第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 正答 解説 1 超新星にはいくつかの型があるが、極大時の光度がほぼ一定であ ることから銀河の距離の指標に使われ、宇宙論の研究上でも重要 な超新星の型は以下のうちのどれか。 ① Ia型超新星は、白色矮星にガスが積もることで質量が「チャ ンドラセカール限界」に達すると起こる爆発現象である。こ の限界質量が存在するため、生み出されるエネルギーは、 どの超新星もほぼ一定の値をとると考えられている。それ 以外の型は、全て大質量星が進化の最期に起こす重力崩 壊型の超新星である。重力崩壊型超新星の場合、親星の 質量や性質にばらつきがあり、光度はIa型ほどには一定値 にならない。 ③ シリウスのふらつき運動から、シリウスに伴星が存在するこ とを1944年にベッセルが推測し、クラークが1862年に伴星 を発見した。アダムスによる1915年のスペクトル観測から、 シリウス主星と伴星の表面温度がほぼ同じであることがわ かり、それらの結果、太陽と同じくらいの質量がありながら、 半径は100分の1くらいしかない天体が存在することが判明 し、白色矮星と名付けられた。1920年代にエディントンや ファウラーによって、このような高密度天体の理論的研究 が進められ、最終的にチャンドラセカールが白色矮星の内 部構造を理論的に解明した。なお、中性子星の限界質量が 太陽質量の2~3倍くらいになると考えられている。 ③ 情報が伝わる速度は光速度c を超えることができないの で、サイズがR の天体の明るさは、R /c より早く変化できな い。ミリ秒で時間変動するなら、そのサイズはミリ秒×光速 度ぐらいとなり(上限)、300kmぐらいである。はくちょう座X1のブラックホールは10太陽質量程度なので、その10倍ほ どになる。 ③ この広い宇宙の中で、生命が育まれる“第2の地球”は存在 しないのだろうか? 系外惑星の調査が最近盛んである。 これまでに確定された系外惑星総数は1779個に及ぶ (2014年3月現在)。そのうち715個は、2009年から2011年に かけて行ったアメリカ/NASAの系外惑星探査衛星「ケプ ラー」の初期観測データにより確認された。今後も観測が続 けられれば、さらに多くの系外惑星が発見され、“第2の地 球”も特定されるかもしれない。 ①Ia型 ②Ib型 ③IIp型 ④IIn型 2 電子の縮退圧で支えられている白色矮星には、質量の上限(限界 質量)が存在する。その限界質量の記述として正しいものはどれ か。 ①エディントン質量は約1.44太陽質量になる ②エディントン質量は2~3太陽質量ぐらいである ③チャンドラセカール質量は約1.44太陽質量になる ④チャンドラセカール質量は2~3太陽質量ぐらいである 3 図は、はくちょう座X-1のX線光度曲線である。X線の時間変動がミ リ秒で起こるとすると、X線変動を起こしている領域の広がりはどれ ぐらいになるか。 ①3 km ②30 km ③300 km ④3000 km 4 系外惑星とは、太陽以外の恒星を周回している天体のことを指す。 「ホットジュピター」(灼熱の、木星の半分程度の惑星)や「スーパー アース」(地球の数倍程度の惑星)など、様々な形態の系外惑星が 見つかっている。これまでに確認された系外惑星の数として最も近 いものはどれか。 ①10個 ②100個 ③1000個 ④10000個 1 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 正答 解説 5 月のクレーターには、日本人の名前が付けられているものがあり、 日本人の科学者、数学者の名前も見られる。では、次の日本人天 文学者の中で、月のクレーター名に付けられていないのは誰か。 ② ①の木村栄(1870-1943)は、Z項を発見した人で、クレー ター「キムラ」がある。 ③は平山信(1867-1945)と平山清次(1874-1943)という、 小惑星の研究で知られた2人にちなんだクレーター「ヒラヤ マ」がある。 ④の山本一清(1889-1959)は元京都帝国大学教授、東亜 天文学会を創設した人物で、クレーター「ヤマモト」がある。 ②の寺尾寿(1855-1923)は初代東京天文台長であるが、 クレーターの名前にはなっていない。 