FX 月間見通し-概観 2013 年 11 月 1 日 This material should be regarded as a marketing communication and may have been produced in conjunction with the RBS trading desks that trade as principal in the instruments mentioned herein. ボラティリティが粉砕された世界での予想修正 グローバル金融市場全体でボラティリティが長期にわたって抑え込まれている。米国の FRB は、無制限の量的緩和プログラムの「縮小」を開始する時期について迷っている。 より重要なのは、米国の FRB やイングランド銀行が、QE に関連した債券購入の縮小(英 国の場合は終了)は引き締めと同じことではまったくなく、政策の引き締めは依然とし て遠い将来のことであるということを市場に納得させようと努めていることである。引 き締めが開始されれば、我々はそのペースが非常に緩慢なものになる可能性が高いとい うことを、金融当局に更に(常時)確信させられる。そしてそのまま、市場は低いコン ビクション、低い出来高、低い流動性、低いボラティリティ、無気力という霧の中を彷 徨うことになる。 主要な資産クラスの中でもとりわけ通貨はそれが慢性的なものとなる。 通貨市場をこの冬眠から揺り動かすのはなにかを見極めるのは難しい。賃金圧力は抑 え込まれたままなので、インフレ率が大きく上昇する見込みはほとんどない。実際、 FRB はディスインフレのリスク、すなわち目標とするインフレ率に達しないリスクに 再び着目する可能性が高い。マネーサプライの循環速度が非常に低く、貨幣乗数は引 き続き過去最低の水準を彷徨っているためである。次期 FRB 議長イエレン氏(追認が 必要)が慢性的な米国の失業率の問題について懸念しており、彼女がそれを構造的な 性質のものではなく循環的な性質のものであり、循環的(すなわち金融的)な政策で 処理することができると考えていることを弊社は認識している。一方、ユーロ圏の総 合インフレ率は 1%以下へと急激に低下し、直近のデータでは前年比 0.7%という過去 最低水準となった。ディスインフレ(またはデフレ)のリスクが欧州に蔓延している。 今年のほとんどの時期、弊社は通貨予想を通して強いドルというストーリーを述べてき た。そのベースとなったのは、(i) FRB による QE 終了の開始、(ii) ユーロ圏の緊張やひ ずみの再燃、(iii) FRB に比べてよりハト派的なイングランド銀行、(iv) 資本コストの上昇 に脆弱ないくつかのエマージング市場通貨に対する圧力、などについての期待である。 これらの前提のいくつかは崩れているため、現実を早急にチェックし、予想の修正を 行なうべきであろう。 年末が近づいているが、FRB による QE の縮小開始時期に関する議論は依然として続 いている。コンセンサス(および弊社独自の見解)では 2014 年 3 月である。だが 9 月に縮小の決定がなされなかったことから、(非常に)お馴染みの FRB による低金利 の長期化がまだ続くということを根拠にして国際的なドルリスクがすぐさま高まった ことは明らかである。 1 月時点と比べて疑わしくなってきた弊社の 2 つの見解のうち 1 つはユーロ圏の緊張や ひずみの再燃についての見通しであり、もう 1 つは金融政策(よりハト派的なイング ランド銀行)からも窺える英国経済の循環的なアンダーパフォーマンスに対する予想 である。 Contacts: David Simmonds Head of Currency Strategy +44 20 7085 2455 [email protected] www.rbsm.com/strategy FX 月間見通し-概観 ユーロ圏について 1 月に弊社が懸念したことのいくつかは現実のものとなった。すな わち、イタリアにおける重要な改革モメンタムが政治的な混乱および停滞に陥ること、 単一通貨ブロック(キプロス)内での資本統制、ギリシャの第 2 次救済において債務 の持続可能性を巡る計算が政治的に誇張されたことに対する IMF の是認、コア部と周 縁部の間の失業率格差の更なる拡大、などである。だがこれらはいずれも市場にとっ て現実的な問題とならなかった。より圧倒的な注目を集めたのは、金融状況の大幅な 緩和に対する遅れた反応として現れてきたユーロ圏 PMI の改善、スペインなどにおけ る景気後退の終焉、豊富な流動性とキャリー志向がもたらした周縁部の債券市場にお けるスプレッドの縮小、FRB のバランスシートが拡大し続ける一方で ECB のバランス シートが縮小してきたことなどである。年末までは ECB と FRB のバランスシートの 乖離が更に広がり、最近における幸福感に満ちた周縁部の利回りの低下とスプレッド の縮小が更に続くと弊社は予想している。したがって弊社は、目先的にはユーロ/ドル 相場が 1.40 を上回る水準に達する可能性があると、予想を修正する。 1 月時点の弊社の考えに対するもう 1 つの大きなサプライズとなったのは、英国経済の アウトパフォーマンスである。年初時点では 2013 年中に PMI やその他のサーベイ結 果が異常なほど反発するとは予想していなかった。またそれに関連して、英国の成長 回復に、「Help to Buy」スキームを通じて住宅市場に火をつけるという政治的な決定 が寄与することになるとも予想していなかった。イングランド銀行は QE の更なる延 長について実質的に議論する必要はなくなり、その代わりにカーニー新総裁はイング ランド銀行独自の政策「ガイダンス」の主導に焦点を当てることが可能になった。弊 社は、英国の実体的な経済指標がサーベイ結果の強さを確認できるものとなるかどう かについて深刻な疑いを抱いている。また英国の家計債務のレバレッジ解消までの道 のりがまだ遠い先であることについても懸念している。簡単に言えば、2014 年の英ポ ンドにはリスクがある。だが弊社は、2013 年後半の現実に合わせて予想を更に修正し なければならない。 弊社が依然として強く感じているのは、いくつかのエマージング市場通貨の資本コス トの上昇に対する脆弱性である。9 月には FRB による縮小の決定がなかったことにつ いての熱狂があり、米国債(価格)が激しく上昇したにもかかわらず、10 年物の実質 利回りは今年序盤(それまで何年にもわたり激しく低下してきた)に比べて依然とし てかなり高い水準にあり、もはやマイナス(過去数年間そうであった)ではない。資 本コストが上昇している状況では、対外赤字を抱える国の通貨は、他の国の少ない高 価な余剰貯蓄を獲得するための争いをしなければならない。これらの国の多くでは実 質金利の上昇を余儀なくされる可能性がある。あるいはこれらの国の通貨が実質的な 価値の低下を余儀なくされるかもしれない。資本コストが上昇している状況では、他 に類を見ないような規模のポートフォリオ資金の流入に晒されている国の通貨につい ても懸念される。弊社はまた、米国の実質金利が「かつてないほど割安で、かつない ほどマイナス」だった往時の世界で安心感に浸って最も多くのドルを借り入れたのは 誰であったのかについても依然として着目している。資本コストが上昇している状況 では、それら最大の限界的な借り手が最も脆弱性を示す可能性がある。以上のような 懸念がある中、弊社は、トルコリラ、南アフリカランド、インドネシアルピア、メキ シコペソ(特にポートフォリオの観点から)、アジア通貨の一部、豪ドルについて心 配している。 欧州通貨の詳細な見通しについては ここをクリックしてください。 北中米通貨の詳細な見通しについては ここをクリックしてください。 アジア太平洋通貨の詳細な見通しについては ここをクリックしてください。 Page 2/30 FX 月間見通し-概観 Forecast summary table, end of period 対円相場 USD EUR GBP CAD AUD NZD ZAR TRY BRL 対ドル相場 GBP* CHF AUD* NZD* CAD ZAR TRY RUB SGD MYR THB TWD HKD KRW IDR INR CNY PHP MXN BRL COP ARS CLP 対ユーロ相場 USD GBP DKK CHF SEK NOK CNY PLN CZK HUF RON Source: RBS Trading Strategy 1/11/2013 Q4:13 Q1:14 Q2:14 Q3:14 98.8 133.2 155.7 99.9 100.3 83.7 10.7 55.4 50.3 1.591 0.913 0.943 0.823 1.044 10.172 2.018 32.38 1.244 3.17 31.24 29.44 7.75 1061 11335 61.73 6.1 43.21 13.08 2.25 1902 5.92 516 1.349 0.848 0 1.231 8.82 8.06 8.23 4.2 23.5 297 4.44 98.0 136.2 153.3 104.0 100.9 84.4 11.1 56.6 54.2 1.628 0.881 0.95 0.83 1.04 10.3 2.1 31.56 1.24 3.16 33 30 7.8 1070 11800 60 6.11 43 12.8 2.2 1900 5.75 500 1.39 0.854 0 1.225 8.68 7.95 8.49 4.2 26.5 295 4.4 100.0 137.7 154.7 107.1 99.8 84.7 11.3 57.7 52.5 1.62 0.886 0.9 0.8 1.05 10.3 2.13 31.18 1.25 3.2 34 29.9 7.8 1065 12000 59 6.08 43.5 13 2.26 1920 5.96 500 1.377 0.85 0 1.22 8.62 7.75 8.37 4.18 26.5 300 4.35 105.0 138.6 160.1 110.0 102.3 87.7 12.0 60.8 55.0 1.571 0.924 0.8 0.75 1.06 10.2 2.1 32.07 1.24 3.22 33 29.8 7.8 1060 11500 58 6.05 43.2 13 2.27 1950 6.25 510 1.32 0.84 0 1.22 8.6 7.6 7.99 4.15 26.5 305 4.35 110.0 140.8 164.5 113.1 100.8 87.1 12.2 62.2 54.6 1.552 0.961 0.83 0.75 1.06 10.2 2.05 32.07 1.22 3.25 32.5 29.7 7.8 1055 11000 57 6.02 43 12.5 2.28 1980 6.57 515 1.28 0.825 0 1.23 8.3 7.35 7.71 4.15 26.5 305 4.35 *Currency at head column per currency at end of row Page 3/30 This material should be regarded as a marketing communication and may have been produced in conjunction with the RBS trading desks that trade as principal in the instruments mentioned herein. FX 月間見通し-円 2013 年 11 月 1 日 円の次の動きは予測困難 日本の食品とエネルギーを除いた インフレ率は徐々に上昇しているが、 なお横ばい圏内を脱していない Source: Bloomberg UK 2.2% US 1.2 Euro 1.0% Japan 0.0% 4 3 2 1 0 -1 -2 01 03 05 07 09 11 13 日本の賃金の伸びは依然ゼロを下回って いる Source: Bloomberg USA ECI 1.9% Eurozone LCI 0.9% UK AHE ex-bonus 3mth-yoy 0.8% Japan Cash Earn 3mth-yoy -0.1% 6.0 4.0 2.0 米ドル/円相場は、2012 年の 11 月から 2013 年の 5 月にかけて 80 を下回る水準から一 時は 103 を超える水準まで急速に上昇したが、その後は再びレンジ相場に落ち着き、 レンジ水準も数ヵ月間低下が続いた。10 月のレンジは 97~99 だった。弊社では引き 続き、これを今年初めの急速な上昇からの値固めと見ているが、長期的には相場は最 終的に 110~120 に向けて、もう一段上昇すると思われる。ただ、米国の FRB が QE 政策の縮小スタンスを後退させ、財政政策を巡る議会内の対立にも明確な終わりが見 えなくなっていることで、次の大きな動きは見通しにくく、その時期もまだ先のよう だ。米ドルの弱さが続き、エマージング市場と中国市場、そして経済の安定に対する 懸念も残る中、米ドル/円相場はレンジの下限まで下落した。 日銀と日本政府は今のところ、この 1 年間で進めることのできた政策緩和に満足して おり、中期的に 2%としているインフレ率の維持に向けた進捗も確認できる状況にある。 また、来年 4 月 1 日の消費税率の 5%から 8%への引き上げ実施に必要な下準備も整え ることができた。ただ、引き上げを円滑に実施するための短期的な財政刺激策は検討 されているものの、課題が多いことは明らかで、長期的には円安という結果を避けら れないだろう。円が大幅に上昇するようであれば、それに対処すべく政府の発言や日 銀の政策が出てくるものと思われる。 米ドル/円相場がもう一段上昇する状況が生まれるためには、インフレ心理を定着させ る必要があるが、その実現に向けては賃金が伸びることが不可欠だろう。ただ、そう なれば実質利回りが低下するとともに輸入が増加し、貿易赤字が一層拡大しやすくな る。それ以外では、FRB が金融政策の正常化に着手することが求められるが、いずれ にせよしばらく先の話だろう。したがって、弊社では、米ドル/円相場は来年の第 2 四 半期までほぼ横ばいで推移すると予想する。 現時点では、日本の潜在インフレ率はゼロ近く(総合で前年同月比 1.1%の上昇、生鮮 食品を除いたベースで 0.7%の上昇、食品とエネルギーを除いたベースで 0.0%)で、 賃金の伸びは依然、マイナスの水準(8 月は前年同月比 0.9%の減少)で推移している。 Greg Gibbs 0.0 -2.0 RBS FX Forecasts -4.0 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 USD/JPY 98.8 98.0 100.0 105.0 110.0 EUR/JPY 133.2 136.2 137.7 138.6 140.8 GBP/JPY 157.2 159.5 162.0 165.0 170.7 -6.0 01 03 05 07 09 11 Contacts: Drew Brick Head of Market Strategy, Asia-Pacific +65 6518 6160 [email protected] 13 Greg Gibbs Senior FX Trading Strategist + 65 6518 5770 [email protected] Qi GAO Market Strategy, +65 6518 5481 +65 6518 5090 [email protected] www.rbs.com/strategy 豪ドルおよびニュージーランド・ドル 豪ドルおよびニュージーランド・ドル 乳製品と金属 オーストラリアとニュージーランドの経 常赤字。GDP の約 4%に達していること がニュージーランド・ドルの上値を抑え ている要因と思われる Source: Bloomberg, ABS, SNZ, RBS Australia その一方で、豪ドルは 10 月最終週になって下落しているが、これは中国の財政安定や 成長に対する懸念の再燃を受けた動きのように思われる。また、市場は依然、米国の 緩和縮小も警戒しており、エマージング通貨や商品通貨が今年、特に緩和縮小が取り ざたされていた 5 月から 8 月にかけてさえないパフォーマンスとなったため、再びそ れらに関わることには消極的だ。 