 志 向 に対 応 して各 種 野 菜 ジュースの消 費 が伸 びているため、さらに安 全
性 と嗜 好 性 を高 めるための技 術 開 発 が進 められている。
②に関 しては、半 導 体 産 業 で急 速 な進 歩 を遂 げたクリーンルーム建 設 技 術 の発 展 と相 まって食 品 加
工 装 置 のサニタリー性 の改 良 とセラミック膜 モジュールを中 心 とした耐 熱 性 ・耐 薬 品 性 の高 い膜 モジュー
ルの開 発 により、本 技 術 が広 く利 用 されるようになってきた。
2.1 野 菜 ジュースの改 質
2.1.1 EDによるジュースの改 質 3 )
近 年 、健 康 志 向 が強 まり野 菜 ジュースから栄 養 成 分 を摂 取 する傾 向 が強 まっている。キャロットジュー
スはビタミン A やカロテンを多 く含 むので、他 の野 菜 ジュースのベースとして利 用 されるなど用 途 は広 い。
キャロットジュースにはミネラル、有 機 酸 、アミノ酸 や糖 など多 くの有 効 成 分 が含 まれている反 面 、硝 酸 イオ
ンや塩 化 物 イオン等 のえぐみに関 係 する成 分 が含 まれている。
特 に、硝 酸 は体 内 で還 元 され亜 硝 酸 になること、また、体 内 で発 ガン性 のあるニトロソアミンに変 化 する
こ と も 考 え ら れ 、 摂 取 量 を 低 減 す る こ と が 望 ま し の で あ る が 、 そ の 濃 度 は 人 参 で は 200ppm 、 葉 菜 類 は
3000ppm 以 上 になる場 合 もある。
そこで、ED を用 いて硝 酸 イオンをアニオン交 換 膜 により分 離 する技 術 が実 用 化 されている。硝 酸 イオ
ンを 400ppm 含 むキャロットジュースを 50ppm まで除 去 した場 合 、栄 養 成 分 であるカルシュウム、糖 、有 機
酸 およびアミノ酸 糖 の保 持 率 は 90%以 上 であるとされている。
2.1.2 NFによるジュースの改 質 4 )
NF は分 子 量 100 前 後 から数 1000 程 度 の分 離 を行 う方 法 である。溶 質 の分 離 は、NF を行 う間 に起 こ
る溶 媒 と溶 質 および溶 質 相 互 の対 流 と拡 散 の関 係 、膜 と溶 質 の荷 電 の関 係 の微 妙 なバランスに依 存 し
ていると考 えられている。適 当 な NF 膜 と操 作 条 件 を選 択 すると硝 酸 イオンと塩 化 物 イオンをジュースから
選 択 的 に分 離 することができる。
キャロットジュースを NF 処 理 すると、ジュース中 に多 量 に含 まれるカリウムイオンが膜 を透 過 するのに伴
い、硝 酸 イオンと塩 化 物 イオンが膜 を透 過 し、両 陰 イオンな負 の阻 止 率 (原 液 濃 度 より透 過 液 の濃 度 の
3
方 が高 くなる)を示 すことがある。この際 、2価 のミネラル成 分 、有 機 酸 、糖 などの阻 止 率 は 90%以 上 を示 し、
栄 養 成 分 の変 化 はほとんど無 い。また、えぐみが無 くなるため嗜 好 性 も向 上 する。
2.2 無 菌 化 濾 過 によるフレッシュ食 品 の創 造 5 ) 6 )
膜 による食 品 の無 菌 化 (除 菌 )法 を、英 語 では Sterile Filtration というが、これを本 稿 では無 菌 化 濾
過 と訳 すことにする。Sterile Filtration は、濾 過 滅 菌 あるいは濾 過 殺 菌 と訳 されているものもあるが、濾
過 により系 内 から菌 を系 外 に除 去 することであり、滅 菌 (菌 を滅 ぼす)や殺 菌 (菌 を殺 す)では意 味 が異 なる。
そこで、「無 菌 化 するための、正 確 には、無 菌 の状 態 に近 づけるための濾 過 」と解 釈 し、これを無 菌 化 濾
過 の定 義 とする。
無 菌 化 濾 過 された液 状 食 品 はクラス 100 程 度 の無 菌 ブース内 で無 菌 化 された容 器 に、常 温 あるいは
低 温 下 で密 封 され製 品 となる。無 菌 化 濾 過 と無 菌 充 填 法 を組 み合 わせることにより加 熱 を行 わず微 生 物
