小林 俊雄 27 吉備国際大学 臨床心理相談研究所紀要 第7号,27−36,2010 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研究 The study of gender differences among 60-year-old patients about situations on admission to hospital. 小林俊雄* Toshio KOBAYASHI Abstract I engaged in research for the difference between the sexes as to 60 year-old patients. This study is the third investigation of the project of 60 year-old patients research. I investigate a difference in the personal aspect of between the sexes who were on sdmission. From a large sample which consists of 3567 patients(age range was 2‐year-old-93-year-old)who was met as a new patient with a clinical psychology service in the Rehabilitation hospitals by me from the year 1975 to the year 2003, I drew out a sample of 65 patients at 60-year-old patients. A sample of 65 patients at just 60-year-old was divided into two sexes(men N=46, woman N=19) , a ratio of men to women marked at 2.42: 1.00 . As a result of investigation, there are two statistically significant difference (CR=3.34, p<0.01) between the patient group of 39 men and the patient group of 19 women as to a person born in . As a not statistically significant Hokkaido(p<0.05)and a person unknown birthplace(p<0.05) difference but beneficial information to counseling, there are twenty beneficial items. For example a percentage of man patient go to hospital with one person usually his wife is 75.67% but a woman patient come with two people usually her husband and daughter or son is 64.28%. key words:gender differences, admission to hospital, patient Ⅰ.はじめに が適用できるためには、従来の検査法に対して負担の リハビリテーションの心理臨床場面では、患者とそ 軽いやり方を開発していくことが必要である。また身 の家族に心理カウンセリングを有効に進めるためにリ 体リハビリテーション領域の患者の場合には、精神科 ハビリテーション情報を蓄積することが望まれる。こ リハビリテーションの患者の場合と得点の出方が違う の研究目的に基づいて、私は精神科リハビリテーショ ので、心理検査の成績を分析していくためには、身体 ンの臨床心理士としての病院臨床経験と、リハビリテ リハビリテーション領域の患者についての得点分布の ーション病院の心理カウンセラーとしての経験を生か 標準化を行うことも必要であることを認識した。 して、30年前から継続的に研究を行ってきた。その結 このような経緯で、2002年には交通事故リハビリテ 果、身体リハビリテーション領域の患者の場合には、 ーション患者の男女差について研究シリーズを開始し 身体障害による制約が大きいので、精神科リハビリテ た(小林,2002)。交通事故のリハビリテーションの ーションの心理検査の標準法が適用できない事例が多 場合には30歳以下で発生している患者が多いことがわ いことを認めた。 かった。2004年からは30歳以下の交通事故リハビリテ 身体リハビリテーション領域の患者に広く心理検査 ーション患者の臨床心理記録を研究対象として男女差 *吉備国際大学大学院臨床心理学研究科 〒716-8508 岡山県高梁市伊賀町8 Graduate School of Clinical Psychology, Kibi International University 8 Iga-machi, Takahashi, Okayama, Japan(716-8508) 28 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研究 についての研究シリーズ(小林,2004,2005,2006, Sing1e 2007,2008,2009a,2009b)を開始した。研究対象は、 ある」と、園田(2008)は指摘している。