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左は3cm以上空ける 静電気の応用に関する研究タイトル

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2a-3
集束超音波と誘起電界を用いた
静電気分布計測技術の開発
産総研*, 名工大**
菊永和也*, 星貴之**, 山下博史*, 江頭正浩*, 野中一洋*
〇
佐賀県鳥栖市宿町 807-1
*
**
愛知県名古屋市昭和区御器所町
Development of technique for measuring static electricity distribution using focused
ultrasound and induced electric field
〇Kazuya KIKUNAGA*, Takayuki HOSHI**, Hiroshi YAMASHITA*, Masahiro EGASHIRA *
and Kazuhiro NONAKA*
*National Institute of Advanced Industrial Science and Technology
**Nagoya Institute of Technology
A novel method is proposed for non-contact measurement of static electricity distribution on a surface by a
focused ultrasound to excite movement of the sample surface. The focused ultrasound is generated by
controlling individually the phases of 285 airborne ultrasound transducers, and it was demonstrated that local
excitation could be measured. An electric field is induced by exciting a charged object at a local position. The
electric field intensity and phase are related to the surface potential and electrical polarity of the object,
respectively. Using this method, it is possible to measure static electricity distribution over an entire surface of
an object by gradually adjusting the relative positions of focused ultrasound.
1.はじめに
ドアレイ法を用いた集束超音波の音圧分布と局所的励振
静電気が絶縁材料に帯電する場合、電荷は表面に不均
との関係を明らかにすることで局所的励振の走査技術を
一に分布する。これは局所的な摩擦や剥離などによって表
確立、その励振による電界について平面電極を用いた低周
面に形成された電荷が、その表面の絶縁性から拡散しにく
波電界の検出方法を検討することで、静電気の二次元分布
いためである。そのため、静電気を評価する場合には、点
計測の可能性についての検討を行った。
ではなく面で捉える方が望ましい。これまで点を計る静電
気計測として、静電界をターゲットとして様々なタイプの
表面電位センサが開発されてきた
1-3)。しかし、これらは
2.実験方法
2.1 電荷振動による電界誘起
センサから対象までの距離に測定領域が依存すること、セ
図 1 に静電気計測のための電荷振動による電界誘起の
ンサ近傍の静電界やアースなどの影響を受けやすいこと
概念図を示す。電荷が帯電している測定対象物を物理的に
などから、静電気分布を正確に測定するためには、表面電
振動させた場合、対象物とともに静電荷も空間的に振動す
位センサを対象物に近接させ、物理的に走査させる必要が
る。これにより時間的に電荷の空間位置が変化するため、
あった 4)。そのため、静電気分布を測定するには多大な時
その周囲に電界が誘起される。これに双極子放射の理論を
間を要しており、時間経過とともに状態が変化する静電気
適応すると、電荷 q [C] を持つ荷電粒子が Z 方向に運動す
の評価において、その再現性の問題が指摘されていた。
るときに作る電界 E [V/m] は、周波数を 1 kHz 以下、観測
そこで、我々は静電気分布を高速で計測することを最終
目標として技術の開発に取り組んできた。そこでは、対象
距離を 1 波長(300 km)以下の場合、発生する電界の支配
的な項は次式で与えられる 7)。
物に加える刺激として音波を用い、対象物を物理的に振動
させることで電荷振動を起こし、電界を誘起・計測するこ
とで、静電気の定量的評価が可能であること 5)、集束超音
波によるパルス的励振技術を用いることで、センサを固定
したままで静電気の一次元分布の計測ができる可能性が
あることを明らかにしてきた 6)。しかしながら、最終目標
を達成するためには、二次元的な局所励振の走査技術と、
その二次元的な励振に対応する低周波電界計測を組み合
わせて評価する必要がある。そこで本研究では、フェーズ
― 73 ―
Fig. 1.
A concept and coordinate settings for electric
field induced by charge oscillation.
1 ql
2 cos  e r  sin  e   e  jkr
E  3
4 0 r
(1)
ここで l [m] は荷電粒子の変位、r [m]は荷電粒子から観
測点までの距離、k [m-1]は波数、j は虚数、θ [rad] は Z 軸か
らの傾き、er, eθ はそれぞれ r 方向、θ 方向の単位ベクトル
である。この電界を計測することにより、電荷を求めるこ
とができる。本研究では、静電気の大きさとして電荷量に
Fig. 3. Experimental setup for (a) characterizing a focused
ultrasound wave and (b) evaluating an excitation by
focused ultrasound.
