気候変動と民族の大移動との 相関 わかみず会 若鳥陸夫 2015年6月10日 1 原本 田家康:“気候文明史” 影の主役から歴史を読み解く 世界を変えた8万年の攻防 日本経済新聞社,2010年初版 定価:本体2600円+税 2 田家 康: 気候文明史 3 第1部 人類黎明期 気候変動が人類を育てた 1-1.気候変動との闘いの始まり 1-2.寒冷な気候の中で 1-3.最終氷期の終わりとその後の変動 1-4.長い夏の到来 4 1-1 気候変動との闘い “出アフリカ”(170万年前に衣類獲得) 150万年前ー>ハイデルベルグ人(死滅) ->北京原人(死滅) 12万年前シナイ半島,レバント地方で死滅 8万5000年前アデンー>アラビア半島ー> 西アジアー>インド 1万年前 マレーシャ,インドネシア すべての大陸に移住 5 人類の移民(単位:kya) kilo years ago 6 1-2 氷河期の気候 氷河期 ー> 氷期,間氷期 最終氷期のクロマニョン人:トナカイを主食 北部ヨーロッパは氷河 中部:草原(大型草食動物を追う) 南部:樹木生育 現代の全球平均から5度低温 針と糸の発明ー>動物の毛皮をまとう。 7 氷期の気温変動 • ダンスガード・オシュガー振動 11万年前~1万年前に激変が22回 • ハインリッヒイベント 1万年周期の寒冷化(6回) • 最近の1万年は,例外的に安定化 8 日本列島の氷期 • 本州と北海道,四国,中国,対馬,琉球列島 がつながる。 • 北海道はサハリン,大陸とつながり • 対馬海流は(わずかに)流れていた。 しかし,日本海は,内海で,海水温度は 今のように暖かくない。 • 人類は北から動物を追って徒歩で移住。 9 日本人はどこから来たか DNA調査の結果 • 男性に北方系のDNAが多い。 • 縄文人以前: 東南アジア,朝鮮半島にない型 遺跡の道具も北アジア系 • 弥生人以降 稲の栽培とともに大陸から移住 10 最終氷期からの海面水位 • 約130メートル上昇 しかも,下降(寒冷化)を3回繰り返し • ヤンガードリアスイベント 南半球が北半球より先行 人類の食する動物 草原動物ー>森林動物 雑食(植物,鳥,魚)への切り替え 弓矢わなの発明 縄文海進 11 最終氷期からの海面水位 12 農耕の始まり • メソポタミヤ三角地帯(12,000前), 小麦,大麦 • きっかけ 人口増加,気候変動ー>狩猟生活限界 野生種(小麦,大麦)が群生(適地) • 6,500年前,中国の長江の中・下流 稲の栽培(欠点:タンパク質が少ない) 13 農耕の始まり 14 長い夏の到来 ヤンガードリアス以降の温暖化 北半球中緯度+2~3度高い 地球の軌道変化?(数万年周期) 太陽活動周期?(11年周期) アラビア半島,北アフリカの砂漠化 (赤道よりも少し南北回帰線辺り) 15 長い夏の始まり 16 長い夏の終わり 5,500年前~5,000年前:寒冷化 全球単位の寒冷化,一部,砂漠化 アフリカ住民は,流浪の旅に 天水農耕の行きどまりー>農地放棄 シュメール人ー>灌漑用水を整備 メソポタミアの発展(大麦,エンマ麦) ナイル流域ー>放牧民ー>農業 17 繰り返される寒冷化 突然の干ばつ(4,200年前から200年間) ナイル川の水位ー>王朝の交代と同期 シュメール文化(メソポタミア)の崩壊 豚肉の食用禁止(飼料不足,疫病媒体) (教訓が宗教化?) 18 民族の大移動 2,800~2,300年前,気温の低下 中国では周王朝が滅び春秋戦国時代 アジアの遊牧民は南下 ゲルマン人ー>バルト海西,南部へ移動 追われたローマ人は,ケルト人を追い出し (玉突き状に大移動) 社会不安から宗教,哲学の台頭 19 日本列島の気候変動 6,000年前 三内丸山遺跡繁栄 縄文海進の頃 アク抜き不要な栗を主食 海の幸 5,500年前 小海退ー>海が利用しにくい 人口1/3に減少 20 弥生系渡来人と水田農耕 中国の内乱ー>渡来人の移住 水稲,水田耕作 100年間で九州,関東 沖積平野形成ー>水田拡大 古墳寒冷期(4-5世紀) 日本書記:崇神天皇:疫病流行(渡来人) 古語拾遣:百済から120県の民を率いて 帰化 21 第2部古代編 気候変動が文明を生んだ 2-1.長い夏の終わりと古代文明の勃興 2-2.繰り返される寒冷化,突然の干ばつ 2-3.ローマの盛衰 22 2-1 長い夏の終わり と古代文明の勃興 • ビオラ振動と寒冷化 アイスマン:5,300年前 • メソポタミヤの灌漑農業 天水農耕ー>灌漑農耕 • 北アフリカの砂漠化 水量豊富ー>砂漠化(1,500年前) パンツウ族(黒),コイサン族(茶褐色) • 集団生活の代償(平均身長低下) 23 繰り返される寒冷化,干ばつ 24 第3部中世・近世 気候変動が歴史を動かす 3-1.中世温暖期の繁栄 3-2.寒冷な時代の到来 3-3.小氷河期の気候と歴史 25 3-1 中世温暖期の繁栄 26 3-2 寒冷な時代の到来 • 13ー19世紀後半(500年間),小氷期 アイスランド:流氷増加,人口半減, 身長低下 ヨーロッパ(湿潤):食糧2/3に低下, 家畜死亡, 餓死者,疫病 日本:近江で土一揆,京都の衰退 27 寒冷な時代の到来 28 3-3 小氷期の気候と歴史 厳しい小氷期4回(江戸時代) 日本の6大飢饉(人口3200万人程度) 寛永の飢饉 1642~1643年(西干,東冷) 元禄の飢饉 1691~1695年(冷害) 亮保の飢饉 1732年(暑さ,干ばつ,イナゴ) 宝暦の飢饉 1753~1757年(冷害) 天明の飢饉 1782~1787年(冷害) 天保の飢饉 1833~1839年(冷害) 29 ヨーロッパの小氷期 1690年代(マウンダー最小期) 農業革命 ジャガイモ,トウモロコシの栽培普及 1812~6年間,寒冷ー>食糧不足 ナポレオン遠征失敗(兵站,冬将軍) 大規模火山の噴火(1812~1818年) ダンボラ火山(インドネシア) アイルランドー>ジャガイモ飢饉(腐れ) 30 小氷期の終わり 1830年 ->太陽黒点数増加 1830年 ->気温上昇の兆し 1857年 ->アルプスの氷河後退 ブドウの収穫時期 温暖な気候は,現代に至る 31 炭酸ガスの増加 従来:寒冷化(因)ー>炭酸ガスが増加(果) 理由:光合成の低下 温暖化(因)->炭酸ガスが滞留(果) 原因:火山の噴火(温暖効果) 近年:炭酸ガスが増加(因)ー>温暖化(果) 炭酸ガスは,過去10数万年中,最大(観測結果) 因果関係が逆だが,果たして,人類の活動? 32
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