New Zealand 0 豪ドルにとっては、米国の FRB による緩和方向の政策や英国と日本、ユーロ圏の景気 動向がより堅調になっていることを含めた年央以降の世界経済の成長見通し改善、や はり年央からの中国の回復、そしてエマージング市場の一段の落ち着きが当面、追い 風になるだろう。オーストラリアの消費者と企業のマインドは 9 月 7 日の選挙以降改 善しており、住宅市場も拡大が続いている。こうしたことで、オーストラリア中銀が 前回 8 月に金利を過去最低水準の 2.5%に引き下げて以来、残っていた利下げ期待の多 くがしぼむとともに、豪ドルの利回り面での優位性が回復している。 -2 -4 -6 中国は経済指標こそ年央以降改善しているものの、鋼材価格は年央につけた安値水準 まで落ち込んでおり、株式もこのところの取引でアンダーパフォームしている。また、 中国の金利はすべての期間で上昇しているが、これは信用拡大を抑制するための中国 政府による新たな取り組みが背景だろう。 -8 -10 -12 00 02 04 06 08 10 12 さまざまな要因が影響を及ぼし合っていることを受け、弊社では短期的な予想を中立 的とする一方で、1 年先の予想については米国の景気回復見込みや結局は始まるであろ う QE 縮小、足元でのオーストラリアの資源セクターに対する投資の低迷を反映させ る。 乳製品を中心とするニュージーランドの 商品価格の高騰がニュージーランド・ド ルの下支え要因になっている Source: Bloomberg, ANZ, RBS ANZ NZ commodity prices rhs NZD/USD lhs 230 210 190 170 150 130 110 90 70 0.95 0.85 0.75 0.65 0.55 0.45 0.35 00 02 04 06 08 10 12 ニュージーランド・ドルは、内需の伸びを示す証拠が下支え要因になっている。建設 セクターが主導した景気回復は、今では裾野が一段と広がっている。ニュージーラン ド中銀は住宅市場の抑制に向け、ローン資産価値比率の高い住宅ローンを対象とする 融資規制を導入したが、利上げの公算が大きいことに変わりはなく、それはおそらく 来年の第 2 四半期までには実施されよう。乳製品価格は今年の新高値水準まで高騰し ており、より裕福になっている中国やアジア諸国における消費パターンが、特にこれ まで以上の乳製品摂取を含めたより高タンパクの食事へと移行する中、金属価格より はるかに底堅く推移しよう。 ニュージーランド・ドルは今年、既に豪ドルや大半の商品通貨を大きくアウトパフォー ムしており、ニュージーランドの利上げ見通しは概ね織り込み済みと思われる。ただ、 乳製品の交易条件が金属の交易条件よりも一段と有利になると見込まれるため、ニュー ジーランド・ドルには来年、若干ではあるもののさらにアウトパフォームする余地が ありそうだ。 ニュージーランド・ドルにとっての足かせ要因は、依然として GDP の 4%を超える経 常赤字である。 Greg Gibbs RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 AUD/USD 0.943 0.950 0.900 0.800 0.830 NZD/USD 0.823 0.830 0.800 0.750 0.750 AUD/NZD 1.147 1.145 1.125 1.067 1.107 Page 5/30 アジア アジア 差異が表面化 概観 イベント・リスクや FRB の緩和縮小が一服してることは、季節的要因やキャリーがプ ラスに働く場面でアジア通貨が短期的に上昇することを示している。5 月の終わりから 8 月にかけて一段と苦境に立たされていたアジア通貨の多くは、この数週間米ドルに対 して大きく回復している状況だ。 シンガポール通貨庁(MAS)は、先日開催された半年に 1 度の政策会合の後、シンガ ポール・ドルの上昇は「アジア通貨が対米ドルでやや下落していること」を受けての ことだと発言したが、弊社では、シンガポール・ドルは許容変動幅の上方に向かって 推移すると予想する。そうした動きの一部は、今後数日から数週間のうちに見られる 可能性がある。インド・ルピーは、インド中銀(RBI)が原油の輸入企業に対する米ド ルの供給手段を利用できるようにしている限り、上昇が続くだろう。 人民元の変動許容幅拡大については、引き続き注視している。弊社では以前、この「FX 月間見通し」の本項で、当局が意図的に米ドル/人民元のスポット相場、すなわち米ド ル/人民元のノンデリバラブル・フォワード(NDF)相場を、現在プラスマイナス 1% としている変動許容幅を低いベースから大幅に高い水準に再設定するに先立って下落 方向に誘導するという「グラッシー・ノール(草深い丘=ケネディ大統領暗殺事件に 関して取りざたされているような政府関与)」理論について紹介した。弊社がオフショ ア人民元のボラティリティ購入を選好していることに変わりはなく、その水準はここ 数日間で上昇しつつあるとは言え、なお低い状態にある。 中国や韓国、台湾などではこの数ヵ月間、外貨準備の増加に再び拍車がかかっている が、これは当局が各国の通貨へのパススルーを抑制しようと米ドルを購入し、資金流 入の影響を相殺していることが主な背景である。韓国では外貨準備が第 3 四半期中に 105 億米ドル増加したが、その主因はユーロ/米ドル相場が期間中に上昇したことと、 韓国が米国の債券 10 億米ドルを売却したことに係るバリュエーション効果だ。ただ、 FRB の緩和縮小を巡る憶測が後退し、米国の債務上限に関する過度のリスクも後退す る中で状況は変化しており、それが米ドル/韓国ウォン相場に下押し圧力をもたらすと 思われる。フィリピン・ペソについても、季節的要因がさらなる弾みになることと、 送金資金の流れを受けた米ドルの 12 月から 1 月にかけての動向を比較した向こう 2~ 3 ヵ月の見通しに基づいて、同じことが言えるだろう。 Drew Brick 人民元 弊社では、2014 年の GDP 成長率は政府の掲げる「最低ライン」を上回り、それによっ て景気刺激圧力が弱まると予想する。このところの成長減速の期間中、輸出や鉱工業 の落ち込みはサービス・セクター、とりわけ国内関連や生活消費関連のサービス・セ クターの力強い伸びが続いたことで緩和されていた。こうした要因は足元でも依然、 機能している。弊社では、第 4 四半期の前期比で見た季節調整済み年率換算 GDP 成長 率が、第 3 四半期の 9.3%という力強い数字からやや鈍化すると見ている。これは、前 年同期比で見れば今年第 4 四半期の GDP 成長率が 7.7%になることを意味するものだ。 通年ベースの GDP 成長率は、2013 年については 7.7%前後、2014 年については 8.2% 前後になるだろう。 このところの金融指標からは、金融政策スタンスに関する疑問が浮かび上がる。中国 人民銀行(PBOC)が金融活動全体を表す指標として活用している月間の社会融資総量 (TSF)は、6 月と 7 月には大幅に減少したものの、8 月には予想外に力強い数字となっ た。9 月の数字は 8 月の数字ほどではなかったが、それでも堅調さを維持している。 PBOC が今週発表した声明は QE 縮小の先送りによる資金流入の影響について触れて おり、PBOC が 9 月の活発な為替介入で得た資金の大半を不胎化しなかったことがう かがえる。3 ヵ月移動平均で見た 9 月の間 TSF は GDP の 27%と、2013 年の 1~5 月 と比べると大幅に低い水準になったが、それでもなお GDP に占める融資比率が全体的 に著しく上昇していることが見てとれよう。とは言え、弊社のシナリオでは成長率が 政府の最低ラインを上回ることから、はっきりした形では具体化されない可能性は認 Page 6/30 アジア めたうえで、今後数四半期間の金融政策スタンスがやや引き締め気味のものになると の見方を据え置きたい。この点がより明確になるためには、今後数ヵ月間の総合的な 金融指標の発表を待つ必要があると思われる。不動産セクターに関する個別的な政策 スタンスは、住宅価格が足元で再び着実に上昇していることに対応する形で、全体的 な経済情勢に基づいて引き締められよう。 人民元/米ドルのスポット相場は 10 月の後半に入って再び上昇しており、10 月 28 日の 終値は 6.09 だった。弊社では、PBOCは米ドルが全体的に下落していた間、人民元が 米ドルに対して上昇することを許容していたと考える。今後について言うと、人民元/ 米ドル相場が年内に今の水準から大幅上昇することはないだろう。それどころか、あ る程度下落することも考えられる。 Louis Kuijs and Tiffany Qiu, RBS Asia Research (2013 年 10 月 30 日付けの独自調査レポート「アジア・ナビゲ-ター」より抜粋) 香港ドル FRB の「緩和縮小を巡る憶測」が後退していることで、香港は一息つける状況になっ ている。これは、香港の金利に係る方向性リスクやイールドカーブ・リスクが米国の 金利市場と密接に相関しているためである。米国の金利に対して強気の短期見通しを 持つ投資家は、香港のスワップ金利についても若干の強気バイアスを伴いながら安定 推移すると予想しよう。また、流動性の高い中期債の金利を受け取る投資家は魅力的 なキャリーを獲得することができ、過去の利回り低下局面で米国の投資家より良好な パフォーマンスをあげることも多かった。香港ドルそのものについて言うと、緩和縮 小を巡る憶測が再浮上すれば、香港ドルのフォワード・ポイントに悪影響を及ぼすだ ろう。香港ドルのペッグ制が今のところ絶対的なものであることは確かであり、7.75 ~7.85 というカレンシー・ボード制に基づいた香港ドルの変動許容幅が差し迫った脅 威にさらされているとは到底考えられない。また、アジアやエマージング諸国一般に おける米ドル追求の動きによって、香港ドルが将来を見越した形で基本的には流動性 の低い市場における米ドル・ロングのプロキシー・ヘッジとなるため、香港ドルが米 ドルにペッグされていることは、この先圧力の緩和に働く可能性がある。だが、香港 の経常黒字が概ね四半期ベースで減少する中で、地域通貨に対するスポットライトが 香港ドルに接近する日は近いのだろうか?また、キャリーがほぼ一定の米ドル・ロング のポジションに対して香港ドルを戦術的にショートとすることには、それに見合う価 値があるのだろうか?とは言え、香港ドルはこの 10 年間の大半において、1~2 月、そ して 8~9 月と、6 ヵ月の間隔で上昇する傾向にあった。緩和縮小を巡る憶測が再浮上 すれば、適度の上昇を見込んだ取引は模索する価値のあるものとなるかもしれない。 Drew Brick インド・ルピー 最近発表された対外貿易や鉱工業生産、インフレに関する経済指標からは、インド経 済がマクロの安定性を取り戻しつつあることがうかがえる。弊社では、第 3 四半期の 対 GDP 比で見た経常赤字は、前期の 4.9%から 2.9%に縮小したと予想する。インド・ ルピーの下落の影響は、経済に浸透しつつあるようだ。内需の低迷も追い風となって いるように思われる。ただ、依然として問題なのは、インフレ率が高止まりしている ことだ。金融政策のためのインフレ指標として新たに選好されている CPI は、引き続 き総合、コアともに上昇を続けている。9 月の総合 CPI とコア CPI はそれぞれ 9.8%と 8.4%、前年同月比で上昇した。興味深いのは、総合 CPI と同様にコア CPI も前月比で 上昇していることで、食品価格だけが指数上昇の要因ではないことが暗に示されてい る。実際、賃金の拡大やインド・ルピーの下落に歯止めがかかっていないことが、依 然として国内物価の重しになっている状況だ。 インフレの抑制は時間のかかる長期的なプロセスとなり、今後も成長の下支えに向け た金融政策の導入の阻害要因になるだろう。RBI が CPI を目標に据える姿勢に転換し ていることが明らかになりつつあるが、残念なことに預金金利がそれを受けてマイナ スにとどまっている。このため、実質預金金利を「ゼロ」にするためには、政策金利 であるレポ金利をさらに 25~50 ベーシス・ポイント引き上げる必要があるだろう。コ ア CPI は今後数ヵ月間、8%台にとどまりそうだ。鈍化こそしているものの、賃金の伸 びが依然、前年比で 17%近い高水準になっていることは、サービス・コストが近い将 来に減少することは考えにくいことを示唆している。また、財政状況もインフレへの 圧力を高めることになりそうだ。財政赤字は 2013 年 7 月末までに通年目標の 73%に 達しており、昨年の同じ時期における 61%から大きく膨らんでいる。政府は財政悪化 を最小限にとどめるべく運営支出を 10%削減することを決定したが、これだけでは十 分ではないだろう。 Page 7/30 アジア インド・ルピーは貿易赤字の縮小に加え、資金の流れの改善からも恩恵を受けている。 外国人投資家によるインド株式の購入額がプラスに転換している一方で、非居住イン ド人(NRI)向けの米ドル預金プログラムでは、70 億米ドル前後の資金が集まったと 推定される。月次の貿易赤字や確認できる資金流入に基づけば、インドの対外的なファ ンディング・ギャップは過去 12 ヵ月間の最低水準まで縮小しているというのが弊社の 見方だ。同時に、インド・ルピーは、輸出の回復が証明するように競争力のあるバリュ エーション水準にあると思われる。弊社では、米ドル/インド・ルピー相場は今後も安 定的に推移し、2013 年の年末までに 59 まで下落すると予想する。ただ、より力強い 上昇は成長モメンタムが上向きになるまでは期待できず、そうなるか否かが実体経済 における改革の再開にかかっていることには変わりがない。弊社が見るところ、それ が早期に現実のものになる可能性は低そうだ。 Sanjay Mathur, RBS Asia Research (2013 年 10 月 30 日付けの独自調査レポート「アジア・ナビゲーター」より抜粋) インドネシア・ルピア 信用拡大は過度に速いペースで進んでおり、年換算の伸び率は 20%を超えている。総 合インフレ率も同様に高止まりしており、燃料価格が 33%上昇していることが依然、 影響を及ぼしている。957 億米ドルの外貨準備は 6 ヵ月分の輸入額をカバーするに過 ぎず、また短期的な対外債務の 2 倍に相当するに過ぎない。経常赤字も対 GDP 比で 3.3%となっており、これらの数字はアジアはおろか、世界のエマージング諸国の中で も最悪の水準だ。インドネシア中銀(BI)は引き続き、石油会社を対象に BI が直接供 給するものを中心に、必要に応じて米ドルの流動性を供給している。だが、米ドル/イ ンドネシア・ルピア相場が上昇しても、銀行間のスポット市場における国内の流動性 が依然として十分ではないため、市場の不透明感は残っている。その一方で、発行を 巡る懸念が払拭されつつあることはプラスの材料と言えるだろう。政府はこれまでに、 今年の発行目標額の 90%について発行を終えている。ただ、これに関しては BI が大き な買い手となっており、海外からの入札が大きく減少する中、ここ 4 ヵ月間は純発行 額の 50%超を吸収している。それでも、海外の投資家はなお、発行済みのインドネシ ア国債の 31.4%を保有している状況だ。総じて言えば、インドネシア・ルピアに係る リスクは大きいままである。 Drew Brick 韓国ウォン FRB による緩和縮小が当面先送りされたことで、リスクオンの資金は株式に向かって おり、アジアの株式資金は韓国の KOSPI 市場に向かっている。実際、韓国市場には 10 月半ばまでに 100 億米ドル近くの株式資金が流れ込んだ。弊社では、韓国中銀が推移 を緩やかにすべく定期的に介入を行う中でも、米ドル/韓国ウォン相場は一時的にじり じりと下落すると予想する。留意すべきは、季節的要因からもこうした見方ができる ということだ。この 10 年間の大半において、韓国ウォンは 10 月から 12 月までの間、 リスクフリー・レートを上回るパフォーマンスをあげている。また、韓国の経常収支 は毎年秋から年末にかけて、好調に推移することが多い。建設会社や輸出企業による ヘッジの動きも年末までの間、米ドル/韓国ウォン相場の押し下げ要因となる可能性が ある。造船各社が総受注額ベースで過去最高の業績をあげていることは注目すべき事 象で、通常は収益の 60%を限度に行われている造船各社のヘッジが、平均で期間 3 年 の為替先渡し取引によって活発に行われている。