有機溶剤健診について

有機溶剤健診について
Q
有機溶剤を取り扱う方で、γ-GTP が高値な方がいらっしゃいます。また、その方はアルコー
ル摂取も行っています。この場合、γ-GTP の上昇が、有機溶剤によるものか、それともアルコー
ルによるものかを判定するにはどのようにしたらよろしいでしょうか。
現在は、10日程度禁酒して頂き、γ-GTP の値が改善しているかを見て、改善するなら、アル
コールによるものと判定したり、改善しない方は腹部エコーにて脂肪肝などアルコール性が疑わ
しい所見があるかどうか病院で検査して頂くようにしていますが、この方法でよろしいのでしょうか。
通常、肝機能障害が有機溶剤によるものか、アルコール摂取によるものか判断するにはどのように行われてい
るのでしょうか。専門的なご意見を教えて下さい。
A
有機溶剤の取扱者で、アルコール
摂取し、肝障害を起こしている場合
に、原因として考えられるのは、(A)
主に有機溶剤による。(B)主にアル
害をおこす可能性のあるクロロホルム、四塩化炭素、
1.2-ジクロルエタン、1.2-ジクロルエチレン、1.1.2.2テトラクロルエタン、クロルベンゼン、オルト-ジクロル
ベンゼン、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン、
コールによる。(C)アルコールと有機
溶剤の相互作用による。(D)有機溶剤やアルコール
以外による(例えば肥満による脂肪肝、B型やC型慢
性肝炎、薬剤性肝障害、自己免疫性の肝障害など)。
有機溶剤取扱者で、主に肝障害が問題となるのは、
有機溶剤低濃度慢性曝露の場合と考えられます。一
N.N-ジメチルホルムアミド、トルエン、キシレン、エチレ
ングリコール、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサノン、
シクロヘキサノール、メチルヘキサノールなど取り扱い
の有無を確認する必要があります。
③ 当該物質による肝障害を想定させるほどの曝露を
伴う作業であるかどうかの調査をする必要があります。
方、高濃度曝露の場合では、急性中毒による麻酔作
用が主症状となります。
日本酒換算 1 日3合以上、5年以上の常習飲酒家
の場合はアルコールによる肝障害の可能性は高くなり
ますが、γ-GTP やASTの値と飲酒量の相関関係に
ついては、個人差が大きいことも留意する必要があり
④ 同一職場で働く他の作業者を対象とした疫学的
調査が有用な場合もあります。
禁酒によるγ-GTP の推移でアルコールの関与を
検討する場合、有機溶剤による曝露の状況が変化な
く、厳密に禁酒ができているかどうか(多くの大酒家は
飲酒量を減量することが困難であり、往々にして飲酒
ます。
アルコール摂取により、クロロホルムや四塩化炭素
などの有機溶剤の肝臓への毒性が増すことが知られ
ており、飲酒習慣をもつ塗装従事者は飲酒により肝障
害の程度を悪化させるとの報告もなされています(郷
司純子など、産業衛生学会 2003: 45: 215-221)。
量を少なめに申告します)をチェックする必要あると思
います。禁酒により、γ-GTP などの改善が得られた
場合、上記の原因(A)、(C)が考えられ、それ以外に
も曝露の状態が軽減している可能性もあります。また、
原因(C)の場合では、肝障害は改善しても、曝露は
継続している可能性もあります。
従業員(作業者)に肝障害がみられた場合に、その
肝障害が曝露物質によるものか否かの判断として以
下に 4 つのポイントを挙げさせていただきます。
① 臨床所見が重要であり、有機溶剤の低濃度慢性
曝露による症状や所見を調べる必要があります。つま
り、頭痛、頭重、疲労感、めまい、イライラ感、吐き気、
バイオロジカルモニタリング(有害物質の代謝産物
の濃度を測定すること)も時に有用と考えられますが、
代謝産物が必ずしも有害物質のみで濃度が上昇する
わけでないことや、また検体を採取する時期により、結
果が変動することがあり得ます。
実際の有機溶剤の取扱者で、アルコール摂取し、
食欲不振などの自覚症状とともに末梢神経障害、皮
膚・粘膜異常、白血球減少などの他覚的所見の有無
などをみます。
② 当該職場で使用している物質の種類として、肝障
肝障害を起こしている際の産業医の対処としては、上
記の 4 つのポイントを勘案して、可能であれば、ウイル
ス性肝炎の有無をチェックする、禁酒による肝障害の
改善の有無をみて、腹部超音波検査による脂肪肝の
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有無をみるなどして、原因不明であれば専門医を受
診させてみてはいかがでしょうか。
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