内部統制報告書作成の留意点 - 株式会社 J

内部統制報告書作成の留意点
株式会社J-SOX研究所
金﨑定男
平成21年4月3日
目次
Ⅰ.重要な欠陥
1.内部統制評価の全体像
2.重要な欠陥の判定例
Ⅱ.内部統制報告書
1.内部統制報告書の様式と根拠法令
2.内部統制報告書の記載項目
3.内部統制報告書の類型と監査意見
4.内部統制報告書作成にあたっての留意点
(
参考資料)
① 内部統制報告書(実例)
② 内部統制府令・同ガイドライン
③ 監査・保証実務委員会報告82号「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上
の取扱い」(平成21年3月23日改正) <抜粋>
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1.内部統制評価の全体像
評価の区分
評価対象
選定基準
95%基準
全社統制
重要な事業拠
点
IT全般統制
業務処理統制
に関わる情報
システム
業務処理
統制の評
価対象業
務で使用さ
れている情
報処理シス
テム
IT業務処理統制
業務
処理
統制
同上
決算・財務報告
重要な事業拠
点
95%基準
主要勘定科目
重要な勘定科
目の業務プロ
セス
2/3基準
財務報告への影
響が大きい業務
プロセス
すべての事業
拠点
100%基準
評価方法
◎質問書、チェックリスト等
○関連書類等の確認 他
◎質問書、チェックリスト等
○システム関連図、その他関連文書の確認
◎ウォークスルー、サンプリングテストなど
◎質問書、チェックリスト等
◎3点セット(フローチャート、業務記述書、RCM)
等によるウォークスルー、サンプリングテスト
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2.重要な欠陥の判定例(1)
・事例(
ABC家電量販店の例)
ABC家電販売(株)は、全国20か所に大型店舗を有している家電
量販店である。
1店舗当たりの売上高は、年間5億円から10億円程度であり、全
社での年商は約160億円である。
同社では、全社的にPOSシステムを導入し、IT全般統制の評価は
おおむね良好であった。
売上計上の業務処理プロセスのサンプリングテストを実施した。
次のケース1、ケース2それぞれにつき、運用テストの評価結果を
どのように評価すればよいか。
1店舗当たりの平均粗利益率は30%、過去3年の平均的な、税
引き前利益は、10億円であり、数年前から現在まで売上・
利益とも
比較的安定して推移している。
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2.重要な欠陥の判定例(2)
・ケース1
各店舗別にサンプリングテストを実施する場合、各店舗から42件のサン
プルをとり、テストを実施した。1件の大阪梅田店(年間売上8億円)のサ
ンプリングテストで2件のエラー(
売上の2重計上1件、及び架空計上1件)
が発生した。その他に、1件のエラーを検出した店舗が2店舗、その他の
店舗はエラーゼロであった。最大影響額はいくらか?
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2.重要な欠陥の判定例(3)
・ケース2
全店舗を評価単位としてサンプリングテストを実施する場合、全店舗か
ら42件のサンプルをとり、2件のエラー(
売上の2重計上1件、及び架空計
上1件)
が発生した。最大影響額はいくらか?