韓国中銀の直近のデータによると、 国内企業が保有している外貨預金は高水準で推移しているが、これが韓国ウォンに交 換された場合には、韓国ウォンの上昇が下支えされ得ることにも留意すべきだろう。 実際、昨年の第 4 四半期には、全体で見て外貨預金が 393 億米ドルから 360 億米ドル に減少する一方で、韓国ウォンは 4%超上昇している。双方のこうした活発な動きは、 今年も繰り返されるのだろうか? Drew Brick マレーシア・リンギット 弊社では引き続き、相場下落の場面をとらえて、アジアにおいて圧力が再び高まる可 能性と、2014 年度予算が割合好意的に受け止められている半面でマレーシア自身が抱 えている脆弱さの双方に対応した米ドル/マレーシア・リンギットのロングを構築した いと考える。経常黒字は貿易収支の落ち込みによって構造的な縮小トレンドにある。 先日発表された貿易指標は輸出の改善を受けてサプライズとなり、政府は必要であれ ば支援のための輸入強化プロジェクトを先送りすることも考えているようだ。ただ、 今後対外黒字は、これまでのようには好調に推移しないと思われる。ナジブ・ラザク 首相が再選されたとは言え、政治見通しは二極化した状態が続いており、国内資金の 逃避は依然としてリスクである。また、格付け引き下げのリスクも払拭されていない が、筋書き通り財政調整によって支出が抑制されれば、格下げは回避できるというの Page 8/30 アジア が弊社の経済担当チームの見方だ。2014 年度予算では補助金が削減されるとともに数 多くのインフラ計画が見直され、長い間保留にされていた物品・サービス税の導入も 2015 年に先送りされた。しかしながら、たとえ歳出削減や歳入の緩やかな伸びに重点 的に取り組むことで将来における財政悪化のリスクを最小化できるとしても、算定の 根拠であったマクロ経済の前提条件は予想通り楽観的なものであり、政府が難しい判 断を行うにあたって取り得る余地が限られていることが、またも浮き彫りとなってい る。グローバル資金を巡る競争が激化する中、マレーシアがかろうじて収支の合う買 い手を探すことは一段と困難になっている。 Drew Brick フィリピン・ペソ フィリピンの成長には力強さがあって、足元の物価上昇圧力も比較的落ち着いており、 海外からの送金もこれまでと同様に当てにできる状況が続いている。フィリピン中銀 (BSP)は引き続き、為替先渡し取引が落ち切りとなるのを許容しており、過剰なフィ リピン・ペソの流動性を特別預金口座(SDA)に移動させている。これは最も割安な 不胎化の方法ではないが、BSP はフィリピン・ペソの予想利回りがマイナスであるこ とを利用して、投機的な資金が NDF 市場に流れ込むのを防ぐというやり方を好んでい るのだ。不胎化の費用を最小限に抑えようと、BSP は SDA 金利を引き下げてこの口座 の利用を抑制したが、そうした動きによって国内の債券利回りは低下し、マネー総量 は増加している。これは来るべきインフレの前兆なのだろうか?ムーディーズは 10 月 初め、フィリピン政府の信用格付けを 1 段階引き上げて、Ba1 から Baa3 とした。また、 それと同時にポジティブの格付け見通しも付与している。S&P が 5 月に、そしてフィッ チも 3 月に格付けを引き上げているため、今回の格上げにより今や格付け機関 3 社す べてが投資適格の格付けを付与していることになるが、これは WGBI のような権威あ る投資適格指数に組み込まれるにあたっての前提条件なのだ。では実際にそうなるの だろうか?それは誰にもわからない。ただ、フィリピン・ペソ資産を追求する動きが出 てくる可能性は十分にある。 Drew Brick シンガポール・ドル シンガポールの実質金利がアジア諸国の中で最も低くなっていること、そして「安全 な投資先」としての魅力も失われていないことから、シンガポール・ドルは依然、過 大評価される傾向にある。このことは、ここにきて世界の成長軟化が続いている中で も、また米ドルが貿易加重ベースで上昇している中でも変わりはない。MAS は依然と して、シンガポール・ドルを上昇させることは初期のインフレ圧力への対抗措置とな る反面、全体的に見て世界経済がなお伸び悩んでいることから、シンガポールの競争 力を削ぐことになりかねないという困難な状況にある。上昇バイアスを解除すれば物 価上昇圧力が高まる恐れがあるのだ。これに対してシンガポールが講じた解決策は、 マクロプルデンシャル的な政策措置という予想できるものであり、印紙税などの引き 上げによって海外からの(場合によっては国内からの)シンガポール資産に対する投 資の魅力を削ぐことで、資金流入を一部阻止することを狙うというものだ。ただ、そ うした措置を講ずれば、重要な事実、すなわちシンガポールの名目実効為替レートを 用いたモデルによる金融政策のコントロールは、圧倒的多数の国々が QE を導入して いる状況ではまったく機能しないということが不明瞭になる。シンガポールの主な貿 易相手の中には政策金利をゼロで据え置いている国もあり、貿易相手国の通貨で構成 される通貨バスケットに対するシンガポール・ドルの適度な上昇や下落のペースを推 測するのが極めて困難な状態が続いている。こうしたことはすべて、米国の FRB が QE 縮小に着手した場合に最も恩恵を受けるアジアの中銀は MAS であろうことを示唆 するものだ。 Drew Brick タイ・バーツ バリュエーション(実質実効為替レート)で見た場合、タイ・バーツは 4 月につけた ピークから 8%程度下落しているというのが弊社の推定だ。経済活動が低迷しているこ とを踏まえれば、当局はこうした下落に安心感を抱いていると思われる。また、弊社 では、当局が外貨準備の増加ペースの鈍化をまったく公にしていないことにも留意し ている。こうした状況を緩和しているのは、経常黒字の回復や資金流出の再開だろう。 総じて言えば、タイ・バーツは今後数ヵ月間も狭いレンジ内での推移が続きそうだ。 米ドル/タイ・バーツ相場が下抜けするか否かは、経済活動のペース次第である。弊社 が見るところ、タイ・バーツに対する最大のリスクは政治的なものであり、それは予 想される「恩赦」法案の導入から生じることも考えられる。 Sanjay Mathur, RBS Asia Research (2013 年 10 月 30 日付けの独自調査レポート「アジア・ナビゲーター」よ り抜粋) Page 9/30 アジア RBS FX Forecasts USD/CNY 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 6.10 6.11 6.08 6.05 6.02 USD/HKD 7.75 7.80 7.80 7.80 7.80 USD/INR 61.70 60.00 59.00 58.00 57.00 USD/IDR 11335 11800 12000 11500 11000 USD/KRW 1061 1070 1065 1060 1055 USD/MYR 3.17 3.16 3.20 3.22 3.25 USD/PHP 43.21 43.00 43.50 43.20 43.00 USD/SGD 1.239 1.240 1.250 1.240 1.220 USD/TWD 29.44 30.00 29.90 29.80 29.70 USD/THB 31.24 33.00 34.00 33.00 32.50 Source: RBS Trading Strategy Page 10/30 This material should be regarded as a marketing communication and may have been produced in conjunction with the RBS trading desks that trade as principal in the instruments mentioned herein. FX 月間見通し-ユーロ 2013 年 11 月 1 日 ディスインフレ、成長、為替 ユーロ/米ドル相場と ECB/FRB の バランスシート Source: Ecowin, RBS Trading Strategy 1.55 EUR/USD 290 Balance Sheet Ratio 270 1.45 250 230 1.35 210 190 1.25 170 150 1.15 130 10 11 12 13 ユーロ圏の基礎的収支(10 億ユーロ) Source: Ecowin, RBS Trading Strategy 265 165 65 -35 -135 Basic Balance Current Account Long-term Capital -235 -335 00 02 04 06 08 10 12 ユーロ/米ドル相場と 5 年物スワップ・ スプレッド Source: Bloomberg, RBS Trading Strategy 1.55 EUR/USD 1.5 5-year Swap Spread 1.45 10 月もユーロは堅調に推移した。これは、ユーロ圏の見通しにおけるテール・リスクが 低下したことを表しており、政治状況がより安定し、企業の将来の景況感が着実に改 善していることが主なけん引役となっているものと思われる。追加の長期資金供給オ ペ(LTRO)の見通しに関する控えめなコメントを通じた ECB の「ハードカレンシー」 政策、およびユーロの水準とディスインフレ・リスクに関する明らかな懸念のなさも ユーロ高に貢献している。FRB の金融緩和スタンスがユーロの上昇圧力を加速させて いる一方、債務上限および予算の問題からセーフ・ヘイブンとしての米ドルの地位が 低下していることもユーロに有利に働いている可能性がある。 引き続き、ユーロ圏の景気回復がどの程度続くかが今後 6 カ月間の為替レートを決め る主な要因となるだろう。この点に関する判断はまだほとんど下されていない。経済 は依然として金融市場の分断によって抑制されている。緊縮財政も重なり、圏内にお ける力強い回復の見通しは乏しい。外需も低迷しており、特に間の悪い時期に通貨高 となっている。資産査定については、域内から多額の資金が流出するようなシステミッ ク・リスクにつながる可能性はなさそうだ。むしろ、それは、加速するレバレッジ解 消の動きを通じて静かに影響をもたらすように思われる。そのことは、リファイナン ス金利引き下げの可能性と、政策金利がより長期にわたりより低く維持されるとの期 待につながり、明らかにユーロにとってマイナス材料である。最近、ECB は流動性供 給について強気の発言をしたが、どこかの段階で追加的な流動性供給による応急処置 が行われる可能性は引き続き高い。ディスインフレ圧力の高まりがそのけん引役とな るだろう。したがって、2014 年にかけて、利回り志向による短期的な資金フローが、 改善しつつある基礎的収支の黒字ポジションを相殺していく可能性がある。 弊社は、経済活動の低下とディスインフレ圧力の高まりを通じて、通貨高が経済にも たらす潜在的な影響に市場の注目は徐々に移っていくと考えている。新たな政策は不 可欠のように思われる。それは 2013 年第 4 四半期に始まる可能性もあるが、おそらく 来年序盤のテーマとなる可能性の方が高いだろう。弊社は、市場がそれを待っている 間は、ユーロ/米ドル相場にはさらに上昇余地があると考える。ECB の政策対応が近づ く反面、経済指標が軟調なことから、FRB による緩和縮小の開始時期が後ろ倒しにな り、米ドルに対する逆風が強まっていることも認識している。したがって、弊社は 2 カ月連続で年末のユーロ/米ドル相場の目標値を引き上げ、将来の見通しも引き上げた。 しかしながら、他の欧州通貨に対するユーロ相場に関しては、弊社はより中立的な見 方を強めている。Paul Robson 1.0 RBS FX Forecasts 0.5 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 EUR/USD 1.349 1.390 1.377 1.320 1.280 -0.5 EUR/JPY 133.2 136.2 137.7 138.6 140.8 -1.0 EUR/GBP 0.848 0.854 0.850 0.840 0.825 1.35 0.0 1.25 1.15 Apr-10 Feb-11 Dec-11 Oct-12 Aug-13 Contacts: Paul Robson Senior FX Strategist +44 20 7085 6125 [email protected] Nick Mannion FX Strategy +44 20 7085 6400 nicholas.mannion @rbs.com www.rbsm.com/strategy 英ポンド 英ポンド 成長は見られるが十分な成長か? 英国 | 景気サプライズ Source: Bloomberg, RBS Trading Strategy, Citi Bank 170 120 70 20 -30 -80 08 09 10 11 12 13 英ポンド/米ドル相場と 2 年物の金利差 Source: Bloomberg, RBS Trading Strategy 0.45 2y rate spread (LHS) GBPUSD 1.64 1.62 0.40 1.60 0.35 1.58 0.30 1.56 1.54 0.25 1.52 0.20 0.15 Feb-13 1.50 1.48 May-13 Aug-13 英国 | PMI(購買担当者指数) Source: Ecowin, Bloomberg, RBS Trading Strategy 62 60 57 55 52 50 45 47 40 42 37 32 35 Services (LHS) Manufacturing 30 25 弊社も疑問視していたように、秋が近づくにつれ、英国の経済指標が予想を上回る頻 度は低下した。景況感に関する多くの指標は依然として高い水準にあるものの、その うちの多くは改善が止まったり、後退したりしている。鉱工業生産指数は景況感に見 合う上昇を示しておらず、サービス業の GDP および小売売上高はまちまちとなってい る。一方、住宅市場は大幅に改善した。このことは、家計と企業の信頼感にますます 大きな影響を与えている。それは、緩やかとはいえ、回復を主導する可能性もあるが、 世界的に需要が低迷するなかでの内需の回復は、純輸出に対するマイナスの影響と経 常収支の大幅な悪化につながる可能性もある。これは、中期的に英ポンドにとって大 きな逆風となると弊社は考えている。しかしながら、英ポンドの短期的な運命は、好 調な内需によって、どの程度短期金利が上昇するかに大きく依存する可能性がある。 この議論においては、引き続き労働市場の状況が重要なテーマである。生産性、労働 参加率、需要に関する不透明感が強いことから、弊社は、力強く持続的な回復が期待 できるかどうかについて、引き続き極めて慎重な見方を有している。成長は加速する と予想されるが、GDP ギャップを迅速に解消し、それに伴って金融政策を早期に引き 締めるには十分ではないと思われる。また、弊社は、ベース効果の中立化が進むにし たがい、公式な指標が、経済活動における定性的な指標に追随できないリスクがある と考えている。 引き続き、労働市場は経済における要注意分野である。労働市場の状況は、英国中銀 の予想よりもやや堅調に推移している。失業率は 7%台後半で比較的安定しており、雇 用の伸びも力強い。しかしながら、新規雇用の 3 分の 2 は単に労働力の増加を吸収す るにとどまっている。さらに、最近になり、金融政策委員会(MPC)は、インフレ期 待を脅かすことなく、経済の緩みの多くを吸収できるのであれば(中期的なインフレ の信頼性など、いくつかの条件次第ではあるが)、金融政策の目安とする失業率の水 準を引き下げる可能性について、初めて明確にコメントした。とはいえ、弊社は、11 月のインフレ報告書では、成長率の見通しの改善と、それに関連して、失業率が MPC の 7%の目安を達成する時期を前回の予想よりも 1~2 四半期前倒しすることが示され ると、引き続き予想している。同時に、MPC においては、タカ派の発言がよりハト派 的になる一方、ハト派の発言がよりタカ派的になっており、中立的な政策をめぐるコ ンセンサスが概ね形成されたようである。