抄録③ 「すっきりさわやか、汚染防止に向けて」 ∼排泄汚染を最小限にするための取り組み∼ プライムケア桃花林 大槌美和子 1、はじめに プライムケア桃花林2階は、通所リハビリ数 20 名、一般入所、短期入所者数 53 名のフロア である。利用者の日常生活動作は約 2/3 が全介助、約 1/3 が一部介助を要し、オムツを全員が 使用している。要介護度 4 から 5 で、ほぼ寝たきり状態である。 介護行為の中でオムツ交換は、最も重要な仕事のひとつであり、定時の交換は、10 時、15 時、 20 時、0 時、4 時の 5 回と利用者が排泄を訴える時に実施している。汚染した下着、衣類など をすべて家族が持ち帰り、洗濯をする、このことが当たり前になっていた。しかし、家族より 以下の意見が聞かれた。 ①「入所していると、汚れ物が多い」 ②「オムツ交換を、きちんとやってくれているの」 ③「オムツ交換の手を抜いているの」 ④「家では排泄汚染がないのに」 私達は、山のように積み重なった排泄汚染の下着、衣類の量、洗濯を行なう回数など、大変 な家族の負担を全く把握せず、また、介護のプロとしての責任や、自覚が喪失していたことを 痛感した。今回、惰性となっていた排泄汚染に対する私達の意識の改革を試みたので報告する。 2、経過 従来、排泄による汚染は、スタッフが清拭や着替えを行い、洗濯物として家族に持ち帰って もらっていた。しかし、それでは家族の負担が多くなるだけでなく、施設側の介護の質を問わ れ、苦情につながるのではないかと考えた。 排泄汚染を把握するために、チェックリスト表を作成し、毎日スタッフに協力してもらい、 排泄汚染が見られた場合、チェックリスト表に記入をして半年間のデータを集めた。 2 ヶ月間のデータで排泄汚染者1ヶ月平均 47 名、回数が 141 回と把握できた。さらに詳し く、データを収集するために時間、原因、対策が把握できるチェックリスト表に平成 17 年 7 月 21 日から変更をした。その結果、どの利用者が、どの時間帯で、どういう原因で汚染した かが容易に分かるようになった。 3、汚染実態の分析 チェックリスト表の分析結果、下記のような実態が把握できた。すなわち、 ・排泄汚染による、洗濯物が増え、家族からの苦情がくる ・オムツいじりによる排泄汚染 ・オムツの当て方による排泄汚染 ・尿量が多い利用者の排泄汚染 ・便による排泄汚染 などである。 これらの問題点を解決するため、平成 17 年 9 月 1 日より個別汚染チェックリスト表を作成 した。問題となる排泄汚染を考え、利用者にあった対策をカンファレンスで担当職員と検討し た。個別に取り組むことにより、排泄汚染が少しづつではあるが減少傾向が見られたため、毎 月のフロアカンファレンスで集計した排泄汚染回数と原因の報告を行った。以下、特異な事例 を紹介する。 4、事例と対応 T・Sさん 68 歳 男性 要介護度 4 入所時より、オムツ使用で、定時の交換を行なっていたが、尿量が多く、便汚染も続いてい た。 この事例に対して、以下 3 つの試みを順次行った。 ① 「パット男当て」の試み 尿・便汚染回数は 25 回 ② 「オーバーナイト男当て」の試み 尿・便汚染は 15 回に減少したが、汚染をなくすことはできなかった。 ③ 「オーバーナイト 2 枚当て」の試み 尿・便汚染回数は 10 回に減少した。 開始時は毎日排泄汚染があったが、個別に取り組んだことにより、半年後には、尿汚染は著 しく減少したが、便汚染は変わらなかった。便汚染については、現在も排便のコントロールを 行っている。 その結果、利用者の表情も明るくなり、尿意、便意を訴えるしぐさが見られるようになった。 5、考察とまとめ 上述した試みを他の事例 件にも行った結果、開始時 141 件あった排泄汚染が半年間で 2/3 の 96 件まで減少した。それに伴い、家族から以前に比べて洗濯物が少なくなったとの声や、 どのようなオムツの当て方をしているのかなどの声も聞かれるようになった。 最も大きな課題であったオムツいじりによる排泄汚染は、陰部清拭回数を 1 日 1 回から 2 回 に増やしたことにより、利用者からも気持ちが良いという声も聞かれ、オムツいじりの減少に つながった。スタッフも排泄汚染に対する意識の変化が見られ、現在もチェックリスト表に記 入することにより、適切な対応が出来るようになった。 排泄汚染を最小限にするための取り組みによって、介護のプロとしての責任や自覚によるス タッフの意識の変化が見られ、汚染防止へとつながったことが実感できる。 今後も、この取り組みを継続していき、利用者・家族に快適に過ごしてもらえる施設作りを 行っていきたい。
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