第7回北海道 アルコール・薬物依存予防 、早期発見、解決市民 フォーラム 2012 年 11 月 3 日(土)札幌市教育文化 会館 1 階小ホール 回復体験発表 3. 息子のアルコール依存症による私の人生の転機 E.F.(60 代女性、札幌新川断酒会家族会員) 私は、30 代アルコール依存症の息子の母です。息子が小学 1 年生の時、下の子を出産しました。 出産後、産前の心身に回復できず、家族に負担を掛けました。機能不全家庭でした。幼い頃の息子 は活発で、「しっかりした子」と言われておりましたが、中学 2 年の時に不登校になりました。更 に、家族思いで穏やかだった夫が、それまでとは違う言動をするようになり、争いが耐えず、家庭 崩壊の状態でした。息子は、不登校を経験しているため劣等感が強く、対人恐怖で苦しんでいまし た。その苦しさを、飲酒で紛らわすようになりました。飲酒運転(バイク)での転倒、ブラックア ウトのため外出先から戻れなくなるなど、毎日心配で疲労困憊の状態でした。12 年前、夫への不 信不満を募らせていた息子は、飲酒の勢いで夫に暴力を奮い、警察沙汰になり、札幌太田病院に入 院しました。 入院治療で内観療法、家族療法を受けたことは、息子、私にとって幸運でした。内観後、息子は お金の無駄遣いが無くなり、親への不信、不満も軽減しました。私も内観のお陰で自分の欠点、勘 違いなど、多くの気づきがありました。これまで、いかに多くの善意に守られ、生かされてきたの かに気付き、ありがたいと思いました。それまでの困難から厭世的でしたが、自分の存在を肯定的 に思えました。また、家族会があったのも幸運でした。同じ悩みを持つ人達に出会え、孤立感がほ ぐれました。AL 症者への接し方、良書の紹介、家族が陥る共依存などについて、多くを教わりま した。家族の共依存は本人の回復を遅らせ、生きる力を奪うと知り、愕然としました。何より嬉し かったのは、家族が健康な心を取り戻し、幸せになれることでした。 地域の断酒会でも多くを教わりました。他者の体験談を通し、本人の苦しみの深刻さを実感し、 息子の辛さの理解が深まりました。AL 症者が断酒の継続に慢心せず、自己変革を目指す生き方に 感動しました。私もそのような生き方をしたいと思いました。 息子が入院した頃の自分を振り返ると、その頃は、理想の家庭像からかけ離れた有様を受け入れ られず、悲観し、母親失格、妻失格と自分を責め、恥かしさで一杯でした。家族のことは全て気配 りをし、問題のないようにするのが役目と思っていました。自分と家族との境界など、考えたこと もなく、干渉し、口うるさく接していました。それが共依存だとは知りませんでした。本当に家族 には迷惑をかけました。 そのような状態に、転機を与えてくれたのは息子でした。AL 症で入院した息子との回復体験を 通し、家族の境界を尊重する生き方の大切さを学びました。他人との境界線を知ってから、生きる のが楽になりました。心にゆとりができました。今後も難問に遭遇すると思いますが、今迄出会っ た人々から教わった知恵を思い出し、前向きに精一杯対処していきます。 今後、息子を始め、家族に共依存からかけた迷惑を忘れず、家族の心地良い生活を大切にしてい きます。息子の AL 症がなければ、今のような考え、生き方は出来なかったと思うと、息子の存在 に有難いと思います。
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