園田(2008) caseをいかに解析するか新たな手法が必要で 1975年4月1日から2003年7月31日までの臨床心理記 の指摘で、患者ひとりひとりのデータを丁寧に調べて 録の中から抽出した患者である。交通事故リハビリテ 行くことの重要性を改めて認識することが出来る。 ーション患者の男女差についての研究シリーズによっ 事例を大切に扱う考え方の一つとして臨床心理学者 て、患者に負担の軽い臨床的な心理検査のやり方を提 村上英治は1970年代に現象学的人間学を提唱した。本 示することができた。身体リハビリテーション領域の 研究では、臨床心理学研究として群間比較を行うが、 患者について標準化の研究知見も獲得された。 患者ひとりひとりのデータを丁寧に調べて行く研究姿 2009年には、初回の心理面接を受けた時に満60歳に 勢をとっている。シリーズ3作目となる本研究の目的 なっている患者の臨床心理記録を研究対象として男女 は、患者が入院するときの状況における男女差につい 差についての研究シリーズを開始した。本研究シリー て理解を深めることである。本研究シリーズは治療効 ズは、1975年4月1日から2003年7月31日までの満60 果を予測する段階には至っていない。園田(2008)の 歳患者の中から抽出した臨床心理記録が研究対象であ 研究分類によると準実験的研究に該当している。 る。この研究シリーズはコーホート研究とは違う。満 臨床心理学的立場から暖かい気持ちで患者と家族の 60歳という年齢からデータを輪切りにして研究する点 気持を汲み取ってサポートしていくという姿勢が当該 が、本研究シリーズの独創的な点である。臨床心理記 分野における本研究の独創的な点である。本研究では、 録の中には精神科の患者と身体リハビリテーション領 旧診断名を現代風に改めるなど人権の保護及び法令等 域患者のデータが見られるので、二つの領域の視点か の遵守について十分に留意している。 らデータを考察するとそれぞれの領域についての研究 知見が深められると考えたことが本研究シリーズの着 Ⅱ 研究目的 本研究の目的は、初めて心理面接を受けたときに満 想に至った経緯である。 初回の心理面接を満60歳で受けた患者の研究シリー 60歳になっている患者の臨床心理記録を研究対象に、 ズ1作目(小林,2009c)では、発病の予防に貢献す 患者が入院するときの状況の男女差について6項目の ることを目的として、患者の発病月、発病日、発病時、 視点から研究して心理カウンセリングに役立てること 発病月日の星座などの男女差について研究した。研究 である。具体的には、患者が入院するときに何人つい シリーズ2作目(小林,2010)では、患者数の男女差、 てきたか男女差の研究(研究1)、入院時に患者は誰 診断の男女差、誕生年の男女差、誕生月の男女差、誕 と来たか男女差の研究(研究2)、患者の結婚歴につ 生月日の星座の男女差などについて研究した。なぜ男 いて男女差の研究(研究3)、患者の現在の結婚状態 女差についてこだわるか。私は1988年の論文「脳卒中 について男女差の研究(研究4)、患者の夫婦仲につ 患者のつらさとその対策-MASテストによる検討」で いて男女差の研究(研究5)、患者の出生地について 脳卒中患者群のほかに対照群を用意して疾患別の群間 男女差の研究(研究6)など6項目である。 比較研究を行ったが、男性患者群と女性患者群ではつ らさとその対策が違うことを体験した(小林,1988)。 Ⅲ 研究の方法 この研究論文以来心理カウンセリングでは、患者の性 調査方法 別による特徴を配慮しながら心理的サポートを行うこ になっている病院患者65名(男性患者群N=46名、女 とが重要であると認識した。 最近の理学療法と作業療法のリハビリテーション分 野では患者集団の治療効果を予測する「帰結研究」の 概念とRCT(randomized controlled 研究対象は、初回の心理面接を受けたときに満60歳 性患者群N=19名)の臨床心理記録である(男女比 2.42: 1.00, CR=3.34, p<0.01) 。 trail)という この65名の臨床心理記録は私が心理カウンセラーと 研究方法がある(園田,2008)。しかし「RCTはリハ して勤務した1975年4月1日から2003年7月31日現在 ビリテーション領域に適した検討方法ではない。リハ までに心理面接を行った全患者(2歳−93歳)の臨床 ビリテーションに適した解析方法が必要である。 心理記録3567名(男女比1.56:1.00, CR=12.97, p<0.01) 小林 俊雄 表1 本研究の満60歳で初回の心理面接を受けた 研究対象 心理面接を受けた 全体数 男性数 女性数 男女比 新患ケース 本研究の研究対象 (満60歳) 全患者 (2∼93歳) 65名 46名 19名 3567名 2171名 1396名 CR 有意差 2.421 :1.00 3.34 P<0.01 1.56 :1.00 12.97 P<0.01 出 男現 性率 患% 者 郡 N = 37 名 ※出典:小林(2004)から引用 60% 研究1 患者が入院するときに「何人ついてきたか」 男女差の研究 入院は患者にとって不安なことである(小林,1983) が、入院の時に患者について来た人の心理には、「患 者のことが心配である」という心理と、「ついて来た 人自身が不安なので一緒について来た」という心理が ある。家族の誰かが入院することは、当家の一大事な のである。病院の立場からは、患者の身元引き受け人 を見ておく事も必要である。本研究の心理初診の満60 歳患者の場合、入院するときに何人付いて来たか、7 分類「入院時について来た人数」コード(0人・1 人・2人・3人・4人・5人・不明)で調査した(図 1、図2) 。 