2006年 2月 倉谷 尚孝 城戸 康彰 Naotaka Kuratani Yasuaki Kido

産能大学紀要 第26巻 第2号(別刷)
行政組織における組織コミットメント
−組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
Organizational Commitment in the Public-administration Organization:
An Empirical Study on the Antecedents and Consequences of Organizational Commitment
2006年 2月
倉谷 尚孝
Naotaka Kuratani
城戸 康彰
Yasuaki Kido
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
行政組織における組織コミットメント
−組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
Organizational Commitment in the Public-administration Organization:
An Empirical Study on the Antecedents and Consequences of Organizational Commitment
倉谷 尚孝※
Naotaka Kuratani
城戸 康彰
Yasuaki Kido
Abstract
Organizational Commitment is one of the attitude concepts to grasp psychological relationships of organization members to their organizations. Our objective in this paper is to
find out the antecedents and consequences of organizational commitment in the publicadministration organization. We also intend to address problems concerning the organization reforms of administrative organizations being undertaken now. Questionnaire data
were gathered from 95 people working in the public-administration organization.
On the antecedents of affective commitment, we got the similar results with other
studies. In particular, a proper management was related to higher affective and normative commitment. Organizational citizenship behavior was, as expected, correlated with
three organizational commitment dimensions. On the achievement-oriented behavior,
however, expected results were not gained. We pointed out the difference of organizational commitment components in our sample as one of the reasons for the unexpected
results. Based on the results, we discussed the practical challenges in public-administration organizations where the new management practices are going to be introduced.
※国土交通省関東地方整備局
2005年 10月12日 受理
55
行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
1.研究の背景と目的
700兆円を超える長期債務残高を抱え、少子高齢化よる人口減少社会の到来を間近にした
厳しい社会環境に適応するため行政改革は継続的に推進されており、2001年1月に縦割り行政
の弊害の排除や組織のスリム化を目的として1府22省庁から1府12省庁へ組織の再編が実施さ
れた。また、1980年代半ば以降イギリス・ニュージーランドなどを中心に広まった新たな行
政管理理論であるNPM(New Public Management)を参考とした政策評価制度、PFI(Private
Finance Initiative)
、独立行政法人制度などの導入も進められている。
しかし、国民の国の行政組織(以下行政組織)及びそこに勤務する国家公務員に対する評
価は依然として厳しいものがある。公務員制度の見直しの方針を示した公務員制度改革大綱
(2001年12月25日閣議決定)でも、行政組織に勤務する国家公務員に対して「政策立案能力に
対する信頼の低下、前例踏襲主義、コスト意識・サービス意識の欠如など、様々な指摘があ
る」
(p.1)と述べられている。こうした指摘には、組織構造の見直しや制度の改革のみでは
