No.13 美祢支部 研究主題(表現運動) 夢中になって踊る楽しさを味わう表現運動 ~表現運動の学習内容の明確化を通して~ 1 主題設定の理由 表現運動領域は、低学年の表現リズム遊びと、中・高学年の表現運動によって構成さ れている。表現リズム遊びでは、身近な動物や乗り物などの題材の特徴をとらえてその ものになりきって踊ったり、軽快な音楽に乗って踊ったりすることが楽しい運動遊びで ある。中・高学年では、自己の心身を解き放ち、リズムやイメージの世界に没入し、な りきって踊ることが楽しい運動であり、同時に互いのよさを生かし合って仲間と交流し て踊る楽しさや喜びを味わうことができる運動である。このように表現運動領域におい ては、共に学ぶ仲間との交流を通して、なりきって踊ったり心身を解放しリズムやイメ ージの世界に没入したりする、いわば我を忘れて夢中になって踊ることが楽しさの中核 になる。 しかし、一般的に表現運動は4年生が壁と言われるように、低・中学年では題材にな りきって、まさしく変身して踊ることに夢中になれていた子どもが、高学年になると踊 ることやそれを見られることに抵抗感を抱くようになりなかなか心を解放し夢中になっ て踊ることができないという現実がある。それは、これまでの表現運動の学習において 子どもが学ぶべき技能や学び方についてその系統性や順序性や、子どもの実態との関連 性について、明確な意図がもてないまま指導してきたことに起因しているのではないだ ろうか。 そこで、今年度、表現運動領域の機能的な特性である「夢中になって踊ること」その ものが楽しいと子どもたちが実感できるような授業づくりを、単元における学習内容を 明確にするという視点からとらえ直してみたいと考え、上記のような研究主題を掲げ、 研究を進めることにした。 2 研究の視点 ①表現運動領域の学習内容の明確化 新学習指導要領では、それぞれの運動領域における技能の内容を具体的に提示してい る 。 ま た 思 考 ・ 判 断 に お い て は 、「 知 る 」 こ と を 位 置 づ け 、 そ の 運 動 に 必 要 な 技 能 や 学 び方における知識・理解の側面を重要視している。そこで、授業づくりにおいては、子 どもに学ばせるべき学習内容とその系統性を、子どもの実態(発達段階や、心理的な成 長、運動技能等)に応じて柔軟にとらえるとともにどこで何を学ぶべきなのかを明確に した授業づくりをめざしていく。 ②子どもの意識が連続発展する単元構想の工夫 単元全体を通しての身につけるべき内容を単元目標とするならば、その内容に迫るた めの段階的、連続的、系統的な学習内容が存在する。それを学習過程に具現化したもの が 単 元 構 想 で あ る と 考 え る 。単 元 構 想 に お い て は 、こ の 明 確 に さ れ た 学 習 内 容 に 基 づ き 、 子どもたちが次第に楽しさをふくらませることができる、楽しさ追求の意識が連続して いくような単元構成にしていくことをめざしていく。 - 121 - 3 実践研究 単元名 「レッツダンス赤 GO!」(第5・6学年) 美祢市立赤郷小学校 近藤 裕昭 (1)単元について 本校5・6年の児童9名(5年生5名:男子3名 女子2名、6年生4名:男子2名 女子2名) は運動が好きな児童が多く、楽しく体育学習に取り組んでいる。表現領域については、授業で取り 組むことはあまり多くないが、運動会に向けて、全校ダンスなどの練習を行っている。運動会では、 毎年『美東音頭』や『赤郷小唄』、『オクラホマミキサー』を地域や保護者の方々と一緒に踊った り、全校ダンスとして1曲練習し発表したりしている。全校ダンスでは、一昨年度までの2年間は 『よさこいソーラン』、昨年度はアラジンの『陽はまた昇る』、今年度はエグザイルの『WON’T BE LONG』を練習し踊った。しかし、これらは教師による創作ダンスであり、児童が自ら工夫してつ くりだしたものではない。表現運動に関するアンケートの結果では、「運動会の赤郷エグザイル 『WON’T BE LONG』を楽しく踊ることができた」と児童全員が答えている。また、「練習をがん ばった」や「練習が楽しかった」とほとんどの児童が肯定的に答えている。