天文学者にちなんだクレーター名としては、他には、江戸時 代の天文学者麻田剛立にちなんだクレーター「アサダ」など もある。 ② ブラックホールや中性子星連星の合体で発生する重力波を 直接とらえようとする重力波干渉計は、基線長が数kmを要 する大きなレーザー干渉計である。微弱な重力波をとらえ るためには、少しでもノイズを下げる必要がある。ノイズの 原因のひとつは、数Hz帯から数十Hz帯の地面振動である。 山の中(地下)に干渉計をつくった第一の理由は地面振動 が少ないことだ。①のニュートリノは重力波観測にはまった く影響しない。また、KAGRAは全体を低温にして装置の熱 雑音を抑える工夫もする。したがって、地下にあることで温 度調整をするわけではない。 ① 英語のアルファベットは、そもそもギリシャ語のアルファと ベータからきている。ギリシャ語のアルファベット24字(異体 字を入れるともう少し多い)は、星の名前(バイエル符号)だ けでなく、様々な変数で用いられる。小文字だけでも、ぜ ひ、スラスラと書けるようになってほしい。 ③ 星間ガスの相は、温度や密度の状態によって、非常に希薄 で約100万Kの温度をもつ高温ガス(コロナルガス)、温度が 1万K前後の中性水素ガス、同じく温度は1万K程度だが電 離している電離水素領域・HII 領域、温度が100Kぐらいでや や密度が高くなった星間雲、そして10Kぐらいで星間ガスと しては比較的密度が高い分子雲、などに分けられる。 ③ 条件より、曲げられる角度は、 δ =2×3/700000=0.000008571ラジアン=(180/π を掛け て)=0.0004911°=(3600を掛けて)=1.768秒角 ①木村栄 ②寺尾寿 ③平山信 ④山本一清 6 2014年6月、日本が岐阜県に建設している重力波干渉計KAGRA (かぐら)のトンネルが貫通し、マスコミに公開された。KAGRAは、一 辺が3kmもあるレーザー干渉計だが、岐阜県神岡鉱山跡の山中に わざわざ建設した理由は何か。 ①近くにはスーパーカミオカンデというニュートリノ観測装置があり、 実験装置の調整にニュートリノを使うから ②山の中だと地面の振動が少なく、干渉計装置のゆれを押さえるこ とができるから ③山の中だと温度調整が少なくて済むので、レーザー光源のメンテ ナンスに都合がよいから ④強力なレーザー光の発生や、真空ポンプの稼働で、騒音が激し いから 7 ギリシャ語のμ はどう読むか。 ①ミュー ②ニュー ③ミクロン ④エータ 8 星間ガスの諸相について、電離水素領域は図のどこにあたるか。 ①ア ②イ ③ウ ④エ 9 質量M の天体の重力場によって光線が曲げられるとき、天体のシュ バルツシルト半径をr g 、光線が最も天体に近づく距離をa とすると、 弱い重力場近似における曲げられる角度δ は、δ =2 r g /a [ラジア ン]となる。太陽の縁をかすめる光線が曲げられる角度を秒角で表 すと、どの値になるか。なお、太陽のシュバルツシルト半径を3 km、 太陽半径を70万kmとせよ。 ①1.55秒角 ②1.61秒角 ③1.77秒角 ④1.98秒角 2 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 10 銀河系中心のいて座Aまでの距離はおよそ8.1kpcであり、波長 90cmの電波で見ると、そのサイズは約42pcである。このときの「い て座A」の見かけの大きさは、満月のみかけの直径に比べてどの程 度になるか。 正答 解説 ③ 以下の図を参照されたい。満月の見かけの大きさは、約 0.5°であるが、いて座A のサイズはこれよりも若干小さい 様子がわかる。距離と大きさの比より視角度を計算して求 め月のサイズと比較しても良いが、私たちの住む銀河系の 中心領域についての知識として覚えておいてほしい。夏の 天の川(いて座方向)を見る際には、可視光線で見た銀河 系中心の姿に重ねて、電波で観た銀河系中心の構造を想 像してもらいたい。 ①満月の1/10000倍くらいの大きさである ②満月の1/100倍くらいの大きさである ③ほぼ同じくらいの大きさとなる ④満月の10倍くらいに広がっている 『超・宇宙を解く』P.195、図44.1より 11 地球上において、地上に光源をおき、高さH のところで光源からの 光の波長を測定すると、光の波長は重力赤方偏移を示す(波長が 長い方にシフトする)。