解消しえない行政組織に内在する組織文化や国家公務員の行動規範等にも原因があると考え
られる。その一例として、
総務省が発表した「新たな行政マネージメント研究会報告書」
(2002)
でも行政組織における組織文化の改革の必要性が指摘されている。
しかし、これまで行政組織や国家公務員に関する研究は、政策決定過程、行政組織の構造、
国家公務員制度など政治学、行政学の範疇での研究が中心であり、行政組織の組織文化や国
家公務員の行動様式といった組織行動論の分野での研究は、企業組織と比較して進んでいる
とは言えない。 そこで本研究では、個人の組織に対する態度の概念の1つとして多く使用されている組織コ
ミットメントに注目し、行政組織の成員の行動や組織的要因との関係にアプローチする。
組織コミットメントを採用する理由として、Aranyaたち(1986)は、組織コミットメント
が従業員の業績や離転職などを予測する有力な指標であると指摘していることがある。また、
Katz&Kahn(1966)は、組織に強くコミットする従業員は本来の役割を越えた行動を示すと述
べており、組織成員の組織に貢献するといった積極的な行動を導く源泉になるともいえる。
さらに、Mathieu&Zajac(1990)は、組織コミットメントの先行要因として個人特性、組織特性、
役割の状態などに分類している。これらの先行要因は、組織コミットメントを高めたり発達
させる要因とみなせるものである。
本研究の目的は、組織コミットメントを中心概念と位置づけ、組織コミットメントを高め
る先行要因との関係と、コミットメントがもたらす効果や結果要因との関係を探ることにあ
る。方法としては、行政組織で働く成員より質問紙を通して定量的データを収集し分析する。
日本でも組織コミットメントの研究は以前から多数なされているが(例えば、城戸,1980;鈴木,
2002;板倉,2002;高木,2003)
、多くが企業から得られたデータを使用したものであり、行政
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Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
組織からのサンプルを使った研究は少ない。また、前述したように行政組織の現状を考えると、
組織コミットメントを通して成員の行動に関係する要因を解明することは、成員の行動を変
えてより良い行政サービスを提供するといった実践的な観点からも意義があるといえよう。
2.官僚制組織としての行政組織
行政組織は、各省庁、内部部局等の設置や所掌する事務について国家行政組織法以下の各
種法令に基づいて定められている。また、国家公務員については、国家公務員法、人事院規
則等により採用、給与、昇進などの人事制度の基本的事項が規定されている。
こうした、行政組織及び国家公務員制度は、Weber(1987)の近代官僚制を基本としてい
るが、Weberは、近代官僚制の構成要件について、①規律による規則の原則、②明確な権限
の原則、③明確なヒエラルヒー構造の原則、④経営資材の公私分離の原則、⑤官職専有の排
除の原則、⑥文書主義の原則、⑦任命制の原則、⑧契約制の原則、⑨資格任用の原則、⑩貨
幣定額俸給制の原則、⑪専業制の原則、⑫規律ある昇任制の原則という12の原則を定義して
いる(西尾,2001 p.166 ∼ 168)
。西尾は、①∼⑥は官僚制組織の形成原理となる組織内の意思
決定と情報伝達の仕組み、⑦∼⑫は人事制度に関する原則を示しており、現在の行政組織及
び国家公務員制度についてWeberの近代官僚制の原則とほぼ合致していると指摘している。
官僚制組織は、規則と規律に基づく明確な分業、効率性、属人性の排除による合理的な組
織の理想型であったが、現在では非合理、非効率の象徴となっている。
Merton(1961)は官僚制の意図せざる問題点について、官僚制の逆機能と名付け、次の6つに
分類した。
①訓練された無能:規則の遵守により行動が標準化され状況に応じた適応ができない。
②最 低 許 容 行 動:規則は最低水準の行動を規定するが処罰されない。
③顧 客 の 不 満 足:官僚制は人間関係の非人格化を強調するため顧客のニーズや状況を考慮
せず画一的な対応をとる。
④目
標
置
換:本来、目標達成の手段である規則が、規則遵守自体を目的化してしまう。
⑤個人成長の否定:効率を追求するための過度の分業と専門化により、自分以外の仕事に関
心を示さなくなる。
⑥革 新 の 阻 害:組織内部の軋轢・対立回避が重視されるため革新的活動が阻害される。
このような官僚制の逆機能は、行政活動が継続される中で組織成員の行動に根づいていき
それがさらに受け継がれていくことにより、行政組織の組織文化になってくると考えられる。
石井たち(1996)は、組織文化について「組織の構成員によって、共有・伝承されている
価値観、行動規範、信念の集合体」
(p.151)であると定義している。官僚制の逆機能の側面
が組織文化化してしまい、行政組織の支配的な行動パターンとして表出してくるといえよう。
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行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
梅澤(2003)は、組織文化の対外的な機能について、
「組織の目指しているもの、組織の性格
が外部に明示される」
(p.11)と指摘しているが、現在、行政組織に対する批判はこうした組
織文化の一部が外部に発信された結果であると捉えることができよう。
3.組織コミットメントの先行研究
(1)研究の系譜
