要 旨 PM2.5 について、PM とは粒子状物質;Particulate Matter を略して

要 旨
PM2.5 について、PM とは粒子状物質;Particulate Matter を略して PM といい、粒子径が 2.5 ミクロ
ン以下を PM2.5、10 ミクロン以下の PM10、さらに PM0.1 などの ultrafine particle と呼ばれるさら
に桁違いに小さな粒子もあります。PM2.5 は色々な物質を含んでおり、その成分は石炭などを燃料と
する火力発電所やディーゼルなどの排気ガスの粒子、硫黄や窒素の酸化物などがあり、発生源として
は、ボイラー、焼却炉、コークス炉、自動車、船舶、航空機等の人為的なものや、土壌、海洋、火山
などの自然が起源のものもあります。
これまでの疫学的調査から、PM2.5 が大きな健康影響をもたらすことが指摘されていますが、今年
の 10 月 17 日に、世界保健機関 WHO の国際がん研究機関は、PM2.5 を含む大気汚染物質の発がんリス
クをアスベストやたばこと同じ5段階のうちで最高のグループ1「発がん性がある」に分類し、2010
年には全世界で大気汚染が原因の肺がんで 22 万人以上が亡くなったという報告をしました。ヨーロ
ッパの疫学調査でも、PM10 の濃度が 1 立方メートルあたり 10µg 上昇すると、肺がんの罹患率が 1.22
倍となることや、アメリカの疫学研究では、PM2.5 の年平均濃度が 1 立方メートルあたり 10μg 上昇
するごとに、肺癌による死亡率が 8%増えることが報告されています。国内の前向き研究でも PM10、
PM2.5 の長期曝露と肺癌死亡との相関が報告されています。
西日本では毎年春になると中国大陸の内陸部から黄砂が飛んできます。黄砂は粒径 5 ミクロン前後
で天然由来のものがほとんどで、一般的に刺激性は低いと考えられてきましたが、近年は中国沿岸部
を通過する際に PM2.5 などの汚染物質とともに飛来していると推測されています。この黄砂につい
て、近年、九州大学から脳梗塞の発症と相関について、1999 年から 2010 年に福岡市の 7,000 人以上
の脳梗塞の患者さんを調べたところ、特に黄砂観測当日から 2 日後にかけてアテローム血栓性脳梗塞
の患者さんが有意に増える傾向があったという報告が出ており、注目されています。喘息や慢性閉塞
性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患の患者さんや、冠動脈疾患や心不全、脳卒中などの循環器疾患を
持つ患者さん、高齢者の方、お子さんは大気汚染物質の影響をより敏感に受けると考えられています
ので、このような方は、高濃度の日は外出を控えた方が賢明かもしれません。
昨年 11 月には、2種類の気管支喘息治療薬として吸入ステロイド(ICS)と長時間作用性β2 刺激
薬の合剤(レルベア、フルティフォーム)と、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2 刺
激薬(LABA)の合剤(ウルティブロ)3種類の COPD や喘息の新規吸入薬が発売され使用が可能にな
りました。レルベア(DPI)は1日1回吸入で喘息治療が可能であり、フルティフォーム(pMDI)は
シムビコートの LABA とアドエアの ICS の合剤となります。また、ウルティブロは LABA であるオンブ
レスと LAMA であるシーブリの合剤で、1日1回吸入の COPD の治療薬です。このように、多くの種類
の喘息・COPD 吸入治療薬が現在使用可能となりましたが、各薬剤の特徴や使い分けなどをお話した
いと思います。