この重力赤方偏移を測定する際に、以下の どの効果が利用されるか。 ① 「メスバウアー効果」とは、結晶体状のガンマ線放射線源と その吸収体の間に発生する共鳴吸収現象である。放射線 源と吸収体の間に相対的な運動があると、ドップラー効果 により波長が変化するが、たとえわずかな相対運動であっ ても、この共鳴吸収現象は発生しなくなる。この性質を利用 して、重力赤方偏移の検出が可能である。たとえば、地上 から高さH に向かう電磁波の波長が伸びる程度を、吸収体 を下向きに運動させることで吸収するのである。吸収体の 速度を測定することで、重力による赤方偏移を精度よく検 出することができる。メスバウアー効果は、横ドップラー効 果の測定にも利用される。「ゼーマン効果」は、原子から放 出される電磁波スペクトルにおいて、磁場がないときには 単一波長であったスペクトル線が、磁場が存在する場合に は複数のスペクトル線に分裂するという現象である。「トン ネル効果」は、粒子が量子力学的な効果で、ポテンシャル 障壁を乗り越える現象である。「サニャック効果」は、回転座 標系の下で、移動経路および移動方向に依存する形で生 じる時間のずれを指す。この時間のずれとは、相対論的な 固有時のずれ(時間の遅れ)に相当する。 ③ 望遠鏡の角度分解能は観測する光の波長をλ 、望遠鏡口 径をD とすると、λ /D に比例する。したがって、口径D を大 きくすると分解できる角度は小さくなるが、波長λ が長くな ると逆に角度は大きくなる。すばる望遠鏡とALMAの口径の 比は(18.5 km)/(8 m) ~ 2300 だが、すばる望遠鏡は波長約 5.5×10-9 m の可視光を、ALMAは波長約1e -4m のサブミ リ波(電波)を観測するため、この波長の違いによって ALMAの角度分解能はすばる望遠鏡の10倍程度になる。 ③ 金星には固有の磁場が存在せず、電離層は太陽風に直接 さらされている。ただし、(惑星固有の磁場はないものの)不 定形のオーロラが発生する。水星には固有の磁場が存在 する。ただし、大気が無いので電離層がつくられることはな く、その意味で磁気圏と電離層の相互作用は存在しない。 木星や土星には、ハッブル望遠鏡により明瞭なオーロラが 観測されている。天王星や海王星でもオーロラは観測され るが、磁場の中心が惑星中心から離れており、磁場の軸自 体も自転軸から大きく傾いているので、地球や木星のよう な姿とは異なっている。 ①メスバウアー効果 ②ゼーマン効果 ③トンネル効果 ④サニャック効果 12 電波望遠鏡「ALMA」では複数の望遠鏡を組み合わせて、口径18.5 kmの巨大な望遠鏡として使用する。しかし、実際にはALMAの角度 分解能は口径8mの「すばる望遠鏡」よりも10倍程度上がるだけであ る。この理由として最も適切なものを選べ。 ①地球大気の影響で星の像がゆらぐため ②角度分解能には理論上の限界が存在するため ③すばる望遠鏡とALMAとでは観測する電磁波の波長が異なるた め ④すばる望遠鏡では補償光学システムを用いることで限界以上に 角度分解能が上がっているため 13 惑星磁気圏に関する以下の文のうち、正しいものを選べ。 ①金星は地球と同程度の規模の磁気圏をもち、オーロラも発生す る ②水星には固有の磁場は存在せず、磁気圏と電離層の相互作用 というものは生じない ③天王星の磁場はボイジャー2号によって確認されており、強さは 地球と同程度である ④木星や土星も大きな磁気圏をもつが、オーロラが観測されている のは木星のみである 3 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 14 ロッシュポテンシャルにおいて、ラグランジュ点は何個存在するか。 正答 解説 ③ ラグランジュ点とは、ロッシュポテンシャルにおいて、ポテン シャルの極値となる点であり、力が0となる点である。連星 を結ぶ線上に、連星の間に1個、連星の外側にそれぞれ1 個の合計3個、それに、連星の軌道面内で、連星と正三角 形をつくる位置に2ヵ所存在する。したがって、合計5個存在 する。 ③ 太陽の見えている本体を光球(図のA)と呼ぶ。光球の外側 の上空へ向けて温度が増加する領域が彩層(図のB)であ る。彩層上層で、コロナ(図のD)へ向けて急激に温度が上 昇する領域が遷移層(図のC)である。 ③ アーサー・C・クラーク作の①は1979年。チャールズ・シェ フィールド作の②は1979年で、奇しくも独立して同じ題材を 扱ったSFがほぼ同時期に出版された。キム・スタンリー・ロ ビンソン作の④は1992年で、クライマックスで火星の宇宙エ レベータがテロで倒壊する場面を描く。小松左京作の③は 1966年。アルツターノフによる軌道エレベータの実証的考 察が1959年であり、欧米での軌道エレベータに関する情報 普及が1975年のピアソン以降であることを考えると、既にこ の時期に宇宙エレベータ(軌道エレベータ)を登場させてい た小松の先見性は驚異的である。 ④ IKAROS(イカロス)は小型ソーラー電力セイル実証機であ り、全てのミッションを完了した後、現在も太陽のまわりを公 転し、運用が続けられている。IKAROSは、宇宙空間でのセ イルの展開やソーラーセイルによる加速、航行技術の獲得 など、世界初の挑戦を見事に成功させた。今後の後継機が 期待されている。 ③ 地球史において、生物の大量絶滅が何回か記録されてい るが、中でも規模の大きな5つを5大絶滅と呼ぶ。オルドビ ス紀末(4億4400万年前、85%絶滅)、デボン紀末(3億7400 万年前、82%絶滅)、ペルム紀末(2億5100万年前、96%絶 滅)、三畳紀末(1億9900万年前、76%絶滅)、白亜紀末 (6500万年前、70%絶滅)である。 ①1個 ②3個 ③5個 ④7個 15 図は太陽表層の温度分布と密度分布を示したものである。図のC の領域を何と呼ぶか。 ①彩層 ②変位層 ③遷移層 ④境界層 16 次のSF作品には、いずれも宇宙エレベータが登場する。このうち最 も早く宇宙エレベータを登場させた作品はどれか。 ①楽園の泉 ②星々に架ける橋 ③果しなき流れの果に ④レッド・マーズ 17 2010年5月に日本が打ち上げたIKAROS(イカロス)は世界初の宇宙 帆船である。その概要について間違っているものはどれか。 ①太陽の光の力(太陽輻射圧)を利用して進む ②セイル(帆)は14 m四方の正方形である ③薄膜太陽電池をセイル(帆)に貼り付け発電する ④2014年7月現在運用は終了している 18 小惑星の衝突は、生物の大量絶滅の原因になったという説があ る。実際の大量絶滅ではプルームの活動など他の要因も大きいと 考えられるが、次の大量絶滅の中で最も絶滅した生物種の割合が 大きいのはどれか。 ①オルドビス紀末 ②デボン紀末 ③ペルム紀末 ④白亜紀末 4 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 正答 解説 19 太陽のまわりをある天体が離心率e の楕円軌道で運動している。近 日点における公転速度v 1と遠日点における公転速度v 2にはどんな 関係が成り立つか。 ② ケプラーの第2法則により、面積速度は一定である。近日点 距離をr 1、遠日点距離をr 2 とすると、面積速度は一定であ るから、1/2 r 1v 1=1/2 r 2v 2 が成り立つ。また、r 1、r 2 は、 軌道長半径をa とすれば、それぞれr 1= a (1−e )、r 2= a (1 +e ) で与えられる。したがって、これらの関係から②が正 解であることがわかる。 20 系外惑星の探査方法として利用できない方法はどれか。 ③ ①は、ドップラー効果を利用したもので、恒星のまわりを公 転する惑星の重力によって、恒星がふらつく様子を観測す る方法(ドップラー法)。②は、恒星の手前を惑星が通過す ることで、恒星の明るさが減光される様子を観測する方法 (トランジット法)。④は、遠方の天体の手前を、惑星系が横 切る際に生じる重力レンズ効果による増光の様子を調べる 方法(重力レンズ法)。恒星が惑星を伴っている場合には、 明るくなるときと暗くなるときで、明るさの変化の仕方が時 間的に非対称になる。③は、セファイド変光星の絶対光度 を推定するのに利用される。 ① 視線速度v は、銀河中心からの距離をR 、そこでの銀河回 転角速度をω (R )、太陽の銀河中心からの距離をR 0、太 陽の銀河回転角速度をω 0とすると、v = {ω (R ) − ω 0} R 0 sinl で与えられる。