技術紹介 災害時の応急復旧に一役買います 技術紹介 災害時の応急復旧に一役買います ~スマート端末を利用した工事中の重機の効率的な管理~ Smart Management of Construction Equipment by a Mobile Terminal 伊藤 昌隆 *1 Masataka ITO 工藤 克士*2 武川 勝美 *3 Katsumi TAKEKAWA Katsushi KUDO 1.はじめに ※ASP サービスとは,インターネットなどを通じて遠隔 近年,地震活動や火山活動の活発化により,災害時に おける情報収集および発信,提供の重要性が高まってい ます。特に大規模災害発生時の応急復旧業務において建 からソフトウェアを利用するサービスです。 2.システム構成 設重機等の配置計画をいち早く実施し,関係者間で確実 本サービスは,GIS コンテンツ,書類書庫(ファイル な情報共有と情報伝達網を確保することは,災害時にお ストック)コンテンツおよび通知・連絡コンテンツが独 ける住民の安心と安全確保の面で重要な役割を果たしま 立した機能を有していますが,相互に情報リンクするこ す。そこで,円滑な建設重機調達と情報共有を可能とす とで効果的かつ快適な情報流通環境を実現しています。 る ASP サービス※を構築しました。 収集する情報(データ)は,全てデータセンターに構 本サービスは,川田テクノシステム㈱の情報共有シス 築されたサーバで管理しており,サーバの冗長化,サー テムのコンテンツである「basepage-重機管理」を東京 バ負荷制御,回線負荷制御など災害時に利用できる高い 都港湾局の発注仕様に適合するよう改良したものを 情報セキュリティと環境を構築しています。 ASP サービスとして構築したものです。東京都港湾局の GIS 主たる仕様概要は,災害時における重機類の迅速な調整 のため,日常から公共工事に使用されている重機類の所 機能 在位置が把握できること,災害時の工事現場連絡網が確 保できること,災害時における安定かつ安全なサービス 重機類情報提供 稼働環境を提供できること,システム改良性に優れてい ること等です。本システムは,2015 年 9 月東京都港湾 ており,初動として順調なサービス稼働をおこなってい ます。 A 工事 常時 工事情報 重機情報 サービス 通知 局による災害情報 MAP「支援丸」として稼働を開始し (連絡) 書庫 機能 機能 図2 工事情報閲覧 書類 システム構成 本サービスの導入効果は以下のとおりです。 A 職員 (1) 工事現場と稼働中重機の視覚的確認 本サービスでは,東京都港湾局発注工事を契約した B 工事 工事受注会社が工事に関する情報として工事名,工事 重機類配置計画 現場住所,工事期間,受注者名,現場代理人名,連絡 B 職員 先(アドレス,電話番号)を登録します。工事現場住 災害発生時・応急復旧時 所を入力すると自動的に緯度経度に変換し,電子地図 上にシンボルを表示します。また,各工事現場が所有 する重機についても工事受注者により登録され,電子 C 職員 図1 災害境地締結団体 地図上にシンボルを表示します。日々の重機情報に関 する位置や搬出情報は,スマート端末の二次元バー システム利用イメージ *1 川田テクノシステム㈱ソリューションビジネス推進プロジェクト 課長 *2 川田テクノシステム㈱テクニカルイノベーションセンター 次長 *3 川田テクノシステム㈱テクニカルイノベーションセンター 係長 技術紹介 19-1 川 田 技 報 Vol.35 2016 技術紹介 コードを利用することで実施でき,特殊な機器やパソ 災害時の応急復旧に一役買います いるメールにより行うことができます。これまで事務 コンを使用せずとも現地で簡単に情報更新できる仕組 所毎,担当者毎に管理していた連絡先情報をシステム みを採用しています。これにより,受注者の日々の業 で一元管理し,メールソフトを不要とする通信手段を 務に作業負荷を与えることなく,重機の管理が可能で 導入することで,災害時において円滑かつ迅速な情報 す。 伝達が可能となります。これは平常時における一斉通 達など多様な利用機会が創出できるものとなっていま す。 工事情報と重機情報をマッピング 通知先の選択 (4) 図6 一斉送信 円滑な連絡・通知 災害時に使用する書類や図面の配布 本サービスは,最大 200MB/ファイルの書類を登録, 選択すると登録情報を表示 ストック,配布することができます。システムで配布 できるファイル種別の制限はなく,ウィルスチェック Mail 図3 (特定の形式)は,サムネイル表示するので,視認性 WEB アプリ に優れています。 情報更新 バーコード MAIN TABLE GIS **** OTHERS ・・・ **** 重機管理 TABLE **** 連絡網 TABLE 書類書庫 TABLE (2) 保した状態の情報を配布できます。また,写真や図面 メイン画面イメージ WEB アプリ 図4 を自動で行うため,災害時でもファイルの安全性を確 **** 図7 工事現場情報 重機情報 工事名:str 連絡先:str 位置 :single 写真 :image ・・・ 種類:int 名称:str 位置:image ・・・ 重機規格情報 ・・・ 二次元バーコードを利用した情報更新 ファイル 登録 大容量・書類ファイルの配布 3.現状と今後の展開 現在,東京都港湾局において運用開始し,2015 年 11 月 1 日現在,40 現場 52 台の重機が登録されており,日々 重機の位置情報更新や搬入搬出情報を把握できる環境を シームレスに提供しています。本サービスは,計画段階 において拡張性および汎用性を意識したものとしていま す。将来,災害時における重機類情報提供として,既存 災害時の復旧用重機確保の状況把握 災害発生時,各工事現場に配置している重機を官公 機能に加え,被災状況管理,避難所管理,備蓄管理等を 庁が応急復旧用に確保できた場合,重機シンボルの色 一元管理することで迅速かつ集約的な情報収集を可能と を変化させます。どの重機が応急復旧作業で使用でき します。 被災状況管理 るのか,情報の一元管理が可能となり,災害時におい 機 て確実かつ効率的な重機確保が可能となります。 選択 重機類 表示 情報提供 常時・確保前 (3) 図5 応急復旧時・確保 サービス マッピング 避難所管理機能 ア ッ 備蓄管理機能 プ 安否確認機能 重機確保の状況把握 図8 災害時および平常時の効果的な連絡網の確保 官公庁や工事受注者間の連絡をシステムに装備して 能 将来イメージ 今後,災害時における多様な情報を効果的に管理でき る幅広いシステムとして,日々改善に努めて参ります。 技術紹介 19-2 川 田 技 報 Vol.35 2016
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