入院する時に「ついて来た人数が判明している患者」 の出現率は、男性患者群N=46名の場合37名80.43%、 54.05% 50% 37.83% 40% 30% 20% 10% 0% の中から抽出した(表1) 。 Ⅳ研究の結果と考察 29 5.40% 2.70% 11 人位 つ い て き た 22 人位 つ い て き た 33 人位 つ い て き た 54 人位 つ い て き た 0.00% 0.00% 05 46 人位 人位 つ つ い い て て き き た た 図1 ランキング 入院時ついてきた人数 男性患者郡N=37名 6分類コード 出 女現 性率 患% 者 郡 N = 14 名 70% 64.28% 60% 50% 40% 28.57% 30% 20% 7.14% 10% 0% 21 人位 つ い て き た 12 人位 つ い て き た 53 人位 つ い て き た 0.00% 0.00% 0.00% 04 35 46 人位 人位 人位 つ つ つ い い い て て て き き き た た た 図2 ランキング 入院時ついてきた人数 女性患者郡N=14名 6分類コード ではない(χ2=0.65, p<0.80, df=1) 。 入院のときに「何人ついてきたか」不明の患者の場合 女性患者群N=19の場合14名73.68%である。 「入院時に 「入院時について来た人数が不明の患者」の出現率 ついて来た人数が判明している患者」の出現率は、男 は男性患者群N=46名の場合9名19.56%、女性患者群 性患者群が女性患者群より高いが、統計的に有意な男 N=19名の場合5名26.31%である。女性患者群は「つ 2 女差ではない(χ =0.36, p<0.70, df=1)。「患者と一緒 いて来た人数が不明」患者の出現率が高いが、有意な について来た人数」の総数を調査した。入院時につい 男女差ではない(χ2=0.36, p<0.70, df=1)。 て来た人が判明している男性患者群N=37名の場合は 「入院のときについて来た人数が不明」の患者(男 総数59人で、平均1.59人が入院時に男性患者と一緒に 性患者n=9名、女性患者n=5名)について、診断の ついて来ている。入院の時について来た人が判明して 視点から不明の理由を考察した。不明の男性患者n= いる女性患者群N=14名の場合は、総数27人で、平均 9名の診断は脳血管障害6名、知的障害2名、腰部捻 1.92人が入院時に女性患者と一緒について来ている。 挫1名などである。不明の女性患者n=5名の診断は 「本研究の満60歳患者」をおじいちゃん、おばあち 統合失調症3名、認知症1名、癌1名などである。不 ゃんとして換言すると、「おじいちゃんが入院する時 明の理由は、男性患者n=9名の場合脳血管障害で には一人しか付いてこない」事例が多いが、「おばあ 「病状が重くて問診できなかった」という理由が多い ちゃんが入院する時には二人もついて来る」というこ 6名66.66%。女性患者n=5名の場合は「問診できる とで大きな男女差がある。入院時に付いて来た人数が 病気だが、誰が付いてきたかに関して話題にしなかっ 「2人未満」かどうかでχ 2 検定をしたが有意な男女差 た」という理由が多い5名100%。臨床的には大きな 30 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研究 男女差であると考察される。 6分類「入院について来た人数」コードの出現率のラ ンキング 「入院について来た人数が不明」コードの男性患者 n=9名と女性患者n=5名を除外して、新しく6分類 「入院時について来た人数」コード(0人・1人・2 人・3人・4人・5人)を用いて男性患者群N=37名 と女性患者群N=14名について出現率のランキングを 調査した。6分類「入院時について来た人数」コード で出現率のランキング1位は、男性患者群N=37名の場 合「1位1人ついて来た20名54.05%」である。女性患 者群N=14名の場合「1位2人ついて来た9名64.28%」 である。男性患者群は、誰か1人ついて来る事例が一 出 男現 性率 患% 者 郡 N = 37 名 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 75.67% 29.72% 13.51% 13.51% 10.81% 8.10% 5.40% 2.70% 0.00% 0.00% 妻 1 娘2 息3 姻3 他4 同5 子6 親7 親8 誰8 と位 と位 子位 戚位 人位 胞位 供位 と位 戚位 も位 来 来 と と と と と 来 と つ 院 院 来 来 来 来 来 院 来 い し し 院 院 院 院 院 し 院 て こ た た し し し し し た し な 患 患 た た た た た 患 た い 者 者 患 患 患 患 患 者 患 患 者 者 者 者 者 者 者 図3 ランキング 誰と来院した 男性患者郡N=37名 番多い。女性患者群の場合は、入院する時に二人つい たい心理」、妻の心理としては「夫の入院が心細い」 てくる事例が一番多い。 気持ちなどが大きいと推察される。 「入院時について来た人数」ランキング2位は、男 入院時に「配偶者がついて来ない」患者は、男性患 性患者群N=37名の場合「2位2人ついて来た14名 者の場合N=37名の9名24.32%、女性患者の場合N=14 37.83%」で、女性患者群N=14名の場合「2位1人つ 名の4名28.57%である。入院時に「妻がついて来な いて来た4名28.57%」である。女性患者群N=14名の い」男性患者n=9名の理由は、妻の不在である。具 場合「1人ついて来た女性患者」の出現率は28.57%で、 体的には、離婚3名33%、妻の病死2名22%、未婚2 男性患者の出現率54.05%よりも低いが、出現人数に 名22%、妻も入院中1名11%、遠隔地のため妻が来院 2 ついて有意な男女差はない(χ =1.72, p<0.20, df=1) 。 