しかし、「人前で曲に 合わせてダンスを踊ることが好きである」や「ダンスに興味をもっている」、「自分で振りを考え て踊ることができる」などの項目では、否定的な意見が多い。アンケートの結果から、ほとんどの 児童がダンスに抵抗感をもっているが、教師が振りを教え、それを曲に合わせて何度も練習するこ とには意欲的に取り組むことができると考えられる。また、振りを覚え、自分のダンスが上達して いくことに達成感を感じてダンスを楽しむこともできる。しかし、即興的に踊ったり自分で振りを 考えて踊ったりすることには、かなり抵抗があるといえる。 本単元「レッツダンス赤 GO!」は、表したいイメージをとらえ、即興的な表現や簡単なひとまと まりの表現で踊る学習を通して、表現運動の楽しさや喜びにふれ、表したい感じを表現したり、踊 りの特徴をとらえてリズムに合わせて表現したりすることができるようになることをねらいとして いる。そのために、既習事項である、運動会での全校ダンス「赤郷エグザイル『WON’T BE LONG』」 を生かして、さらに新たに様々な動きを身につけながら、それらの動きを自分たちで工夫したり構 成を考えたりして、曲に合わせてオリジナルのダンスをつくっていく活動を取り入れることができ る。 表現運動に取り組むにあたり、児童の実態から、ダンスへの抵抗感をどのようにして取り除いて いくか、また、ダンスを楽しんで踊るためにどのように支援していくかが重要である。そこで指導 にあたっては、以下のことに留意したい。 ○オリエンテーションでは、児童に学習の流れのイメージをもたせるとともに、パソコンを活用し て様々なダンスの動きを見せてダンスのかっこよさを感じさせることで、第2時からの学習に関 心をもち意欲的に参加できるようにする。 ○本単元では、児童のダンスに対する抵抗感などの実態を考え、1曲だけを使用する。意欲的に楽 しんで踊ることができるように、アップテンポでリズムがとりやすく、児童の身近な曲を選曲す る。 ○第2時からの『いろいろな動きを楽しもう』では、児童の抵抗感を取り除き、ダンスを楽しんで 踊ることができるように、①ミラーダンスタイム・②グループダンスタイム・③アレンジダンス - 115 - タイム・④フリーダンスタイムの時間を設定し、学習の流れが動きをまねすることから始まり、 それらの動きや構成の工夫へと発展していくようにする。 ※下線部の時間の主な活動内容と支援 番 設定した時間 主な学習内容 支 援 ・フリーダンスやオリジナルダンスづくりに向けて ミラーダンス ・各自が教師のま タイム ねをしながら楽し (MT) く踊る。 ① 動きの幅を広げていくように、左右の動き・前後の 動き・回る動きを提示し、楽しくまねをして踊って いく中で様々な動きをつかませたい。 ・それぞれの動きのレベルを少しずつ上げていき挑 戦させることで意欲的に取り組ませたい。 グループダンス ・グループで友だ ・友だちのまねをして踊ることで、友だちと動きを タイム ちのまねをしなが 合わせて踊る楽しさや動きがそろうかっこよさを (GT) ら楽しく踊る。 感じさせたい。 ・まねをした動き ・友だちとかかわり合いながら、まねをした動きを アレンジダンス を工夫したり構成 工夫したり構成を考えたりすることで、みんなでダ タイム を考えたりしてグ ンスをつくっていく楽しさや喜びを感じさせたい。 (AT) ループでフリーダ ・みんなでつくったダンスを共有するために、歌詞 ンスをつくる。 や拍数を載せたワークシートに動きを記入させる。 ② ③ フリーダンス ④ タイム (FT) ・グループでフリ ーダンスを発表し 合い、感想を伝え 合う。 ・フリーダンスの発表後に、工夫やがんばりなどの 感想を伝え合ったりほめ合ったりすることで、しっ かりと認め合い、ダンスに自信をもたせたい。 ○設定したそれぞれの時間で、リズムにのって踊っている子や大きな動作で踊っている子など、各 自の動きのよさやがんばりをどんどんほめて価値付けをしていくことで、全員が自信をもってダ ンスを楽しむことができるようにする。 ○第5・6時の『オリジナルダンスを楽しもう』では、1曲分のダンスをつくっていく参考となる ように、前時までのフリーダンスの動きをワークシートにしっかりと記入させたりビデオカメラ やデジタルカメラで録画したりして、いつでも見られるようにする。 ○動きをカードに書いたダンスカードを蓄積していくことで、児童が視覚的にも動きを確認しやす くしたりフリーダンスやオリジナルダンスの構成の参考にしたりできるようにする。 (2)目 標 ○リズムにのって意欲的に体を動かし、友だちとダンスの楽しさや喜びを味わうことができる。 (関心・意欲・態度) ○動きや構成を工夫して、友だちと協力しながらオリジナルダンスをつくることができる。 (思考・判断) - 116 - ○ステップなどの様々な動きをリズムに合わせて大きな動作で踊ることができる。 (技能) (3)単元計画(全7時間) (4)研究の実際と考察 ①表現運動領域の学習内容の明確化 本単元に取り組むにあたって、学習内容を明確にした授業づくりのために単元構想図(※表1) を作成した。新学習指導要領に基づき、表現運動領域において、どこで何を学ばせていくかを考え た。学習指導要領解説にも明記されるように、表現運動は、自己の心身を解き放して、リズムやイ メージの世界に没入してなりきって踊ることが楽しい運動であり、互いのよさを生かし合って仲間 と交流して踊る楽しさや喜びを味わうことができる運動である。しかし、本校の高学年児童は、低 学年時の表現リズム遊びの経験も乏しく、また、日頃からダンスに親しむことも少ない。そのため、 曲に合わせて即興的に自由に踊ること、また、踊ること自体を楽しむことが難しい。それは、児童 の発達段階に応じた学習内容をきちんと習得していないからだと考えられる。どのように体を動か したらよいか知らないことに加え、高学年児童特有の恥ずかしさなど、表現運動に対しての抵抗感 が強いからである。そこで、このような児童の実態から、第2時から第4時での学習活動では、ま ずは、①基本的な動き方を知ることから学習し、②それらの動きを友だちと合わせて踊ったり、リ ズムに合わせて踊ったりすることで、踊ること自体を楽しみ、さらに、③覚えた動きを大きく踊っ たり、自分たちなりにアレンジしたりするように、学習を発展させていく形で設定した。 ※下線部の学習内容は以下の通りである。 ①9つのステップ(技能)、力いっぱい取り組む(態度) - 117 - ②友だちと合わせた動き、リズムに合わせた動き(技能)、互いのよさを認め協力する(態度) ③メリハリのある大きな動き、アレンジ・工夫した動き(技能)、練習の仕方を考える、動きの工 夫(思考・判断) このような学習活動を仕組むことで、児童の表現運動に対する抵抗感を軽減することができるの ではないかと考えた。実際に、本単元で、当初は表現運動に抵抗を感じていた児童も、基本的な動 きを学習することにより動き方が分かり、身に付けた動きを生かして、手の動かし方等のアレンジ をしたり、グループで曲に合わせたダンスの組み合わせ方を考えたりして楽しく踊りながら、様々 な学習内容をある程度身に付けていくことができたといえる。 このように、学習内容を明確にしていくことによって、児童の実態に合わせた技能、態度、思考 力・判断力をきちんと身に付けさせていくことが大切であると実感した。それらの力が、次の表現 運動につながっていくため、低学年からきちんと系統的に学習を積み重ねていくことで、表現運動 に対する抵抗を緩和し、夢中になって踊る楽しさを味わう表現運動ができると確信している。 ②子どもの意識が連続発展する単元構想 表現運動に対する抵抗感を和らげ、児童が楽しく意欲的に学習に取り組むために、まず、学習に 対する見通しを児童にしっかりともたせ、児童の意識が連続発展する学習活動を仕組むことが大切 であると考えた。そこで、第2時から第4時の学習活動で、ミラーダンスタイム・グループダンス タイム・アレンジダンスタイム・フリーダンスタイムの4つの時間を設定した。ミラーダンスタイ ムで、児童が教師の動きのまねをしながら踊ることで前後の動き・左右の動き・回る動きの3つの 動き方を習得し、グループダンスタイムで、グループで踊ることでそれらの動きをさらに深めて、 自信をもって踊ることができるようにする。アレンジダンスタイムでは、身に付けた動きをグルー プで工夫し組み合わせてフリーダンスをつくり、フリーダンスタイムで、曲に合わせてフリーダン スを踊る。このように学習の流れをパターン化したことで、児童が見通しをもって学習に取り組む ことができ、それらの活動が段階的に発展していくことで、意欲的に学習に取り組むことができた と言える。 