したがって、弊社は、MPC は市場金利が上 昇した場合には、その動きを押し戻していくと予想する。その結果、英国の不均衡の 高まりに対し、新たに注目する余地が残るだろう。 2013 年初頭の損失の大部分を回復したことから、英ポンドは高頻度データの軟化によ る影響をさらに受けやすくなると予想する。それは年末にかけて、ユーロ/英ポンド相 場の小幅な上昇につながる可能性がある。英ポンド/米ドル相場は、FRB による米ドル の流動性によって下支えされると思われるが、英ポンドも軟調なことから上値はます ます抑制されると思われる。この見方に対する主なリスクは、住宅市場の回復が金利 上昇圧力をもたらすほどの力強い景気回復につながり、構造的な財政赤字をめぐる懸 念が低下することである。Paul Robson 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 GBP/USD 1.591 1.628 1.620 1.571 1.552 GBP/JPY 157.2 159.5 162.0 165.0 170.7 EUR/GBP 0.848 0.854 0.850 0.840 0.825 Page 12/30 スイス・フラン スイス・フラン 意外なほど安定的 ユーロ/スイス・フラン相場と スペインの CDS Source: Bloomberg, RBS FX Trading Strategy 1.70 -50 50 1.50 150 1.30 250 350 1.10 450 EUR/CHF Spo t 0.90 550 Spain 5y CDS (RHS, inverted) 0.70 08 09 10 11 12 650 13 基礎的収支 Source: Ecowin, RBS FX Trading Strategy C/A + Net FDI C/A Net FDI 20 10 0 -10 -20 00 01 03 04 06 07 09 10 12 インフレ率 Source: Bloomberg, RBS FX Trading Strategy 3.5 CP I (yo y) Co re CP I (yo y) 2.5 ユーロ圏のテール・リスクをめぐる懸念が引き続き減少し、ユーロが全般的に上昇して いるにも関わらず、ユーロ/スイス・フラン相場は 10 月初めに 4 カ月ぶりの安値から 回復した後は伸び悩んでいる。過去数年間におけるセーフ・ヘイブンとしてのスイス への多額の資金流入を考えると、ユーロ圏の見通しの改善と、それに伴うスイスへの 資金流入の緩やかな解消は、ユーロ/スイス・フラン相場の上昇を下支えするとの期待 もあったと思われる。実際、1.20 の下限が導入される前のユーロ/スイス・フラン相場 とスペインの 5 年物 CDS の関係に基づくモデルを用いると、ユーロ/スイス・フラン 相場は現在 1.30 台前半で取引されているはずである。 ユーロ高、かつユーロ圏の懸念が低下する環境にも関わらず、ユーロ/スイス・フラン 相場の上昇が限られていることは、ユーロ/スイス・フラン相場は引き続き下方に振れ やすい可能性があることを示唆している。世界の中央銀行による流動性の供給が続い ているほか、周縁国のスプレッドのさらなる圧縮にみられるように、ユーロ圏のテー ル・リスクが減少するなか、セーフ・ヘイブンとしてのスイスへの大規模な資金流入が 戻ることはないだろう。むしろ、相対的な金融政策の違いがユーロ/スイス・フラン相 場の主なけん引役になるものと思われる。この点に関し、ユーロの上昇、景況感の低 下の兆し、およびコア・インフレ率の 1%以下への低下は、どこかの段階で ECB によ る政策対応を避け難いものにすると思われる。したがって、ユーロ圏のより緩和的な 金融政策は、ユーロ/スイス・フラン相場におけるユーロの利回り面での優位性を低下 させると思われる。ユーロ圏の見通し改善に対するこれまでのユーロ/スイス・フラン 相場の反応が限られていることを考えると、ユーロ/スイス・フラン相場は下方バイア スを伴いつつ、引き続きレンジ内で推移するものと予想される。 ユーロ/スイス・フラン相場はまだ 1.20 をいくらか上回っているが、下限に関するスイ ス中銀の政策が近いうちに変更されることはないだろう。セーフ・ヘイブンとしての 資金流入は減少し、デフレスパイラルに陥るリスクもどうにか解消された模様だが、 これまでの政策が成功していることもあり、スイス中銀には、自らに対する注目を再 度集めることによって得るものはほとんどないと思われる。下限の引き上げについて も同様である。1.20 のユーロ/スイス・フラン相場はスイス・フランにとって非常に割 高だとの主張は、スイス経済が回復の兆しを見せていること、経常黒字が維持されて いること、および低インフレによって購買力平価ベースでみたスイス・フランの適正 値が上昇したことから弱まった。また、スイス中銀にとっても、依然としてユーロ圏 には不確実性が残っていることを考慮すると、蓄積した外貨準備の縮小を開始するに はまだ早すぎるように思われる。したがって、弊社は、ユーロ/スイス・フラン相場は、 下方寄りのリスクを伴いつつ、概ね現在の水準で引き続き安定的に推移するものと予 想する。Nick Mannion 1.5 RBS FX Forecasts 0.5 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 EUR/CHF 1.231 1.225 1.220 1.220 1.230 USD/CHF 0.913 0.881 0.886 0.924 0.961 GBP/CHF 1.453 1.434 1.435 1.452 1.491 -0.5 -1.5 05 06 07 08 09 10 11 12 13 Page 13/30 スウェーデン・クローナ スウェーデン・クローナ より低く、より長く インフレ率 10 月のスウェーデン・クローナは軟調に推移し、ユーロ/スウェーデン・クローナ相場 はレンジの高値を試した。ある意味、これは、ユーロ圏のテール・リスクが低下したと の見方から、セーフ・ヘイブンとしてのスウェーデンへの資金流入の解消が着実に進 んでいることを反映しているものと思われる。同時に、ECB もユーロの上昇に関する 懸念表明を抑えている。さらに、国内の状況も寄与しているものと思われる。夏の間 の各種景況感の改善は、指標に反映されるまでのタイムラグはあるにせよ、スウェー デンの実際の指標(ハードデータ)の上昇にはまだあまり現れていない。景況感も軟 化の兆しを見せ始めており、GDP も引き続き潜在 GDP を大きく下回っている。ユー ロ圏の需要が低迷しているなか、輸出依存度の高いスウェーデン経済に対し非常に楽 観的になることは難しい。インフレ率も引き続き非常に低く、9 月のコア・インフレ率 は再び 1%を下回った。 Source: Bloomberg, RBS Trading Strategy CP I (% yo y) CP IF (% yo y) Target 5 4 3 2 1 0 -1 -2 06 07 08 09 10 11 12 13 PMI と IP(鉱工業生産) Source: Bloomberg, RBS Trading Strategy M anufacturing P M I 70 Industrial P ro ductio n (yo y, RHS) 23 65 13 60 55 3 50 45 -7 40 -17 35 -27 30 08 09 10 11 12 13 家計債務 スウェーデン中銀は 10 月の会合で政策金利を据え置いたが、GDP の下方修正とイン フレ率の低下を受けて、金利パスの想定をやや緩やかに修正した。金利パスによると、 現在、短期的な利下げの可能性は前回の 16%と比べ 20%となっているほか、第 1 回目 の利上げは来年末まで行われない。成長率とインフレ率の見通しだけを見ると、明ら かに政策金利の引き下げは正当化されるだろう。しかしながら、スウェーデン中銀は 高水準の家計債務を依然として懸念している。スウェーデン中銀は 1990 年代初頭に信 用バブルの崩壊をすでに経験しており、政策担当者にとっては繰り返したくない経験 となっている。スウェーデン中銀は、その声明で、金融政策は高水準の家計債務を引 き続き考慮したものになると述べている。ただし、最近、政府がマクロプルデンシャ ル政策の責任を金融規制庁(FSA)に委ねたこと、および、マクロプルデンシャル措 置によって債務リスクの低下が期待できるかもしれないと言及したことも同様に注目 される。とはいえ、それには、マクロプルデンシャル政策が具体的にどのような影響 をもたらすか、およびどの程度迅速な影響をもたらすかについての判断は難しいだろ うとの注意も含まれていた。これらの政策はまだ比較的新しく、実証されていない分 野であることから、特にオランダでの同様の政策経験を見ながら、政策担当者はそう した措置の導入を段階的に進めるよう注意するだろう。さらに、経済の状態が非常に 弱いなかでマクロプルデンシャル政策が進展することは、スウェーデンの政策金利が より長期にわたり低く維持されることを示唆している。 Source: Bloomberg, RBS Trading Strategy 180 セーフ・ヘイブンとしてのスウェーデンへの資金流入の緩やかな解消は、引き続き年 末にかけてユーロ/スウェーデン・クローナ相場の上昇圧力となる可能性がある。しか しながら、ユーロ圏 PMI(製造業購買担当者指数)が軟化する初期の兆しがみられ、 コア・インフレ率が 1%を下回っていることから、どこかの段階で ECB は政策対応を 求められるものと思われる。したがって、スウェーデンにおけるマクロプルデンシャ ル政策の緩やかな進展により、低インフレと経済の低迷に対する注目が高まり、中銀 による利上げの時期は現在のガイダンスの見通しよりも遅れると思われるが、ユーロ/ スウェーデン・クローナ相場は 2014 年にかけて再び緩やかに下落し始めるものと弊社 は予想する。Nick Mannion Ho useho ld Debt (% o f dispo sable inco me) 160 140 120 100 80 80 86 92 98 04 10 16 RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 EUR/SEK 8.822 8.680 8.620 8.600 8.300 USD/SEK 6.542 6.245 6.260 6.515 6.484 GBP/SEK 10.41 10.16 10.14 10.24 10.06 Page 14/30 ノルウェー・クローネ ノルウェー・クローネ 政策ミックスの後戻り 夏の間に大幅に上昇し、過去 4 年間で初めて 2.5%の目標を達成した後、コア・インフ レ率が 9 月に大きく後退したことは注目に値する。前年比 1.7%という数字は、市場予 想および、9 月の金融政策報告書で 2.2%と予想していたノルウェー中銀の見通しを大 幅に下回るものとなった。また、それにより、夏の間の上昇幅の多くは、1 年前と異な る航空運賃、衣類、および食品価格の動きによる一時的なものであったことが示唆さ れた。この結果、インフレ率の上昇によって、ノルウェー中銀が年末までによりタカ 派的なスタンスを強いられるとの予想は低下し、10 月のノルウェー・クローネの軟調 な推移につながったものと思われる。 インフレ率 Source: Ministry of Finance, RBS Trading Strategy CP I 4 CP I-A TE Target 3 2 10 月の政策決定会合で、ノルウェー中銀は予想通り中立的な見通しを維持し、予想を 下回る 9 月のインフレ率は通貨安によって相殺されると述べた。とはいえ、この言葉 から、ノルウェー中銀が通貨高を選好していると解釈すべきではないと弊社は考える。 むしろ、金融政策は、経済における伝統的セクターの支援と、インフレ率を目標水準 に戻すことの間で繊細なバランスを保ちつつ、一方で信用および住宅価格の力強い伸 びの抑制に引き続き努めることになるだろう。前回の評価と比べると、通貨安がイン フレ率の低下を相殺することから、現在の政策金利の水準が適切であることを単に示 唆しているにすぎない。 1 0 10 11 12 13 住宅価格 Source: Ministry of Finance, RBS Trading Strategy 350 United States United Kingdo m 300 Sweden No rway 250 最近、ノルウェーの旧政権は 2014 年予算を公表したが、それによると政府年金基金グ ローバル(GPFG)からの支出は 2.9%にとどまっている。これは 4%ルールを大幅に 下回っているが、旧政権が新体制の仕事をより困難なものにしようとすることはよく あることである。とはいえ、GPFG が伸びていることから、支出は今年に比べて 14% 増加する。保守党を中心とする新政権にも今月後半に予算を修正する機会がある。時 間が短いことから、大規模な変更はないと思われるが、それでも新政権は石油基金か らの支出割合を 0.1%の単位でいくらか増やす可能性がある。その後、新政権が意欲を 示しているインフラ投資、医療支出の拡大、および減税の達成に向けた行動をとるに したがい、来年春に公表する修正予算でさらに政策を緩和することになるだろう。 Euro Zo ne 200 150 100 50 91 94 97 00 03 06 09 12 原油支出と財政政策 Source: Ministry of Finance, RBS Trading Strategy GP FG (% o f mainland GDP ) 6.0 No n-o il B udget Deficit (% o f mainland GDP , RHS) 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 5.0 4.0 3.0 2.0 経済がフル稼働またはそれに近い状況にあるなか、どの程度の追加的な支出を吸収で きるのかは不透明である。したがって、緩和的な財政政策は経済に大きなインフレ圧 力をもたらすリスクがあると思われる。新政権はマクロプルデンシャル政策に対する 積極的なスタンスを弱めることも示唆しており、最近、規制当局に対し、住宅ローン 貸付の制限が住宅市場に不必要な制約をもたらしていないかどうかの検証を求めた。 これは、ノルウェー中銀にとって、よりタカ派的なスタンスを採用する大きな圧力と なる可能性がある。とはいえ、外部要因をみると、ノルウェー中銀が来年利上げを実 施することは依然として困難だと思われる。海外需要の低迷は引き続きノルウェーの 輸出業者に負担を強い、海外の価格低下圧力は引き続きインフレ率を抑制するほか、 海外における低金利は、ノルウェー中銀が通貨高をもたらすことなく政策金利を引き 上げることを困難にするだろう。依然として、中銀からみると、財政政策とマクロプ ルデンシャル政策が誤った方向に進んでいるため、中銀としては緩やかな為替レート の上昇を受け入れる以外、他の選択肢がほとんどない状況となるだろう。Nick Mannion 1.0 2001 2004 2007 2010 2013 RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 EUR/NOK 8.057 7.950 7.750 7.600 7.350 USD/NOK 5.975 5.719 5.628 5.758 5.742 GBP/NOK 9.506 9.309 9.118 9.048 8.909 Page 15/30 チェコ・コルナ チェコ・コルナ 介入に注目 交渉の長期化リスクと緊縮財政の継続。11 月 26 日に議会が開催される予定となっ ており、ゼマン大統領はそこで新首相を発表するものと予想される。新首相の任 命後 30 日以内に内閣は下院の承認を得なくてはならず、それには 200 議席のうち 絶対多数による支持が必要となる。しかしながら、税制に関する意見が異なるこ とから、政権発足のための交渉が長期化する可能性があり、実際の首相指名も不 透明なことから、信認投票の遅れや失敗のリスクは大きい。例えば、選挙後、ゼ マン大統領は選挙での「不勝利」を受けて、ボフスラフ・ソボトカ氏に社会民主 党(CSSD)党首の座を辞任するよう求めたが、ソボトカ氏は現時点では拒否して いる。