入院時に「患者について来た人の最多人数」を調査 しない1名11%などである。入院時に「夫がついて来 ない」女性患者n=4名の理由は、夫の不在である。 した。患者を心配する人が多ければ入院に付いてくる 具体的には、夫の病死2名50%、別居中1名25%、遠 人も多くなると考えられる。男性患者群N=37名の場 隔地のため夫が来院しない1名25%などである。 合ついて来た人の最多人数は「5人ついて来た2.70%」 である。女性患者群N=14名の場合も「5人ついて来 入院時に「配偶者がついて来ない」患者の男性患者 と女性患者に共通してみられる理由は「配偶者の病死」 た7.14%」である。男性患者も女性患者も、入院時に 「遠隔地」などである。「配偶者の病死」という理由の 5人ついて来ることが最多人数の限界であるようだ。 出現率は、男性患者群n=9名の22%、女性患者群n=4 研究2 入院の時に 「誰がついてきたか」 男女差の研究 名の50%で、女性患者群が男性患者群の2.27倍である。 入院時に誰と来院したか。一緒について来た人が判 女性患者群は早めに配偶者に他界される事例が多い。 明している患者(男性患者群N=37名、女性患者群 入院時に「配偶者がついて来ない」男性患者の特有な N=14名)について10分類「一緒について来た人」コ 理由は「離婚」「未婚」「妻も入院中」などである。入 ード(親・同胞・配偶者・娘・息子・子ども(性別不 院時に「配偶者がついて来ない」女性患者に特有な理 明) ・姻戚・親戚・他人・誰もついてこない)でラン 由は「別居中」である。 キング調査をした(図3、図4)。「一緒について来た 「離婚」という理由の出現率は入院時に「配偶者が 人」の出現率が高いランキング1位は、男性患者群 ついて来ない」男性患者群n=9名の3名33%で、入 N=37名の場合「1位妻28名75.67%」で、女性患者群 院時に「配偶者がついて来ない」女性患者群n=4名 N=14名の場合「1位夫10名71.42%」である。満60歳 は0名0%である。「離婚」で配偶者が入院時につい 男性患者群の76%は入院するときに妻と来院し、満60 てこないという理由は、男性患者が多く女性患者には 歳女性患者群の72%は入院するときに夫と来る。夫の 出現していない。「離婚」は配偶者との人間関係が破 心理としては「妻が一番大事な人である」「妻に頼り 綻していることを示唆するサインである。入院時に 小林 俊雄 31 「配偶者がついて来ない」女性患者群n=4名の場合は た」事例である。男性患者が入院するときには、兄、 離婚の一歩手前の段階「別居中1名25%」が出現して 姉など年上の同胞がついて来ない。姉や妹など異性の いる。入院時に「配偶者がついて来ない」男性患者群 同胞も付いて来ないという特徴がある。 n=9名は「別居中0名0%」であるので、夫婦関係 女性患者群N=14名の「同胞5名」の内訳は「妹3 が完全に破綻していると考察される。男性患者群の方 名60.00%」「弟1名20.00%」「兄1名20.00%」「姉0名 が夫婦関係の破綻者が多いと考察される。 0%」などである。満60歳の女性患者から見ると、 入院時に「未婚」だから配偶者が付いて来ないという 「妹60.00%」や「弟20.00%」など年下の同胞がついて 理由の患者の出現率は、「配偶者がついて来ない」男 来た事例が80.00%で多い。患者の妹や弟の心理とし 性患者群n=9名の2名22%で、「配偶者がついて来な て「お姉さんの入院が心配なのでついて来た」という い」女性患者群n=4名は0名0%である。入院時に 気持ちが考察される。女性患者の場合「兄20.00%」 配偶者が付いて来ない理由が「未婚」という女性事例 が付いてくる事例がある。「妹の入院が心配なのでつ はない。これは大きな男女差である。 いて来た」という兄妹心理である。このように女性患 入院時に「一緒について来た人」のランキング2位 者群は、入院時に異性の同胞が一緒について来る点で は、男性患者群N=37名の場合「2位娘11名29.72%」 男性患者群と違う。異性の同胞が付いてくるかどうか である。女性患者群N=14名はランキング2位が「2 について大きな男女差がある。 位娘5名35.71%」「2位同胞5名35.71%」など二つあ 入院時に「一緒について来た人」のランキング3位 る。「娘と来た」患者の出現率は男性患者も女性患者 は、男性患者群N=37名の場合「3位息子5名13.51%」 群も共に2位であるが、男性患者群29.72%が女性患 で、女性患者群N=14名の場合も「3位息子3名21.42 者群35.71%より5.99%だけ低い。 %」である。「息子がついて来た患者」の出現率は、 娘は、 「父親の入院にはついて行かなくても、母親の 入院に付いて行く」ことがある。娘の心理としては「母 親が入院するときの方が心配である」と考察される。 入院時に「同胞と来た」患者の出現率は、女性患者 女性患者群が男性患者群より7.91%だけ高い。息子は、 「母親が入院する時には付いて行く」が、「父親の入院 には付いて行かない」ことがある。 入院時に「一緒について来た人」のランキング4位 群N=14名の場合は、ランキング2位「同胞5名35.71 は、男性患者群N=37名の場合「4位姻戚5名13.51%」 %」で「2位娘5名35.71%」と同じランクである。 である。女性患者群N=14名の場合は「姻戚」が「3位 男性患者群N=37名の場合は「6位同胞3名5.40%」で 3名21.42%」で、男性患者よりランクが一つ高い、出 低い。男性患者群N=37名の同胞3名は全員が「弟」 現率も7.91%だけ高い。男性患者群N=37名の姻戚は、 である。