高齢者と薬 こうなんクリニック 萩原 美由紀 薬の主作用と副作用 主作用:薬を飲む目的の効能・効果を示す作用 副作用:薬を飲む目的以外の作用 副作用が起こりやすい傾向の人=ハイリスク患者 副作用発現防止 1)薬の投与方法 2)服薬量 3)薬の併用 4)副作用の種類や発現頻度 多剤併用 高齢者は、なぜ薬が多いの? 1)病気の数が多く、合併症がある 2)薬剤数が増える(75歳以上の平均4.7種類) 3)身体のいろんな箇所で病気が発生するた め、複数の病院や診療所を受診 副作用が多い理由 1)年をとるほど薬の副作用が起こりやすい 2)複数の治療薬の服用 3)飲み合わせ(薬と薬の相互作用) 4)薬を代謝する肝臓の機能や排泄する腎臓 の機能の低下 薬の効果と副作用 1)血管の機能低下、血行動態の機能低下 肝臓の機能低下、腎臓の機能低下 2)薬も多く、副作用も発現しやすい 3)薬に対する反応性が鋭敏=副作用発現 予想以上に薬の作用が強く出る薬 モルヒネ、セルシン、ペンタジン、ソセゴン ワーファリンなど 服薬指示を順守し、飲み間違い を防ぐ 1)用法の単純化:1日3回、朝・昼・夕食後服 用を、朝1回服用、朝・夕1日2回服用など に単純化 2)一包化・お薬カレンダー・お薬手帳の活用 3)剤形変更:飲みやすい剤形へ変更 4)薬剤管理:薬の自己管理=飲み忘れ防止 高齢者の副作用の徴候(サイン)へ の気付き 「食事関連」 1)食欲の低下 2)味覚の鈍麻 3)口の渇き 4)嚥下・咀嚼障害 「排泄関連」 1)便秘・下痢状態 2)頻尿・失禁 3)尿量減少 「睡眠関連」 1)不眠 2)昼間の傾眠 「運動関連」 1)ふらつき・転倒 2)薬剤性パーキンソニズム ↓ 手の震え・すくみ足・ぎこちない動き 薬による体調・バイタルサインの変化と 注意点 高齢者の身体反応性と評価(フィジカルアセスメント)する項目 1)挨拶 2)視覚・聴覚・臭覚 3)握手(触覚) 4)歩行時(視覚) 5)食事(視覚・味覚) 副作用と思われる具体的な症状や徴候 ①血圧:急激な低下・上昇 ②呼吸:早くなる・遅くなる・荒くなる・息苦しくなる ③脈拍:早くなる・遅くなる・乱れる ④体温:持続的に上昇・低下 ⑤意識:一時的になくなる・朦朧とする ⑥認知機能:場所・時間などの認識が一時的に失われる、混乱する 注意すべき身体反応の変化 循環器系に対する薬の副作用 ①血圧上昇 原因薬剤 非ステロイド性抗炎症薬 免疫抑制薬 グリチルリチン(甘草・漢方製剤の一成分) 造血剤(エリスロポエチン) 副腎皮質ステロイド剤 三環系・四環系抗うつ薬 ②血圧低下 原因薬剤 降圧利尿薬・降圧剤 亜硝酸剤・血管拡張薬 睡眠薬 抗うつ薬 パーキンソン治療薬 ④排尿:多尿・頻尿・乏尿・無尿 原因薬剤 利尿薬・抗ヒスタミン薬 抗ガン薬(メトトレキサート) 抗リウマチ薬 造影剤(ヨード) 抗菌薬(アミノグリコシド系・ニューキノロン系・セフェム系・バンコマイシン) 免疫抑制薬 鎮痛薬(ジクロフェナック・モルヒネ・コデインなど) ③脈拍:頻脈・徐脈・不整脈 原因薬剤 利尿薬・降圧薬・昇圧薬 亜硝酸製剤・血管拡張薬 気管支拡張薬 ジギタリス製剤 抗不整脈薬・三環系抗うつ薬 呼吸器系に対する薬の副作用 ①気管支れん縮 原因薬剤 非ステロイド性抗炎症薬 交感神経β2遮断薬 ②呼吸切迫 原因薬剤 抗菌薬(シプロキサン・メロキシカム) 抗ガン薬(メトトレキサート) 消化器系に対する薬の副作用 ①食欲不振・胃もたれ 原因薬剤 副腎皮質ステロイド(プレドニゾロン・デキサメタゾン) 非ステロイド性抗炎症薬(ロキソブロフェン・ジクロフェナック) 骨粗鬆症治療薬 認知症治療薬(ドネペジル) 抗ガン薬 ③薬剤性間質性肺炎 原因薬剤 抗ガン薬 漢方薬(小柴胡湯・紫苓湯・黄連解毒湯) 抗リウマチ薬 ②便秘・下痢 原因薬剤 下痢止め(ロペラミド) 鎮痛薬(モルヒネ) 咳止め(コデイン) 糖尿病治療薬(アルカボース・ボグリボース) 緩下剤(酸化マグネシウム・センノサイド) 抗菌薬 肝臓(肝機能)に対する薬の副作用 ①肝臓の細胞障害を誘発しやすい・胆汁が蓄積し、肝障害を誘発しやすい・両者の混合型を誘発しやすい薬剤 原因薬剤 ワーファリン・ステロイド剤・抗菌薬・高脂血症治療薬・非ステロイド性抗炎症薬・抗癌薬など 神経・筋肉系に対する薬の副作用 「中枢神経系」 ①うつ状態 ②意識レベル低下や傾眠傾向 原因薬剤:インターフェロン・ステロイド薬 原因薬剤:睡眠薬 ④せん妄 原因薬剤:パーキンソン治療薬・消化性潰瘍治療薬・抗結核薬・下痢止め薬 「末梢神経系」 ①末梢神経障害 原因薬剤:高脂血症治療薬・抗癌薬・抗ウイルス薬・抗菌薬 アナフィラキシーショックを誘発する薬 原因薬剤:抗菌薬(ペニシリン・セフェム系)・非ステロイド性抗炎症薬など ③不眠 原因薬剤:テオフィリン・抗コリン薬 まとめ 薬の処方(量・回数など)は、医師の役割であるが 日頃身近に接している御家族や看護師、介護スタッフ が観察して得られる身体反応の評価が、適切かつ 安全な薬物療法を支える貴重な情報となる ご清聴ありがとうございました。
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