比例する表面電位を用いた。
2.2 フェーズドアレイによる集束超音波
本研究では、空気中において非近接でかつ対象物を
局所的に励振するために音響放射圧 8,)を用いる。フェーズ
ドアレイ法を用いた超音波は並列に並べた各振動子の位
相を適切に制御することによって、空中に単一の焦点を結
ぶことができる。この方法は位相を操作することで焦点の
位置を変えることもできるため、離れた場所から空間中の
任意の位置に力を発生させることができる。図 2 に示すよ
うに、矩形の振動子アレイを用いて、焦点距離を R [m]、
Fig. 4. Experimental system consists of equipment to generate
focused ultrasound and to measure electric fields.
正方形アレイの一辺の長さを D [m]としたとき、焦点径の
表面に集束超音波を照射することによる励振を評価する
幅 w [m] は次式で与えられる 9)。
ために、超音波デバイスを対象物と向かい合うように距離
2 R
w
D
170 mm のところに設置し(図 3(b))
、対象物として塩化ビ
(2)
ニルシート(厚さ 10 μm、サイズ 250 × 250 mm2)を用い
ここで λ [m] は超音波の波長である。(2)式からアレイサイ
ズと空間解像度がトレードオフの関係にあることが分かる。
た。そのときの超音波焦点の周辺における変位分布を、レ
ーザー変位計(測定範囲 50 mm)を用いて測定した。
次に集束超音波と誘起電界を二次元分布で評価するシ
ステム(220 × 220 mm2、高さ 230 mm)を図 4 に示す。集
束超音波は下向きに照射され、サンプルは超音波デバイス
と向き合うように 170 mm 離してスポンジ(厚さ 5 mm)の
上に設置した。サンプルはコロナ放電によって帯電させた
ゴムシート(厚さ 50 μm、10 × 10 mm2)を用いた。スポン
ジの下には電界検出用として平板電極(厚さ 0.3 mm、サイ
Fig. 2. An image of relationship between a device array
size and a diameter of focal point.
ズ 150 × 150 mm2)を設置し、それをロックインアンプに接
続した。ここでは電界とアンテナ出力電圧の関係からロッ
2.3 実験方法
クインアンプの出力電圧を電界強度として用いた。
本研究では、集束超音波を発生させるために、文献 10
において製作した小型超音波デバイスを使用した。アレイ
3.実験結果および考察
のサイズは D = 170 mm であり、
その矩形領域内に 285 個
3.1 集束超音波の音圧分布の評価
の超音波振動子が配列され、焦点における発生力の最大値
集束超音波の検証として、音圧の空間分布の評価を行っ
は 16 mN である。このデバイスでは 40 kHz の超音波を
た。図 3(a)で示した評価システムを用いて、超音波デバイ
ON/OFF することで DC-1 kHz で変調することができる。
スによって発生させた集束超音圧の空間分布を測定した
その集束超音波の評価に関する実験システムを図 3 に示
結果を図 5(a)に、その X 軸と Y 軸における音圧分布のラ
す。まずこの集束超音波を評価するために、スピーカーに
インプロファイルを図 5(b)に示す。これより、直径が 20
Φ10 mm の穴を開けた板を組み合わせ、超音波デバイスに
mm の集束した音圧が得られることが分かった。また、ア
向かい合うように 170 mm 離して設置した(図 3(a))
。こ
レイ状に並べた振動子から発せられた集束超音波の音圧
のスピーカーを XY ステージ(40 × 40
mm2、2
mm ピッチ)
で動かすことで集束超音波の集束度を評価した。また物体
は空間的に対称性を保っている。周波数 40 kHz の超音波
を用いた場合の波長は λ = 8.5 mm である。(2)式の関係か
― 74 ―
3.3 集束超音波変調による電界強度の周波
数依存性
この励振によって発生する電界の大きさは対象物が物理
的に振動する振幅に比例することから電界発生効率を高く
するためには、対象物の共振周波数で音波励振する必要があ
る。図 4 の実験システムを用いて、100 V に帯電させたゴム
シートを対象として、集束超音波を 1 Hz – 200 Hz の範囲で
ら D = 170 mm、R = 170 mm のとき、w = 17 mm と算出さ