つまり満60歳の男性患者が兄で、今回は弟よ 「息子の嫁」 「弟の嫁」 「娘の旦那」 「家内の妹」など多彩 り先に病気になったので「兄を心配して弟が付いて来 である。男性患者群は義理の娘、義理の妹、義理の息 出 女現 性率 患% 者 郡 N = 14 名 80% 71.42% 70% 60% 50% 40% 35.71% 35.71% 30% 21.42% 21.42% 20% 7.14% 10% 5.40% 0.00% 0.00% 0.00% 0.00% 0% 夫 1 娘2 同2 息3 姻3 子4 親5 他5 親5 誰5 と位 と位 胞位 子位 戚位 供位 と位 人位 戚位 も位 来 来 と と と と 来 と と つ 院 院 来 来 来 来 院 来 来 い し し 院 院 院 院 し 院 院 て こ た た し し し し た し し な 患 患 た た た た 患 た た い 者 者 患 患 患 患 者 患 患 患 者 者 者 者 者 者 者 図4 ランキング 誰と来院した 女性患者郡N=14名 子などから心配される事例がある。女性患者群N=14 名の姻戚は「兄嫁」「弟の嫁」「嫁」など全員が女性で ある。女性患者群には姻戚の男性は付いてこない。 入院時に「一緒について来た人」のランキング5位 は、男性患者群N=37名の場合「5位他人4名10.81%」 である。女性患者群N=14名の場合「5位他人0名 0.00%」で「他人と来た」という女性患者はいない。 家族状況に恵まれていない患者は、入院時に他人が付 いてくる。男性患者群N=37名には、 「会社の上司」 「病 院事務員」「病院職員」「民生委員」など他人が付いて くる事例が4例ある。女性患者の場合は、他人が付い てくるほど人間関係が壊れている事例がいないと考察 される。 32 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研究 入院時に「一緒について来た人」のランキング6位 は、男性患者群N=37名の場合「6位子ども(性別不明) 2名5.40%」である。女性患者群N=14名の場合子ども (性別不明)は「4位1名7.14%」である。子ども全員 (娘・息子・子ども(性別不明))を合計すると、男性患 者群N=37名の場合は「娘11名29.72%」 「息子5名13.51 表2 ランキング調査 満60歳患者の「結婚歴」の男女差 結婚歴 ラ3 ン分 キ類 ンコ グー ド 合 計 男性患者郡N=46名 女性患者郡N=19名 1位「既婚」男性42名 91.30% 1位「既婚」女性17名 89.47% 2位「未婚」男性 4 名 8.69% 2位「未婚」女性 2 名 10.52% 3位「不明」男性 0 名 0.00% 3位「不明」女性 0 名 0.00% 男性患者郡N=46名 女性患者郡N=19名 %」「子ども(性別不明)2名5.40%」で合計18名48.64% である。女性患者群N=14名の場合は「娘5名35.71%」 「息子3名21.42%」 「4位子ども(性別不明)1名7.14%」 ほとんどが妻である。 女性患者群は入院時に男性55.55%と女性40.74%が など合計9名64.28%である。「入院時に子供(全員合 ついてくる。女性患者の場合は男性も女性も心配して 計)がついて来た患者」の出現率は、女性患者群64.27 ついてくる傾向があると考察される。 %で男性患者群48.63%より15.64%だけ高い。出現人 研究3 「結婚歴」について男女差の研究 数は有意な男女差ではない(χ2=0.99, p<0.50, df=1) 。 心理初診の満60歳患者の結婚歴を3分類「結婚歴」 入院時に「一緒について来た人」のランキング7位 (既婚・未婚・結婚状況不明)コードでランキング調 は、男性患者群N=37名の場合「7位親1名2.70%」で 査をした(表2)。「結婚歴」コードの出現率が高いラ ある。女性患者群N=14名の場合親は「5位0名0.00%」 ンキング1位は、男性患者群N=46名の場合「1位既 である。親がついて来た女性患者はいない。男性患者 婚42名91.30%」である。女性患者群N=19名の場合も 群N=37名の場合、親というのは「母親」である。患者 「1位既婚17名89.47%」である。男性患者群と女性患 の心理記録によると「母親84歳。父親は他界している」 者群は「既婚患者」の出現率がほぼ等しい。統計的に という事例である。 有意な男女差はない(χ2=0.05, p<0.90, df=1) 。 入院時に「一緒について来た人」のランキング8位 「結婚歴」コードのランキング2位は男性患者群 は、男性患者群N=37名の場合「8位親戚0名0.00%」 N=46名の場合「2位未婚4名8.69%」である。「未婚」 「8位誰もついてこない0名0.00%」など二つある。 は女性患者群N=19名の場合「3位未婚0名0.00%」で 「親戚」と「誰もついてこない」コードは女性患者群 N=14名も「5位親戚0名0.00%」 「5位誰もついてこな ある。「未婚」の女性患者はいない。男性患者群は 「未婚」患者4名がいる。 い0名0.00%」で出現率0%である。男性患者群も女 「未婚」の男性患者2名の診断は「知的障害」であ 性患者群も「親戚と来た」という患者はいない。男性 る。ほかの男性患者2名は患者が特定できそうな特殊 患者群も女性患者群も「親戚」はお見舞いに来るが、 な診断なので掲載できない。女性患者群には「統合失 入院時には付いて来ない距離を置いた関係であると考 調症」の診断が出ているが、「知的障害」の診断は出 察される。この点に男女差がない。男性患者群も女性 現していない。女性患者群の「統合失調症」の事例は 患者群も「誰もついてこない」という患者はいない。 結婚している。「統合失調症」と「知的障害」は結婚 患者が入院する時には必ず誰かが付いてくる点で男女 歴が違うと考察される。 差がない。 