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2.重要な欠陥の判定例(4)
全社統制、IT全般
統制の評価
の不備
質的重要
性の検討
発
生
可
能
性
の
検
討
業務処理統制の
整備状況の評価
テスト
範囲の
拡大等
業務処理統制の
運用テストの評
価での不備
重要な欠陥に
なるかどうかの
判断
金額的
重要性の
検討
※補完統制も考慮
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1.内部統制報告書の様式と根拠法令
(1)
内部統制報告書の様式
• 第1号様式・
・
・
内国会社
• 第2号様式・
・
・
外国会社
• 第3号様式・
・
・
外国に提出している内部統制報告書
(2)
根拠法令
・「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内
閣府令」
(
最終改正:平成20年6月6日内閣府令第36号)
・
「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内
閣府令」
の取扱いに関する留意事項について(
内部統制府令ガイドライン)平成
20年6月 金融庁総務企画局
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2.内部統制報告書の記載項目
1 【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項】
a 代表者(及び最高財務責任者)が、財務報告に係る内部統制の整備及び運用の責任を有している旨
b 財務報告に係る内部統制を整備及び運用する際に準拠した基準の名称
c 財務報告に係る内部統制により財務報告の虚偽の記載を完全には防止または発見することができない可能性がある旨
2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】
a 財務報告に係る内部統制の評価が行われた基準日
b 財務報告に係る内部統制の評価に当たり、一般に公正妥当と認められる財務報告に係る内部統制の評価の基準に準
拠した旨
c 財務報告に係る内部統制の評価手続の概要
d 財務報告に係る内部統制の評価の範囲
3 【評価結果に関する事項】
a 財務報告に係る内部統制は行こうである旨
b 評価手続の一部が実施できなかったが、財務報告に係る内部統制は有効である旨並びに実施できなかった評価手続き
及びその理由
c 重要な欠陥があり、財務報告に係る内部統制は有効でない旨並びにその重要な欠陥の内容及びそれが事業年度の末日
までに是正されなかった理由
d 重要な評価手続が実施できなかったため、財務報告に係る内部統制の評価結果を表明できない旨並びに実施できなかっ
た評価手続及びその理由
4 【付記事項】
a 財務報告に係る内部統制の有効性の評価に重要な影響を及ぼす後発事象
b 事業年度の末日後に重要な欠陥を是正するために実施された措置がある場合には、その内容
5 【特記事項】
財務報告に係る内部統制の評価について特記すべき事項がある場合には、その旨及び内容を記載すること。
(内部統制府令 第1号様式 記載上の注意より)
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2.内部統制報告書の記載項目(2)
中小企業信用機構株式会社
日本和装ホールディングス株式会社
1 【財務報告に係る内部統制の基本的枠組み
に関する事項】
1 【財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する
事項】
a
b
c
代表取締役社長である西野達也は、財務
報告に係る内部統制の整備及び運用に責
任を有している。当社は、「財務報告に係る
内部統制の評価及び監査に関する基準」
及び「同実施基準」に準拠して、財務報告に
係る内部統制を整備運用している。
当社代表取締役社長山田重久は、当社及び連結
子会社(以下「当社グループ」)の財務報告に係る内
部統制の整備及び運用に責任を有しており、「財務
報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに
財務報告に係る内部統制の評価および監査に関す
る実施基準の設定について(意見書)」(企業会計審
議会 平成19年2月15日)に示されている内部統制
の基本的枠組みに準拠して、内部統制を整備及び
運用し、当社グループの財務報告における記載内
容の適正性を担保するとともに、その信頼性を確保
しております。
なお、財務報告に係る内部統制により財
務報告の虚偽の記載を完全には防止また
は発見することができない可能性がある。
なお、内部統制は、判断の誤り、不注意、複数の
担当者による共謀によって有効に機能しなくなる場
合や当初想定していなかった組織内外の環境の変
化や非定形的な取引等には必ずしも対応しない場
合等があり、固有の限界を有するため、その目的の
達成にとって絶対的なものではなく、財務報告の虚
偽の記載を完全には防止又は発見することができ
ない可能性があります。
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2.内部統制報告書の記載項目(3)
中小企業信用機構株式会社
2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事
項】
当社は、事業年度末日である平成20年8月31
a 日を基準日として、内部統制の評価を行った。
なお、決算日の変更に伴い基準日を3月31日か
ら変更している。財務報告に係る内部統制の評
価に当たり、わが国において一般に公正妥当と
れる財務報告に係る内部統制の評価の
b 認めら
基準に準拠した。
c
d
当社は、「第36期財務報告に係る内部統制の
整備及び運用状況の評価に関する計画書」(平
成20年6月25日取締役会報告)に基づき、全社
的な内部統制の整備及び運用状況を評価し、
当該評価結果を踏まえ、評価対象となる内部
統制の範囲内にある業務プロセスを分析した
上で、財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼ
す統制上の要点を選定し、当該統制上の要点
について内部統制の基本的要素が機能してい
るかを評価した。
日本和装ホールディングス株式会社
2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】
当社代表取締役社長山田重久は、平成20年12月
31日を基準日とし、一般に公正妥当と認められる財
務報告に係る内部統制の評価の基準に準拠して、
当社グループの財務報告に係る内部統制の評価を
実施いたしました。 なお、当社は営業管理と損益
管理の一体化を図り業績予想の精度を高めるととも
に、投資者の判断にとって的確な情報を提供するこ
とを目的に、決算期を4月30日から12月31日に変更
いたしました。これに伴い、評価の基準を平成20年
12月31日としております。
評価の範囲は、当社グループについて財務報告
の信頼性に及ぼす影響の重要性の観点から必要な
範囲を評価の対象といたしました。
財務報告全体に重要な影響を及ぼす内部統制
(以下「全社的な内部統制」)及び決算・財務報告に
係る業務プロセスのうち、全社的な観点で評価する
ことが適切と考えられるものについては、すべての
事業拠点について評価の対象とし、評価対象となる
内部統制全体を適切に理解及び分析した上で、関
係者への質問、記録検証等の手続を実施すること
により、内部統制の整備及び運用状況並びにその
状況が業務プロセスに係る内部統制に及ぼす影響
の程度を評価いたしました。
(C) 2009 J-SOX Research Institute, Ltd.