組織コミットメントは、組織と個人の関係を説明する概念としてこれまで多くの研究が行
われてきた。組織コミットメントが注目されてきた理由として、組織コミットメントが組織
に対する帰属意識を示す概念であり、組織成員の行動を予測する多様な変数と関係している
と考えられているためである。
組織コミットメントの定義には多様性がみられるが、主要なものとして次の3つのものがあ
る。
初期の研究において最も代表的な定義は、Mowdayたち(1979)の「特定の組織に対する同
一化(identification)と関与(involvement)
」
(p.226)というもので、①組織の目標や価値に
対する信頼、②組織のために努力しようとする意欲、③組織の一員として留まりたいとする
願望の3つの要素から構成される。この概念の特徴は、組織に所属する個人の組織に対する情
緒的な側面を強調している点である。Mowdayたちは、
彼らの定義に基づきOCQ
(Organizational
Commitment Questionnaire)と呼ばれる組織コミットメントの測定尺度を開発した。この尺
度は信頼性と妥当性の高いものであり、最近まで広く使用されてきた。
この他に組織コミットメントを情緒的側面から捉えた研究はとしては、Buchanan(1974)
、
Morris&Sherman(1981)
、Romsek(1989)などがあげられる。
次に組織コミットメントを社会学の見地から提示したのがBecker(1960)である。Becker
の理論は、Side-Bet理論と呼ばれるもので、個人が組織に所属することで得るもの、辞める
ことで失うものを考慮した上で、組織に留まることを選択するという受動的意味合いの強い
ものである。個人は、組織に留まる期間が長いほど将来の選択肢が狭まることになる。この
Side-Bet理論は、組織と個人の交換関係によって成立するとの考えから交換的アプローチとも
称される。Side-Betには、給与や年金といった金銭的報酬以外に、組織内での人間関係や役職、
組織特有のスキルなどが含まれる。また、Wallace(1997)は、Side-Bet理論では、転職の機会
が限られる場合にコミットメントは高まると指摘している。
現在最も注目されているのが、Allen&Meyer(1990)によるもので、情動的コミットメント
(Affective Commitment)
、存続的コミットメント(Continuance Commitment)
、規範的コミッ
トメント(Normative Commitment)の3つの次元で捉えるものである。彼らは、情動的コミッ
トメントについて、
「情動的コミットメントの強い従業員は彼らがそうしたいから組織に残
58
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
る」
(p.3)と指摘している。情動的コミットメントは組織に対する情緒的な愛着を示すもので、
組織に対する積極的な関わりを望んでいることを表している。
また、Dunhamたち( 1994)は、情動的コミットメントに含まれている内容はMowday たち
のOCQで測定されているものと類似していると指摘している。
存続的コミットメントは、前述のBecker(1960)のSide-Bet理論を基盤にするもので、組織
を辞めた場合のコストを比較して組織に留まる組織コミットメントである。これは、情動的
コミットメントが組織に残りたいから残るのという積極的関与を示すのに対し、存続的コミッ
トメントは、残る必要があるから残るという受動的な態度を表すものである。高木(2003)は、
存続的コミットメントについて、組織に対するポジティブな影響は期待しにくく、その抑制
策の探求が重要であると指摘している。
規範的コミットメントは3つの中で最も特徴的なもので、組織へのコミットメントを義務的
なものとして捉える概念であり、Allen&Meyer(1990)は「組織に留まり、適応しなければな
らないという義務感」
(p.1)と定義している。
規範的コミットメントは、Wiener&Vardi(1980)
、Wiener(1982)を除くとこれまで研究対
象とはされてこなかった領域であり、Meyerたち(2002)も規範的コミットメントの発達過程、
行動予測という点でどのような貢献がなされるかなどについての研究の必要性を指摘してい
る。また、田尾(1997)も規範的コミットメントには、その国の固有の文化や習慣などが反
映されている可能性がありさらなる探求の必要性があると述べている。
(2)組織コミットメントの3構成モデル
組織コミットメントは、多くの研究者により多様な観点から研究がなされているが、体系
的に研究されているという点では、組織コミットメントの先行要因、または発達要因との関
係、および組織コミットメントの効果ともいえる結果要因との関係を解明しようとするもの
があげられる。その中でもMeyerたち(2002)は、図表−1にあるように、先行要因、結果要因、
それに相関要因を加えた組織コミットメントの3構成モデルで、コミットメント研究を体系的
に把握しようとしている。そして、このモデルに従い155の組織コミットメントに関する調査
研究、サンプル総数は50,146名を対象として、それらを相互に比較可能な形にしてメタ分析
をしている。
それによると、年齢、性別、教育といった人口統計的な変数は、一般的に組織コミットメ
ントとの相関は低く、北米以外では存続的コミットメントと年齢には強い相関がみられると
報告している。先行要因の中で、強い影響力をもっているのは仕事経験である。組織からの
支援、リーダーシップ、公正な扱いといったことが、コミットメント、とくに情動的コミッ