による品 質 変 化 を防 止 した食 品 が製 造 できる。品 質 変 化 はほとんど無 く,フレッシュな(天 然 あるいは生
の)風 味 を保 持 した保 存 食 品 を製 造 できるので消 費 者 の支 持 を得 ている。
無 菌 化 濾 過 は加 熱 を伴 わないので品 質 変 化 は極 めて少 なく、フレッシュな風 味 を保 持 したまま微 生 物
による品 質 の変 化 を防 止 することができるので消 費 者 の支 持 を受 けている。無 菌 化 濾 過 に使 用 される膜
技 術 には,MF と UF があり,デッドスペースがなく,衛 生 管 理 をしやすい構 造 の膜 装 置 を使 用 する必 要 が
ある。特 に,膜 モジュールの耐 熱 性 ・耐 薬 品 性 および洗 浄 性 の高 いものを選 択 する必 要 がある。
MF 膜 と UF 膜 の耐 熱 性 ・耐 薬 品 性 は以 前 よりはるかに向 上 しており,酸 やアルカリでの洗 浄 と 100℃程
度 あるいはそれ以 上 での加 熱 殺 菌 ができるサニタリー性 管 理 の容 易 な膜 モジュールが開 発 されてきてい
る。
2.2.1 ペクチン入 り清 澄 化 無 菌 リンゴジュース等 の製 造 7 )
通 常 のリンゴジュースは加 熱 殺 菌 を経 て製 造 されるため加 熱 臭 が発 生 し,フレッシュさが失 われる。そこ
で,無 菌 化 濾 過 技 術 により,フレッシュな風 味 を保 持 したジュースが製 造 できれば嗜 好 性 は数 段 向 上 す
る。リンゴジュースは,MF 処 理 により清 澄 化 と除 菌 が行 えるが,機 能 性 成 分 としてのペクチンが分 離 され
てしまう。リンゴペクチンは 200 万 ∼数 万 程 度 の分 子 量 を持 つため,高 分 子 ペクチンがダイナミック膜 を形
成 するためペクチンは透 過 液 側 に透 過 しない。そこで,ペクチナーゼによりリンゴペクチンを低 温 短 時 間 で
分 子 量 数 十 万 程 度 にパーシャル分 解 し,このペクチンを透 過 させることによりペクチン入 り無 菌 清 澄 化 ジ
ュースを製 造 することができる。これにより,搾 汁 液 中 のペクチン濃 度 の 50%程 度 を含 む無 菌 清 澄 化 リンゴ
ジュースが製 造 できる。
イチゴやメロンは加 熱 殺 菌 すると変 色 しやすく,フレッシュな芳 香 も弱 いためジュースとしての製 品 が市
販 されていない。これらについても無 菌 化 濾 過 と無 菌 充 填 法 を組 み合 わせれば,品 質 の良 いジュースが
製 造 できるものと考 えられる。
4
2.2.2 生 チュウハイ製 造 8 )
缶 チュウハイの消 費 が伸 びている。この内 、特 に消 費 が急 激 に伸 びているものに、搾 りたてのストレート
ジュースを MF 膜 で無 菌 化 濾 過 し、アルコール、水 、炭 酸 等 を加 えて調 整 し、再 度 無 菌 化 濾 過 して無 菌
充 填 される生 チュウハイが製 造 されている。
2.2.3 生 姜 エキスの製 造 8 )
生 姜 をおろした汁 を MF 処 理 すると、除 菌 と清 澄 化 が行 える。根 菜 類 のおろし汁 は耐 熱 芽 胞 菌 が混 入
するので、フレッシュさを保 った状 態 で食 品 素 材 化 することが難 しかったが、無 菌 化 濾 過 によりそれが可
能 になった。ガーリックやオニオン等 のおろし汁 の食 品 素 材 化 も本 方 法 により可 能 になると考 えられる。
2.2.4 醤 油 の無 菌 化 濾 過 9 ) 1 0 )
11)
児 童 を対 象 にした学 校 給 食 等 で使 用 される醤 油 等 については、MF 処 理 により除 菌 したものが好 まれる。
火 入 れ直 後 の醤 油 を、セラミック MF 膜 (孔 径 0.1μm)で無 菌 化 濾 過 することにより、微 生 物 は検 出 され
ない状 態 にまで減 少 する。
また、嗜 好 の多 様 化 に対 応 して、生 揚 げ醤 油 が製 造 されることがあるが、オリ成 分 と微 生 物 を分 離 する
目 的 で MF 処 理 が行 われる。