入院時に患者についてきた人の性別を3分類「性別」 コード(男性・女性・性別不明)で調査した。患者に 「結婚歴」コードのランキング3位は男性患者群 N=46名の場合「3位結婚歴不明0名0.00%」である。 「結婚歴不明」の男性患者はいない。「結婚歴不明」は 「ついてきた人数」の合計は、男性患者群N=37名の場 女性患者群N=19名の場合「2位2名10.52%」である。 合59人で、性別の内訳は「1位女性43人72.88%」「2 女性患者群は複雑な結婚歴の事例があることが推察さ 位男性10人16.94%」「3位性別不明6人10.16%」など れる。大きな男女差である。 である。女性患者群N=14名の場合は合計27人で、性 研究4「結婚状態」について男女差の研究 別の内訳は「1位男性15人55.55%」「2位女性11人 既婚男性患者群N=42名と、既婚女性患者群N=17名 40.74%」「3位性別不明1人3.70%」などである。男 (結婚歴不明の女性患者2名を除く)について、5分 性患者群は入院時についてくるのは女性が多い、その 類「結婚状態」(結婚中・離婚・再婚・内縁・配偶者 小林 俊雄 33 表3 ランキング調査 満60歳患者の「結婚常態」の男女差 表4 ランキング調査 満60歳患者の「夫婦仲」の男女差 (5分類「結婚常態」コード既婚男性患者郡N=42名、既婚女性患者郡N=17名) (5分類「夫婦仲」コード既婚男性患者郡N=42名、既婚女性患者郡N=17名) 結婚状態 既婚男性患者郡N=42名の場合 既婚女性患者郡N=17名の場合 ラ 5 ン分 キ類 ンコ グー ド 合 計 1位「結婚中」34名 80.95% 1位「結婚中」13名 76.47% 2位「離婚」 した5名 11.60% 2位「夫と死別」2 名 11.76% 3位「妻と死別」2名 4.76% 3位「内縁」の女性 1 名 5.88% 3位「再婚」 した2名 4.76% 3位「再婚」 した1名 5.88% 4位「内縁」の男性0名 0.00% 4位「離婚」 した0 名 0.00% 既婚男性患者郡N=42名 既婚女性患者郡N=17名 夫婦仲 ラ 4 ン分 キ類 ンコ グー ド 合 計 既婚男性患者郡N=42名 既婚女性患者郡N=17名 1位夫婦仲「悪くない」15名 35.71% 1位夫婦仲「悪くない」8名 47.05% 1位夫婦仲「不明」15名 35.71% 2位夫婦仲「悪い」5 名 29.41% 2位夫婦仲「悪い」7名 16.66% 3位夫婦仲「不明」2名 11.76% 3位夫婦仲「良い」5名 11.90% 3位夫婦仲「良い」2名 11.76% 男性患者N=42名99.98% 女性患者N=17名99.98% 「内縁」の男性患者はいない。女性患者は縁付く事例 と死別)コードで整理してランキング調査をした(表 が見られ、「離婚」したままになっている女性患者は 3)。「結婚状態」コードの出現率の高いランキング1 いない。 位は、既婚男性患者群N=42名の場合「1位結婚中34 研究5 夫婦仲について男女差の研究 名80.95%」である。既婚女性患者群N=17名の場合も 既婚男性患者群N=42名と、既婚女性患者群N=17名 「1位結婚中13名76.47%」である。心理初診の満60歳 (結婚歴不明の女性患者2名を除いた)について、4 患者の約80%は男性患者群も女性患者群も「結婚中」 分類「夫婦仲」コード(夫婦仲が良い・夫婦仲が悪く である。結婚中の人数について統計的に有意な男女差 ない・夫婦仲が悪い・夫婦仲が不明)でランキング調 はない(χ2=0.15, p<0.30, df=1) 。 査をした(表4)。「夫婦仲」の判定は、臨床心理記録 「結婚状態」コードの出現率の高いランキング2位 は、既婚男性患者群N=42名の場合「2位離婚5名 の「夫婦仲」を示唆する記述に注目して行った。 「夫婦仲」コードで出現率の高いランキング1位は、 11.90%」である。既婚女性患者群N=17名の場合2位 既婚男性患者群N=42名の場合「1位夫婦仲が悪くな 「夫と死別2名11.76%」である。既婚男性患者群の い15名35.71%」「1位夫婦仲が不明15名35.71%」など 11.90%は離婚中で「妻がいない」。既婚女性患者群の 二つある。既婚女性患者群N=17名の場合は「1位夫 11.76%は夫と死別で「夫がいない」。男性患者群も女 婦仲が悪くない8名47.05%」である。「夫婦仲が悪く 性患者群も既婚患者の約10%は「配偶者がいない」結 婚状態である。 「結婚状態」コードの出現率のランキング3位は、 既婚男性患者群N=42名の場合「3位妻と死別2名4.76 %」「3位再婚2名4.76%」など二つある。既婚女性患 ない」患者の人数は統計的に有意な男女差ではない (χ2=0.65, p<0.40, df=1)が「夫婦仲が悪くない」患 者の出現率は、女性患者群47.05%で男性患者群 35.71%より11.34%だけ高い。 「夫婦仲」コードで出現率の高いランキング2位は、 者群N=17名の場合「3位再婚1名5.88%」「3位内縁 既婚男性患者群N=42名の場合「2位夫婦仲が悪い7 1名5.88%」など二つある。「配偶者と死別した」患者 名16.66%」で、既婚女性患者群N=17名の場合「2位 の出現率は、男性患者群4.76%、女性患者群11.76%で 夫婦仲が悪い29.41%」である。「夫婦仲が悪い」患者 女性患者群が男性患者群よりも高いが、統計的に有意 の人数は統計的に有意な男女差ではない( χ 2=1.21, な男女差ではない(χ2=0.93, p<0.40, df=1) 。 p<0.30, df=1)が「夫婦仲が悪い」患者の出現率は、 「再婚」コードは、既婚男性患者群N=42名の場合 「3位再婚2名4.76%」、既婚女性患者群N=17名の場合 女性患者群29.41%で男性患者群16.66%より12.75%だ け高い。 