れる。ここでの実験結果は理論値より少し広いが、フェー
ズドアレイ法を用いることで音圧を集束させた超音波を
得ることができた。
3.2 集束超音波を用いた局所的励振
次に、対象物の一部を局所的に励振させる検証実験とし
て、物体表面に集束超音波を照射して局所的変位を測定す
る実験を行った(図 3(b))
。塩化ビニルシートに集束超音
波を照射し、焦点位置を 10 mm 間隔で 100 ミリ秒毎に移
動させ、そのとき超音波焦点の周辺における変位分布をラ
インレーザー変位計で計測した。図 6(a)は超音波焦点の中
心を通る直線に沿った変位の一次元分布を示している。ま
た図 6(a)における 200 ミリ秒のときの変位分布と、図 5(b)
における音圧分布(X 軸)のラインプロファイルを中心で
重ねたものを図 6(b)に示す。これらは集束超音波の力によ
って、塩化ビニルシートの一部が押されている過程を示し
ている。図 6(a)(b)より、超音波焦点の中心部にて変位は最
大 1.1 mm 程度で、半値全幅 FWHM = 30 mm 程度であるこ
とが分かる。これは集束超音波の集束度と比べるとより広
い範囲が励振されていることを示しており、対象物のヤン
グ率に関係して FWHM が大きく変化すると考えられる。
いずれにしても、この集束超音波を用いることで対象物の
局所的な励振の達成が確認された。この集束音波はその集
点において周波数変調することができ
11)、集束超音波を
動かすことで局所的な励振を短時間で走査できる。
変調させサンプルに照射したときの電界強度の周波数依存
性を図 7 に示す。図 7 における 60 Hz、120 Hz、180 Hz のピ
ークは商業周波数のノイズである。その信号を除外すると 72
Hz 程度で電界強度が最大になっている。この手法では電荷
の空間的振動と同じ周波数の電界が誘起されるため 72 Hz が
サンプルの共振周波数で最も振幅が大きくなる振動である。
Electric field Intensity (a. u.)
Fig. 5. (a) an image of radiation pressure distribution at X-Y
planar and (b) one-dimensional distributions for measured
radiation pressure (z = 170 mm).
0
50
100
150
200
Frequency (Hz)
Fig. 7. Frequency dependence of electric field intensity
induced by exciting a charged rubber sheet.
3.4 電界強度・位相と表面電位の関係
この手法では検出された電界の強度と位相を用いるこ
とで静電気の大きさと電気的極性を調べることができる
が 5)、サンプルによってその電界発生効率が異なる。それ
を明らかにするために、図 4 の実験システムを用いて、ゴ
ムシートを 72 Hz で振動させ、サンプルの帯電電圧を 0 –
±100 V で変化させたときに、平板電極とロックインアン
プを用いて電界の強度と位相を測定した。図 8(a)は帯電電
圧が-100 V – 0 V の範囲における電界の強度と位相の関係
を、図 8(b)は帯電電圧が 0 V – 100 V の範囲における電界
の強度と位相の関係を示している。ここで、位相は超音波
デバイスの変調信号のリファレンス信号と測定された電
界信号を比較した値を用いた。図 8(a)(b)より、帯電電圧は
Fig. 6. (a) Series of one-dimensional distributions around
the moving center of the focused ultrasound with each shift,
and (b) comparisons with spatial distributions measured
radiation pressure and measured displacement of sample.
Fig. 8. Relationship between surface potential and electric field
properties, induced electric field intensity, and phase in (a)
negatively charged and (b) positively charged rubber sheet.