醤 油 をベースにした各 種 調 味 液 が販 売 されている。MF 処 理 による無 菌 化 の後 、マイルドな条 件 で加
熱 殺 菌 し、無 菌 充 填 することによりフレッシュな風 味 を持 つ良 好 な調 味 料 が製 造 できるので生 産 量 がの
びている。
2.2.5 ミネラル水 の無 菌 化 濾 過 1 2 )
ミネラルウォーターも、最 近 の「生 」を好 む消 費 動 向 とボトルの耐 熱 性 の関 係 から、加 熱 殺 菌 しホットパッ
クする従 来 の方 法 から、MF 膜 による無 菌 化 濾 過 の後 、無 菌 充 填 する方 法 で製 造 されるようになってきた。
加 熱 殺 菌 ・ホットパックすると、フレッシュな風 味 が無 くなるとされることと、PET ボトルにも耐 熱 性 が必 要 に
なり、ボトルの値 段 が高 くなる。
ミネラルウォーターの製 造 基 準 は「中 心 部 の温 度 を 85℃で、30 分 加 熱 する方 法 による殺 菌 またはこれと
同 等 以 上 の方 法 により殺 菌 または除 菌 を行 うこと」とされている。無 菌 化 濾 過 の効 力 の確 認 は、「腸 球 菌
(St.faecalis またはSt.faecium)が原 水 に 10 5 /mL以 上 になるように接 種 し、濾 過 後 の検 体 を 20℃・14 日
間 保 存 後 も生 菌 が検 出 されないこと」とされている。
各 社 共 に、この基 準 に沿 い 1∼0.1μm程 度 の細 孔 径 の高 分 子 やセラミック MF 膜 、あるいはこれより孔
径 の細 かい UF 膜 を使 用 し無 菌 化 濾 過 を行 っている。
5
2.2.6 牛 乳 の無 菌 化 濾 過 1 3 )
牛 乳 中 には、ラクトフェリン等 熱 に弱 い種 々の生 理 活 性 物 質 が含 まれているため、できるだけこれら成
分 と生 の風 味 を残 して Shelf Life の長 い牛 乳 を製 造 したいこと、また、ある種 のチーズの製 造 においては
雑 菌 の混 入 をできるだけ防 止 したいが原 料 牛 乳 を加 熱 殺 菌 すると品 質 が変 化 してしまうことなどの理 由
から、できるだけマイルドな条 件 での殺 菌 あるいは除 菌 技 術 の確 立 が望 まれてきた。そこで、BactoCatch
システムと呼 ばれる除 菌 技 術 が開 発 されている。
牛 乳 には、微 生 物 と粒 径 が同 等 あるいは大 きい脂 肪 球 (0.1∼17μm)が含 まれているので、遠 心 分 離
により脂 肪 球 を除 き、脱 脂 牛 乳 を得 る。これを、1.4μmの MF 膜 を用 い、微 生 物 だけを保 持 液 側 に分 離
し、透 過 液 側 にカゼインや水 溶 性 蛋 白 質 等 を透 過 させる。通 常 の MF 処 理 では、微 生 物 とカゼインとの分
離 は大 変 難 しい。そこで、膜 間 差 圧 が均 一 になるよう透 過 液 側 にも液 を循 環 することで保 持 液 側 と透 過
液 側 の圧 損 を同 程 度 に制 御 し、さらに透 過 流 束 を低 くして、膜 のファウリングを極 力 押 さえることにより、
99.5%程 度 の微 生 物 を分 離 できるとしている。脱 脂 乳 の 95%が透 過 し、5%が菌 体 を含 む保 持 液 となる。保
持 液 と脂 肪 分 は UHT 殺 菌 した後 、除 菌 した透 過 液 と混 合 しホモジナイザーにて均 質 化 した後 、72℃,
15sec の殺 菌 をすることにより、貯 蔵 温 度 6℃で 45 日 、10℃で 15 日 間 の Shelf Life を持 つ牛 乳 が製 造
できるとされている。
2.2.7 ハチミツ 1 4 )
ハチミツは健 康 食 品 としてのイメージが強 いが、ボツリヌス菌 の胞 子 、蛋 白 質 さらに懸 濁 成 分 等 が多 く含
まれているため、食 品 素 材 や乳 児 用 食 品 に利 用 がはかれなかった。そこで、ハチミツを希 釈 し温 度 を上
昇 させることにより粘 度 を低 下 させ、分 画 分 子 量 1 万 程 度 の中 空 糸 UF膜 モジュールで処 理 した後 、希 釈