「3位再婚1名5.88%」である。女性患者群の場合は 「夫婦仲」コードで出現率のランキング3位は、既 「3位内縁1名5.88%」を加えると、「再婚状態」の女 婚男性患者群N=42名の場合「3位夫婦仲が良い5名 性患者は11.76%と高くなる。女性患者群は、再婚や 11.90%」である。既婚女性患者群N=17名の場合は 内縁の機会が多いという男女差があると考察される。 「3位夫婦仲が良い2名11.76%」と「3位夫婦仲が不 「結婚状態」コードの出現率のランキング4位は、男 明2名11.76%」など二つある。「夫婦仲が良い」患者 性患者群N=42名の場合「4位内縁0名0.00%」で、女 は、男性患者群11.90%、女性患者群11.76%でほぼ同 性患者群N=17名の場合「4位離婚0名0.00%」である。 じである。「夫婦仲が良い患者」は、既婚男性患者群 34 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研究 表5 ランキング調査 満60歳患者の「出生地」の男女差 (6分類「出生地」コード既婚男性患者郡N=46名、既婚女性患者郡N=19名) 出生地 6 分 類 コ ー ド ラ ン キ ン グ 合 計 男性患者郡N=46名 女性患者郡N=19名 1位「北海道」生れ男性28名 60.86% 1位「北海道」生れ女性6名 31.57% 2位「本州」生れ男性11名 23.91% 1位「本州」生れ女性6名 31.57% 3位出生地「不明」男性5名 10.86% 1位出生地「不明」女性6名 31.57% 4位「外国」生れ男性2名 4.34% 2位「九州」生れ女性1名 5.26% 5位「四国」生れ男性0名 0.00% 3位「四国」生れ女性0名 0.00% 5位「九州」生れ男性0名 0.00% 3位「外国」生れ女性0名 0.00% 男性患者N=46名 女性患者N=19名 (χ2=2.24, p<0.20, df=1)が、患者の出現率は男性患 者群15.21%、女性患者群26.31%で女性患者群が11.1% 高い。 「出生地」コードでランキング3位は、男性患者群 N=46名の場合「3位出生地不明5名10.86%」である。 女性患者群N=19名の場合「3位外国0名0.00%」 「3位 四国0名0.00%」である。「出生地不明」の患者数は 有意水準5%で男女差が見られる(χ2=4.10, p<0.05, df=1 )。「出生地不明」患者の出現率は男性患者群 10.86%、女性患者群31.57%で女性患者群が20.71%だ も既婚女性患者群も約10%だけである。 け高い。 「夫婦仲が不明」の患者の人数について統計的に有 「出生地」コードのランキング4位は、男性患者群 意な男女差はない(χ2=2.91, p<0.10, df=1)が「夫婦 N=46名の場合「4位外国2名4.34%」である。女性患 仲が不明」患者の出現率は、男性患者群35.71%が女 者群N=19名の場合ランキング4位はない。女性患者 性患者群11.76%よりも23.95%だけ高い。男性患者群 群N=19名の場合「外国」はランキング「3位外国0 は、初めての心理面接で妻のことには触れない心理傾 名0.00%」である。外国生れの女性患者はいない。 「外国生れ」男性患者2名は、太平洋戦争に入る前の 向があると考察できる。 研究6 患者の「出生地」について男女差の研究 昭和11年と昭和14年に樺太で生れた男性患者である。 患者の出生地はどこが多いか。心理初診の満60歳患 本研究では「樺太生れ」を外国生れと計算した。「外 者の出生地の出現率について6分類「出生地」コード 国生れ」患者数について男女差は有意ではない( χ 2 (北海道・本州・四国・九州・外国・出生地不明)で =0.85, p<0.40, df=1)。 ランキング調査をした(表5)。「出生地」コードの出 「出生地」コードでランキング5位は、男性患者群 現率の高いランキング1位は、男性患者群N=46名の N=46名の場合「5位四国0名0.00%」と「5位九州0 場合「1位北海道28名60.86%」である。 名0.00%」である。女性患者群N=19名の場合、ランキ 女性患者群N=19名の場合は「1位北海道6名31.57 %」「1位本州6名31.57%」「1位出生地不明6名31.57 %」など三つもある。「北海道生れ」患者の出現数につ 2 ング5位はない。本研究では「四国生れ」の患者は男 性患者群0.00%、女性患者群0.00%で男女差がない。 「九州生れ」は男性患者群N=46名の場合「5位0 いては有意水準5%の男女差がある(χ =4.62, p<0.05, 名0.00%」であるが、女性患者群N=19名の場合「2位 df=1 )。「北海道生れ」患者の出現率は、男性患者群 九州1名5.26%」である。九州生れの患者数の男女差 60.86%で女性患者群31.57%より29.29%だけ高い。 は有意ではない(χ2=2.45, p<0.20, df=1)が女性患者 「出生地」コードで出現率の高いランキング2位は、 群には「九州生れ」が出現しているので注目したい。 男性患者群N=46名の場合「2位本州11名23.91%」で 本研究では、寒い「樺太」で生れた男性事例はあるが、 ある。女性患者群N=19名の場合「2位九州1名5.26%」 暖かい「九州」で生れた男性事例はない。暖かい「九 である。男性患者群N=46名の場合、「本州生れ」の男 州」で生れた女性事例はあるが、寒い「樺太」で生れ 性患者群n=11名の本州の内訳は、青森県3名、秋田 た女性事例はない。住む環境が厳しくなると男性が生 県1名、宮城県1名、福島県2名、大阪3名、岡山県 まれやすくなる現象が見られるかもしれないと考察さ 1名などである。「本州生れ」の男性患者群n=11名は れる。 東北生れ7名が多い。