トメントと強い相関をもっていることが明らかになっている。
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行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
結果要因との関係では、転職の意志や欠勤との相関は強く、コミットメントが低下するこ
とは、欠勤の増加や転職の意志、および転職行動を導くことが証明されている。また、組織
市民行動とは、組織成員が役割や職務を超えて組織のために行なう自発的行動をさす(田中,
2004)もので、組織成員のとる望ましい行動パターンといえる。行政組織の成員にとっても
目指すべき行動パターンといえるもので、Meyerたち(2002)の分析では、情動的コミットメ
ントと規範的コミットメントと強い相関があることが明らかになっている。
Meyerたち(2002)は、この3構成モデルの一般化の程度(Generalizability)が低いという。
北米以外であまり検証されていないからである。われわれは、Meyerたちと同じ観点から日本
のサンプルで先行要因や結果要因との関係を調べるもので、こういったタイプの研究が少な
いということで、研究の意義はあろう。
ただし、行政組織を対象とすること、および行政組織の改革が取り沙汰されていることを
考え、その糸口を得るという意図のもとで、Meyerたちとは異なる変数を用いて研究を行なっ
た。官僚制的な組織の特質や、成果変数として欠勤や転勤の意志といったものは用いずに望
ましい組織行動に関する質問項目を使用した。
図表−1 組織コミットメントの3構成モデル
60
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
4.分析結果
(1)調査の概要・サンプル
組織コミットメントの測定については、Allen & Meyer(1990)
、Meyer & Allen(1997)の3
次元組織コミットメントモデルを使用した。質問票には、原文をわれわれが和訳したものを
使用し、質問項目は各次元6問で計18問から構成されている。
個人特性として、年齢、性別、学歴、入省年月、現在の部署に配属された年月、現在の職
種、現在の勤務先、役職、家族構成を質問項目とした。キャリアに関する質問項目も用いたが、
それは、Schein(1990)のキャリア指向質問票を参考に作成した。
職務特性に関する質問項目は、日本労働研究機構(1999)のHRMチェックリストを参考
に作成するとともに、必要と考えられる内容の質問も独自に作成した。
組織特性の質問項目は、組織目標については長野県経営戦略局が2002年に「新行政システ
ム改革プロセス構築事業」のために全職員を対象に実施した長野県職員意識調査時に使用し
た質問項目、
組織文化に関する質問は、
関本たち(2001)をそれぞれ参考に質問項目を作成した。
また、官僚制の逆機能的な要素を含む質問項目については、Merton(1961)の逆機能的な要
素を参考に独自の質問項目を作成した。
以上は先行要因に関する項目であるが、結果要因として組織市民および自律的行動の質問
を設けた。それは、自ら率先して職務に取り組む、新たな試みに取り組む、高い目標設定といっ
た、単に与えられた職務を遂行するだけではない、個人の自律的行動を測定するものである。
質問票は、106の項目から構成されており、質問には、
「あてはまらない」から「あてはまる」
までの5件法で回答するもので、参考とした質問項目の中で行組組織には馴染みのない用語に
ついては変更を加えた。
調査対象の行政組織は、ある省庁の地方支分部局(地方出先機関)である。質問票は手渡
し及び郵送にて依頼し、回収にあたっては、回答者が特定できないように返信用封筒で返送
してもらった。
調査は、2003年10月∼ 11月にかけて実施した。配布部数150部、有効回答数95部で回収率は
63.3%であった。
回答者の属性は、
男性が82.1%、
女性は17.9%である。勤務先は地方支分部局(地方出先機関)
の本局が37.9%、出先事務所が62.1%となっている。役職別に見ると主任・一般職員46.3%、
係長相当32.6%、管理職相当14.7%、専門職(スタッフポスト)6.3%となっている。学歴は
高校卒32.6%、高専・専門学校・短大卒21.1%、大学卒41.1%、大学院卒3.2%となっている。
平均年齢は35.1歳、平均勤続年数は14.3年である。
61
行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
(2)組織コミットメントの因子分析
図表−2は、前述したように今回使用したAllen & Meyerたちのコミットメント・スケールを
因子分析にかけた結果を示したものである。
固有値1以上の因子が3つ抽出され、それらは概ねAllen & Meyerの3つの組織コミットメント
の次元に一致している。ただし、情動的コミットメントには、存続的コミットメントのスケー
ルが2つ、規範的コミットメントのものが1つ入っている。このうち存続的コミットメントの2
つは、解釈によっては情動的コミットメントに入りうるものである。規範的コミットメント
にも、情動的コミットメントのスケールが1つ入っている。
以上の結果を踏まえ、図表−2にあるように、情動的コミットメントと規範的コミットメン
トは、Allen & Meyerの次元構成に従い作成することにした。
その結果、3つのコミットメントの平均値や信頼性係数、および相関係数は図表−3のよう
になった。情動的コミットメントの平均値が3.58と最も高く、規範的コミットメントは、2.82
と低い値になっている。日本の他の研究データと比較してみると、使用しているスケールに