前 の濃 度 に真 空 濃 縮 することにより食 品 素 材 として利 用 することができるようになった。
2.2.8 その他 食 品 の無 菌 化 濾 過
その他 の食 品 としては、ワインの精 密 濾 過 1 5 ) 、炭 酸 清 涼 飲 料 のMF処 理 などある。
3 新 しい機 能 性 成 分 の分 離
食 品 には3つの機 能 があるとされている。第 1は栄 養 機 能 、第 2は味 覚 ・嗅 覚 ・視 覚 等 により食 事 を楽 し
む感 覚 機 能 である。さらに、第 3は消 化 器 系 、循 環 器 系 、内 分 泌 系 、免 疫 系 、神 経 系 などの生 理 系 統 を
調 節 して健 康 の維 持 等 に好 ましい効 果 を与 える機 能 である。第 3の機 能 を持 つ成 分 がその機 能 を十 分
に発 現 できるよう設 計 ・加 工 された食 品 を、一 般 に、機 能 性 食 品 と呼 ぶが、正 確 には『特 定 保 健 用 食 品 』
という。
6
3.1 ラクトフェリン(LF)の分 離 1 6 )
LF は腸 管 内 における抗 菌 作 用 、感 染 防 御 作 用 、抗 ガン作 用 等 の機 能 を持 つとされる分 子 量 8万 程
度 の塩 基 性 蛋 白 質 である。人 においては乳 以 外 に涙 、鼻 汁 、唾 液 等 の外 分 泌 液 、血 漿 、尿 、羊 水 等 の
体 液 に広 く存 在 する。
LFは、多 くの哺 乳 動 物 の乳 汁 に含 まれている。人 乳 には高 濃 度 で含 まれ、常 乳 には 1∼3 g・L - 1 初 乳
には 5∼10 g・L - 1 程 度 含 まれている。LFはチーズホエイ中 に約 100mg・L - 1 程 度 の濃 度 で、陽 イオンとし
て含 まれているので、陽 イオン交 換 樹 脂 に吸 着 ・分 離 した後 、これをUF処 理 して精 製 されている。
3.2 水 産 エキスからの機 能 性 ペプチドの分 離 1 7 )
カツオエキスに含 まれるアンセリン(MW240 程 度 )は抗 疲 労 効 果 、抗 参 加 効 果 を持 つ機 能 性 成 分 として
最 近 注 目 を浴 びている。高 速 遊 泳 魚 の筋 肉 に多 く存 在 している成 分 である。
アンセリンをカツオエキスから分 離 するのにイオン交 換 樹 脂 を用 いるのが一 般 的 な方 法 であった。しかし、
食 品 製 造 で使 用 できる溶 媒 が限 られることと溶 媒 の廃 棄 に問 題 をかかえるため膜 を使 用 した分 離 技 術 開
発 が望 まれた。
カツオエキスを分 画 分 子 量 2 万 の UF 膜 で処 理 し、透 過 液 側 にアミノ酸 とペプチド類 等 の低 分 子 量 成
分 と濃 縮 液 側 に高 分 子 量 成 分 とに分 離 した。透 過 液 側 に、アンセリンは 86%程 度 回 収 される。
透 過 液 をさらに NaCl 阻 止 率 60%の NF 膜 で処 理 すると、NaCl および遊 離 アミノ酸 が透 過 しアンセリン等
のペプチド類 は濃 縮 され純 度 が向 上 した。濃 縮 液 中 のアンセリン回 収 率 は 56%程 度 であった。濃 縮 液 を
脱 色 ・乾 燥 し 5∼10%のアンセリンを含 有 する製 品 を作 成 することができた。
3.3 オリゴ糖 の分 離 1 8 )
オリゴ糖 の種 類 は多 く、フラクトオリゴ糖 、大 豆 オリゴ糖 、ガラクトオリゴ糖 、キシロオリゴ糖 などがある。
オリゴ糖 の機 能 としては、ビフィズス菌 の活 動 を助 け整 腸 作 用 があることから古 くから研 究 されており機
能 性 食 品 の代 表 格 になっている。
大 豆 オリゴ糖 は大 豆 タンパクを製 造 する際 排 出 されるホエイ中 に含 まれるスタキオース、ラフィノースなど
である。大 豆 ホエイを塩 析 処 理 し上 澄 みを UF 処 理 する。透 過 液 を活 性 炭 で脱 色 し、さらに ED とイオン
交 換 樹 脂 を使 用 し脱 塩 する。その後 、濃 縮 し大 豆 オリゴ糖 シロップを得 、さらに乾 燥 することにより粉 末 大
豆 オリゴ糖 を得 る。
