教育資金はジュニアNISAで準備?それとも学資保険?①

知の
広場
教育資金はジュニアNISAで準備?それとも学資保険?①
~資産運用と保険の役割分担を考える~ (全2回)
2015年2月16日
後藤 順一郎
株式・オルタナティブ部 ディレクター
DC・NISA推進室長 兼 AB未来総研ディレクター
先般、金融庁は「若年層への投資のすそ野を拡大し、
『家計の安定的な資産形成の支援』および『経済成長
に必要な成長資金の供給拡大』の両立を図る」ために、
2016年4月からジュニアNISAを創設することを平成27
年度税制改正大綱に盛り込んだ。これを受け、各金融
機関では、ジュニアNISAの活用について前向きな議論
がされ始めている。私はこの動きには大賛成だ。そこで
当レポートでは、その理由について2回に分けて述べて
いくことにする。
保険と資産運用の使い分けが大事
年齢やライフスタイル(既婚/未婚、子供の有無)等に
よって人々が管理しなければならないリスクは異なる
が、日本においては、こうしたリスクを保険の活用で管理
していくことが一般的ではないだろうか。だが、私は保険
だけでは必ずしも十分ではなく、保険と資産運用を統
合してリスク管理を行うべきと考える。
昨今、資産運用に関しては、国や教育機関などを始め
様々なところでその重要性を説く動きが見られるように
なったが、保険と資産運用をリスク管理の観点から統合
的にとらえることの必要性について言及しているものは
少ないように思う。統合的にとらえる際に大事になってく
るのが、保険と資産運用の役割分担だ。そこで、まずは
保険と資産運用の役割を整理してみる。役割を一言で
いえば、保険は「備える」ことに適しており、資産運用は
「蓄える」ことに適している。保険は、本来、発生確率は低
いものの発生した際には生活に甚大な影響を及ぼす
ほどの多額な金額が必要となる事象や、いつ起こるの
か予測困難な事象に対して「備え」を提供するものであ
る。その事象が生起した際の多額なコストを賄うため、薄
く広く保険料を徴収し、幸いにも事象が発生しなかった
人は無駄な出費(掛け捨て)になることから、共助的要
素を持つ仕組みと言える。
それに対して、生起した場合でもそのコストが自分で準
備できる金額である事象や、発生の時期が予測できる
事象は、保険のためのコストがかからない資産運用で
計画的に「蓄える」方がより効率的である。このような観
点から、保険と資産運用の役割分担を世代別に例示し
たのが、図表である。
【図表】 保険と資産運用の役割分担
勤労世代
退職後世代
資産運用
=「蓄える」
退職後の資金、教育資金
平均余命までの生活費
保険
=「備える」
世帯主の突然の死亡
自動車事故
平均余命を超える長生き
(長生きリスク)
出所:AB
当資料は、2015年2月9日現在の情報を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が作成した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている
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ンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社は、ABの日本拠点です。
自動車事故や世帯主の突然の死亡に対するコストを
保険で「備える」ことに関して異論はないだろう。一方、
退職後の資金と教育資金については、保険と資産運
用のどちらで準備するのが良いのか迷ってしまう人が
多いのではないだろうか?