若干違いがあるが、板倉(2002)も、情動的コミットメントが最も高く、継続的、規範的コミッ
トメントの順に低くなることを報告している。ただし、最も低い規範的コミットメントでも3
点台となっている。
図表−2 組織コミットメントの因子分析
項 目 内 容
1
2
3
AC
AC
AC
AC
AC
CC
CC
NC
.716
.714
.703
.662
.540
.505
.485
.361
-.217
-.103
.194
.013
.018
-.060
.051
.275
-.087
.039
-.302
.045
-.092
.379
.433
.097
NC
NC
NC
NC
AC
-.126
-.064
.288
-.207
.330
.881
.786
.704
.684
.429
.030
-.021
-.213
.169
.006
NC
.009
.379
.232
第1因子 情動的コミットメント(α=0.777)
私は、組織の一員であると感じている。
私はこの組織に所属していることを意識している。
私は、この組織に愛着を感じている。
私の仕事生活(キャリア)の残りを今の組織で過ごせれば、幸せである。
私は、組織の問題を自分自身の問題のように感じる。
現在この組織にいるのは、それが望みであると同時に必要だからである。
この組織を辞めるということはほとんど考えられない。
現在の組織で仕事を続ける義務感がある。
第2因子 規範的コミットメント(α=0.837)
この組織の人々に恩義を感じているので今すぐにはこの組織を辞めない。
私はこの組織に大変恩義がある。
この組織はつくす価値がある。
今この組織を辞めるとしたら罪悪感を感じるだろう。
この組織は、個人的に大きな価値がある。
たとえ自分にとって有利な仕事があったとしても、今この組織を辞める
ことが正しいこととは思えない。
62
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
第3因子 存続的コミットメント(α=0.679)
この組織で仕事を続ける主な理由の一つは、組織を辞めると個人的に少
なからぬ損失を伴い、他の組織ではこの組織で得ている 全般的な恩恵を
得られないかもしれないからである。
この組織を辞めることを決心したら、私の人生で多くのものが失われる
だろう。
この組織を辞めることは、たとえ辞めたくても、大変困難である。
この組織を辞めると困ることの一つは、他に良い仕事が少ないためであ
る。
因子抽出法: 主因子法 回転法: Kaiser の正規化を伴うプロマックス法
CC
-.143
.099
.683
CC
.115
.105
.639
CC
.058
-.129
.603
CC
-.236
.087
.469
AC=情動的コミットメント NC=規範的コミットメント CC=存続的コミットメント
3コミットメントの相関係数をみると、情動的コミットメントと規範的コミットメントとの
間に強い相関関係が見られている。これは、2つの構成概念間には重なる部分があることを示
唆している。ただ、これは数多くの調査研究をメタ分析したMeyerたち(2002)の結果とも一
致するものである。高い相関はあるものの、情動的、規範的コミットメントは他の要因等と
の関係は異なるといった理由から独立した次元とみなしてよいという見解をMeyerたち
(2002)
は示しており、われわれもこの2つのコミットメントは独立した次元と見なして分析すること
にする。
なお、組織コミットメントの先行要因、および結果要因に入る変数もともに因子分析により
作成された。各変数を構成するスケール、信頼性係数は付表に示されている。
図表−3 組織コミットメントと個人特性の相関係数
1
M
SD
1 情動的コミットメント
3.58
.793
2 規範的コミットメント
2.82
.900
.501**
2
3
4
3.36
.970
.113
.203*
4 年齢
35.14
7.761
.400**
.099
.191
5 勤続年数
14.32
8.438
.351**
.072
.208*
.960**
3.11
1.057
.386**
.157
.164
.911**
3 存続的コミットメント
6 役職
5
.881**
**p<.01 *p<.05
(3)組織コミットメントと先行要因 組織コミットメントと先行要因の関係を探るために、図表―1にあったように情動的、規範
的、存続的の3つコミットメントを従属変数として重回帰分析を行なった。
情動的コミットメントと有意な関係にあるのは、有意水準は10%と低いが、
「年齢」
、
「達成・
成長志向の仕事遂行」
、
「脱官僚的な仕事の遂行」
、
「組織マネジメントの適切さ」である。
63
行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
日本のデータでは、
「年齢」
、
「役職」は、コミットメントと有意な関係にあることが多い。
われわれのデータでは、
「役職」は有意にならなかった。役職に就いているがゆえに情動的コ
ミットメントが高いということはなさそうである。
「良好な職場環境」
、
「上司との信頼関係」
も有意ではない。むしろ情動的コミットメントの高い成員は、組織マネジメントが適切で、
やるべきことが明確になっており、官僚制にともなう組織的な制約にとらわれずに、達成志
向性があり成長できるような仕事をしていることが、結果から読みとれる。
図表−4 組織コミットメントと先行要因の重回帰分析
年 齢
役 職
良好な職場環境
上司との信頼関係
達成・成長志向の仕事遂行
自立的行動
官僚制的組織文化
脱官僚的な仕事遂行
組織マネジメントの適切
2