フラクトオリゴ等 は、蔗 糖 を原 料 としてフラクトースを転 移 させることにより製 造 されるので、反 応 液 はグル
コースと蔗 糖 およびオリゴ糖 の混 合 液 になる。そこで、NF を使 用 することでグルコースと蔗 糖 を分 離 し、オ
リゴ糖 の純 度 を高 めることができる。
7
3.4 リコピンの分 離 1 9 )
リコピンはトマトに含 まれる赤 色 色 素 であり、トマト中 には、30mg・Kg - 1 ∼200 mg・Kg - 1 程 度 含 まれる。ト
マト以 外 にスイカ、柿 、杏 等 に含 まれている
リコピンにはガン抑 制 効 果 やガン発 生 率 の低 下 効 果 や、動 脈 硬 化 が原 因 で起 こる高 血 圧 、脳 卒 中 、
心 臓 病 などの生 活 習 慣 病 を防 止 する機 能 を持 つとされている。
トマト搾 汁 残 渣 からリコピンを回 収 するのに膜 技 術 が利 用 されている。トマト搾 汁 液 を 90℃で殺 菌 し、
50℃に冷 却 した後 UF膜 モジュールで 300 mg・Kg - 1 まで、約 30 倍 に濃 縮 し、さらに中 空 糸 MF膜 を用 い
500 mg・Kg - 1 まで濃 縮 する。ここで得 られた濃 縮 リコピンを加 熱 殺 菌 後 、容 器 に密 封 し製 品 としている。ま
た、この工 程 で得 られた透 過 液 を減 圧 濃 縮 し、糖 度 60%のトマトエキスとして新 食 品 素 材 として利 用 してい
る。
3.5 緑 茶 からのカテキンの分 離 2 0 )
PET ボトル入 りお茶 飲 料 が多 く販 売 されるようになり、お茶 成 分 、特 に緑 茶 成 分 の機 能 性 に対 する関 心
が高 まっている。なかでも、緑 茶 カテキン類 は抗 菌 作 用 、血 糖 ・血 圧 上 昇 抑 制 作 用 、血 中 コレステロール
低 下 作 用 、抗 腫 瘍 作 用 、発 ガン抑 制 作 用 等 種 々の機 能 があると報 告 されている。
緑 茶 よりカテキン類 (MW290∼460)を 80℃、60 分 間 抽 出 を行 うと、茶 に付 いた微 粒 子 やペクチン等 の
高 分 子 成 分 さらに遊 離 アミノ酸 、カフェイン等 の成 分 が抽 出 される。抽 出 液 から MF および UF を使 用 し
粒 子 ・ 高 分 子 成 分 を 除 去 し 、 透 過 液 を 得 る 。 透 過 液 中 の カ テ キ ン 類 を 、 NF を 利 用 し 遊 離 ア ミ ノ 酸
(MW100∼200 程 度 )やカフェイン(約 MW190 程 度 )と分 離 する。pH を変 化 させる等 の方 法 でカテキン類
の純 度 を高 めることは十 分 可 能 であることが示 されている。
4.おわりに
以 上 のように、新 食 品 の創 造 ・改 質 および機 能 性 成 分 の分 離 等 に多 種 類 の分 離 技 術 が利 用 されてい
る。膜 ・分 離 技 術 は食 品 製 造 において必 須 の技 術 になり、その利 用 範 囲 はますます広 くなっている。
さらに、多 種 類 の分 離 技 術 との複 合 化 により有 効 性 を高 めることができる。
こうした考 えに基 づき、食 品 膜 技 術 懇 談 会 の名 称 を食 品 膜 ・分 離 技 術 研 究 会 に発 展 的 に改 め、本 年
より新 たなスタートを切 ることになった。その担 うべき役 割 はさらに重 くなったものと考 えられる。
是 非 会 員 としてご参 加 いただき、食 品 技 術 の高 度 化 、食 品 産 業 の発 展 、ひいては、国 民 の食 生 活 の
向 上 にご協 力 いただきたくご案 内 申 し上 げます。
8
参考文献
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術 ,(株 )光 琳 (1999)
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究 例 会 講 演 要 旨 ,p.4-1
9
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