Pro/ENGINEER Surface 入門 東海大学総合情報センター 第1版 目 第1章 自由曲面作成 1.1 可変断面スイープ 1.2 スタイル 第2章 意匠面モデル 2.1 曲率のきれいな自由曲線作成 2.2 可変断面スイープとスタイルの比較 2.3 例1(マウス上側面の例) 2.4 例2(リモコンの上側面の例) 付録 [用語] 次 ・・・・・・・ 1 ・・・・・・・ 5 ・・・・ 19 (注)このテキストで用いている Pro/ENGINEER は WILDFIRE2.0 です。 第1章 自由曲面作成 このテキストは、Pro/ENGINEER(以降Pro/Eと略します)講座の サブテキストです。Pro/E操作経験 100 時間程度の皆さんを対象に、自由曲面作 成の基本操作を記述しています。 サーフェスフィーチャーの中で自由曲面を作成するコマンドは、ブレンド、境界 ブレンド、可変断面スイープ等です。この中では、可変断面スイープが、有用なコ マンドです。 また、Pro/E Educational Edition には、ISDX( Interactive Surface Design:コマンドはスタイル )が入っています。このモジュールでも、自由曲面が作 成出来ます。 1.1 可変断面スイープ 可変断面スイープは、選択した1つまたは複数の軌道に沿って断面(断面平面)を スイープさせながらサーフェスやソリッドを作成するコマンドです。 1)操作手順 次の様な2本の軌道を使って操作の基本手順を説明します。 画 面 操作説明 軌道は事前作成が条件です。操作例の 軌道は RIGHT と TOP データム上に あり、FRONT データムからカーブ 端までの距離が 200mm です。 ( )内の操作はオプションです。 本例では( )内は操作しません。 ① 挿入>可変断面スイープ。 ( ② 作成フィーチャーの切替え。 デフォルトはサーフェスです。 ) ③ 2本の軌道をピック。 最初のピックで指示した軌道が基準 軌道となります。 1 画 面 操作説明 ( ④ 「参照」スライドアップパネル で、 (1)基準軌道の変更 デフォルトは1番最初にピ ックした軌道。 (2)Xベクトル軌道 (3)断面平面の制御 デフォルトは軌道に垂直。 等の指示。) ⑤ スイープ断面アイコン 。 ⑥ 断面をスケッチ。 断面には、円錐曲線を使用。 角度付けは、ページ5の 2.1 1)−(1)−③を参照。 ⑦ 。 (1) 上図と同じ断面でも、「断面平面の制御」オプションの指示によって作成される フィーチャーは異なります。 次の3つのオプションにより断面平面が決まります。 ・軌道に垂直:基準軌道の接線ベクトルが法線ベクトルとなる平面。 デフォルトです。先の操作手順で示した結果となります。 ・投影に垂直:基準軌道を投影した平面カーブの接線ベクトルが法線ベクト ルとなる平面。 ・一定垂直方向:方向参照で指示した平面の矢印が法線ベクトルとなる平面。 ① 「投影に垂直」の例 方向参照で TOP データムを指示。 2 この結果は、右図の様な RIGHT または TOP データム上の線分を基準軌道として 取込み、「軌道に垂直」を選択した場合 と同じです。 また、可変断面スイープでは取込んだ 軌道の全てを断面定義に使用する必要 はありません。 ② 「一定方向垂直」の例 2)リレーション 断面形状定義に使用した軌道によって断面は変化しますが、リレーションによっ ても断面を変化させることが出来ます。 1)の断面の円錐曲線の rho は 0.5 一定です。これを、断面のスタート部で 0.4 エンド部で 0.7 に変化させる場合、断面定義時に 式を入力します。 sd9=0.4+0.3*trajpar sd9:rho の名前表示変数 trajpar:パラメータ スタート部:trajpar=0 エンド部:trajpar=1 3 ツール>リレーション で次の 単純な変化であれば直接リレーションを 入力します。そうでない場合は、グラフを 使います。 事前に右図の様なグラフ(名前=kouza) を作成しておき、リレーションで次の式 を入力します。 sd9=evalgraph(“kouza”,trajpar*10)/10 1.2 スタイル スタイルは、カーブとサーフェスしか作成できませんが、カーブ間、カーブとサー フェス間、サーフェス間の境界条件を容易に設定できる機能を持っています。 