課題名 :木造軸組壁の仕上材による強さの研究 指導教員: 千葉 一雄 教諭 1.研究目的 木造軸組壁おいて一般的な真壁(貫) 、大壁(間柱)、併用壁(貫と間柱)の軸組に異なる4種の仕上材 を施した試験体を製作し、地 震 な ど に よ る 水 平 荷 重 を 加 え て 、 軸 組 の 強 さ 、 変 形 、 層 間 変 形 角を測定し、それぞれの軸組と仕上材による木造軸組壁の強さについて考察する。 2.実験 2-1.試験体 試験体の樹種は檜であり、軸組の寸法は、実物の約8分の1とし、柱の内法寸法(梁方向)210mm、内 法高さ(柱方向)380mm、貫間隔は内法高さの5分の1(約76mm) 、間柱間隔は大壁、併用壁ともに柱の内 法寸法の3分の1(約70mm)とした。各部材の断面寸法は、柱、梁、土台30mm×30mm、貫20mm×5mm、間 柱30mm×10mm、貫と併用する間柱10mm×10mmである。仕上材は、石 膏 ボ ー ド ( 9 . 5 m m ) 、 ケ イ 酸 カ ル シ ウ ム 板 ( 6 m m )、強 化 繊 維 セ メ ン ト 板 ( 6 m m ) 、普 通 合 板 ( 6 m m ) の 4 種 で あ り 、軸組と釘で固定 した。軸組と仕 上 材 の 組 み 合 わ せ を よ り 試 験 体 の 合 計 は 19となった。 貫 間柱 なし なし 貫・真壁 貫間柱・真壁 ケイカル板 ケイカル板 貫・間柱 なし 貫・真壁 貫間柱・真壁 間柱・大壁 貫間柱・大壁 石膏ボード 石膏ボード 石膏ボード 石膏ボード 間柱・大壁 貫間柱・大壁 貫・真壁 間柱・真壁 間柱・大壁 ケイカル板 ケイカル板 セメント板 セメント板 セメント板 荷重 δ h 貫間柱・大壁 貫・真壁 貫間柱・真壁 間柱・大壁 貫間柱・大壁 セメント板 普通合板 普通合板 普通合板 普通合板 図.1 荷重試験の概要 写真1. 試験体種類 2-2. 実 験 方 法 図1に荷重試験の概要を示す。実際の荷重試験では万能試験機の荷重軸が鉛直方向なの で 試 験 体 を 90度 傾 け て 治 具 に 固 定 し 載 荷 し た 。 こ の と き 、 高 感 度 変 位 計 に よ り 水 平 変 位 を 2mm毎 に 30mmま で 測 定 し た 。 柱 と 梁 と の 層 間 変 形 角 を ( 1 ) 式 で 求 め た 。 θ = δ/h θ:層間変形角(rad) h:高さ(mm) 石こう・大壁貫間 普通合板・大壁貫間 セメント板・大壁間 ケイカル板・真壁貫間 石こう・真壁貫 普通合板・真壁貫 (1) δ:水平変位(mm) ケイカル板・大壁貫間 石こう・大壁間 普通合板・大壁間 セメント板・真壁貫間 ケイカル板・真壁貫 貫のみ セメント板・大壁貫間 ケイカル板・大壁間 石こう・真壁貫間 普通合板・真壁貫間 セメント板・真壁貫 間柱のみ 900 800 700 荷重(N) 600 500 400 300 200 100 0 0 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 0.06 0.07 層間変形角(rad) 図2.層間変形角と荷重との関係 4.考察 図2は、層間変形角と荷重との関係を示したものであ る。軸組内に仕上材が収まる真壁が最も強い壁となるの ではないかと考えられたが、大壁が強くなる結果となっ た。また、貫・間柱が入ってる併用壁も大壁より弱くなっ た。原因として考えられるのは、大壁では、間柱が太く 貫より釘を深く打ち込むことができ、ボード外周部の柱、 梁、土台にも十分に釘で固定できるためだと考えられる。 このことは、併用壁が真壁より強いという結果からも言 える。真壁でも貫が釘で固定できる十分な厚さあれば強 さは改善できると考えられる。大壁の仕上材による強さ 写真2.荷重試験 は普通合板、真壁ではケイ酸カルシウム板、強化繊維セ メント板、石こうボードの順であった。普通合板は割れにくいため、引張筋かいとしての役割を果たし ているものだと考えられる。真壁では仕上材のボードが圧縮筋かい的な効果があると考えられたが、仕 上材が割れが生じる前に柱や梁が壊れてしまった。
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