ムスリムへのおもてなし

観 光
ムスリムへのおもてなし
近年、
ビザの緩 和やLCC
( 格 安 航 空 会 社 )の就 航などを背 景に、東 南アジアを中心とするイスラム
教 圏からの訪日外 国 人 旅 行 者 が 急 増しており、今 後もムスリム(イスラム教 徒 )によるインバウンドの
拡大が期待されます。
ムスリム旅 行 者を受け入れるうえで、
イスラム教の生 活 習慣に関する教えについて理 解し、彼らが
日本に滞在している間も教えを守れるよう配 慮する必 要があります。
イスラム教の生 活 習慣に関する基 本 的な教えとして、
「ハラル( 許された行 為・物 )」
と
「ハラム( 禁
じられた行 為・物 )」があります。例えば 、食における代 表 的なハラムとして豚 肉やアルコール飲 料が
あり、ムスリムはハラムを避けるべきとされています。
このため、飲 食 店や食 べ 物を販 売する土 産 物 屋
などは、ムスリム旅 行 者がハラムとされる食 材を口にしないよう、配 慮する必 要があります。豚肉・豚肉
由 来 成 分(ラードやゼラチン、乳 化 剤などの調 味 料・添 加 物 )やアルコールが入っていない食 材・料
理の提 供に加え、ムスリムの中にはハラム食 材に触れていない調 理 器 具の使 用や食 器での提 供を
求める声もあり、細 心の注 意を払って対 応する必 要があります( 図 表1)。
また、イスラム教の生 活 習 慣に関 する基 本 的な教えとして、毎日5回 、決められた時 間に行う
「礼
拝 」が挙げられます。清 潔な場 所で行うこと、礼 拝 前に体を清めること、キブラ
(イスラム教の聖 地メッ
カの方 角)に向かって行うこと、などが決められており、ムスリム旅 行 者 への配 慮として礼 拝 場 所の提
供やキブラの表示が挙げられます( 図 表2)。
おもてなしにおいて注 意すべき点は、ムスリム個 人の信 仰 心を尊 重するということです。
「 旅 行中も
普 段と同じく教えを守りたい」
と考えるムスリムがいる一 方 、
「できる限りの対 応で構わないので旅 行を
楽しみたい」
と考えるムスリムもいるため、一 人ひとりの信 仰 心に応じることが大 切です。
世 界のムスリム人口は2 0 1 0 年 時 点の推 計 値で1 6 億 人 、世 界の人口の約 2 3%を占めており、2 0 5 0
年には2 8 億 人と約 3 0%まで拡 大する見 通しです( 図 表3)。今 後さらなるインバウンド観 光の拡 大に
向けては、ムスリム旅 行 者の取り込みが重 要となります。そのためにもイスラム教やその教えについて
正しく理解し、可能な範 囲から取り組みを進める必 要があるでしょう。
三重銀総研 調査部研究員 畑中 純一
図表1
ムスリムへのおもてなし①<食>
図表2
ムスリムへのおもてなし②<礼拝>
<絵を使ったメニューの例>
・礼拝場所にキブラを示すマーク
や キ ブ ラ コ ン パ ス( 方 位 磁 石 に
キブラを示す機能を追加した
もの)を用意する
6%
1%
32%
31%
16%
15%
15%
23%
30%
<天井に表示したキブラマーク >
non-alcohol
7%
13%
キ
5%
イスラム
観光
lat
Kib
5%
教
ー
non-pork
1%
ヒ ンズ
<キブラマークの例>
【全人口】2050年:93 億人
2010年:69 億人
ト教
ス
リ
・ホテルや空港、商業施設などで一
時的な礼拝場所や常設の礼拝室
を用意する
世界の宗教別人口<2010年、2050年>
無
宗教
・飲食店などのメニューで、豚肉や
アルコールの使用について表示
する
図表3
教
キリスト教
イスラム教
ヒンズー教
無宗教
仏教
伝統宗教
その他宗教
(資料)観光庁「ムスリムおもてなしガイドブック」、昇龍道プロジェクト推進協議会「ムスリム旅行者
受入の心得」など各種資料をもとに 三重銀総研作成
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(資料)Pew Research Center
2016.1 MIE TOPICS
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