2.内部統制報告書の記載項目(4)
中小企業信用機構株式会社
2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する
事項】 (つづき)
財務報告に係る内部統制の評価の範囲に
ついては、財務報告の信頼性に及ぼす影響
の重要性の観点から、必要な範囲を財務報
告に係る内部統制の評価範囲とした。当該評
価範囲を決定した手順、方法等としては、財
務報告に対する金額的および質的影響の重
要性を考慮し、全社的な内部統制の評価結
c 果を踏まえ、業務プロセスに係る内部統制の
評価範囲を合理的に決定した。重要な事業
拠点を選定する際は、営業収益を指標とし、
概ね2/3を一定割合としている。当該重要な
事業拠点における企業の事業目的に大きく
受取保証料、
d 関わる勘定科目は受取利息、
営業貸付金及び前受収益である。また、財務
報告への影響を勘案して、重要性の大きい
特定の取引または事象についても個別に評
価対象とした。
3 【評価結果に関する事項】
上記の評価手続を実施した結果、平成20年
8月31日現在の当社の財務報告に係る内部
統制は有効であると判断する。
日本和装ホールディングス株式会社
2 【評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項】 (つづ
き)
また、業務プロセスについては、財務報告に対する金
額的および質的影響の重要性を考慮し、上記の全社的
な内部統制の評価結果を踏まえ、連結売上高を指標に、
そのおおむね2/3程度の割合に達している事業拠点を重
要な事業拠点として選定し、それらの事業拠点における、
当社グループの事業目的に大きくかかわる勘定科目、す
なわち「現金及び預金」「営業未収入金」「前受金」「営業
預り金」「売上高」「売上原価」に至る業務プロセスを評価
の対象といたしました。さらに、財務報告への影響を勘案
して、重要性の大きい業務プロセスについては、個別に
評価の対象に追加いたしました。評価の対象とした業務
プロセスについては、それぞれのプロセスを分析した上で、
財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす統制上の要点
を選定し、関連文書の閲覧、当該内部統制に関係する適
切な担当者への質問、業務の観察、内部統制の実施記
録の検証等の手続を実施することにより、当該統制上の
要点の整備及び運用状況を評価いたしました。
3 【評価結果に関する事項】
上記の評価の結果、当社代表取締役社長吉田重久は、
平成20年12月31日現在における当社グループの財務報
告に係る内部統制は有効であると判断いたしました。
(C) 2009 J-SOX Research Institute, Ltd.
2.内部統制報告書の類型と監査意見
5年以下の懲役
もしくは500万円
以下の罰金又は
併科
NO
内部統制
報告書を
提出?
YES
意見不表明
あり(重大な範囲、手続の漏れ)
評価範囲、
手続は適
切?
NO
※1
虚偽記
載?
YES
虚偽記
載?
なし
あり ※2
やむをえ
ない事
情?
なし
あり
限定付適正意見(範
囲に関する除外事項)
あり ※2
なし
不適正意見
無限定適正意見
限定付適正意見(意
見に関する除外事項)
※1 評価を完了できず、結果表明
できない状態を含む。
※2 重要な欠陥の不記載を含む。
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(C) 2009 J-SOX Research Institute, Ltd.
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