また、児童が意欲的に楽しく学習活動に取り組むために次のような工夫をした。まずは選曲であ る。児童の希望の中から、児童の身近なもので、アップテンポでリズムが取りやすく、楽しく踊れ るような曲を選んだ。CMにも使われていて、ほとんどの児童が知っていた曲を編集して使用した。 ミラーダンスタイムで習得する動き方が1時間ごとにレベルアップしていっても、同じ曲だからこ そリズムがとりやすく踊りやすかったと言える。もし、いくつかの曲を使用し、曲によりリズムや 雰囲気が違ってくると児童の抵抗感が増していたと考え られる。 次に、ダンスカードの工夫である。ミラーダンスタイム では、1時間に前後の動き・左右の動き・回る動きの3つ の動き方を習得し、第2時から第4時までの3時間で、合 計9つの動き方を学習した。その9つの動き方1つ1つに 『○○○ステップ』と9名の児童の名前をそれぞれに付け 顔写真を印刷したカードを作ることで、その動き方に親し みをもつことができたり、自分の名前が付いた動き方を意 欲的に踊ったり、さらに、カードを見てみんながどんな動きかを即時に共通理解したりすることが - 118 - できた。これらのダンスカードは、第5時・第6時のオリジナルダンスづくりの話し合いでも、カ ードに動き方が書いてあるため、実際にカードを並べながらそれぞれの動きの組み立てを考えるこ とができて、とても役に立った。 他にも、デジタルカメラやビデオカメラの動画の活用も効果的であった。友だちから「手を大き く振るといいよ。」とアドバイスをもらっても、自分では、できているつもりなのである。踊ってい る児童本人は、なかなか自分の動きが分からない。しかし、その動きを録画してすぐに確認するこ とで、自分の踊っている様子がはっきりと分かる。このようにカメラを活用することで、自分たち の課題や友だちの上手なところなどがすぐにはっきりと分かるため、児童の動きを高めていくこと ができた。 しかし、反対にいくつかの反省点も見つかった。ミラーダンスタイムでは、教師の動きのまねを することで、楽しみながら動きを習得させたかったが、実際には、児童がまねをする教師の動きは 前後・左右・回る動きの3つだけなので、いろいろな動きをまねして楽しむのとは違って、ただ3 つの動きを覚えるための反復練習になってしまい、楽しく活動しているようには見えなかった。そ こで、少しでも楽しく動きを覚えるためには、教師が動き方を提示する時に、動きに合わせてさら に言葉でも伝えていくと、動き方も分かりやすくなると同時に雰囲気が楽しくなったのではないか と反省した。また、児童のよい動きやがんばりをどんどんほめて認めていくことで、ほめられた児 童もうれしくなり、一層意欲的になったのではないか。児童が意欲的に活動していくためには、教 師が児童の動きをしっかりと価値付けていくことが重要であると実感した。児童をやる気にさせた り児童のよい動きをみんなに広げたりするために、児童のどのような動きをどこで価値付けしてい くのかを、具体的にはっきりと考えておく必要があった。 また、第5時・第6時で行ったオリジナルダンスづく りでは、ミラーダンスで習得しアレンジした9つの動き を組み合わせて1分40秒程のオリジナルダンスを作っ た。児童たちは曲を何度も聴き、ダンスカードを並べな がら組み立てを考え、自分たちが踊るオリジナルダンス を話し合いながらつくる活動を楽しむことができた。し かし、そのつくったダンスのもとになった動きが9つと 多かったため、2時間ではオリジナルダンスをつくって 練習し上手に踊ることが難しかった。そんな中で、ダン スに自信をもった児童がみんなの手本となって前に出て踊り、みんなを引っ張っていく姿にとても 感動した。 今回の実践で、表現運動に抵抗感をもち、曲が流れてもなかなか動けずに固まってしまっていた 児童たちが、自分たちなりにオリジナルダンスをつくり、進んで踊るように変容していく姿を見る ことができた。また、オリジナルダンスづくりでは、日頃は折り合いもよく相手の意見を尊重し合 う児童たちが、ダンスの動き方について感情的に発言するほど、こだわりをもっていたことに非常 に驚いた。自分たちのダンスをよりよくしたいという思いや願いをもって、意欲的に活動できたこ とは大きな成果である。 - 119 - ※表1 第5・6学年体育 表現運動 単元構想図 内容の取り扱い (1)次の運動の楽しさ や喜びに触れ、表し たい感じを表現した り踊りの特徴をとら 1 えたりして踊ること ができるようにす 技 る。 ア 表現では、いろい 能 ろな題材から表した いイメージをとら え、即興的な表現や 簡単なひとまとまり の表現で踊ること。 「いろいろな題材」とは、「激しい感じの 題材」や「群(集団)が生きる題材」、ま た、題材を一つに固定しない「多様な題 材」を示している。それらの中から、表 したい感じやイメージを強調するよう に、変化を付けたひと流れの動きで即興 的に表現したり、グループで「はじめ― なか―おわり」を付けた簡単なひとまと まりの動きにしたりして表現することが できるようにする。 児童に際しては、表現の題材を児童一 人一人の感心や能力の違いに応じて選ぶ とともに、クラス共通の題材だけでなく、 個人やグループによって広い範囲から選 ぶようにする。 共通事項(準備運動、復習、学習内容の確認) ☆ねらい1 ・基本的な動きをマスターし、友達と 動きを合わせて踊ろう ☆ねらい2 ・マスターした動きを選んだり工夫したり して、オリジナルダンスを踊ろう 赤GO! レッツダンス ○高学年は「表現」、「フォークダンス」で 内容を構成している。 ○これらの運動は、自己の心身を解き放し て、リズムやイメージの世界に没入して なりきって踊ることが楽しい運動であ り、互いのよさを生かし合って仲間と交 流して踊る楽しさや喜びを味わうことが できる運動である。 ○高学年の「表現」は、身近な生活などか ら題材を選んで表したいイメージや思い を表現するのが楽しい運動である。 ○表現運動の学習指導では、児童一人一人 がこれらの踊りの楽しさや喜びに十分に 触れていくことがねらいとなる。そのた めには、児童の今もっている力やその違 いを生かせるような題材や音楽を選ぶと ともに、多様な活動や場を工夫して、一 人一人の課題の解決に向けた創意工夫が できるようにしていくことが大切であ る。高学年では、個人やグループの持ち 味を生かした題材の選択や簡単なひとま とまりの表現への発展など、拡大する個 の違いに対応した進め方をしていくこと が大切である。 ○なお「表現」における技能では、「即興 的に表現すること」と「簡単なひとまと まりの表現をすること」が大切である。 「即興的に表現すること」とは、題材か ら思いつくままにとらえた動きを基に、 動きを誇張したり、変化を付けたりして、 「ひと流れの動き」にして表現すること である。「簡単なひとまとまりの表現をす ること」とは、表したいイメージを変化 と起伏のある「はじめ―なか―おわり」 の構成を工夫して表現することを示して いる。 オリエンテーション ◎新学習指導要領及び解説の理解 ①単元名 小学校第5・6学年 表現運動( 表現 ) ⑤授業のポイント ②指導内容の概要 ③学習指導要領の内容 ④学習指導要領解説の記載内容 (児童への発問や声かけの仕方など) ◎単元計画の構想(上)◎中心となる指導内容の特定(下) 1 2 3 4 5 6 7 共通事項(発表、グループでの話し合い、全体での話し合い) ○リズムに合わせて、基本的な動 きを覚えよう。 ○メンバーと動きを合わせよう。 ○手や足などの動きを大きくし よう。 ◎評価規準の検討 評価規準例 運動の技能(~ができる) 基本的な動き ・リズムよく踊ることができる。 リズムや友達と合わせた動き メリハリのある大きな動き ・大きな動きで踊ることができる。 アレンジ・工夫した動き ○動きをアレンジしてみよう。 ○簡単なひとまとまりの動きに して表現しよう。 ・友達と動きを合わせて踊ることができる。 考え・創りあげた動き ・動きをアレンジして踊ることができる。 ・簡単なひとまとまりの動きにして踊ること ができる。 態度(~しようとしている) (2)運動に進んで取り ○自分のもっている考えや力を ア 表現に進んで取り組むこと。 組み、互いのよさを 出し切ろう。 認め合い助け合って イ 約束を守り、友達と助け合って練習や ○友達のよい動きや頑張りを見 態 練習や発表をした 発表、交流をすること。 つけ、互いに認め合おう。 