R
情動的コミットメント
.351*
.030
-.050
.128
.180*
-.124
.023
.203*
.225*
.415***
***p<.001
規範的コミットメント
-.335
-.230
.062
-.092
.022
.052
.127
.076
.643***
411***
存続的コミットメント
.189
.055
-.049
-.063
.090
-.012
.189
-.055
.048
093
*p<.1
規範的コミットメントでは、
「組織マネジメントの適切さ」だけが有意であり、他の要因は
関係していない。組織に恩義を感ずるか否かで、仕事の内容や、同僚・上司からなる職場環境、
官僚制的な特質は影響していないようである。ミッションや顧客志向を明示化した組織運営
がなされていると、所属する組織への価値が認められ、留まらねばならないといった規範性
につながっているといえそうである。
存続的コミットメントには、有意な影響を与える要因は一つもなかった。重決定係数も.093
と低く、重回帰の式に投入した要因では、存続的コミットメントの変動を説明できていない。
雇用の継続が前提になっている行政組織では、他の要因が存続的コミットメントに関係して
いることが考えられる。
(4)組織コミットメントと結果要因
行政組織において、規則や手続きといった組織の枠組みの中だけで行動することは求めら
れていない。官僚制的な行動から脱却して、新たなことへの挑戦や大きな組織的な視点での
行動へと変容することが大きなテーマになっている。こういった観点から、望ましい行動ス
タイルとして因子分析から明らかになったのは、
「達成・挑戦志向の行動」と「組織市民行動」
64
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
である。付表からもわかるようにこの2つの要因を構成する項目は、行政組織で求められてい
る行動パターンといえよう。
この2つの結果要因を従属変数として重回帰分析を行なった。結果は図表−5に示してある。
これによると、
「達成・挑戦志向の行動」は、規範的コミットメントだけが有意であり、他の
コミットメントは有意な関係はない。しかし、
「組織市民行動」では、情動的と存続的が5%
水準で有意であり、規範的コミットメントは10%水準で有意となっている。
図表−5 組織コミットメントと結果要因の重回帰分析
情動的コミットメント
規範的コミットメント
存続的コミットメント
2
R
達成・挑戦志向の行動
.105
.368**
-.062
.178***
組織市民行動
.266**
.198*
-.246**
.189***
***p<.001 **p<.05 *p<.1
情動的コミットメントは、仕事の業績変数とは強い関係をもっており(Meyer et.al, 2002; 板
倉, 2002)
、行動の成果を予測する上では有力な指標である。Meyerたち(2002)のメタ分析結
果と同様に組織市民行動では有意になっているが、
「達成・挑戦志向の行動」では有意ではない。
「達成・成長志向の仕事遂行」が情動的コミットメントを高めているが、情動的コミットメン
トそのものは達成・挑戦志向の行動を導いていない。組織のためにという行動は導いているが、
達成・挑戦の志向という個人の内在的な強い動機に支えられた行動にはつながってないと解
釈できる。情動的コミットメントがもたらす行動は、行政組織では異なるメカニズムが働い
ているようである。
規範的コミットメントが、むしろ情動的コミットメント的な働きをしている。組織市民行動、
達成・挑戦志向の行動ともに有意な原因変数になっているのである。Meyerたち(2002)も規
範的コミットメントと組織市民行動は強い相関をもっていることを報告している。今回のサ
ンプルである行政組織において、規範的コミットメントと情動的なコミットメントの働きの
違いっていることは検討が必要であろう。
存続的コミットメントは、組織市民行動と有意であるが、βの記号はマイナスである。つ
まり、存続的コミットメントが高まると、組織市民行動をとらなくなるということである。
存続的コミットメントが、営業成績等の業績変数とマイナスの関係にあることは板倉(2002)
の研究でも明らかになっている。Meyerたち(2002)は、組織市民行動とは無相関、業績変数
とはマイナスの相関があることを報告している。存続的コミットメントが組織への貢献行動
とは反対の効果をもたらしがちということは、他の研究とも一致した結果といえよう。
65
行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
5.考察
今回のサンプル数は95と少なく結果を一般的に捉えるには限界がある。しかし、行政組織
からのコミットメントに関するデータという得難いものでもある。こういったデータの限界
を前提として考察を加えることにする。
今回の分析の焦点は、Meyerたち(2002)の3構成モデルにあるように、組織コミットメン
トの大きな研究テーマとなっている先行要因と結果要因と3次元の組織コミットメントとの関
係を調べることであった。先行要因についてまずいうと、情動的コミットメントについては、
他の研究とあまり違わない結果が得られた。年齢や仕事の進め方やマネジメントの適切さと
いった作業経験に入る要素が、有意な正の関係をもつ変数となっていた。
しかし、規範的コミットメントと存続的コミットメントは、他の研究とは異なる結果が得
られた。規範的コミットメントが相関関係をもつ変数は、情動的コミットメントと大きな違
いはない(Meyer,et.al,2002)
。ところがわれわれのサンプルでは、組織マネジメントの適切