銀河系は内側ほど回転角速度が大きい 差動回転をしており、銀経l が第1象限(0°< l < 90°) の場合、太陽軌道の内側(R <R 0)では視線速度は正(v > 0)、太陽軌道の外側(R >R 0)では視線速度は負(v < 0) となる。l =40°は第1象限であるから、B、C、D はいずれ も太陽軌道の内側にあり、Aだけが太陽軌道の外側にあ る。したがって、太陽から最も遠いのはAとなる。なお、B、 C、D の電波を出すガスの位置は視線上に手前と遠方の 2ヶ所に存在するため(距離の不確定性)、この3 つの距離 の大小関係は、このデータからは決まらない変化を表す。 ③ 渋川春海は、1798年に『天文瓊統』という本を著し、その中 に「天文成象図」として、オリジナルの星座を加えた星図を 発表している。翌年には、この本の星図だけを抜き出して、 長男の渋川昔尹の名義で『天文成象』を出版している。 ① と④は、それ以前の渋川春海の星図で、①は1677年、④は 1670年の刊行。両者とも描かれているのは中国星座だけ である。②の『天文図解』は、1688年に井口常範が表した天 文書で、渋川春海とは関係がない。 ④ 国際宇宙ステーションの軌道高度は約400kmで、その高度 での気圧は大体10-5[kPa]程度と言われている。地上での 気圧は1気圧で約100[kPa]。よって、高度400kmで既に地上 気圧の10-7倍。高度1000kmではさらに圧力が格段に低く なり、真空度が増す。 ①視線速度の周期的変化を測定する方法 ②光度曲線における周期的な減光を測定する方法 ③周期光度関係を利用する方法 ④重力レンズ効果による増光を調べる方法 21 図は、銀河面内の銀経l =40°方向を、水素の21cm線の電波輝 線で観測した結果得られた電波強度分布図である。横軸には視線 速度v を、縦軸には電波強度をアンテナ温度 I で示してある。図中 の矢印で示したA、B、C、Dの4つの視線速度の電波を発する星間 ガスのうち、太陽からの距離が最も遠いものはどれか。 ①A ②B ③C ④D 22 江戸時代の天文学者渋川春海は、当時日本で使われていた中国 星座に加えて、自ら61の星座をつくって追加した。その成果は、オリ ジナルの星図として発表されている。では、その星図のタイトルは 何か。 ①「天文分野之図」 ②「天文図解」 ③「天文成象」 ④「天象列次之図」 23 地球において、高度1000kmを宇宙空間のはじまりとすると、そこで の気圧は地上(高度0 m)と比べてどれくらいだろうか。最も近いも のを選べ。 ①10-3倍 ②10-5倍 ③10-7倍 ④10-9倍 5 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 24 2013年12月、中国の嫦娥3号が月面に軟着陸をした。これで中国 はアメリカ、ソ連(現ロシア)に次いで月面に探査機を送り込んだ3 番目の国になった。さて、この月面着陸は何年ぶりのことだろうか。 正答 解説 ③ 1976年8月にソ連の打ち上げた無人月面探査機ルナ24号 が月面に着陸して、月の土を地球に持ち帰った。ソ連のル ナ計画はこれで終了した。 ④ トムソン散乱は自由電子による光子の弾性散乱で、光子の 運動方向は変わるが、光子のエネルギーは変化しない。 めったに見ることはできないが、皆既日食中に見られる乳 白色の太陽コロナは、高温コロナ中の自由電子が太陽光 をトムソン散乱したものである。 ミー散乱は塵など比較的サイズの大きな微粒子による光子 の散乱で、あらゆる波長の光をほぼ均等に散乱する。朝焼 けや特に、夕焼け時の地平線方向が黄色っぽく見えるの が、ミー散乱によるものである。黄砂による散乱もミー散乱 になる。 レイリー散乱は、空気分子など光の波長よりも小さな粒子 による散乱で、青い光がより強く散乱される。青空の色がレ イリー散乱の結果である。 コンプトン散乱は光子による電子の非弾性散乱で、光子の 運動量だけでなくエネルギーも変化する。自然現象で人間 が直接に見ることはまずない。 ② ビッグバン以前の宇宙は、真空から宇宙が急激に膨張する インフレーション期だったと、現代宇宙論研究者の多くは考 えている。インフレーションとは、光速以上の速さで時空自 体が膨張する時期を指す。素粒子理論では、真空状態は、 正と負のエネルギーが絡み合い、粒子の生成・消滅が絶え 間なく生じる空間である。