アメリカで学びたいこと 近畿大学 遠藤つぐみ 私は両親とも日本人ですが、ウエールズで生まれ、ロンドン郊外の町で 15 歳まで育ちまし た。両親は、私に日本人としてのアイデンティティを確立してほしいと家庭内での日本語教育 に精を出してくれ、私自身も日本の学校で学びたいという希望があって、東京の高校に逆留学 しました。 親と離れてひとり日本で寮生活をし、大学は近畿大学の農学部に進みました。将 来的にはイギリスで培った英語とグローバルな視野を活かし、日本で学びえた農学の知識を持 って、海外で活躍できる、世の中で役に立つことのできる日本人になりたいと思っています。 そんな希望を抱いていた私に、今回のアメリカ行きの話がとびこんできました。そこで私は このチャンスにアメリカで、以下のような三点を中心に学びたいと思いました。 そのひとつは、日本人がどういうふうに海外で活躍しているかです。私は、帰国子女であ り、英語の方が日本語より堪能な日本人です。高校は帰国子女ばかりで、同じように外国語を 活用し、国際的に働きたいという夢をもつ友人が多くいました。しかし、 「国際的に働きたい」 と言っても、具体的にどのように夢にたどり着くのかがよくわかりません。そこで、アメリカ に行き、様々な分野で活動している日本人に会って、具体的な方法を聞き、刺激を受けるのは 大変有用ではないかと思うのです。 アメリカで学びたいことの2つ目は、アメリカでのボランティアやNPOなどの非営利的活 動についてです。またそういう活動の基となるキリスト教精神に基づいた博愛主義といった文 化、社会面での理解を深めたいということです。 私はイギリスの教会に行っていたので、ボランティア活動にとても興味があります。イギ リスでは宗教にかかわらず、困っている人を助けるのは当たり前であり、ボランティアは特別 なことではありません。しかし日本に来て、大学生のセミナーやボランティア活動への参加状 況を見ると、驚くような点がいくつかありました。そのなかで最も印象に残ったのが、ボラン ティア活動に参加することによって、就職を有利に進めようとしたり、大学の単位を取得する ことだけを目的としている学生がいたことです。 昨年、私はフィリピンで行われた、貧民街の子供を助けるボランティア活動に他の日本人 大学生たちといっしょに参加しました。そこでは、助けを求めている人がいるのに、指示され るまで動かない学生や、計画を発表しながら実行しない学生がいました。またボランティアを 経験させようとする旅行会社もその問題の責任の一翼を担っています。せっかく日本にもボラ ンティアという言葉が普及してきたのに、そういったボランティアを自分のために利用しよう とする学生やボランティア活動という名でビジネスを行い、利益のことだけを考える企業の姿 に、ボランティアの本来の意味が消えそうで残念に思います。そこでアメリカという日本より 大きく複雑で、銃社会が存在するような、ある意味で怖い国で、ボランティア活動やNPOの ような非営利活動が実際にどのように存在しているのかを知りたいのです。 3 つ目は自分の興味の分野である、 「食料問題と環境問題」について、アメリカではどうい った取り組みがなされているかを知りたいと思います。 現在、私は大学で環境問題に関して勉強しており、特に食糧問題に興味を持っています。 日本語には「もったいない」という英語には存在しない言葉を有しているにも関わらず、毎日 のように、まだ食べられる食品を廃棄し、世界中の顰蹙を買っています。世界には食料不足で 餓死するような子供がたくさんいるのに、日本ではまだまだ食べられる食品が捨てられ、フー ドバンクなど食品をリサイクルする団体も作られていますが、まだまだ効果的な活動はできて いません。 一方、アメリカの食糧問題も同じようなのかと調べてみると、またアメリカにはアメリカの 抱える問題があることがわかりました。アメリカではファーストフードが普及し、野菜より手 に入りやすい地域が多くあります。それが肥満と健康被害の問題に繋がっています。また最近 話題の遺伝子組み換え食品もアメリカが発端であり、そういった合成食品が普及している問題 をアメリカはどう捉えているのでしょうか。アメリカのスーパーでのフェアトレード商品や遺 伝子組み換え食品の比率なども気になります。 以上が私がアメリカで学びたいと考えていることです。さらに私は大学院進学を考えており、 候補にアメリカの大学院も視野にいれています。アメリカに行き、現地の日本人の方から直接 アメリカでのお話をうかがえれば、これからの自分の未来予想図を描くにあたって大いなるガ イドラインになることでしょう。またアメリカの人々、環境、文化に直接触れて、大いなる刺 激を受け、将来は日本と世界を繋ぎ、社会に貢献できる人間になれるように成長していきたい と思います。
© Copyright 2024 Paperzz