さが同じ有意な関係になっているくらいで、他の変数は有意になっていない。年齢は、有意
ではないが標準偏回帰係数βの符号は、マイナスになっている。規範的コミットメントは、
年齢の上昇につれて髙まるという単純な関係にはないといえよう。実際、27 ∼ 31歳層が、そ
の前後の年齢層に比べて高く、48歳層以上はでは低下するという結果になっている。
存続的コミットメントにいたっては、有意な変数は一つもない。われわれは、存続的コミッ
トメントに影響する要因として組織内特性や年齢を想定したが、これらの要因は存続的コミッ
トメントには関係していない。他の要因が行政組織の成員の存続的コミットメントに影響し
ていることが考えられる。また、このコミットメントは、今の組織を辞めると損失が大きい
ために組織に残るという性格のものである。したがって、ふつう年齢と正の比例関係にある
(Meyer,et.al,2002)
。しかし、分析結果は有意ではない。年齢ごとの存続コミットメントの
平均値の推移をみると、40歳後半まで上昇しているが、48歳以上の層で大きく低下しており、
このことが有意となっていない理由と考えられる。
次に、結果要因との関係をみると、組織市民行動とは予想された結果が得られている。つ
まり、情動的、規範的コミットメントは、組織市民行動と正の有意な関係にあり、反対に存
続コミットメントとは負の有意な関係をもっているのである。存続コミットメントが高いと
いうことは、組織市民行動を抑制してしまうという効果がみられている。ところが、達成・
挑戦志向の行動については、予想に反する結果となっている。情動的コミットメントは、有
意な働きはしておらず、規範的コミットメントが有意な関係にあるのである。ふつうは、業
績や達成行動では、情動的コミットメントは、規範的コミットメントと同等のあるいはそれ
以上の強さで正の関係をもっている。しかし、その結果は得られなかった。
66
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
組織コミットメントと先行要因、結果要因の関係において、他の研究と異なる結果が出た
理由として、サンプル特性、つまり行政組織の成員の意識の違いが反映していることが考え
られる。それは、組織コミットメントの構造に現れている。図表−2の因子分析の結果をみる
と、情動的コミットメントの中に存続的コミットメントのスケールが高い負荷量で入ってい
る(分析に使用された情動的コミットメントには、存続的コミットメントのスケールは含ま
れていない、規範的コミットメントも同様)
。因子を構成するスケールからは、本来の情動的
コミットメントとは性格が異なっているようにみえる。組織に愛着を感じたり、組織の一員
であると感じているが、それには功利的、損得感情のようなものが入り交じった愛着であり、
純粋に組織の価値・使命、目標に一体化して、それに尽くそうというものとは違っているよ
うである。また、規範的コミットメントの因子には、
「この組織は、個人的に大きな価値があ
る」といった情動的コミットメントのスケールが入っている。
これらの結果をみる限り、3つのコミットメントのうち情動的コミットメントと規範的コ
ミットメントは、Allen & Meyer たちのものとは性格を異にしているといえよう。つまり、情
動的コミットメントには存続的コミットメントの要素が加わっていること、規範的コミット
メントには、情動的コミットメント的な面が備わっていることである。もともとMeyerたち
(2002)は、情動的コミットメントと規範的コミットメントには高い相関があり、明確に峻別
できない面があると述べている。そのため、規範的コミットメントが情動的コミットメント
の特性をもっていることがあり、それが結果要因との関係に現れていることが考えられよう。
これが行政組織の特性かは、サンプル数が少ないことや、他の省庁とのデータ比較がないた
めに断定できない。ただ、雇用や身分の保障があるとい公務員のステータスが、組織と個人
間の関係をみる組織コミットメントに何らかの影響を及ぼしていることは想像できることで
ある。
以上の理論や概念の含意から、最後に今後の行政組織のあり方について実務的な観点から
検討することで本稿の結びとしたい。
今国家公務員の人事管理については、年功主義的なものから成果主義に移行する方向にあ
る。例えば、公務員制度改革大綱(2001年12月25日閣議決定)では、国家公務員の人事制度
改革の一環として、目標管理に基づく業績給、いわゆる成果主義の導入が掲げられている。
また、2005年8月15日出された人事院勧告には、2006年度から勤務成績に基づく昇給制度の導
入や勤勉手当への実績反映の拡大が盛り込まれている。
こういったマネジメントを強化する動きに対して、われわれのデータは支持的な結果を示
している。成員の情動的、規範的コミットメントを高めるのは、組織マネジメントの適切さ
という結果が出ている。目標や役割が明確になっている、近視眼的な視点ではなく行政サー
ビスの受け手のことおよび組織全体の成果向上を意識して行動する、そして指示命令が明確
67
行政組織における組織コミットメント −組織コミットメントの先行要因と結果要因の実証研究−
に発せられる、といったマネジメントが適切にできていることである。こうしたマネジメン
トが展開されれば、情動的、規範的コミットメントを高める。この2つのコミットメントを高
めることは、単に目標として与えられた仕事を効果的に行なうだけでなく、より積極的な行
動を導く。達成・挑戦志向の行動や組織市民行動を動機づけるのである。つまり、より高い
目標に向けて自立的な行動をとる、発生した問題に迅速な対処行動をとる、他部門や顧客の