重要な点として、この日までに新政権を樹立できない場合、来年初めから の執行に間に合うように 2014 年予算の承認を得ることは難しい。予算が承認され るまでは、毎月の予算の支出を前年度の年間支出額の 12 分の 1 に抑える暫定予算 を執行せざるをえず、前政権による緊縮財政策が続くことになる。なお、9 月末に、 ルスノク前首相が 2014 年の国家予算案の承認を発表済みであり、それによると、 2012 年における 1,000 億チェコ・コルナから 1,120 億チェコ・コルナに赤字額の 目標が増加している。 財政の緩和が遅れる可能性により、緩和的な金融政策の維持が求められるだろう。 誰が首相に就任するにせよ、 財政収支の底堅さは維持できると思われることから、 弊社は引き続き、チェコにおける政治的な混乱が資産クラスまたは格付けに影響 を及ぼすとは考えていない。ゼマン大統領は非常に欧州寄りの考え方を有してお り、単一通貨の採用を長期的な目標(2020 年以降)としている。したがって、大 統領は、新政権がマーストリヒト条約に基づく 3%の財政赤字ルールを破ることの ないよう注意するだろう。とはいえ、政権発足の遅れにより緊縮財政策が続くこ とは、既に弱まっている成長にとってマイナス材料である。財政政策が明らかに 制約されているなか、成長を支えるために緩和スタンスを維持するよう、金融政 策に対する圧力が続くだろう。したがって、このことは、少なくとも今後 1 年間 は史上最低の金利水準が続くとの見方を裏付けるだけでなく、チェコ・コルナを 下落させ、金融情勢を一段と緩和するためにチェコ中銀に対し介入を求める圧力 を増すことになるだろう。 11 月 7 日の金融政策決定会合を前に、ユーロ/チェコ・コルナのロングの維持を推 奨。介入に関する投票の内訳を入手することはできないが、弊社および弊社が最 近面談した現地のアナリストは、投票は均衡しており、おそらく 4 対 3 で介入に 反対したのではないかと考えている。シンガー総裁、トムシク副総裁、および理 事会メンバーのLizal氏は介入に賛成したものと思われる。その結果、浮動票は Rezabek氏とHampl氏となり、 Janacek氏と Zamrazilova氏はタカ派とみられて いる。今後の電力料金の低下は、インフレに関する状況を大きく変えることにな り、2014 年第 1 四半期の総合インフレ率が 1%を大きく下回るにつれ、チェコ中 銀に対する圧力はさらに高まるものと思われる。最も介入が行われる可能性が高 いのは、電力料金の下落を初めて織り込んだ新たなインフレ率の見通しが発表さ れる 11 月 7 日の金融政策決定会合である。したがって、弊社はユーロ/チェコ・ コルナのロングの推奨を維持し、27.0 を目標とする。中銀は、26.50 など、さら に低いユーロ/チェコ・コルナのクロスレートを目標とする可能性があるが、弊社 は、クロスレートは市場で一段と上昇する可能性があると考えている。とはいえ、 会合より前に、ユーロ/チェコ・コルナ相場が 26.0 の水準に向けて上昇した場合、 チェコ中銀が様子見のスタンスを維持するにはそれで十分かもしれない。弊社の 見解に関する詳細については、弊社レポート Czech Republic Trip Notes | Intervention still in focus(チェコ出張メモ | 依然として介入が注目材料)を参照。 Page 16/30 ハンガリー・フォリント RBS CEEMEA Research Mohammed Kazmi (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) ハンガリー・フォリント いくらかの軟化が見込まれる ユーロ/ハンガリー・フォリントの 1 カ月間のロングを推奨。弊社は、現在の水準 でのユーロ/ハンガリー・フォリントのロングを選好し、302 を目標水準としてい る。9 月初め以来、ハンガリー・フォリントは十分大幅に上昇し、政府が家計の外 貨建て債務問題の解決策を決定する時期が近づくにつれ、ハンガリー・フォリン トにはいくらかの下落リスクがあると弊社は予想している。政府は、ハンガリー 銀行協会が提案した家計の外貨建て債務問題の解決策を拒否しており、今後数週 間以内に政府独自の提案を行うことになっている。弊社は、政府による解決案の 公表は 11 月半ば頃になると予想する。最終案の詳細はほとんど明らかになってい ないものの、全てを一度に解決する方法を避け、段階的な問題解決を図るものに なると思われる。さらに、銀行セクターによる提案が何度も拒否されていること を考えると、政府の最終案は銀行に有利なものにはならないと思われるが、かと いって、過酷な影響をもたらすほどのものではなく、銀行セクターを襲撃するよ うなものにはならないだろう。とはいえ、銀行セクターにとって不利な提案は、 ハンガリー・フォリントにマイナスの影響を限界的にもたらすものと思われる。 2013 年 10 月 29 日付弊社レポートTrade idea | Long EUR/HUF(トレード案 | ユー ロ/ハンガリー・フォリントのロング)を参照。 追加利下げ実施の見通し Real rate 4yr average of real rate Policy rate CPI_yoy 10 8 6 4 2 0 -2 09 10 11 12 13 Source: RBS, Haver 中銀は緩和モードを継続中。市場予想および弊社の基本シナリオ通り、ハンガリー 中銀は、今週 20bpの追加利下げを行い、政策金利を 3.4%とした。2013 年 9 月 24 日付弊社レポート Hungary | The market is still too hawkish(ハンガリー | 市場は まだタカ派の傾向が強すぎる)を参照。弊社は、中銀が今後 2 カ月間に 20bpの利 下げを 2 回行い、政策金利を 3%に引き下げるとの弊社の長期にわたる見方を維持 している。弊社が推奨した 9 ヶ月先スタートの 12 カ月物のフォワード金利(9X12 FRAs)のレシーブの取引は目標水準に達し(2013 年 8 月 27 日付弊社レポート Hungary | Twenty done. More to come(ハンガリー | 20 は完了、さらに続く)を 参照)、弊社による 3%への利下げ見通しは、現在は市場のコンセンサスとなって いる。ただし、利下げ後を考えると、2014 年末から 2015 年にかけて、中銀は政 策金利の正常化に向けて、より積極的な姿勢をとることが予想されるため、リス ク・リターン上はハンガリー・フォリントの 2 年先スタートの 1 年物スワップの払 いが有利だと考える。 (2013 年 10 月 10 日付弊社レポートHungary | Looking beyond the cuts – pay 2y1y(ハンガリー | 利下げ後を見据えて-2 年先スタートの 1 年物 の払い)を参照)。 RBS CEEMEA Research, Abbas Ameli-Renani (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) Page 17/30 イスラエル・シュケル イスラエル・シュケル 為替介入はさらに続くだろう 弊社は 10 月 21 日に Israel: The tale of two doves(イスラエル:2 人のハト派 の物語)と題した緊急レポートを発表した。 高頻度の経済データ ネタニヤフ首相は、総裁代行を務めていたカルニト・フルグ氏が中銀総裁の座に就 くことを最終的に決定した。米国でジャネット・イエレン氏が FRB の新総裁に指 名されたのと同様、フルグ氏の任命は、イスラエル中銀が、世界的な金融緩和バイ アスを反映して、緩和的な政策スタンスをとると思われることを示唆している。弊 社は、フルグ総裁のもと、イスラエル中銀は為替介入を継続し、予想されるガス輸 出の増加に伴い、将来的にさらに介入規模を拡大するものと予想している。 10 5 0 % YoY -5 -10 State of Economy index Industrial production, sa, 3mma -15 Consumer imports, sa, 3mma Exports excl. agriculture, sa, 3mma -20 nJa 11 l-1 Ju 1 12 nJa Source: l-1 Ju 2 13 nJa RBS CEEMEA 3 l-1 Ju Research, BOI イスラエル中銀は、10 月 28 日の政策決定会合で追加の金融緩和は見送った。消 費者物価指数(CPI)で見たインフレ率は依然として低く、インフレ期待は抑えら れている: 9 月の CPI(総合指数)は 8 月に引き続き前年比 1.3%となり、イスラエ ル中銀が目標とする 1~3%のレンジの下方に位置している。 今後 12 カ月間の平 均的なインフレ期待は、9 月半ばの 1.9%から 10 月半ばには 1.7%に低下した。一 方、経済は深刻な「オランダ病」の兆しを示しており、9 月の輸出は前年比 9.9% 減少(3 カ月間の移動平均、季節調整済後)する一方、消費財の輸入は前年比 14% 増加した。シュケル高がその理由だと思われる。 現在、大半の市場ウォッチャーは FOMC の緩和縮小は 2014 年 3 月まで先送りさ れると予想している。その結果、現在の 1%からもう一度利下げを行う可能性が残 されており、その時期は、シュケルがいつ再び強い上昇圧力にさらされるかによっ て、おそらく 2013 年終盤か 2014 年初旬になると思われる。弊社は、2014 年中 に利上げが行われる可能性は非常に低いと考えており、イスラエル中銀が最終的 に引き締めに転じるタイミングは、米国の引き締めのタイミングに密接に関係す ると考えている。このことは、イスラエル・シュケルに対する弊社の中立的な見 方を裏付けるものである。弊社は、イスラエル中銀は、米ドルに対するイスラエ ル・シュケルの非常に緩やかな上昇しか許容しないと考えており、今後 6 カ月間 の米ドル/イスラエル・シュケル相場は概ね 3.50~3.57 のレンジ内で推移するも のと予想する。 RBS CEEMEA Research, Tatiana Orlova (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) ポーランド・ズロチ 赤字縮小の反転を注視 多額の経常赤字の縮小が通貨高をけん引。消費の持ち直しを背景に赤字縮小が反 転しないかを注視したい。弊社は、消費活動の増大が上半期に観測されたポーラ ンドの経常赤字縮小の反転につながるだろうと考えている。同国の経常赤字の縮 小は主に輸出伸び率の上昇ではなく輸出伸び率の低下によるものであったことを 踏まえると、これは特に重要である。数多くの高頻度の経済指標や将来予測的な 調査は、ポーランドでは民間部門の消費が底打ちしたことを示唆している。この ことは成長にとってプラスであり、同国の成長見通しをユーロ圏から部分的に乖 離させる一助となるだろうが、その一方で同国の経常赤字縮小は徐々に反転され るだろう。その結果、国際収支フロー(純輸出の縮小)は通貨にマイナスに作用 するとみられる。確かに、ポーランドの成長は年末にかけて堅調に推移する可能 Page 18/30 ロシア・ルーブル 性が高く、そうなれば通貨をある程度下支えしよう。だが、ルーマニア・レイに 対するポーランド・ズロチのショート・ポジションは、成長見通しが説明されて いることを保証する(弊社は、ルーマニアの 2013 年GDP成長率を 2.3%と見込ん でいる。これに対してポーランドの成長率は 1.3%)。詳細は当社の 2013 年 10 月 23 日付レポートTrade idea | Short PLN/RON(トレード案 | ポーランド・ズロ チ/ルーマニア・レイのショート)を参照されたい。 ポーランド:経常赤字の縮小を主導して いるのは輸出拡大ではなく輸入の著しい 軟化。輸入は輸出を上回るペースで増加 する見通し(%、前年比) 20 15 10 Exports Imports 5 0 -5 Aug-10 May-11 Feb-12 Nov-12 Aug-13 Source: RBS 年金改革の詳細が発表されれば通貨にマイナスに作用し得る。ある特定の報道機 関が 2 週間前に伝えたところによれば、ポーランドの年金改革がほとんど市場に 注目されないまま進んでいる。だがこのことは重要であり、具体的詳細が公表さ れれば市場の反応を引き起こすと考えられる。またその時期は、政府が年金改革 関連法案を正式に制定するときになる可能性が高く、制定は 11 月に実施される公 算が大きい。年金改革の詳細は、個人年金基金(OFE)による海外投資額の上限 とデリバティブ商品の役割に関するものである。ポーランドの年金改革に関する 最終案が 9 月初めに発表されたとき、弊社は、海外投資配分の 5%から 30%への 引き上げが提案されたものの、ポーランド・ズロチへの影響は限定的だろうと指 摘した。その根拠は、現行の基準値である 5%も拘束的ではなかったというもので あった。2013 年半ばにおける OFE による海外投資額は全体の 0.7%であり、海外 投資額が過去最高となったのは 2004 年の 2.2%のことである。したがって、上限 の引き上げは意味を持たないはずであった。また、海外投資意欲が欠如している 主な要因は、OFE がデリバティブ商品を利用できず、よって外貨エクスポージャー に対して基金を保護できないことであった。政府はこの点を変更する意志がない ことを明示している。よって弊社は、年金改革はポーランド・ズロチに対して中 立であると結論付ける。とはいえ、政府は 2 週間前に年金改革法案を示すととも に、OFE にデリバティブ商品の利用を許可する「可能性がある」と発表した。最 終的な法律制定の詳細によっては、これはむしろ通貨に重要な影響をもたらすだ ろう。過去には OFE の資産総額の 40~50%を占めていた国債への投資という選 択肢が残されていない状況で、海外投資の機会は魅力的に見えるだろう。これに 伴うフローの影響は、ズロチにとってマイナスだろう。弊社では、年金改革に関 する議会の協議が始まるのに伴い、向こう数週間にわたりこれらのテーマが台頭 するだろうと考えている。 RBS CEEMEA Research, Abbas Ameli-Renani (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) ロシア・ルーブル 未知の領域 月次経済指標 Current account, $bn Trade balance, $bn 90 70 Net capital flow, $bn Exports, % y-o-y Imports, % y-o-y 50 30 10 -10 -30 -50 1Q07 1Q08 1Q09 1Q10 1Q11 1Q12 1Q13 Source: RBS CEEMEA 経常黒字額は 2013 年第 3 四半期に急減してわずか 11 億ドルとなった。弊社は 10 月 4 日付けレポートRussia | Russian tourists fuelled RUB sell-off in 3Q 2013(ロ シア|ロシア人旅行者が 2013 年第 3 四半期のロシア・ルーブルの急落を刺激)の 中で、サービス輸出部門の予想外に堅調な業績や粗利益の本国送金率の高さが経 常収支の悪化の主な要因であると指摘した。一方、最新の貿易統計は貿易黒字の 拡大を示唆している。輸出伸び率は第 3 四半期に前年同期比 3.5%に加速した一方、 輸入は実質的に横ばいとなった(同 0.1%)。輸出需要の段階的な回復と穀物輸出 の再開に支えられて、輸出は今後数ヵ月にわたり改善すると予想される。冬に炭 化水素の需要が増大するといった季節的要因もまた、目先で輸出を押し上げる見 通しだ。それでもなお、経常黒字の急減を背景に、ロシア・ルーブルは一度限り の要因(配当の本国送金など)による影響にこれまで以上に脆弱な状態となって いる。これは通貨バスケットに対する最近のロシア・ルーブルの冴えないパフォー マンスを説明し得る。ロシア中銀は最近、準備積立金のために外貨購入を始めた が、その規模はやや控えめであるため、長引くロシア・ルーブル安の要因である とは考えられない。 Research forecasts, CBR Page 19/30 ロシア・ルーブル 投資収支データにはレバレッジ削減の兆しが見られない。