水を沸騰させると泡が多数生じる ように、我々の宇宙のはじまりも真空中に生じた1つの泡で あり(この泡の生じる現象が相転移と言われる)、その泡が 大きく成長したものと考えられている。泡は多数生じていた はずであり、したがって我々の宇宙以外にも、宇宙が多数 存在することになる。それぞれの宇宙は互いに繫がってい ないから証明できない理論だが、1つの宇宙(ユニバース) ではなく、多重宇宙(マルチバース)が存在するという考え は、物理学ではごく自然な論理的帰結である。 ①14年 ②25年 ③37年 ④41年 25 自然界にはいろいろな原因で光が散乱される現象がある。以下の うち、自然現象の中で肉眼で見ることができない散乱はどれか。 ①トムソン散乱 ②ミー散乱 ③レイリー散乱 ④コンプトン散乱 26 インフレーション宇宙モデルによると、我々の宇宙だけではなく、他 にも宇宙が存在する可能性がある。このような多重宇宙論が導か れる根拠は何か。 ①インフレーション期は、光速以上の速度で膨張するので、同じ宇 宙でも見えない場所があるから ②インフレーションは、真空の相転移で宇宙が生じたとするので、 他にも無数に宇宙が生じる可能性があるから ③インフレーション膨張は、宇宙を一様で等方なものにするが、現 在の宇宙は非一様で非等方だから ④我々の宇宙は、物質と反物質の割合がわずかに異なっていたた め物質宇宙になったが、逆の可能性もあるから 6 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 正答 解説 27 主系列星の質量光度関係を表す図はどれか。なお、横軸は太陽の 質量を1としたときの恒星の質量を、縦軸は太陽の光度を1としたと きの恒星の光度を、いずれも対数スケールで示してある。 ④ 主系列星の質量光度関係は、光度が質量の3~4乗に比例 するという関係である。したがって、図では右上がりのほぼ 直線的な分布図となり、①と③は不正解であることがわか る。②と④はかなり傾向が似ているが、②は質量が10近辺 でほぼ垂直に、質量が0.1近辺でも傾きが大きくなっており、 曲線的に変化している。これに対して、④は質量が1より大 きいときと小さいときで傾きは少し異なるが、ほぼ直線的に 分布しており、この④が実際のデータから作成した質量光 度関係である。なお、①は、横軸に色指数から太陽の色指 数を引いた値(B −V −0.65)を、縦軸に光度をとってプロット した主系列星の分布(HR図での主系列星の分布)である。 主系列星の色指数も質量と密接な関係があるため、よく似 た分布を示すが、その分布の形状は少し異なる。②は、① の左右を入れ替えたもの、③は④の左右を入れ替えたもの である。 28 イギリスの天文学者、ウィリアム・ハーシェルの4つの業績を、年代 順に古いものから並べよ。 A. 赤外線放射の発見 B. 天王星の発見 C. 天の川を構成する星々が円盤状に分布する説を提唱 D. 土星の衛星エンケラドスの発見 ② 赤外線の発見は1800年、天王星の発見は1781年、天の川 を構成する星々が円盤状に分布する説を提唱した論文を 発表したのは1785年、土星の衛星エンケラドスを発見した のは1789年である。 ④ 銀河系は進化とともに金属量が増えていく。したがって、金 属の含有量が少ない星は、銀河系の初期を知るうえで重 要な天体である。しかし、このような星を多くの星の中から 見つけ出すこと自体、大変な労力を要する。この星は6000 光年の距離にある星であるが、観測によると鉄の含有量の 上限は太陽の1/1000万以下と見積もられている。推定年 齢は約136億歳である。 ② 星1(レグルス)と星2(ベガ)の吸収線の位置がよく一致し ているが、これらは水素のバルマー線である。水素のバル マー線はF型からA型で顕著になるが、星2のピークが 430nm付近に位置し、星1(レグルス)の連続スペクトルの ピークが星2(ベガ)のピークより短波長側に位置することな どから、星2(ベガ)はA型だと判断される。太陽は、表面温 度が6000K程度で、スペクトルのピークは600nm付近にあ る。星3(アンタレス)はピークが長波長域に位置し、分子に よる吸収帯(バンド)も見られる低温度のM型である。 ①A→B→D→C ②B→C→D→A ③A→C→B→D ④B→A→D→C 29 2014年2月、銀河系の中で最も古い星SMSS J031300.36-670829.3 の発見が発表された。