スタイルにはチュートリアルがあるので、ここでの詳細説明は省きます。 1)カーブ作成 ① スタイル>カーブ>スタイルのダッシュボードを開く。 ② 「フリー」、「平面」、「COS」を選択し、作成するカーブのタイプを指定。 ・フリー:3次元空間にカーブを作成。 ・平面:特定の平面上にカーブを作成。 ・COS:特定のサーフェス上にのみ存在するように拘束されたカーブを作成。 ③ カーブ作成の終了。 2)サーフェス作成 ① スタイル>サーフェス>スタイルのダッシュボードを開く。 ② 指示するカーブによって、作成されるサーフェスのタイプが異なる。 (ア) 境界サーフェス作成 ・3つまたは4つの境界カーブまたはエッジを指示して作成。 (イ) ロフトサーフェス作成 ・同じ方向に流れる交差しないカーブを指示して作成。 (ウ) ブレンドサーフェス作成 ・1つまたは2つの1次カーブを指示。 ・1つまたは2つの1次カーブと交差する1つまたは複数のクロスカーブを指示 して作成。 ③ サーフェス作成の終了。 4 第2章 意匠面モデル 自由曲面を使って意匠面モデルを作成する場合、ベースとなるカーブの曲率をき れいなものにすることが最も重要なことです。また、隣接するサーフェス間の連続 性を重視するので、ひとつのモデルでは、サーフェスの数をなるべく少なくするこ とも大切です。 2.1 曲率のきれいな自由曲線作成 2次元の曲率のきれいな自由曲線は、ここで説明する方法で作成します。3次元の 曲率のきれいな自由曲線は、2次元の曲率のきれいな自由曲線を元に作成したサーフ ェス間の交線やサーフェスへの投影等で作成します。 1)スプラインカーブ (1) Pro/E本体 ① 作成: 挿入>モデルデータム>スケッチ>スケッチ平面の指示>「スプラインカーブ 作成」アイコン>任意の位置へカーブの構成点群を配置。 ② 修正: (スケッチ状態で)カーブをダブルクリック>曲率を表示させる>曲率がきれい になるまで制御点(または構成点)の位置を修正。 ③ カーブ端の角度拘束: (スケッチ状態で)カーブをダブルク リック>寸法作成アイコン>(ア)基準線 (イ)カーブ(ウ)角度付けする構成点をピッ ク、(エ)寸法配置位置を中ボタン>表示 された寸法を所定の値に変更。 *ジオメトリミラー対応等に使用します。 (2) スタイル ① 作成: スタイル>カーブ>平面カーブ指示>スケッチ平面指示>任意の位置へカーブ の構成点群を配置。 5 ② 修正: 修正するカーブの曲率表示>スタイル>カーブの編集>対象カーブをピック> 曲率がきれいになるまで制御点(または構成点)の位置を修正。 ③ カーブ端の角度拘束: カーブ修正状態でカーブ端をピック>「接線」スライドアップパネル>拘束の第 1方向の中から「フリー」を選択>プロパティの「角度」にチェックを入れて、 角度を入力。(右図) *角度が 90°の場合、「フリー」+角度入力 の代わりに「垂直」選択または、「法線方向」 +対象平面の指示 でも可。 2)線分と円弧で構成されるカーブ 線分と円弧で構成されるカーブを曲率接続カーブに変更するには、次のスタイル を使う方法が簡便です。但し、この方法では円弧形状は近似となります。 右図の様な2本の線分へ半径 30mm の円弧を かけたカーブを例にします。 ① オリジナルの線分へ吸着させて1本のスタ イル平面カーブ作成。 ② カーブ両端へ「曲率」の拘束を付ける。 ③ 曲率を見ながら、カーブ端の位置と、 ベクトルの大きさを調整する。 ④ 円弧部へ残りの線分部(スタイルカーブ) を追加。 6 右図は、オリジナルカーブと作成した スタイルカーブそれぞれを基準軌道にし た可変断面スイープのサーフェスを比較 したものです。反射光の繋がり具合の差 がよくわかります。 2.2 可変断面スイープとスタイルの比較 右図の様な2面で構成されるサーフェス モデル側面を可変断面スイープとスタイル の2つの方法で作成して、比較します。 画 面 操作説明 (共通操作) ① 上面を可変断面スイープで作成。 基準軌道カーブを RIGHT データム 上に作成。 断面平面制御:投影に垂直。 TOP データム指定。 基準軌道カーブ 断面は円錐曲線。 ② TOP データム上に上面のR止まり 線用カーブ、側面の下側エッジ用 カーブ作成。 7 画 面 操作説明 (可変断面サーフェス) ① R止まり線を上面へ投影。 *ここまでのフィーチャーをスタイ ル用として 130mm Z軸マイナス 方向へ移動コピーしておく。 (編集>フィーチャーオペレーション>コピー・・) ② R止まり線を基準軌道、側面下側エ ッジ線を一般軌道に選択して可変断 面サーフェス作成。 断面平面制御:軌道に垂直。 断面は円錐曲線。 ③ 2面のマージ。 ④ マージ結果の解析「反射」。 (スタイル:ブレンドサーフェス) 本例では、可変断面スイープ③の様 なマージが出来ない場合があるので、 マージは行いません。 ① R止まり線を上面へ投影し、その線 で上面をトリム。 8 画 面 操作説明 ② 上面のR止まり線を使ってソフト平 面を作成し、クロスカーブ作成。 カーブは上面にサーフェス曲率接続。 ③ サーフェス作成。 スタイルのブレンドサーフェス、 境界サーフェスまたは、Pro/E 本体 の境界ブレンドサーフェス作成を 使用。 ④ 作成結果の解析「反射」。 (1) 今回のモデルでの評価 意匠面モデル作成においては、 ① 可変断面スイープでも十分に対応出来る。 ② スタイルは、可変断面スイープに比べて初心者向け。 ③ 隣接する曲面間の接続で曲率を重要視する場合は、スタイルサーフェスで 対応する。但し、ロフトサーフェスはジオメトリミラーを行うモデルには 適さない場合がある。 ④ いずれにしても、基本のカーブをきれいに作成することが最も重要。 9 2.3 例1(マウス上側面の例) この例で作成するモデルはサーフェスモデルです。RIGHT データムで面対称のモデ ルを半分作成します。また、使用する寸法は参考と考えて下さい。 画 面 操作説明 1.上面作成 ① 軌道カーブ作成。 ・RIGHT データム上に作成。 ・105×35 の範囲に入る程度。 ② ①を基準軌道として可変断面スイ ープでサーフェス作成。 ・基準軌道のスタートは FRONT データム側。 ・断面平面制御:投影に垂直。 TOP データム指定。 ・断面形状は円弧。円弧の中心 は RIGHT データム上。 半径はリレーションで設定。 sd5=90−40*trajpar^2 幅は 30mm。 ③ スタイルでクリック面作成。 ・TOP データム上のカーブ2本 ( 25×35 程度 )を②の面へ投影。 ・フリーカーブ端の点を TOP デ ータムから 9.5mm へ作成。 ・フリーカーブ2本作成。 ・フリーカーブを②の面へ曲率 接続。 10 画 面 操作説明 ・4本のカーブで境界サーフェス を作成し、②の面へ曲率接続。 (接線接続矢印の中央部をクリック) ④ ②と③の面をマージ(結合)。 2.エッジカーブ 2 本作成 ① TOP データム上に上面エッジ用と 側面外周用のカーブを作成。 ・105×30 の範囲に入る程度。 ・半分モデルなので、カーブ端の 接線ベクトルは RIGHT データ ムに垂直。 3.上下分割面作成 ・押し出しサーフェス。 ・押し出し断面は左図。 ・押し出し幅は 35 程度。 11 画 面 操作説明 4.エッジカーブ2本の投影 ① 上面エッジカーブを上面へ、側面 外周カーブを上下分割割面へ投影。 5.上面のトリム ① 投影したカーブで上面をトリム。 6.側面作成 ① 上面エッジカーブを基準軌道とし、 可変断面スイープで作成。 ・断面は線分とした。 ・断面平面制御:軌道に垂直 7.ラウンド作成 ① 上面エッジカーブへラウンド作成。 ・r=2.0、円錐( rho=0.5 )を選択。 ・r値は多少大きくても可。 8.マージ ① ラウンドと上面のマージ(交差)。 ② ①のマージ結果と側面をマージ。 (結合) (1) キルトカットを適宜行うとソリッド を作成することが出来ます。 12 (2) モデルのサーフェスの数を少なくする ことに重点を置く場合、 「挿入>アドバンス>サーフェス フリー形状」 を使ってオリジナルのサーフェスを 変更する方法があります。 但し、この機能を使ってモデルを変更 するには、熟練を要します。 (3) クリック面のパッチ当て方式で、モデル手元側を曲がりのきつい面に変更 出来ます。 (4) 円弧形状があるサーフェスは、円弧をサーフェスの構成カーブとして使用した 方が円弧をスプラインで近似するよりもきれいなサーフェスが出来ます。 13 2.4 例2(リモコン上側面の例) サーフェスモデル作成においてもソリッドモデル作成同様、事前にどの様な手順で どの様なサーフェス作成機能を使用するかを検討します。