「よく死ぬことはよく生きること」(一部改) 医療は病気や怪我を治すもの

「よく死ぬことはよく生きること」(一部改)
医療は病気や怪我を治すものです。
しかし、現在の医療でも治せない病気は未だ数多くあります。それは無くならないものなのです。医
療は終末期に“治す”選択肢だけを与えればいいのでしょうか。それだけではないと私は思います。
終末期には、患者がよき人生を送れるよう、自らの最期の選択肢が与えられるべきではないでしょう
か。
病気と最期まで戦う延命治療も
延命治療を行わずに死を迎える尊厳死も、
薬の投与によって死を迎える安楽死も、
自らの最期の選択肢として保証されるべきなのです!!
(現状分析)
では日本における終末期医療の現状はどのようになっているでしょうか。
現行の法案で終末期とは、「患者が傷病について行い得る全ての適切な医療上の措置を受けた場合であって
も、回復の可能性がなく、かつ、死期が間近であると判定された状態にある期間」のことです。
まず、患者の医療に関して。
回復の見込みが低い末期癌だけでも年間 20 万人の人が亡くなっています。
そして癌などを患う患者の中で、延命治療確認をされたのは、わずか 15%ほどであります。
多くの人が希望の確認をとられず自分の意思に沿った医療が受けられておりません。
そして、終末期医療患者のうち、延命治療を望んでいるのはわずかです。
しかし、安楽死を選べるとしたら安楽死を選ぶという人が 75%もいるのです。
(原因分析)
では今まで尊厳死の法制化が認められていない原因はなんでしょうか。
それは、反対する意見が根強いためです。
尊厳死、安楽死に反対する意見は大きく次の2点になります。
一つ目、尊厳死は法制化になじまない
二つ目、安楽死は自殺幇助の恐れがある
というものです。
それぞれに関して説明させて頂きます。
一つ目、尊厳ある死かどうかを判断するためには、患者本人の意思に基づいていることを確認する必
要があります。
現在、リビングウィルという意思表示の手段があります。
これは、自分の命が不治かつ末期の場合に、延命治療を望むか望まないかを示すものであります。
しかし、自らの望む治療の内容を書面化している人はわずか3%。
それは、現行のリビングウィルが患者の意思を正確に反映できたものなのか信頼性が低いという課題
があるからです。
現在のリビングウィルは民間団体のみが作成しているものです。
このように、法律上位置づけられていないために、統一された書式が存在せず、法的な意思表示とし
て認められていません。そのため、現行のリビングウィルでは、それを基に尊厳死できるかどうかは
医者の判断に委ねられているのです。
二つ目。現行の法制度では、医療従事者が患者に死をもたらすことは自殺幇助とみなされてしまうの
です。
現在の法制度では、医者による延命治療の停止に関して明確な規定がありません。
そのため、たとえ患者がリビングウィルで延命治療の停止を望んでいたとしても、医者は自殺幇助の
罪を着せられてしまう可能性があるのです。
患者や家族の苦悩を見続け、家族から懇願された医師が、個人の判断で尊厳死を行い、刑事罰を受け
る事例が日本にはあるのです。
実際に。2006 年に富山県の病院で尊厳死を実施した医者が自殺幇助で捕まっているのです。
たとえ、それが尊厳死のためであっても患者の寿命を縮めることが許されないのです。
だからこそ、医者は延命治療を続けてしまうのです。
命ある限り精一杯生きようとすることが人間のあるべき姿だという意見もあるかもしれません。
医療機器に頼らず自然に死ぬという考えもあるでしょう。
しかし果たしてそうでしょうか!
気管や胃にチューブをとりつけられ、栄養を投与され続け、ただ生かされ、死を待つしか出来ないの
が、人間なのでしょうか!
いいえ、それだけが人間の姿ではありません。
人間は自分の考えで生き、死ぬ権利を持つべき存在なのです!
(政策)
そこで私は、次の2点の政策を提案します!
一つ目、リビングウィル制度の全国民への通知
二つ目、尊厳死と安楽死の法制化
一つ目は、国がリビングウィルの正式な書式を定め、それ全国民へ通知するというものです。
これは 15 歳以上の国民を対象にリビングウィルの通知をします。
これは、郵送により通知を行います。
また、全ての中学校において卒業までにリビングウィルに関する説明会を開きます。
これらによって国民に周知できます。
さらに、その後も定期的に意思を確認するための通知を行います。
これにより全ての国民が自分の意思を表明するための機会を担保することができるのです。
もちろん、自分の意見が変わった場合、いつでもこれを取り消したり変更することが出来るものとしま
す。
二つ目の尊厳死と安楽死の法制化。
現在では明確な規定がありません。
そこで、明確な尊厳死と安楽死にまつわるガイドラインを作成した上で、法制化を実施します。
尊厳死と安楽死を選択する条件として明確なガイドラインを設けることで、自殺幇助で医師が起訴さ
れるといったリスクを無くすのです。
ここにおける条件として次の4点を明記します。
一点目、患者が今後耐えがたく終わりのない苦しみを被ることになること、
二点目、健康時に書いたリビングウィルにより自発的な死にたいという欲求が確認されていること、
三点目、医師も患者も他に解決策はないと納得していること、
四点目、主治医以外の医者からも意見が得られ医学的に適切な仕方で生が終わること、
以上4点の条件を満たしている場合、延命治療をしないという尊厳死、または薬の投与により安楽死
が認められるようにします。
以上の条件を満たしていることで、自殺幇助を防ぐとともに、医療現場の専門家の対応した上で、患者の認
められるべき選択であると判断が可能なのです。
(締め)
死というものは決して生から切り離されたものではありません。死を自覚することで自分がどう生
きるかを考えることができるのです。
この会場にいる皆さんの中からもいつか死に直面するでしょう。
みなさんはそれが遠い将来のことだと考えてしまうかもしれません。
でも、もし、あなた自身に、ご家族に、その時がきたらあなたはどうしますか?
自らの意思で、よりよい生き方を、あるいは死に方をしたいと思ってもその時には遅いのです。
私のこの弁論によって1人でも多くの方が尊厳死と安楽死について考えてもらえたら弁士冥利に尽
きます。
ご清聴ありがとうございました。