女性患者群N=19名の場合、「本 Ⅴ 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研 州生れ」の女性患者n=6名の本州の内訳は、青森県 究のまとめ 1名、秋田県1名、福島県2名、新潟県1名、大阪1 本研究の目的は、初回の心理面接時に満60歳になっ 名などである。女性患者群n=6名も東北生れ5名が ている患者65名の臨床心理記録を研究対象に、入院時 多い。「東北生れ」の患者数の男女差は有意ではない 状況の男女差について研究し心理カウンセリングに役 小林 俊雄 35 立つ情報を獲得することである。研究対象患者(男性 引用文献 患者群N=46名、女性患者群N=19名 男女比2.42:1.00, 小林俊雄(1983)リハビリテーションにおける心理治 CR=3.34, p<0.01)の臨床心理記録は、1975年4月1 療パラダイム――脳卒中患者の障害受容『医学心理 日から2003年7月31日までに心理面接を行った全患者 学』1 a,51-59. 3567名(2歳−93歳)の臨床心理記録(男女比1.56: 小林俊雄(1988)「脳卒中患者のつらさとその対策― 1.00, CR=12.97, p<0.01)から抽出した。本研究の結果、 MASテストによる検討」『現代とリハビリテーショ 統計的に有意な男女差は、「北海道生れ」患者の人数 ン』2 a,83-89. 2 (χ =4.62, p<0.05, df=1)と、「出生地不明」患者の人 小林俊雄(2002)最近の交通事故のリハビリテーショ 数(χ2=4.10, p<0.05, df=1)などについて有意水準5% ン患者に見られる男女差『順正高等看護学校紀要』 の男女差を認めた。 「北海道生れ」患者の出現率は、男 9 a,17-26. 性患者群60.86%で女性患者群31.57%である。「出生地 小林俊雄(2004)交通事故のリハビリテーション患者 不明」患者の出現率は男性患者群10.86%で女性患者 の心理テストにみられる男女の差『吉備国際大学社 群31.57%である。 会福祉学部紀要』9,135-145. 統計的に有意ではないが、臨床的に心理カウンセリ ングで注目される研究結果を以下に列記する。研究1。 男性患者群は平均1.59人、女性患者群は平均1.92人が 小林俊雄(2005)ADLテストにおける交通事故リハ ビリテーション患者の男女差『吉備国際大学社会福 祉学部紀要』10,125-136. ついて来る。入院時について来た人の最多人数は、男 小林俊雄(2006)長谷川痴呆スケールにおける交通事 性患者群も女性患者群も「5人」である。研究2。入 故リハビリテーション患者の男女差『吉備国際大学 院時には男性患者群「妻75.67%」、女性患者群「夫 社会福祉学部紀要』11,165-175. 71.42%」など配偶者が付いてくる。娘と息子は、「父 小林俊雄(2007)コース検査における交通事故リハビ 親の入院に付いて行かない」ことが多い。女性患者群 リテーション患者の男女差『吉備国際大学社会福祉 は「配偶者の病死」が男性患者群の2.27倍である。 学部紀要』12,67-81. 「未婚」の女性患者はいない。男性患者群は、他人が 小林俊雄(2008)ベンダーゲシュタルト検査における 付いてくる事例が4例ある。他人が付いてくる女性患 交通事故リハビリテーション患者の男女差『吉備国 者群はいない。男性患者群も女性患者群も入院する時 際大学社会福祉学部紀要』13,87-99. に必ず誰かが付いてくる。研究3。既婚患者は男性患 小林俊雄(2009a)HTP描画検査における交通事故リ 者群91.30%と女性患者群89.47%でほぼ等しい( χ 2 ハビリテーション患者の男女差『吉備国際大学研究 =0.05, p<0.90, df=1)。「未婚」男性患者は4名いる。 紀要(社会福祉学部) 』19,67-79. 診断は「知的障害」である。「結婚歴不明の女性患者 小林俊雄(2009b)ロールシャッハ検査における交通 がいる。研究4。男性患者群も女性患者群も約80%は 事故リハビリテーション患者の男女差『吉備国際大 結婚中である(χ2=0.15, p<0.30, df=1)。男性患者群 学臨床心理相談研究所紀要』6,3-14. の11.90%は離婚で妻がいない。女性患者群の11.76 % 小林俊雄(2009c)満60歳病院患者の発病の月日時と は死別で夫がいない。研究5。「夫婦仲が良い」患者 星座について男女差の研究―発病の予防『岡山心理 は、男性患者群も女性患者群も約10%である。「夫婦 学会第57回大会研究発表論文集』24-25. 仲が悪い」患者は男性患者群16.66%で女性患者群 2 29.41%である(χ =1.21, p<0.30, df=1)。研究6。寒 小林俊雄(2010)「満60歳病院患者の診断と誕生年、 誕生月、誕生日、誕生星座について男女差の研究」 い「樺太」で生れた男性事例はあるが、暖かい「九州」 『吉備国際大学社会福祉学部研究紀要』20,67-79. で生れた男性事例はない。暖かい「九州」で生れた女 園田茂(2008)総論リハビリテーションにおける帰結 性事例はあるが、寒い「樺太」で生れた女性事例はな 研究の意義『総合リハビリテーション』36 a,7-10. い。 36 満60歳病院患者の入院時状況について男女差の研究 謝辞:本研究の英文タイトルについて、吉備国際大学 授、吉備国際大学大学院通信制博士(後期)課 臨床心理相談研究所所長日上耕司教授、吉備国 程臨床心理学研究科臨床心理学専攻副指導教授 際大学大学院通信制博士(後期)課程臨床心理 古田知久教授のご指導を賜りましたことを明記 学研究科臨床心理学専攻主指導教授三宅俊治教 してお礼を申し上げます。
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