対外借り入れ市場の厳 しい環境をよそに、第 3 四半期における銀行セクターの対外債務は前期比で 0.9% 増加するにとどまった(これに対して銀行セクター以外の対外債務は前期比 2%の 増加)。一方、投資収支の赤字はかなり控えめの 30 億米ドルとなった。ロシアの 企業が確信を持って新規株式公募(IPO)およびユーロ債の発行を発表しており、 正味の資本流出は第 4 四半期には抑制されよう。海外投資家のロシア国債に対す る投資意欲が復活すれば、証券投資の流入が回復するだろう。ロシア中銀は最近、 2013 年の純資本流出額の予測を 700 億米ドルから 600 億米ドルに引き下げた。 高頻度の経済指標 % y-o-y 20 15 10 5 0 -5 Retail sales -10 Real wages -15 Industrial production D Au ec -0 7 g08 Ap r-0 D 9 ec -0 Au 9 g1 Ap 0 r-1 D 1 ec -1 Au 1 g1 Ap 2 r-1 3 -20 Source: RBS CEEMEA Research, Rosstat CPI 上昇率とロシア中銀の政策パラメー タ 16 % YoY 14 12 CPI inflation CBR range, lower bound CBR range, upper bound Overnight repo rate, % 10 8 政策金利は向こう数ヵ月にわたり据え置かれる公算が大きいが、冬に 25bp 引き 下げられる可能性も除外できない。消費者物価指数(CPI)の週間予想に基づくと、 10 月の CPI 上昇率は前月比 0.4~0.5%となる可能性が高い。この場合、総合 CPI の上昇率は 10 月にはロシア中銀の目標レンジである 5~6%を上回るだろうが、 弊社は依然として、年末までには低下して目標レンジ内におさまると予想してい る。ロシア中銀はインフレ期待がなお高止まりしいるとの推定を示すとともに、 インフレ期待の低下が観測されるまでは利下げしない意向を示している。弊社の 見解では、インフレ期待は 2014 年初めまで高止まりする可能性がある。中銀が 2014 年の目標値を 4.5%から 5%に上方修正したことを受け、総合 CPI が新たな 目標を下回ると見られる 2014 年第 2 四半期に政策緩和が実施される可能性が増大 している。だがそれまでは、中銀の政策は据え置かれる公算が大きいため、ロシ ア・ルーブルのキャリーの妙味を支える材料にはなるまい。 ロシア中銀は 2015 年までにインフレ率を目標水準に近付けるための手段を講じて いる。10 月 8 日、ロシア中銀は通貨バスケットに対する現在の 7 ルーブルの変動 許容幅を調整することを発表した(詳細は 10 月 8 日付けレポートRussia | CBR widens no-intervention sub-band to 3.1 roubles(ロシア | ロシア中銀は介入を行 わない下位変動許容幅を 3.1 ルーブルに拡大)を参照)。また中銀は 10 月 21 日 に、1 日当たりの為替介入「目標」額を 1 億 2,000 万米ドルから 6,000 万米ドルに 減額した。この数字をもとに為替介入累積額が算出されており、中銀が変動許容 幅を然るべき方向に 5 コペイカ拡大するには、累積額が 4 億米ドルに達する必要 がある。こうした変更により、ロシア・ルーブルが厳しい硬直化または軟化の圧 力を受けた場合には、中銀が変動許容幅をシフトする頻度は増えるとみられる。 これらの変更はすべて、ロシア・ルーブルの下落または上昇ではなく、その変動 性を高めることを目的としている。向こう数ヵ月で中銀は為替介入額を段階的に 減額していき、介入を行わない下位変動許容幅を拡大するものと予想される。 6 4 2 8 09 09 10 11 12 12 13 14 -0 lrtay Feb ec ep Jun Ma ec Oc Ju S D D M Source: RBS CEEMEA Research forecasts, CBR, Rosstat 弊社は、ロシアの 2013 年の GDP 成長率予測を 2.2%から 1.7%に引き下げた。高 頻度の月次経済指標は、同国経済が第 3 四半期にも引き続き停滞していることを 示唆している。好ましいベース効果と、輸出需要および固定資本投資の回復は第 4 四半期の成長回復を後押しするだろう。ロシア中銀が無担保融資の急激な拡大を 抑制するためのプルデンシャル政策を導入し、政府が 2014 年の民間部門の賃金凍 結を計画している状況で、消費需要は減速するものと予想される。政府が規制対 象の公共料金の一部凍結を計画していることもまた、2014 年の固定資本投資の伸 びを抑制する可能性が高く、そうなれば輸入財への需要も抑圧されよう。輸出の 回復に加えて、 こうした動向は向こう数ヵ月の経常黒字の拡大につながるだろう。 弊社では、2 通貨バスケットに対するロシア・ルーブルについて明るい見通しを維 持するとともに、対米ドルのロシア・ルーブル相場について強気見通しを追加す る(いずれも期間 6 ヵ月とする)。 資本流出が一部反転することから、ロシア・ルーブルは 2013 年末までにさらに上 昇する可能性がある。新興国市場からの資金逃避はシリア危機の最中の 8 月に加 速し、季節要因により毎年生じている第 3 四半期のロシア・ルーブルの下落に拍 車を掛けた。ロシア中銀は今夏の初め以降、7 ルーブルの変動幅を 12 回の段階的 措置で計 60 コペイカ分上方にシフトせざるをえなかった。今では米国によるシリ アへの軍事攻撃のリスクが後退し、FRB が近い将来に緩和縮小を行なわないこと を決定したため、ロシア・ルーブルはこの 1 か月で、2 通貨バスケット(ユーロと ドルで構成)に対して 4%戻した。ロシア・ルーブルの為替レートは、ロシア中銀 による 1 日当たりの外貨売却額が最大 7,000 万ドルに設定される変動幅の下限内 に留まっているとはいえ、1 日当たりの介入額が最大 2 億ドルに設定される変動幅 Page 20/30 ロシア・ルーブル の下限をすでに離れている。ロシアの輸出業者が月末の納税前に為替取引のため に市場に戻ってくることも、今後数日間における対通貨バスケットでのロシア・ ルーブルの上昇をさらに後押しするだろう。 7 月の貿易統計は、ルーブル安がファンダメンタルズ要因によっては正当化され ないことを裏付けた。速報値によれば、8 月の輸出は前年同月比で 5%近く増加し た(3 ヵ月ベースでは前年同期比 4.0%の増加)一方、輸入の伸びは減速した(3 ヵ 月ベースで前年同期比 0.7%の減少)。12 ヵ月ベースの貿易黒字は 7 月の GDP 比 9.1%から 9.3%に増加しており、原油価格の上昇と穀物輸出の回復による恩恵を受 けて今年下半期はさらに改善すると弊社は予想している。世界経済が回復の兆候 を見せていることも、ロシアの輸出需要にとって好材料と言える。資本市場は 9 月に再び新興国の優良な借り手に解放されており、対外借り入れの再開は投資収 支面でロシア・ルーブルを下支えしよう。ロシア国内債券対する非居住投資家の 関心が再び高まっていることも資本の逃避を食い止める一助となるだろう。 ベース効果の好影響と穀物収穫量の増加により、2013 年下半期の経済成長率は上 向く見通しである。2013 年上半期のロシア経済は、景気後退に陥る寸前であった。 鉱工業生産は年初来 8 ヵ月にわたり停滞した一方、小売業売上高の 3 ヶ月平均伸 び率は前年比 3.5~4.0%と概ね安定的であった。家計消費は、実質賃金が前年比 で 5~6%伸びたことやリテールでの与信拡大が続いたことにより、年初来成長率 の唯一のけん引役となった。2013 年 GDP 成長率に関する修正後の公式予想は 1.8% だが、やや悲観的過ぎるかもしれない(弊社の予想は 2.2%)。弊社は、今後数ヵ 月で経済指標が上振れする余地があるとみている。 ロシア中銀が 10 月に利下げを実施するとはもはや予想されず、政策における緩和 バイアスも急速に後退しているようだ。ロシア中銀は 9 月の金融政策決定会合で、 インフレに対処する中央銀行としての実績を確認した一方で、総合消費者物価指 数(CPI)が今年の目標レンジである 5~6%をなお上回っている(8 月の総合CPI は前年比 6.5%)ことを理由に利下げを見送った。これは第 2 四半期のGDP成長率 が前年比わずか 1.2%へと減速したにもかかわらずである(詳細はRussia | CBR leaves policy on hold and overhauls its monetary policy toolkit(ロシア | ロシア中 銀は政策を据え置き、一連の金融政策手段を見直している)を参照されたい)。 2014 年の政策金利の見通しは、規制対象の公共料金の物価スライド制(指数化) に関する政府の最終判断にかかっている(9 月 11 日付けのRussia | To cut or not to cut?(ロシア | 切り下げるべきか否か)を参照)。メドベージェフ大統領は 2014 年の公共料金を凍結することを提案しており、それにより 2014 年の平均総合CPI は、ロシア中銀の広範な目標レンジ 3~6%の中間である 4.5%近くになると予想 される。しかしながら、この凍結案は強い権限を持つ国営企業からの猛烈な反対 にあっているため、政府が承認した現行の 2014 年度予算案は、2013 年の総合CPI (6%と設定)に 0.7 を掛けた比率を基に、公共料金の物価スライド制(指数化) を採用している。ロシア中銀は、これに伴い 2014 年の総合CPIが 0.5%ポイント 上昇するだろうとみており、公共料金が上昇し続けた場合には政策の引き締めを 維持する必要があると警告している。弊社独自のインフレ・モデルによれば、ロ シア政府が公共料金を 0.7 倍したものを物価連動させた場合、2014 年の平均総合 CPIは前年比 4.7%となり、目標値を若干上回ると予想される。弊社は今後 12 ヵ 月で総合CPIは、食品価格の急落を主な要因として 2%ポイント下落すると見込ん でいるが、向こう 6 ヵ月に関しては金融政策を据え置きにする可能性が高まって いると見ている。当面のところ、ロシア中銀の金利政策はロシア・ルーブルを下 支えし続けている。弊社は向こう 6 ヵ月の見通しにおいて、通貨バスケットおよ びユーロに対するロシア・ルーブルでは強気見通しを取っている。 Page 21/30 トルコ・リラ RBS CEEMEA Research, Tatiana Orlova (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) トルコ・リラ 当面はレンジ内を推移 トルコ中銀はインフレ予想を再び上方修正したが、これは想定の範囲内であった。 中銀はインフレ報告を更新し、年末のインフレ予想を修正した。第 4 四半期の報 告において、中銀は年末時点の総合消費者物価指数(CPI)の予想を 7 月時点の 6.2%から 6.8%(6.3~7.3%のレンジ)に引き上げた(7 月時点の予想は今年初め 時点の 5.3%からの引き下げ)。この発表は、こうした動きを示唆する中銀の最近 のシグナルが事前に発されていたこと、また年末のインフレ予想を 6.8%に修正し た中期見通しに一致していたことから、弊社と市場のいずれにとっても想定外で はなかった。中銀は 2014 年のインフレ予想を 0.3%引き上げて 5.3%とした一方 で、インフレが中期的には 5%前後に安定するとの見通しについては変更していな い。おそらくより興味深いのは予想されるインフレ率の軌道だが、エネルギー価 格のベース効果により現時点では不安定かつ変動しやすいものになると予想され る。これは総合インフレ率の持続的な低下基調を予想していた 7 月の報告時点と は対照的である。 弊社の見るところ、インフレ予想の修正は十分でない。トルコ中銀は第 3 四半期 における未加工食品価格の調整が予想を下回ったことを受けて、インフレ見通し には上振れリスクがあり、基本予想の 6.8%が未達に終わる可能性があるとの見解 を示した。未加工食品価格の軌道(中銀によればその変動性は他の国よりも 3~4 倍大きい)が懸念材料であるとの見方に弊社は同意しており、昨年末には食品価 格がインフレ率に好影響をもたらしたことを考えればなおさらそう言える。さら に、中銀は引き続き為替相場のインフレ率への波及効果を弊社の予想(24%)よ りも低い 15%弱と過小に見積もると考えられるため、リラ安が続けばインフレ率 の上昇につながるかもしれない。したがって、弊社は年末時点のインフレ率予想 を 7.8%に据え置く。市場もまたこの見方に移行しており、最新のインフレ期待調 査では 7.4%と予想されている。 中央銀行が他の変数を注視していることを踏まえ、 弊社は CPI が中期的に硬直性を維持し、6.5%を上回る水準にとどまると予想して いる。この水準であれば国内投資家も安心感を抱くだろう。 インフレ率は年末まで変化しない 公算が大きい 10 9 Interest rate corridor Benchmark rate CBRT ave funding rate 8 7 6 5 4 3 Jan-13 Apr-13 Jul-13 Source: Oct-13 RBS, Bloomberg 中銀は向こう 1 年にわたり金利を据え置くことを望んでいる。トルコ中銀のバシュ チュ総裁は、インフレ率が抑制されるまでは慎重な姿勢を維持し、金融政策スタ ンスを総じて引き締め寄りとする意向を示した。総裁の発言は「金利は少なくと も年末まで据え置かれ、リラが再び重大な圧力を受けることがない限り利上げは 実施されないだろう」という弊社の見通しを下支えするものだ。バシュチュ総裁 はまた、中銀が慎重な姿勢を保つ中で、リラが上昇する可能性はあるとの見方を 示した。総裁は自身のスタンスを慎重と見なしているが、他の新興国の中銀はよ り一層慎重であり、例えばブラジル、インドおよびインドネシアは利上げを続け ている。こうした国は明らかに、実質金利を上昇させようとしているのに対して、 トルコでは現在、トルコ中銀が考えている以上に国内債券市場の投資妙味が薄れ ている。総裁はさらに、インフレ目標が達成されるまでは政策緩和を期待すべき でないとも発言しており、CPI は 2014 年第 4 四半期までに目標水準に収斂する可 能性が高いため、少なくともこの段階になるまでは政策が緩和される見込みは薄 い。したがって、中銀の基本シナリオは向こう 1 年にわたり金利を据え置くとい うもののようだ。 足元の水準でトルコ・リラについては中立見通しを取り、代わりに南アフリカ・ ランドについてより弱気見通しを取る。5 月に相場下落が始まった時に比べて、投 資家はさほど国内の状況を懸念していないと弊社は考えている。足元の水準は国 内の懸念材料の多くをすでに概ね織り込んでいる。一方で、弊社は同国の財政規 律に加えて、経常赤字がこれ以上拡大する可能性が低いことは信用の観点からす Page 22/30 南アフリカ・ランド るとプラス材料であり、当社がハードカレンシーの中でも南アフリカに対するト ルコのオーバーウェイト・ポジションを選好している理由でもある。投資家の注 目はむしろ、南アフリカ内部の不利な動向に集まるとみられる。南アフリカでは 信用格付の格下げリスクが依然として残っており、先日発表された低調な貿易収 支は弊社の現在の推奨トレードである南アフリカ・ランドに対する米ドルのロン グ・ポジションをさらに支援する材料である。リラに関しては、年末が近づくに つれて投資家が再びFRBによる緩和縮小を懸念し始めれば、リラに重大な圧力が再 び及ぶだろうと考えられる。そのときまでは、米ドル/トルコ・リラ相場は 1.96~ 2.03 のレンジで取引され、世界の環境に変化があった場合に限りこのレンジから 外れると見られる。 RBS CEEMEA Research, Mohammed Kazmi (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) 南アフリカ・ランド 下方リスクを踏まえて、対ランドの米ドルのロング・ポ ジションを維持 (Mohammed Kazmi) 債務の GDP 比率の上昇が懸念される 50% 45% 40% 35% 30% 10/11 11/12 12/13 13/14 14/15 15/16 16/17 Source: RBS, South Africa Treasury 債務水準の上昇は各格付機関にとっての懸念材料。