ことを考えながら行動するといったことが導かれるのである。適切なマネジメントを行なう
ことは、成員の意識に上述のような効果を与え、それが望ましい行動スタイルへとつながっ
ていくのである。
適切なマネジメントを行なっていくには、やはり管理職のマネジメント能力が鍵となって
こよう。目標管理においては、事前の目標設定が重要であり、上司と部下が話し合い目標お
よび結果のイメージを共有することがポイントとなる(柳下,2001)
。最初に目標や結果につ
いて相互に了解しあうことが、評価の段階でも客観性、公平性を確保することになる。また、
上司は部下とよく話をして、説明することが部下の納得感にもつながる。こういったマネジ
メント能力をつけることが、成果主義のもとでのマネジメントでは整えておかねばならない
点であろう。
成果主義については、それが動機づけの要因となるとともに、高い目標設定をしなくなっ
たり、目標達成のためにリスクをおかさなくなるという弊害も指摘されており、守島(1998)
は成果主義導入後の組織や成員に与える影響についての実証的調査の必要性を説いている。
行政組織の場合、職務内容の違いもあり、転職が個人のキャリアの選択肢と考慮される割
合が低く、雇用の流動化が進んでいないため、評価によるモラルが低下した成員が組織に留
まり続けた場合の組織に対する影響は企業よりも大きくなると考えられる。また、職務の成
果に関して、結果重視に偏らず、そのプロセスも評価の対象に含めなければ、個人の評価は
高くても、組織全体の成果が下がるという可能性も否定できない。
成果主義がうまく定着すれば、情動的、規範的コミットメントが高まる可能性があり、結
果重視に流れれば、存続的コミットメントがより高まることも考えられる。また、職務のプ
ロセス、個人の組織に対する態度、望ましい行動基準などを調査することで、組織のマネジ
メントにフィードバックできるのではなかろうか。われわれは、今後推し進められる行政組
織の人事制度改革の中で、守島が指摘するような成果主義導入による実証的調査のツールと
して本調査が活かされ、行政組織における人的資源管理に貢献できるのではないかと考えて
いる。
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Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
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70
Sanno University Bulletin Vol.26 No. 2 February 2006
付表
先行要因の因子分析結果
良好な職場環境(α=0.802)
結果要因の因子分析結果
達成・挑戦志向の行動(α=0.762)
上司からは仕事の目標や計画の内容は明確に知らされる。
同僚とは、忙しい時は気楽に仕事を頼まれたり頼んだり
することができる関係にある。
上司は、私の仕事の能力を評価し、信頼してくれる。
自分の部署は友好的な雰囲気である。
同僚とは団結して、部署全体の業績を良くしていこうと
している。
仕事ではできるだけ高い目標を設定してそれを達成する
ように努めている。
問題が発生したら素早く解決しようと自分から行動を起
こしている。
仕事では、新しい方法を試したり,新たな知識や情報を使
うことが多い。
上司との信頼関係(α=0.829)
自分のやるべきことを部門や組織の大きな観点から考え
ることがある。
仕事を進める上では、仕事の相手のことを優先して考え
ている。
仕事の中で無駄な部分は省いたり、改善しようとするこ
とが多い。
組織市民行動(α=0.635)
上司は将来の昇格や配転について、いろいろ力になって
くれるところがある
助けが必要な時には、上司は支援してくれる。
私は上司に全幅の信頼をおいている。
官僚制的組織文化(α=0.798)
部門間にまたがる問題が発生したときは自部門の利益に
固執しがちである。
組織全体のことより、自部門・自部署や担当している仕
事のことしか考えない雰囲気がある。
組織の外部よりも内部に対して気を使う雰囲気がある。
抜本的な改革よりも現状対応的な問題解決が重視される。
組織内では事を荒立てないことが何よりも重要とされる。
成果のいかんにかかわらず、いつも遅くまで残業してい
る人が認められるところがある。
脱官僚的な仕事の遂行(α=0.758)
担当部門・部署が中心に行っている業務であっても、他
部門・部署から問題を指摘したり建設的な提案を行って
いる
組織内での意思決定は適切なスピードでなされていると
思う
仕事のやり方を変えて、より良い方法を見つけだすこと
がある。
情況が変わっても、なかなか旧来のやり方や慣習を変え
ようとしないところがある。
組織マネジメントの適切さ(α=0.767)
各部署が、自部署の仕事中心に活動することが結果とし
て組織全体の成果を最大化することにつながると考えら
れている。
組織内における指揮命令系統は、明確かつ効率的である
常に顧客(住民・仕事の相手など)に対するサービスを
第一に仕事が進められている。
組織には明確な目標・役割がある。
達成・成長志向の仕事遂行(α=0.669)
自分に与えられて仕事は確実にこなせている。
様々な仕事への配置などを通じて多様な経験を積むこと
ができる。
自分は、仕事において達成すべき成果を理解している。
自立的行動(α=0.542)
自分で考え、判断して行動しなければならないことが多
い。
仕事の役割が細分化されているため、人手が足りない時
でも一人で仕事を進めなければならない。
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