火山噴火緊急減災対策砂防計画に基づく詳細計画の策定

技術紹介 防災関連
火山噴火緊急減災対策砂防計画に基づく
詳細計画の策定
航空レーザ計測データを活用した短期計画の立案
新井 瑞穂・高橋 秀明・堀口 礼顕・中島 達也
東北コンサルタント部
はじめに
火山噴火緊急減災対策は、いつどこで起こるか分から
火山活動は予測が困難である一方で、噴火した際の被
ない火山噴火に対応するため、あらかじめ設定した噴火
害は甚大となることから、緊急ハード対策の詳細計画は、
シナリオに基づき、緊急時のハード・ソフト対策の計画
できる限り短時間で施工でき、かつ、被害を効果的に軽
を設定するものです。岩手山では、
「岩手山火山噴火緊急
減させるものでなくてはなりません。
減災対策砂防計画(以降、減災基本計画と記載)」が平成
ここでは、火山活動の特徴を踏まえた実現可能な詳細
22 年に策定され、
平成 23 年以降、
減災基本計画に基づき、
計画の検討、さらに、緊急時でも円滑に施工するための
詳細計画の検討を進めているところです。
施工計画の策定事例について紹介します。
詳細計画の検討方針
例えば火山噴火に伴い発生する融雪型火山泥流は、流
出土砂量が膨大であるため、広大な範囲に被害が及ぶこ
この計画では、矢板を用いた導流堤など、短時間で施工
できる小規模な施設を配置します。
とになります。減災基本計画における緊急ハード対策は、
土砂を捕捉するための遊砂地工など広範囲に及ぶ「面的
な対策」を計画しており、施工が長期化すると考えられ
ます
(図 1)
。そのため、実際の緊急時においては、対策
が完了する前に融雪型火山泥流が発生してしまい、被害
軽減の効果が得られないことも想定されます。
そこで、詳細計画は、減災基本計画による対策の前段
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階として、短期での施工が可能で早期に効果を発現でき
る「点・線的な対策工」を用いた短期計画を策定しました。
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図1 減災基本計画による施設配置イメージ
施設の効果特性を踏まえた施工優先度の設定
施設配置は、一部が施工途中でも施設効果が得られる
なお、施設配置にあたり、氾濫シミュレーションを実
ように、施工優先度を踏まえ段階的に検討しました。施
施し、対策前との氾濫範囲内の保全建物を比較すること
工優先度は、対策施設の配置目的やその効果特性より 3
で、対策施設による被害軽減効果および施設配置の妥当
段階の優先度を設定しました
(表 1)
。優先段階ごとの施
性を確認しました
(図 2)。
設配置には、航空レーザ計測データより作成したアジア
航測の特許技術で微地形の識別に優れる赤色立体地図を
活用しました。同図は、火山地域特有の複雑な微地形を
呈する地形でも詳細かつ正確に把握できます。
For the Future 2014
表1 施工優先度の設定
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3.0 - 5.0
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0.0 - 0.2
0.2 - 0.4
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防災関連
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0.6 - 0.8
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2.0 - 3.0
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図2 氾濫シミュレーションによる被害軽減効果の確認
施工計画の策定
事前に対策を準備していたとしても、実際の緊急時に
避所及び避難ルートの設定(図3)も行いました。
施工できなければ被害軽減は望めません。そのため、緊
これらの検討結果については、施工時に用いる図面と
急時の混乱の中でも、行政職員および現地作業を行う施
ともに、緊急時に施工者が工事に活用できるように施工
工者が迷うことなく緊急時に対応できるようにする必要
計画書として一冊にとりまとめました。
があります。
そこで、施工計画について詳細に検討しました。施工
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計画では、①工事概要、②現場組織表、③工事工程表、
④主要資機材一覧、⑤施工計画・管理とあわせて、⑥安
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全管理、⑦緊急時連絡体制、⑧環境対策、⑨交通計画に
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ついて施工を円滑に行うための必要事項を整理しました。
特に安全管理では、火山活動が活発化している危険の伴
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う状況下での作業であるため、施工計画書には、一次退
図3 一次退避所及び避難ルートの設定例
おわりに
火山噴火緊急減災対策は、
被害をできる限り軽減(減災)
データをはじめとする空間情報の解析・可視化技術を活
するため、噴火活動に応じて迅速に対策を実施しなくて
用し、緊急対策の施設配置から施工まで、具体的で実現
はなりません。
可能な計画策定を今後も提案していきたいと考えていま
アジア航測では、これまで培ってきた航空レーザ計測
す。
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