老後は保険と資産運用で乗り切る
まずは退職後の資金について考える。これまでは、退
職後の生活費を終身年金保険や預貯金で対応し、資
産運用を活用しない人が多かったのかもしれない。ここ
で、前述のフレームワークに則って、金額の大小、発生
時期の予測可能性という切り口で考えてみる。
人間が何歳くらいまで生きるのかは、集団としてみれば
ある程度は予測できる。退職する65歳まで生存した人
であれば、男性で平均的に84歳まで、女性で89歳まで
生存する(平成25年簡易生命表)との統計データがあ
る。現在の医学では人間は200歳、300歳までは生きる
ことは不可能で、多くの人が「平均余命±数年」の寿命
となるだろう。退職後の毎月の生活費もある程度の確
度で推計できる。したがって、平均余命までの必要資
金の金額は少し大きいかもしれないが、予測可能性は
高いことから、計画的に資産運用で準備するのが望ま
しい。
一方、そうは言っても人には個人差があり、個々人の寿
命を予測するのは難しい。残念ながら早世する人もい
れば、100歳を超えて長生きする人もいる。しかも長生き
すればするほど医療や介護などの費用が増え、より多
額の金額が必要となってくる。つまり、金額は相応に大
きく、死亡時期の予測も困難となるため、保険を活用す
るのが適切と言える(もちろん、年金、医療、介護につい
てある程度は公的な社会保障で支えられているので
安心してほしい)。
結局、退職後の資金に関しては、平均余命までの生活
費は、資産運用で「蓄え」、それより長生きする分につい
ては、保険で「備え」た方が良いと整理できると考える。
では、教育資金はどのように整理できるのだろうか?
ジュニアNISAは資産運用による教育資金の
形成をサポート
やはり上述と同様、金額の大小と発生時期の予測可能
性で整理してみる。まず予測可能性については、医療
の進歩のおかげで、新生児が18歳を迎えることができ
る確率は99.5%以上(平成25年簡易生命表)とかなり
高く、しかも大学や専門学校に進学する確率も、大学・
短大進学率が56.7%、専修学校進学率が17.0%で合計
73.7%と高い確率となっている(平成26年度学校基本
調査)。次に、金額についてみてみると、大学4年間で必
要な資金は国立で下宿なら約799万円(自宅:約508
万円)、私立理系で下宿なら約1,086万円(自宅:約672
万円)となっている(セールス手帖社保険FPS研究所
「ライフプランデータ集」)。
このように、教育資金については、退職後の資金以上
に発生時期をかなりの確度で予測でき、なおかつ金額
も高額ではあるが、平均的な所得水準の世帯であれ
ば事前に準備をしておけば対応できない金額ではな
い。したがって、このフレームワークでは、教育資金は資
産運用で「蓄える」方が適していると整理できる。そし
て、教育資金を資産運用で「蓄える」ことを税制的にサ
ポートするのがジュニアNISAなのだ。
一方、冒頭で述べたように日本人はリスク管理に保険
を活用する傾向があるため、実際、教育資金を学資保
険で「蓄え」ている人が多いと思われる。だが、これが果
たして適切な準備方法なのか疑問が生じてくる。なぜ
ならば、教育資金はその性質を考慮すると「蓄える」の
が良いと整理したが、学資保険は「蓄える」だけでなく
「備え」も組み合わさったパッケージ商品だからだ。通
常、学資保険でセットとなっている世帯主の死亡に対
する「備え」の必要性をしっかりと理解した上で学資保
険を活用するのであれば全く問題ないが、保険好きの
日本人は世帯主の死亡に対して別途、生命保険に
入っている場合が多く、「備える」部分が余計になって
いる可能性がある。この「備える」部分には当然コストが
かかるため、その分、学資保険の「蓄える」力は弱くなっ
ていると思われる。
そこで次回は、教育費の上昇とインフレとの関係を踏ま
えた上で、資産運用で「蓄える」力と学資保険で「蓄え
る」力を比較し、その差について考察する。
最後に税金の観点からジュニアNISAと学資保険を比
較してみる。ジュニアNISAでは運用益が非課税になる
が拠出金は所得控除とならないため、一般生命保険
料控除が適用される学資保険と比べて、税制的な魅
力度は劣るかもしれない。しかし、多くの人は世帯主の
生命保険等でその枠を使い切っているのではないだ
ろうか。既に枠を使い切っている人にとって見れば、所
得控除にはならなくても運用益が非課税となるジュニ
アNISAを無視することは得策ではない。是非、ジュニア
NISAを活用して、子供の将来のための教育資金を「蓄
え」てほしい。
(第2回に続く)
アライアンス・バーンスタイン株式会社
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