南アフリカのゴーダン財務相 が発表した中期予算声明によれば、今年度の財政赤字予測は GDP 比 4.2%から変 化していない一方、成長率予想は前回予測の 2.7%から 2.1%へと大幅に引き下げ られた。全般的に、財務省は低成長期にもうまく歳出を抑えていたため、弊社は 中期予算声明自体が格下げの引き金を引くとは考えられない。とはいえ、財政に 対してこのところ厳しい目が向けられており、格付機関や国際通貨基金(IMF)は 声明で指摘されている債務の GDP 比率と債務返済コストの上昇に注目する可能性 が高いことを考えると、同国の財務省は両手を縛られた状態に等しいと言える。 こうした懸念に加えて、経常赤字拡大や労働争議などの継続的な問題があること を理由に、弊社は格付機関が南アフリカのソブリン格付を近い将来に格下げする 恐れがあり、Moody’s が格下げに踏み切る可能性が最も高いと見ている。当社の 見解を裏付ける材料として、BMW 社は南アフリカでの最新モデルの生産計画を見 送ることを決定した。これはストライキが投資環境に悪影響をもたらしたことを 浮き彫りにしている。 貿易収支の基調は過去最悪。弊社は南アフリカの対外不均衡が悪化の一途をたどっ ていることを危惧している。例えば、第 2 四半期の経常赤字幅は(4 四半期移動合 計に基づく)、過去最高水準の 2,120 億ランド(GDP 比 6.5%弱)に拡大した。 第 2 四半期には輸出が大幅に改善し、第 1 四半期の前年同期比 9.4%増から同 17% に増大したものの、第 1 四半期の 14%増から第 2 四半期には 19%増となった輸入 の増加がこの大部分を相殺した。輸入の伸び率が高止まりしている主な要因は依 然として機械と車両であり、合わせて輸出全体の 35%弱を占め、南アフリカ政府 が後押ししている投資の原動力となっている。一方で、継続している労働市場の 緊張は海外投資を阻害する可能性が高く、経常赤字の補填にマイナスに作用する だろう。海外からの直接投資(FDI)による赤字の補填が現時点でわずか 5%であ ることを考えるとなおさらそう言える。先日発表された 9 月の貿易統計は安心感 をもたらすものではなく、貿易収支の基調(12 ヵ月移動合計に基づく)が過去最 悪を記録していることを示した。こうした数字は南アフリカのソブリン格付に対 する格下げ方向の圧力を増大させている。 Page 23/30 南アフリカ・ランド 成長を支える財政上の余裕がないことから、金融政策を緩和に据え置く必要性が あることは明白である。したがって、弊社は金利が向こう 1 年にわたり 5.0%に据 え置かれるという見解を変えていない。先日発表された 9 月のインフレ統計によ れば、CPI の上昇率は許容幅の 3~6%の上限に戻っており(弊社はこの水準にと どまると予想している)、南アフリカ準備銀行(中銀)がインフレに関する措置 を講じる必要性は低下している。市場も弊社に近い見方を取っている様子であり、 現時点で金利市場は今後 9 ヵ月における 1%未満の利上げを織り込んでいる。財務 相は中期予算声明の中で、ランドの下落が持続すれば、ランド安により鉱業や製 造業の輸出部門は恩恵を享受するとも指摘している。これは政府と中銀が現在ラ ンド安を望んでいるという当社の考えにも一致している。 ランドに対する米ドルのロング・ポジションを維持する。FRBによる緩和縮小の 先送りと米国政府機関の一部閉鎖が終了したことを背景に、当初こそ新興国通貨 に対する楽観が見受けられたが、これは年末にかけて後退するだろう。弊社は、 緩和縮小が再び投資家心理を圧迫するとみられることから、無差別な新興国為替 市場の変動は今では選別的なアセット・アロケーションに取って代わられると見 ている。こうした環境で、リスク・リターンの観点からランドに対するドルのロ ング・ポジションを選好したい。格下げリスクと中銀の通貨安への希望を踏まえ ればなおさらそう言える。弊社は 10 月 24 日付けのレポートSouth Africa | Downgrade risks remain(南アフリカ | 格下げリスクが残る)において、ランド が対米ドルで最も大幅に上昇しており、新興通貨の中で南アフリカのファンダメ ンタルズが最も悪いことを踏まえて、南アフリカ・ランドに対する米ドルのロン グ・ポジションに着手することを推奨した。弊社は依然としてランドのさらなる 上昇余地があると考え、クロス・レートで 10.40 をターゲットとする一方で、ポ ジションを手仕舞う基準を 9.90 に引き上げるとともに、 利益を 1.5%に固定した。 RBS CEEMEA Research, Mohammed Kazmi (Taken from an Independent Research Report, CEEMEA FX Monthly, 1 November 2013) Page 24/30 Invitation to Consider a Derivatives Transaction: This communication is prepared by the sales and trading desk and is marketing material and/or trader commentary. It is not a product of the research department. This material constitutes an invitation to consider entering into a derivatives transaction under U.S. CFTC Regulations §§ 1.71 and 23.605, where applicable, but is not a binding offer to buy/sell any financial instrument. The views of the author may differ from others at The Royal Bank of Scotland plc, The Royal Bank of Scotland N.V. and/or RBS Securities Inc. (collectively "RBS"). This material should be regarded as a marketing communication and may have been produced in conjunction with the RBS trading desks that trade as principal in the instruments mentioned herein. FX 月間見通し-米ドル 2013 年 11 月 1 日 2013 年末の軟調で 2014 年は堅調に 非農業部門雇用者数の伸びが鈍化 Source: Bloomberg, RBS 米ドルの見通しは年末に向けてより厳しくなっている。米国の議会指導部は 9 月 30 日 の期限までに暫定予算案の合意に至らず、10 月 1 日から 10 月 16 日までの間、米国政 府機関の一部が閉鎖された。16 日に債務上限の一時引き上げ法案が成立したことで、 政府は 1 月 15 日までの暫定予算が確保され、債務上限も 2 月 7 日まで引き上げられる こととなった。これで米国の政治問題は 2014 年まで棚上げされたことは確かだ。2014 年初めには中間選挙の予備選挙が始まるものの、年末から 2014 年初めにかけての財政 協議において、両党が今回と比較して多少なりとも歩み寄るかは定かではない。 400 300 200 100 0 -100 -200 May-10 May-11 May-12 NFP Change - 3-month Moving Average 米国 10 年国債利回り Source: Bloomberg, RBS 9 月の非農業部門雇用者数は僅か 14 万 8,000 人の増加に止まったことは、政府機関閉 鎖の実施前に既に労働市場が減速し始めていたことを示すものであった。政治リスク が高く、雇用の伸びが鈍化するという環境下にあって、FOMC が 12 月に資産買い入れ 縮小に踏み切る可能性は低いと弊社はみている。経済指標の発表が延期され、今回の 財政協議の難航が企業と消費者の心理に与える長期的な影響が不透明であるため、 FOMC にしても、仮に雇用関連指標が改善し始めたとしても、2014 年まで労働市場が 持続的かつ実質的な回復の道を辿るかを見極めるのは困難だろう。 リスク回避ムードが大幅に高まらなければ、米ドルが上昇傾向を再開するには、米国 の雇用データが顕著な改善を見せる必要があるだろう。弊社は年末に向かって米ドル は主要通貨に対し弱含むと予想しているが、他の G10 諸国の中央銀行がドル安による 自国通貨高に対する懸念を強めることは、米ドル安に歯止めをかける要素となるだろ う。 3.05 2.85 2.65 2.45 2.25 1-Sep-13 22-Sep-13 13-Oct-13 US 10-Year Yield 5 年物スワップ金利スプレッドに劣後す る米ドル指数 DXY FRB Flow of Funds, BEA, RBS 86 0.7 84 0.5 0.3 82 弊社は 2013 年末に向けて米ドルの見通しを小幅下方修正したが、 2014 年に入れば米 ドルは再び上昇し始めると予想している。来年初めに FOMC による資産買い入れ縮小 のリスクが再来すれば、米ドルは上昇傾向を再開すると弊社は予想している。一方、 ユーロ圏の経済成長は勢いに欠ける状況が続き、英国の景気回復基調も夏の過熱モー ドからは減速していくと予想される。対新興国通貨での米ドルに対する弊社の見通し は、新興国各国の相対的なファンダメンタルズが決定要因だ。FOMC が金融緩和のペー スを徐々に縮小するに従い、新興国のリスク・リターン特性に関し、投資家の間の選 別色は一層高まると予想され、経常収支が黒字で実質金利が高い新興国が選好される だろう。 Brian Daingerfield RBS FX Forecasts 0.1 80 -0.1 78 76 Jan-13 May-13 USD Index Sep-13 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 1.390 1.377 1.320 1.280 -0.3 EUR/USD 1.349 -0.5 USD/JPY 98.8 98.0 100.0 105.0 110.0 GBP/USD 1.591 1.628 1.620 1.571 1.552 USD Index Weighted 5-year Swap Rate Contacts: Flavia Cattan-Naslausky Latam FX Trading Strategist +1 203 897 6348 [email protected] Brian Daingerfield FX Trading Strategist +1 203 962 3792 [email protected] www.rbsm.com/strategy カナダ・ドル カナダ・ドル 消費者物価指数はターゲットレンジの 下限 Source: Bloomberg, RBS 4 3.5 3 2.5 2 1.5 1 0.5 0 Jan-11 Oct-11 Jul-12 金融政策は中立スタンスに 10 月の理事会でカナダ中銀(BoC)はハト派の方向に政策の舵を切ったが、BoC は緩 和寄りというより中立の政策姿勢をとったと弊社は判断している。従来の経済見通し において、BoC は、家計の負債積み増しと住宅建設の抑制を狙ったマクロ健全性措置 が、消費及び住宅セクターの成長への貢献を減じる可能性があることを認めながらも、 輸出や設備投資の回復がこれらを補うことを期待していた。今のところ、輸出や設備 投資はいずれも BoC の期待を下回る水準が続いている。BoC は 2014 年の GDP 成長 率見通しを 2.7%から 2.3%に引き下げた。これは、マックレム BoC 上級副総裁が主張 する、カナダ経済が需給ギャップを有意に縮小するために必要な 2.5%を下回っている。 また、BoC は、徐々に金利の正常化が求められるいう文言を声明から削除した。 Apr-13 Canada CPI (% y/y) カナダのコモディティのアウトパフォー マンスは終焉 Source: Bank of Canada, Bloomberg, RBS BoC は 2014 年の経済予想を修正した一方、インフレ見通しの大幅な変更は行わなかっ た。実際、最新の経済見通しではインフレの下振れリスクを強調しながらも、BoC は、 インフレは 2015 年末までにターゲットレンジである 1~3%の中央値である 2%に徐々 に接近するとの予想を維持している。一方で、緩和的な金融政策により、再び家計負 債が増加し住宅建設が活性化することを引き続き懸念している。声明における文言の 変化で、BoC の利下げの可能性が出てきたものの、予測期間内に BoC が利下げを実行 する可能性は依然低いと弊社はみている。 330 700 310 650 290 600 270 550 250 Jan-12 Aug-12 Feb-13 Sep-13 Bank of Canada Commodity Index CRB Commodity Index 米ドル/カナダ・ドルと 5 年物スワップ 金利スプレッド Source: Bank of Canada, Bloomberg, RBS -0.1 1.06 BoC がハト派の方向に舵を切り、より中立的な政策見通しシフトしたことにより、カ ナダ・ドル相場は短期的に弱含むだろう。弊社も BoC の中立スタンスに鑑み、米ドル /カナダ・ドル相場予想を上方修正した。ただし、弊社は、米ドル/カナダ・ドル相場が 水準を徐々に切り上げながらレンジ内で推移するという長期にわたって維持してきた 見通しは堅持する。短期的には、米ドル見通しと FRB の量的緩和プログラムの行方が、 米ドル/カナダ・ドル相場の材料となるだろう。雇用の増加ペースは減速しており、FRB も金融緩和のスタンスを変更する可能性が低いことから、米ドルの下落が予想され、 年末の米ドル/カナダ・ドル相場は、弊社の予想レンジである 1.03~1.06 の下方水準を 予想している。2014 年は、経済成長のモメンタムが改善し、債務問題の足枷が外れ、 FOMC が資産買い入れの縮小に着手することで、米ドルの見通しは改善するだろう。 資産買い入れ縮小で資金流出が起これば、カナダ・ドル相場は影響を受けることにな るが、米国の経済成長の拡大は、とりわけ他のコモディティ輸出国との比較すると、 カナダ・ドル相場の支援材料になるものと思われる。 Brian Daingerfield -0.3 1.04 -0.5 1.02 1 -0.7 0.98 -0.9 0.96 Jan-12 -1.1 Jul-12 Feb-13 Sep-13 USD/CAD US - Canada 5-Year Swap Rate Spread RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 USD/CAD 1.044 1.040 1.050 1.060 1.060 EUR/CAD 1.408 1.446 1.446 1.399 1.357 CAD/JPY 94.57 94.23 95.24 99.06 103.77 Page 26/30 メキシコ・ペソ メキシコ・ペソ 現実の政治の前にモメンタム失速 鉱工業生産指数は米国に劣後 Source: INEGI, US FED 10 10 5 0 0 -5 -10 -5 Index Index 5 -15 -10 -20 Jan-08 Nov-09 Mexico Sep-11 Jul-13 US 金融情勢指数の動き Source: Banxico, RBS 4.0 Tight 3.0 2.0 1.0 0.0 -1.0 REER Real rate FCI -2.0 -3.0 -4.0 Aug-03 Jul-06 Jun-09 May-12 消費者信頼感指数 主要新興国の例にもれず、メキシコもまた、グローバルの流動性サイクルの成熟期に あって、低成長と政策の柔軟性の限界の板挟みとなっている。このジレンマは、10 月 にメキシコ中銀(Banxico)が利下げ幅を 25bp にとどめ、より積極的な 50bp の利下 げに踏み切らなかったことにも現れた。