太陽と比べたときの鉄の含有量が、その古さ の決め手となったが、この星の鉄の含有量は太陽と比べたときどの 程度であったか。 ①1万倍以上 ②100倍程度 ③1000分の1程度 ④1000万分の1以下 30 図は3つの星のスペクトル図である。星2のスペクトル型はどれにな るか。 ①B型 ②A型 ③G型 ④M型 7 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 正答 解説 ④ 経緯台は、鉛直方向に設定した「方位軸」と、水平方向に設 定した「高度軸」の二軸で望遠鏡筒を支え、この二軸のまわ りに鏡筒を回転させることで、望遠鏡を任意の天域に指向 させ、天体追尾を行う形式の望遠鏡架台である。回転軸 が、天体の日周運動(地球の自転)とは無関係に設定され ているため、天体追尾には一般に二軸を同時に非等速回 転させることが必要である。このように追尾制御は複雑とな るが、機械的には単純かつ堅牢なため、大型望遠鏡では ほとんどが経緯台を採用している。 (注)経緯台でも、たとえば南極点に設置した場合は、高度 軸を固定して方位軸のみを等速回転させれば天体追尾が できる。ただし、それは特殊な場合であって、一般的な説明 としては適切ではない。 32 半径R 、全質量M 、厚さ無限小の球殻内部の重力は次のどれか。 ① 一様密度の球殻内部では、重力はどこでも0となる。②は一 様密度の球内部の重力。③は球殻内部の位置エネルギー (重力エネルギー)の分布。④はダミー。 33 『スタートレック』の物質転送技術は、物質を瞬間的に遠隔地に送り 届けるための架空の技術だが、近い将来、「量子テレポーテーショ ン」技術として現実的に可能になるかもしれないと考えられている。 これはどのような効果・方式を利用したものか。 ① 『スタートレック』の転送技術では、“転送ビーム”なるものを 照射することで物質を“フェイズド・マター”というエネルギー 状態に分解し、“パターンバッファー”に蓄え、それを“放射 器”により目的地に送信し、そこで再び物質に戻す、という ものだ(もちろん、架空の技術)。ワームホール方式は、SF 映画『スターゲイト』の「ホームダイアル装置」で採用されて いる。ドラえもんの「どこでもドア」もこれだろう。「量子テレ ポーテーション」は物理学の分野で真面目に議論されてい て、量子通信や量子コンピュータの分野でも盛んに研究さ れている。現在は、原子レベルでの転送でしか実現されて いないが、近い将来、物質転送装置が開発されるかもしれ ない。 ③ 現時点で認証された「宇宙日本食」は12品目28種類に及 ぶ。その中には「さばの味噌煮」をはじめ、野口宇宙飛行士 が宇宙で食べて話題になったラーメン、カレーなどが含ま れる。ようかんは、小倉ようかんと栗ようかんが認定されて いる。キシリトールガムも認定宇宙食に含まれている。 (参考) http://iss.jaxa.jp/spacefood/about/japanese/ 31 経緯台式の望遠鏡による天体追尾について述べた以下の文のう ち、最も適切なものはどれか。 ①一方の軸を固定し、他方の軸を等速回転させることで天体追尾を 行う ②一方の軸を固定し、他方の軸を非等速回転させることで天体追 尾を行う ③二軸を共に等速回転させることで天体追尾を行う ④二軸を共に非等速回転させることで天体追尾を行う ①量子もつれ効果 ②ワームホール方式 ③フェイズド・マター方式 ④トンネル効果 34 日本人宇宙飛行士が数多く宇宙に行くようになり、宇宙飛行士たち のために、JAXAは「宇宙日本食」を認定している。以下のうち、現 時点(2014年8月)で認定宇宙食になっていないものはどれか。 ①おかゆ ②ようかん ③あんみつ ④おこわ 8 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 正答 解説 35 有効温度T 、半径R の恒星から距離d 離れた場所で、その法線と 恒星が角度θ をなす面が受ける放射流束(フラックス)を表す式は 次のうちどれか。ただし、σ はステファン・ボルツマン定数とする。 ② この恒星の単位面積あたりの放射流束はステファン・ボル ツマンの法則からσ T 4であるから、この恒星の光度L は、 恒星の表面積が4πR 2であることから、L =4πR 2 σ T 4と なる。 