混成合唱組曲「あなたにあいたくて生まれてきた詩」より 風のうた きりん

混成合唱組曲「あなたにあいたくて生まれてきた詩」より
風のうた
安水稔和
落ちる鳥のために。悲しむ犬のために。
泣く魚のために。燃える草のために。
ゆっくりと開く花のために。
光る時間のまんなかで。いつも。
遠くのひとのために。声をなくしたひとのために。
微笑むひとのために。身をわずかに揺るひとのために。
光る時間のまんなかで。いつまでも。
手をあげるひとのために。声あげるひとのために。
歩きだすひとのために。目のまえのひとのために。
今、光る時間のまんなかで。思いをつくして。
丁度よい
藤場美津路
お前はお前で丁度よい
顔も体も名前も姓も
お前はそれは丁度よい
貧も食も親も子も
息子の嫁もその孫も
それはお前に丁度よい
幸も不幸もよろこびも
悲しみさえも丁度よい
歩いたお前の人生は
悪くもなければ良くもない
お前にとって丁度よい
地獄へ行こうと極楽(へ)行こうと
行ったところが丁度よい
(うぬぼれる要もなく卑下する要もない)
上もなければ下もない
死ぬ月日さえも丁度よい
お前はそれは丁度よい
きりん
天野忠
あんたが
見つめているものは
あんまり高いので
わたしは
見つめることができない。
あんたが
思いつめていることを
思いあてることは
とてもできない。
けれど
あの遠い世界と
だまって
ただ向かい合って立っている
あんたの姿は
あんまり自然なので
よくわかる。
涙が出るほど
わかる。
雲は雲のままに流れ
工藤直子
雲は雲のままに流れ
海は海のままに浮かび
それを見つめる ひとつの目があれば
地球は おだやかに まるくなる
あげます 谷川俊太郎
もぎたてのりんごかじったこともあるし
海に向かってひとりで歌ったこともある
スパゲッティ食べておしゃべりもしたし
大きな赤い風船ふくらませたこともある
あなたを好きとささやいてそして
しょっぱい涙の味ももう知っている
そんな私のくちびる・・・・・
いまはじめて・・・・・あなたにあげます
世界じゅうが声をひそめるこの夜に