金融政策決定会合でも、経済成長の下振れリ スクは主要課題となっており、特に、労働市場の低迷が注視されている。2014 年は、 概ね米国を中心とする外需によって経済活動の足取りが幾分回復すると予想されてい るものの、建設セクターに関連する同国固有の問題と財政改革が景気に与える影響を 与えるのか不明確であり、 中期的な持続的な景気回復には不透明な状況が続いている。 議会で審議中の改革案の内容については意見の対立がある。改革案は、とりわけ完全 に実施するのでなければ、メキシコの潜在成長力を実質的に高めることはできないと いうのが弊社の見解だ。主要政党内において意見の相違の拡大で政府の改革に向けた 取り組みへの支援は骨抜きになったことや、これまでの政府の施策に対する市民のデ モ運動の気運が高まったことにより、政治的な勢いは失われている。財政改革は、特 に所得税の引き上げによる消費への影響を通じて経済成長にマイナスの効果を及ぼす ため、改革案の採決が行われる来年早々にかけて、政党間の攻防は激化する可能性が ある。このため、Banxico はハト派的スタンスを維持する可能性が高い。 海外については、Banxio の声明の中でより保守的かつ慎重な物言いがなされたのは、 資産買い入れ縮小のタイミングの不透明性からボラティリティが増した米国の金利市 場についてであった。メキシコ・ペソの実質実効為替レートの低下とインフレ期待の じり高による実質金利の下落があいまって、金融情勢指数は再び下落し始めた。金融 情勢指数は 4 ヵ月連続で下落し、金融環境の弛緩が示唆された。米国の経済成長が良 くても潜在成長率の水準であることに対し、メキシコの足元の実質金利の水準や、改 革案が部分的な実施にとどまりメキシコの潜在成長力が低下することを踏まえると、 Banxic がそれほど積極的な緩和策をとらなかったことは、短期的にはメキシカン・ペ ソの支援材料となるだろう。25bp の利下げを決定したことは、将来必要あれば追加利 下げを行う余地を留保したともいえる。次の政策決定は、緩和縮小に関する FRB のシ グナルや、エンリケ・ペニャニエト政権の財政改革の最終案に左右されるだろう。 Source: INEGI 101 97 93 89 85 J an-11 A ug-11 M ar-12 Oc t-12 M ay-13 低い実質金利は、メキシカン・ペソが新興国通貨をアンダーパフォームすることを示 唆している。メキシコの経済成長見通しは相対的に見て軟調なものであるため、メキ シコ・ペソは引き続き経済の主要な調整弁になるだろう。夏が終わるまでに改革プロ セスが進展しなかったことは弊社にとっては失望されることであり、これを手掛かり に、向こう 12 ヵ月間の米ドル/メキシカン・ペソ相場の見通しを引き上げた。 Flavia Cattan-Naslausky RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 USD/MXN 13.08 12.80 13.00 13.00 12.50 EUR/MXN 17.63 17.79 17.90 17.16 16.00 Page 27/30 ブラジル・レアル ブラジル・レアル 政策ミスを翻弄され 中央銀行のスワップ契約償還予定 Source: BCB, RBS U SD b n 12 9 6 3 Oct-14 Aug-14 Jun-14 Apr-14 Feb-14 Dec-13 0 外国為替資金純流入額と国内銀行の スポットポジションの比較(10 億米ドル) Source: BCB, RBS 15 N e t F X i n fl o w s , l o c a l b a n k s lo n g U S D 9 3 -3 N et FX o u tfl o w s , lo c a l b a n k s -9 -1 5 41278 41361 N e t F X fl o w s 41453 S p o t p o s i ti o n 金融環境指数 Source: BCB, RBS 4.0 3.0 2.0 REER Real rate FCI Tight 1.0 0.0 財政収支目標はブラジルの政府当局者によって更に曖昧なものとなったことで、弊社 の懸念は現実のものとなった。足元の財政政策は「中立」スタンスであると強く主張 する一方で、基礎的財政収支を構造的に黒字化すれば財政政策の十分な支えとなると している。こうした考えによると、政府は前年度並みの構造的な基礎的財政収支の水 準を達成すれば、より広範な(非構造的)基礎的収支が変動しても、現行の金融政策 にとっては実質的には取るに足らない問題となる。ブラジル中銀(BCB)は、インフ レで需給のギャップが解消されるとの予測とともに、基礎的財政収支の黒字化の重要 性を改めて表明した。ただし、こうした議論では、基礎的財政収支の黒字幅と対 GDP 債務比率の低下傾向の結びつきについては重視されていないようだ。財務省と BCB 間 での政策立案は今や綱渡りの様相を呈してきたといえよう。 金融政策は誤った財政政策の食い違いに阻害されているため、BCB は景気対策として インフレターゲットを一層重視していくものと弊社は予想している。ただし、低成長 の景気見通しにより、利上げは BCB にとって難しい選択となっている。BCB が出した 最近の声明からは、政策金利(Selic)を 10%を大きく上回る水準に引き上げることは およそ考えにくい。インフレと財政政策の双方の目標を広いレンジに維持する限り、 BCB は当面の政策決定において経済指標を重視するスタンスを維持していくものと弊 社は予想している。 ブラジル・レアルは海外の情勢を睨む展開になるものと思われ、短期的なトレンドは 株価の上昇とドル安に左右されるだろう。いよいよ 11 月に国内のエネルギー価格が引 き上げられる可能性があるため、通貨高は短期的にはインフレ緩和に働くだろう。こ のため、毎月満期を迎える多額の為替スワップ契約の一部がロールオーバーされる可 能性は高まる。金融取引や事業関連の為替の資金フローは依然低調が続いており、イ ンフレ動向も概ね軟調であることから、これらの為替スワップ契約のロールオーバー に関する選択肢は限定的といえる。このため、年末に向けて、レアルは 2.15~2.25 の 狭いレンジでの推移が続くことが予想される。 大統領選を 1 年後に控え、政局は白熱化し始めている。10 月初旬に、ブラジル社会党 (PSB)は予想外な動きを見せ、労働者党(PT)に大きな打撃を与えた。新党「サス テナビリティ・ネットワーク」からの正式な大統領選出馬に必要な数の有権者の署名 を確保できなかった、マリーナ・シルバ氏の入党を発表したのである。この予想外の 入党は、現与党である PT にとって、最大の脅威になるだろう。政治的な試練は党派色 を強めている PT 政府を覚醒させる特効薬になる可能性がある。ブラジルに関しては、 弊社を含め、市場は弱気一色となっていることから、弱気な見方を変える可能性のあ る材料であれば何であれ、ブラジル・リスクには最終的にプラスに働くだろう。Flavia Cattan-Naslausky -1.0 -2.0 -3.0 Mar-04 Sep-06 Mar-09 Sep-11 RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 USD/BRL 2.25 2.20 2.26 2.27 2.28 EUR/BRL 3.04 3.06 3.11 3.00 2.92 Page 28/30 チリ・ペソ チリ・ペソ グローバル・サイクルとの相関性が顕在化 金融環境指数 Source: BCB, RBS 3.0 チリ・ペソを選好するファンダメンタルズの理由は多数あるが、中でも他の新興国と 比較して実質金利が高いことと為替水準が過大評価されていないことが筆頭に挙げら れる。ただし、この数週間に関しては、こうした理由でペソのロングポジションを取 るのは誤りであった。成長リスクへの政策的対応や中国の景気減速懸念が、ペソのファ ンダメンタルズ面での強みを圧倒したのである。 T ight 2.0 1.0 0.0 -1.0 -2.0 -3.0 -4.0 J an-07 J an-09 R EER J an-11 J an-13 R eal rat e FCI 鉄鋼・銅価格の推移 Source: Bloomberg, RBS ひと月の間にリスクバランスに大きな変化が起こった兆候などは見当たらなかったに もかかわらず、10 月中旬にチリ中央銀行(BCCH)は予想外の 25bp の利下げを実施し た。インフレ見通しの小規模な変更は、24 ヵ月のターゲット期間の間にインフレ率を 長期目標の 3%へ徐々にシフトさせるという、ほんの僅かな修正に過ぎないものの、こ れにより、インフレ率は、現在の目標以下の水準から目標水準に変更されることとな る。FRB の資産購入の縮小の先送りを背景に、潤沢な資金状況が当初の想定よりも長 期間続くと思われることに加え、インフレのターゲット水準到達がこれまで予想して いたよりも長期間かかることが、最終的に BCCH に利下げを決断させたものと推察さ れる。ただし、フォワードガイダンスは示されず、今後の金融政策は経済指標を注視 していくものと思われる。 120 110 100 90 80 70 Jan-12 Jul-12 Steel Jan-13 Jul-13 C o pper 2013 年の財政収支は均衡する見込み Source: BccH 2% 0% 正しい懸念かどうかは別として、最新の中国の経済指標から、経済成長に対する懸念 が高まったのは確かである。中国の鉄鋼価格の下落は今のところ鉄鉱石価格まで波及 していないものの、前者は中国の景気を判断する上で適切な指標であり、コモディティ 通貨の相場にも影響を及ぼす。ペソはコモディティ通貨の中では最も流動性が低い通 貨のひとつであるが、チリ市場の開放性の水準は極めて高い。このことが、カナダ・ ドルや豪州ドル、ニュージーランド・ドル、ブラジル・レアルと比較してペソの下落 幅が最も大きかったことの理由であろう。中国の経済指標が改善するまでは、ペソは 新興国のコモディティ通貨に対し劣勢が続くだろう。国内政策に関しては、9 月の個人 消費は減速したものの、実質ベースの小売売上高は前年同月比 9.8%と依然高水準にあ り、雇用市場の状況にも減速の兆しは見られない。今年の GDP 成長率は、昨年の 5.55% から下落して 4.30%との予想が維持されている。 G チリの大統領選挙が 11 月 17 日に迫っている。世論調査によると、コンセルタシオ ンのバチェレ前大統領が 44%の支持率で、二番手のアリアンサのマッティ候補の 12% を大きくリードしている。現職のピネェラ大統領の支持率が極端に低いことが、マッ ティ候補の低支持率の一因とされている。選挙後は、景気の減速懸念から、特に財政 および教育分野でバチェレ氏が提案するとみられる政策に対し懸念が生じるだろう。 前者は、利益の再投資に対する企業への給付の廃止(成長にマイナス)に関するもの で、後者は教育関連の助成金(財政にマイナス)に関するものである。最終的には、 この決定は成長トレンドに左右されるが、バチェレ氏は前回の任期ほど保守的ではな いというのが大方の見方である。Flavia Cattan-Naslausky -2 % -4 % -6 % 2009 2010 2011 2012 2013 2014 Fis ca l b a la n ce S tru ctu ra l b a la n ce RBS FX Forecasts 1/11/13 Dec-13 Mar-14 Jun-14 Sep-14 USD/CLP 515.8 500.0 500.0 510.0 515.0 EUR/CLP 695.6 695.0 688.5 673.2 659.2 Page 29/30 チリ・ペソ Contacts David Simmonds Head of Currency Strategy +44 20 7085 2455 [email protected] Greg Gibbs Senior FX Trading Strategist + 65 6518 5770 [email protected] Paul Robson Senior FX Strategist +44 20 7085 6125 [email protected] Drew Brick Head of Market Strategy, Asia-Pacific +65 6518 6160 [email protected] Flavia Cattan-Naslausky Latam FX Trading Strategist +1 203 897 6348 [email protected] Melinda Burgess FX Trading Strategist +44 20 7678 6957 [email protected] Brian Daingerfield FX Trading Strategist +1 203 962 3792 [email protected] Brian Kim FX Trading Strategist +1 203 897 6402 [email protected] Nick Mannion FX Trading Analyst +44 20 7085 6400 [email protected] Abbas Ameli-Renani Emerging Markets Analyst +44 20 7085 1348 [email protected] Mohammed Kazmi Emerging Markets Analyst +44 20 7085 0486 Felipe Hernandez Latam Economist +1 203 897 4867 [email protected] [email protected] www.rbsm.com/strate 本資料は情報提供のみを目的としてロイヤルバンク・オブ・スコットランド plc および関連会社(「RBS」)が作成したものであ り、有価証券・金融商品の売買の申し出もしくは売買の申し出の勧誘、または特定のトレーディング戦略への参加に関する ものではありません。作成者はトレーディング・フロアのデスク・ストラテジストです。本資料は、記載する金融商品について プリンシパル取引を行う RBS トレーディング・デスクとの連携により作成されたマーケティング情報として位置付けられます。 従いまして本資料の解説は RBS の独占的所有権から独立したものではなく、貴社/貴行の利益と対立する場合があります。 デスク・ストラテジストの報酬は会社の全体的な業績に基づいています。本資料で表明される見解は、投資リサーチ部門を 含む RBS の他部門の見解と異なる場合があります。本資料には、会社のトレーディング・デスクがマーケット・メイクを行う可 能性のある有価証券および関連デリバティブの分析が含まれます。またそれらの有価証券および関連デリバティブは、分析 情報が普及する前にその情報に基づいて構築されるポジションを含め、トレーディング・デスクがプリンシパルとして時を問 わずロング・ポジションまたはショート・ポジションを取る可能性が高いものとなります。トレーディング・デスクは本資料と一致 しないポジションを取る場合もあります。本資料は貴社/貴行に提供される前に、RBS の別の顧客に提供されている場合が あります。本資料で言及される発行体は RBS の投資銀行業務の顧客である場合があります。この関係に基づき、RBS はこ れらの顧客に対し、報酬を受けて資金調達、アドバイス、証券化および引受サービスを過去に提供し、または将来提供する 可能性があります。デスク・ストラテジストは本資料を最新情報に更新する義務は負わないものとします。本資料は表示され た日付の時点においての最新情報です。本資料は信頼性があると考えられる公表データに基づいて作成されているもの の、RBS はデータの正確性または完全性について何らの表明も行いません。RBS は要請があれば追加情報の提供に応じ ます。貴社/貴行に対しては、本資料で言及する有価証券関連の取引に参加する前に、本資料に含まれる情報の適合性と 妥当性を独自に評価し、独立した金融アドバイスの取得を含め、必要と判断された調査を行うことが求められます。 Page 30/30
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