一方、光度L の天体から距離d 離れた場所で、法線が恒星 を向く面(つまりθ =0)が受ける放射流束F は、L /(4π d 2)で与えられる。今、考える面は法線が恒星と角度θ をな すので、恒星から面を見込む面積はcosθ 倍となる。ゆえ に、放射流束F =L /(4πd 2) cosθ =(R /d )2σ T 4cosθ とな る。 36 恒星のスペクトル分類について、以下の記述から正しいものを選 べ。 ② スペクトルの特徴について、①はG型星、③はM型星、④は O型星のものである。 ④ 可視光領域では主として水素のバルマー系列(Hα 、 Hβ 、Hγ …)の線スペクトルが見られ、波長からはHβ 線に なる。また恒星の連続光に対して、黒い線であることから、 吸収線である。通常の星のように、内部ほど温度が高いガ ス球のスペクトルには、通常は吸収線が見られる。輝線が 見られる星は輝線星と呼ばれ、しばしば周辺に輝線を発す る希薄な大気をまとっている。 ③ ロシアのロケット研究者コンスタンチン・ツィオルコフスキー (1857-1935)が書簡の中で述べたとされる。①のヘルマン・ オーベルト(1894-1989)はドイツのロケット工学者。②のド イツのオイゲン・ゼンガー(1905-1964)は光子ロケットを提 唱した。④のロバート・バサード(1928-2007)はアメリカの 物理学者で、ラムジェット推進の研究に貢献した。 ② 波長の長い光は赤く、短い光は青い。波長の短い青い光ほ ど多く減光するため、星間減光を受けると恒星の色は本来 のものより赤くなる。色指数では値が小さいほど青く、大き いほど赤い色に対応するため、 星間減光を受けると、恒星 の色指数は値が大きくなる。 ①O型星のスペクトルには電離カルシウムのH、K線が水素の吸収 線より強い。分子による吸収帯も見える ②A型星のスペクトルでは他の型と比べて水素の吸収線が最も強 い ③G型星のスペクトルでは中性の重元素の吸収線が非常に強く現 れる。酸化チタンの吸収帯も強い ④M型星のスペクトルでは電離ヘリウムや高階電離の酸素、炭素、 窒素の線が見られる 37 図はベガ(こと座α 星)のスペクトルである。矢印の線は以下のどれ か。 ①Hα ②Hα ③Hβ ④Hβ の輝線 の吸収線 の輝線 の吸収線 38 「地球は人類の揺りかごだが、我々は揺りかごの中に永遠に留まる ことはできない」と述べたのは誰か。 ①ヘルマン・オーベルト ②オイゲン・ゼンガー ③コンスタンチン・ツィオルコフスキー ④ロバート・バサード 39 恒星からの光は、星間空間に存在するダストによって吸収・散乱を 受けて減光する。これを星間減光という。可視光から近赤外線で は、波長の長い光よりも短い光の方が星間減光を多く受ける。星間 減光と色指数について述べた以下の記述のうち、正しいものを選 べ。 ①星間減光を受けても恒星の色指数には変化はない ②星間減光を受けると恒星の色指数は本来の値よりも大きくなる ③星間減光を受けると恒星の色指数は本来の値よりも小さくなる ④星間減光を受けると恒星の色指数は変化するが、変化量は恒星 の温度に依存する 9 第4回天文宇宙検定1級問題・解答 No. 問題 40 もしも、太陽が石炭でできているとすると、そのときの太陽の寿命τ はどれほどになるか。太陽の質量はM Sun=2.0×1030kgで、石炭は 1kgあたり約E =2.5×107J/kgのエネルギーを生み出すことができ、 太陽光度はL Sun=3.85×1026J/sである。 正答 解説 ② 太陽の寿命をτとすれば、太陽質量の石炭が全てエネル ギーに変わると EM Sun = 2.5 × 107 × 2.0 × 1030 = 5.0 × 1037Jのエネルギーに換算される。このエネルギーを1秒 あたり光度 L Sun で消費していくのであるから、 τ = EM Sun/L Sun =5.0 × 1037/3.85 × 1026=1.3×1011s =4.1 × 103 yr ①約40年 ②約4000年 ③約400000年 ④約40000000年 となる。よって約4000年である。 10
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