今回のリモコン上面モデル の場合、電源スイッチ周辺面(A)→握り部面(B)→(A)と(B)の間の面→ボタン面の順にそ れぞれ異なるサーフェス作成機能で作成します。 講座のモデル作成は、単なるひとつの例に過ぎません。余裕があれば他の方法でも 作成して下さい。なお、モデルは FRONT データムで面対称です。 画 面 操作説明 1.電源スイッチ周辺形状 ① TOP データムから 14mm、17mm の高さに、それぞれ半径 22mm、 10mm の半円(データムカーブ)作成。 ② ブレンドサーフェス作成。 挿入>ブレンド>サーフェス> 一般、断面選択で実行>・・。 * 半円の存在する平面に正接させる。 2.握り部形状 ① 可変断面スイープ用の軌道カーブ 2本作成。 断面平面制御:投影に垂直 TOP データム指定 ② 断面は円錐曲線を使用。 * 基準軌道(イ)部の接線ベクトルを TOP データムに垂直としない場合、 17 ページの(2)を参照。 14 画 面 操作説明 3.電源スイッチ周辺形状と握り部形状 の間の形状 ① 電源スイッチ周辺形状のトリム。 ② サーフェス用の構成カーブ作成。 スタイルで作成。 *クロスカーブはジオメトリミラ ーを行った時に、センター部で のサーフェスの折れ防止用。 ③ サーフェス作成。 スタイルの境界サーフェス。 4.ボタン面形状 ① TOP データム上に輪郭線の元 カーブ作成。 15 画 面 操作説明 ② ①を元にスタイルカーブで輪郭線 を作成。 ③ TOP データムから 14mm の高さ に平面作成。 ④ ③の面へ②の線を投影し、その線 で③の平面をトリム。 5.側面形状 ① 1.∼4.の面のエッジを基準 軌道として、可変断面サーフェス 作成。(断面は適宜:左図は参考) 断面平面の制御:投影に垂直 TOP データム指定 寸法:1.0、rho:0.4 に対して リレーションを設定 6.マージ(結合)>ジオメトリミラー 16 (1) 参考:1本の外形輪郭線を複数のフィーチャー作成に使用する あらかじめ TOP データム上に外形輪郭線、FRONT データム上に上下分割線を 作成。次に、上下分割線を使って分割線を 5mm 上方へオフセットした位置に上側 形状の輪郭線をのせ る面を作成。その面 へ外形輪郭線を投影 した線が上側形状の 輪郭線。 この線を、トリムラ イン、スタイルサー フェスの輪郭線、可 変断面スイープの一 般軌道として使用ま す。 (2) 参考:握り部 基準軌道のベクトルを TOP データムに垂直 でなく、20°傾けた場合の例。 1) 本編と同じ手法 結果:エンド部でしわが出る。 エンド部の拡大 17 2) エンド部を3辺ブレンドサーフェス(スタイル)で作成 結果:3辺をピックする順によって曲率が異なる。本例は、下図の順にピック。 ③ ② ① 3) オーバー目に作成した可変断面スイープサーフェスをトリムする 結果:比較的、簡単に出来る。エンド部の輪郭は Pro/E まかせとなる。 エンド部輪郭 18 付録 [用語] rho 円錐曲線を定義する値。 0.05<rho<0.5:楕円、 rho=0.5:放物線 0.5<rho<0.95:双曲線 円錐曲線 円錐を平面で切った時に現れる切り口の曲線。 ガウス曲率(WF2はシェード曲率) サーフェス上の各点の最小垂直曲率と最大垂直曲率の積。 境界サーフェス(スタイル) 長方形または三角形の境界を持つサーフェス。サーフェスの完全な境界は、1次カー ブのセットと、オプションの内部カーブによって定義される。 曲率 カーブまたはサーフェスが所定の点でどの程度曲がっているのかを表したもの。 曲率接続 境界上の各点で曲率が等しくなる接続。 スプライン 本来は、製図用具の自在定規のこと。有限個の点群を配置した時、それらの点群を滑 らかに結ぶので自由曲線と言うこともある。曲線の構成点群を滑らかに結ぶための補 間または近似の方式には、代表的なものとして Coons、Bezier、NURBS がある。 正接接続 境界上の各点で接線ベクトルが等しくなる接続。 ソフト平面 親カーブの選択した点で親カーブに垂直になる平面。 ロフトサーフェス(スタイル) 同じ方向に流れる交差しないカーブのセットから作成されるサーフェス。 19
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