り、場の安全に気を 配ったりすることが 度 ウ 活動の場の安全に気を配ること。 ○互いに安全を確かめながら活 できるようにする。 動しよう。 力いっぱい取り組む 2 互いのよさを認め協力する ステージの広さや安全を確かめる ・自分のもっている考えや力を出し切ろうと している。 ・友達のよさを認め、協力して取り組もうと している。 ・ステージの広さなどを考えて安全に気をつ け活動しようとしている。 思考・判断(~している) 3 ア 課題の解決の仕方を知り、自分やグル ○みんなが曲に合わせて楽しく (3)自分やグループの ープの課題に応じた動きを選んだり、構 踊れるように動きを選択した 思 課題の解決に向け 成を変えたりすること。 り工夫したりしよう。 考 て、練習や発表の仕 ・ 方を工夫できるよう イ 自分やグループの持ち味を知り、練習 □自分たちが考えた動きは、カー や発表会、交流会で自分やグループの持 ドなどにメモさせ、メンバーが 判 にする。 ち味を生かす動きをつくること。 共有できるようにする。 断 「F表現運動」の(1)については、地域や学校の実態に応じてリズムダンスを加えて指導することができる。 楽しく踊れるように動きを工夫する 練習の仕方を考える 考えた動きの中から選ぶ 努力を要する児童の 確認と手立て 十分満足と判断 できる児童の確認 ・みんなが楽しく踊るために、友達のよい動 きを認めて取り入れたり、動きを工夫した りしている。 ・自分たちで工夫した動きの中から、曲に合 わせて、動きを選択している。 4 成果と今後の課題 ①表現運動領域の学習内容の明確化 今回の実践において、単元全体を通してどのよう な学習内容をどの時期に学ぶようにすべきかを考慮 しながら前述の単元構想図を作成した。この取組は 大変有効であった。教師が単元を仕組むに当たり、 毎時間中核となる学習内容を整理することにより教 師の支援が実践事例で述べたように明確になった。 同時に毎時間ごとの評価規準も明確になり、評価と 支援の一体化が容易に図れるようになった。 しかし、今回の実践では、それぞれの時間ごとに設定した中核となる学習内容がきち んと系統性を持てているのか、また子どもから見た運動の特性に寄り添っていたのかど うかという点においては問題があると考える。表現運動における学習内容の学年ごとの 系統性はもちろんであるが、単元全体における系統性についてさらに深く検討していく 必要があると考える。 ②子どもの意識が連続発展する単元構想の工夫 今回の実践においては、ねらい1の段階に大きな課題がある。これまで表現運動の楽 しさを味わう経験が少ないことと高学年という発達段階を考慮し、子どもに即興的に体 を動かすことへの抵抗感があると考え、教師の動きをまねるという活動を通してステッ プなど基本的な動き方を経験するという活動を仕組んだ。それによって基本的な動き方 を知りそれを獲得することが子どもの踊ることへの抵抗感の軽減につながると考えた。 この取組は子どもの抵抗感の軽減には有効であったが、活動そのものは受身的なものと なりがちであった。それは、この取組がともすると基本的な動き方を身につけなければ ダンスの楽しさにふれることができないという形の学習過程になってしまったためであ り、子どもが今もっている力で運動のもつ機能的な特性にふれるような学習過程になり にくかったことが大きな原因であると考えられる。一方、ねらい2の段階では、子ども は自分たちが獲得した様々な動き方を基にダンスの構成を工夫する中で、自分たちの思 いや願いに対してのこだわりを持ちながら主体的に学習に取り組むことができた。汗を いっぱいかきながら夢中になって踊る姿が随所に見られた。 今後の課題としては、子どもが今もっている力で表現運動の楽しさを味わえるような 単元の導入、すなわち運動の出会わせ方について、実践を通して工夫を積み重ねていく ことが大切であると考える。子ども一人が表現運動の楽しさにふれることができるよう な授業作りに今後も努めていきたい。 終わりに本研究の推進に当たり、授業作りの段階から研究授業、協議にいたるまで適 切な指導・助言をいただいた山口市立平川小学校教諭、福田和子先生に深くお礼申し上 げます。 - 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