ウェーハエッジトリートメント装置

第6編 半導体製造装置
●第6編●第15章●第3節●
ウェーハエッジトリートメント装置
大日本スクリーン製造
1. はじめに
近年、微細化とウェーハの大口径化により、1枚当た
りで作製されるチップ数が増加し、生産性向上を図る
ために、歩留り向上が重要なキーワードとなっている。
特にウェーハエッジの状況が製造プロセスに大きな
影響を与え、最終的には歩留りに影響することがわか
ってきた。ベベルケアは洗浄プロセスにおける歩留り
向上の新しい取り組みとして、先端プロセスでの導入
が始まっている。
している場合、ウェーハキャリアに接触してパーティ
クルが転写する。また、ドライエッチングにおいて、
ベベル部に堆積物が付着し、残膜が積み重なると密着
性不良により剥がれが生じる。剥がれた残膜はウェー
ハ表面に付着するだけでなく、ウェーハキャリアに接
触して剥がれ、下のウェーハに落ちて汚染を拡大させ
る。
ベベル部からの剥がれ膜が問題となって歩留りに影
響を与えることがわかっており、ウェーハのベベル洗
浄の必要性が高まっている(図2)
。
2. ベベル洗浄の必要性
図1に示すように、ウェーハのベベル汚染は転写が問
題となる。ウェーハのベベル部にパーティクルが付着
ウェーハキャリア
パーティクルの転写
ベベル部に
パーティクルが付着
図1
ウェーハベベル洗浄の必要性
3. ベベル洗浄技術搭載機
実際のウェーハベベル部の汚れを図3に示す。これが
歩留り低下を引き起こす要因となっている。また、ウ
ェーハベベルが汚れた状態でバッチ洗浄処理を行うと、
いわゆる縦筋モードと呼ばれるパーティクルモードが
発生することも知られている(図4)。そのため、ベベ
ル洗浄は以下の2種類の方式が知られている。
①薬液によるエッチング
②スラリーを用いた研磨
薬液によるエッチング方式では薬液を使用するため
ランニングコストが高く、スループットも低い。また、
ウェーハのベベル部だけに付着した余分な金属膜やド
ライエッチング堆積物を薬液によって溶解除去するた
パーティクル
ウェーハ
ドライエッチング堆積物
図2
ベベル部の汚染
図3 実際のウェーハベベル部に付着したパーティクル
2009 Semiconductor Fab/Equipment/Facilities
403
第6編 半導体製造装置
トップエッジ
フロントサイドベベル
ウェーハ
ボトムエッジ
Apex
バックサイドベベル
図5 ウェーハベベル部の詳細
図4 バッチ洗浄後の縦筋モード
写真1 「SS-3000BC」の外観
め、デバイス面に薬液が回り込まないよう工夫する必
要がある。さらに、ウェーハを保持するチャックと接
触するエッジ部には薬液が接触しないため、パーティ
クル残りが生じる。その対策としてチャック構造を変
えなければならないなどの課題がある。研磨方式はス
ラリーや研磨パッドなど消耗パーツのランニングコス
トが高く、保守も複雑である。
「SS-3000BC」はスクラバ「SS-3000」をベースにベ
ベル洗浄技術を搭載した装置であり、SS-3000と同等の
高いスループットが得られる。また、薬液を使用しな
いため、ランニングコストの削減および環境保護にも
寄与することができる(写真1)
。
404
2009 半導体工場・装置・設備
4. ベベル洗浄用ブラシ開発経緯
ブラシを用いたベベル洗浄機を開発するにあたり、
次の2項目を大きなテーマに掲げることとした。
①高い除去率
②洗浄幅の調整が可能
高い除去性能はもちろんのことであるが、デバイス
の製造工程またはエンドユーザーによっては“ウェー
ハのApexから2mmの領域だけ洗いたい”
、
“3mmだけ洗
いたい”といった様々な要望があり、レシピで使い分
けられる機構であることも目指した。なお、先に述べ
た“Apexから∼mmの領域”の“∼mm”を、本稿では
洗浄幅と呼ぶ(図5)
。
SS-3000で従来から使用してきたブラシをベースに
種々の形状のブラシを作製し、高い除去性能とフレキ
シブルな洗浄幅を可能とする評価を行った。こうした
試行錯誤を重ねる中で、ベベルブラシを完成させた。
このベベルブラシによってウェーハ表面/裏面側とも
に高い除去率が得られ、かつ洗浄幅をコントロールす
ることも可能となった。洗浄幅のコントロールに関し
ては後述する。
以上のことから、ベベルブラシを搭載したSS-3000BC
の特徴は、次の4点と言える。
①高除去率
②高スループット
③低コスト
④洗浄幅のコントロール
5. ベベルブラシの除去性能
スラリーが付着したサンプルの結果を写真2に示す。
処理後のベベル部においてスラリーが除去されている
第6編 半導体製造装置
この結果において、除去率100%と
はすなわちPSL粒子がすべて除去
されたことであり、除去率が0%と
ブラシ洗浄幅
は全く除去されなかったことを示
す。“PSL粒子が除去されている領
域 → 洗浄幅”と考えると、グラフ
のX軸において除去率が0%となる
ポイントが洗浄幅となる。押し込
み量を変えることで、洗浄幅も変
えることができる。
また、ウェーハとブラシの回転
方向を同じにすることで除去率を
上げており、ブラシ回転数も変更することができるの
で、より最適な処理が可能である。
スラリー汚染領域
エッジ (b)洗浄後
(a)洗浄前
写真2
スラリーの除去(ウェーハ上面から見た結果)
除去率(%)
100
押し込み量
4mm
1mm
80
60
6. ベベルブラシの想定適応工程および今後の課題
40
20
0
0
1
2
3
4
Apexからの距離(mm)
図6
ブラシ押し込み量ごとの洗浄幅および除去率
ことがわかる。なお、ウェーハ全周360度にわたってス
ラリーがすべて除去されていることも確認された。
次にブラシ押し込み量(水平方向の移動量)による
洗浄幅および除去率の結果を図6に示す。サンプルに
は、ベアSiウェーハにポリスチレンラテックス(PSL)
粒子を塗布し、200℃で3minベークしたものを用いた。
現時点では、下記工程にベベルブラシが適応できる
のではないかと考えている。
①CVD残渣除去
②CMPの前および後
③エッチング後のエッジ部に付着した堆積物の除去
④バッチ洗浄前(縦筋モード対策)
⑤露光前(液浸プロセス)
CMPに関しては、ウェーハベベル部のパーティクル
が研磨パッドに転写することによって膜にクラックを
生じさせることもあり、CMP前にベベル洗浄すること
によってその抑制が期待できる。
液浸露光機ではレンズ部で水を循環させており、そ
の循環水にベベル部の汚れが転写すると、レンズへの
クロスコンタミネーションや解像不良を招く恐れがあ
り、その抑制も期待できる。
2009 Semiconductor Fab/Equipment/Facilities
405