WAKU2 情報らんど 5 月号 いよいよ春到来です。この季節は、健康診断を受ける方が多いのではな いでしょうか。健康診断は自分の身体を見つめなおすのによい機会です。 今回は、健康診断の結果の中でも特に中高年の方が 気になる項目「脂質」について注目しました。コレステロールや 中性脂肪を減らし、中年太りを解消する方法をご紹介します。 血液中の脂質って? 血液中に存在する脂質は「血清脂質」と呼ばれ、コレステロール、中性 脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の4つがあげられます。脂質はいわゆる「油」 であるため、そのままでは血液に溶けることができません。血液中では水 となじみやすいようにある種のタンパク質とむすびついた小さな粒子とな って存在しています。この粒子を“リポたんぱく”といい、タンパク質は脂質 を運ぶための“コンテナ”のような働きをしているといえます。コレステロー ルや中性脂肪などの脂質は“リポたんぱく”の形で血液に溶けこみ、体内 をめぐって、必要な箇所に送り届けられているのです。 「脂質」というと、 健康を損なう悪の代名詞のようにとられがちですが、実際には、体内に広 く存在し、生命を維持していくうえで欠くことのできない重要な働きをして います。特にコレステロールと中性脂肪は動脈硬化と深い関係にあること がわかっている脂質で、体内では右のような役割を果たしています。 中高年になると血液中の脂質が増えるのはなぜ?? からだに必要なコレステロールは、約3割が食べ物から取り入れられ、残 りの約 7 割は肝臓などで作られています。幼少期から青年期にかけて、か らだの形成が行われている時期は多くのコレステロールが必要です。しか し、中高年期になると必要とされるコレステロールの量が減ります。また、コ レステロールも中性脂肪も、食べ物から摂取したエネルギーをもとにから だの中で作られるため、カロリーの高い食事が多かったり、運動する機会 が少なかったりすると需要と供給のバランスが崩れてしまいます。中高年 はこうした背景から血中脂質が高くなる要因を多くもっているといえます。 ☆コレステロール からだをつくる細胞や細胞膜を構成する主な成分。体内量 の約 50%は脳と筋肉に存在。 性ホルモンや副腎皮質ホルモンを合成する材料になったり、 食物の消化・吸収に必要な胆汁酸の原料として使われる。 ☆中性脂肪 エネルギーの貯蔵庫。 食事が十分とれなかったり、激しい運動をしてエネルギー が不足したときに、分解されてエネルギー源として利用され る。逆に糖、脂肪などの摂取が多すぎた場合、余ったエネ ルギーは中性脂肪として蓄積される。また、皮下脂肪や内 臓脂肪となり、体温の維持や内臓を支える働きも持つ。 コレステロールには“善玉”と“悪玉”がある 血液中の脂質は血液となじみやすいリポたんぱくという粒子で 存在していますが、その組成などから低比重リポたんぱく(LDL) や高比重リポたんぱく(HDL)に分類されます。LDL は、からだの すみずみの細胞にコレステロールを運びますが、増えすぎると 動脈硬化などを促進するため、悪玉コレステロールと呼ばれま す。一方、HDL は体内の過剰なコレステロールを回収し、肝臓 に戻す働きがあるため、善玉コレステロールと呼ばれています。 脂質が多いとこんな危険が… コレステロール・中性脂肪高値者の割合 % 70 女性 60 50 40 男性 30 20 10 0 20 30 40 50 60 70歳以上 平成 11 年国民栄養調査(厚生労働省)より 脂質が必要以上にたまったドロドロ血液では、動脈硬化が促進されます。血中濃度が高くなるとコレステロ ールは、血管壁に取りこまれます。すると動脈硬化を引きおこし、血管の内腔が狭くなります。一方、中性脂 肪は、善玉コレステロールを減らし、間接的に動脈硬化を促進すると考えられています。コレステロールや中 性脂肪の多い高脂血症は、病気そのものが直接生命に左右するものではありません。しかし、ほおっておくと 動脈硬化や心筋梗塞、狭心症、脳梗塞といったおそろしい病気を引きおこすので注意が必要です。生命を 維持していくためには一定量の脂質は必要です。 「人は血管とともに老化する」といわれますが、動脈硬化 は加齢による血管の老化を早めます。ですから、血管をいつまでも若々しく保つために、脂質を多くも少なく もない適度な値を保つよう日常生活から心がけることが大切です。近年、食生活の変化に伴って、高脂血症 は増えているといわれており、50 歳代では男女ともに 6 割の人が高脂血症であるという報告があります。 コレステロールや中性脂肪を減らすには、食生活の改善や運動を心がけることが大切です。 以下に食生活での工夫を挙げましたので参考にしてみてください。 ●高カロリー食品を避ける 余ったエネルギーが脂質へと変わります。そのため、摂取エネルギ ーを減らすことが大切になってきます。肉類や糖類(ごはんなどの 穀類やお菓子、ジュースなど)の取りすぎに注意することはもちろ ん、質の改善も必要です。同じ肉類でもヒレ肉やささ身など脂肪の 少ない部分を食べるようにしましょう。自分がよく食べる食品のエ ネルギー量を覚えておくとよいでしょう。 100kcal に換算してみると… ●油分を控える 普段の食事から油を一切なくしてしまうのは難しいため、まずはバター やマーガリン、マヨネーズなどの調味料を控えてみましょう。薬味やスパイ スなど、香りのあるものを取りいれたり、すだちやレモン、柚子などの柑橘 類を上手に利用すればおいしく食べられます。 ●食物繊維の補給 食物繊維は、腸内で脂質や糖質を吸着して、一緒に排泄させてしまう 働きがあります。1 日に摂りたい野菜の量は 300g。これはキャベツなら 1/4個、ほうれん草なら 1束強、に相当します。緑黄色野菜や淡黄色野菜 をはじめ、きのこ類や海草などの食物繊維をバランスよく食べましょう。 ●週3、4回は魚料理を 魚に含まれる油には血管をしなやかに保ち、動脈硬化を防ぐ作用があります。週に 3∼4回はメインを魚料理にするなど、意識して魚をとるように心がけましょう。 ☆ただし食事や運動でも脂質の値が改善しない場合には、遺伝的に体内で作られる量が多い ことが考えられます。一度、専門家に相談するとよいでしょう。 湧永製薬(株) No.154 H150401
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