― 75 ―
電界強度に比例しており、位相は帯電電圧の絶対値 20 V
を用いることで、静電気分布を計測できる技術を開発した。
以上でほぼ一定の値(-170 度と 10 度)を示している。こ
その性能は、表面電位 20 V 以上、精度 10%、空間分解能
のことから、このサンプルとシステムでは、20 V 以上の
Φ30 mm、面積、100 × 100 mm2、一点当たりの走査時間
表面電位かつ精度 10 %程度で帯電の電位と極性を評価
200 ミリ秒以下であった。この手法では電界計測を短縮す
できることが分かった。
ることで、静電気分布計測は短縮することが可能である。
今後は、集束超音波の高性能化と低周波用電界センサの高
3.5 集束超音波走査による静電気分布計測
図 4 のシステムを用いて、100 V に帯電させたゴムシー
トに集束超音波を照射した位置で電界を測定し、それを平
感度化による静電気分布計測時間の高速化、得られた計測
値から逆問題を解くことによる更なる高空間分解能化を
行っていく予定である。
面で走査させることで得られた電界強度分布の結果を図
9 に示す。実験条件として、各パラメータは、集束超音波
の走査範囲 100 × 100
mm2、超音波の変調周波数
4.謝辞
72 Hz、
本研究は独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開
走査のピッチ幅 5 mm、励振時間と電界検出積算時間 200
発機構(NEDO)先導的産業技術創出事業(11B09009d)
ミリ秒と設定した。ここでは、ゴムシートを正に帯電させ
の 支援を受けて行ったものである。
ているため、位相検出は行わず電界強度のみ測定した。図
9 より、帯電物がある場所にのみ電界が検出されているこ
参考文献
とがわかる。ここでは集束超音波の励振により決まる空間
1)
分解能は Φ30 mm 程度だったが、走査ピッチを狭くするこ
とで、ある程度の空間分解能を上げることができたが、そ
れは Φ30 mm の情報を平均化していることに注意が必要
2)
のは、コロナ放電による帯電の不均一性などが考えられる。
3)
ことで、静電気分布を計測する目安として評価することが
4)
は、このシステムの校正を行う必要がある。
本研究で用いた集束超音波は理論上 1 ミリ秒で走査可能だ
が、電界センサとして用いている平板電極の検出感度が低く、
5)
T. Takuma, M. Yashima, and T. Kawamoto: Principle of
surface charge measurement for thick insulating specimens.
IEEE Trans. Dielect. Elect. Insulation, 5 (1998) 497
K. Kikunaga, H. Yamashita, Y. Fujii and K. Nonaka:
Measurement Technology of Surface Potential Using
Acoustic Wave and Electric Field. Jpn. J. Appl. Phys., 52
ロックインアンプので値が安定するのに 200 ミリ秒程度かか
る。そのため、一点当たりの測定時間は 200 ミリ秒となり、
面積 100 × 100 mm2 を測定するのに 80 秒かかった。これを短
response. Solid State Commun., 41 (1982) 917
A. Sowinski, F. Salama, and P. Mehrani: New Technique for
Electrostatic Charge Measurement in Gas-Solid Fluidized Beds.
J. Electrostat., 67 (2009) 568
できるだろう。ただ、この電界計測に関する結合係数は
様々なパラメータで決まっているため、定量化するために
Electrostat., 1 (1975) 27
E. Eisenmenger and M. Haardt: Observation of charge
compensated polarization zones in polyvinylindenfluoride
(PVDF) films by piezoelectric acoustic step-wave
である。ここでサンプル面内において電界強度が異なった
しかしながら、これらの結果から、このシステムを用いる
P. E. Secker: The desing of simple instruments for
measurement of charge on insulating surfaces. J.
6)
縮するためには、高周波数の音波で励振する方法、または誘
(2013) 05DB16-1
K. Kikunaga, T. Hoshi, H. Yamashita, Y. Fujii and K.
Nonaka: Measuring Technique for Static Electricity Using
Focused Sound. J. Electrostat., 71 (2012) 554
起された電界を高感度で検出する方法などが考えられる。
7)
K. Kikunaga, H. Yamashita, Y. Fujii and K. Nonaka: Study
on Charge Oscillation-Induced Low-Frequency Electric
8)
Field. IEEE Int. Symp. Electromagn. Compat., in press
J. Awatani: Studies on Acoustic Radiation Pressure. I.
9)
(General Considerations). J. Acoust. Soc. Am., 27 (1955) 278
T. Hoshi, M. Takahashi, T. Iwamoto, and H. Shinoda:
Noncontact Tactile Display Based on Radiation Pressure of
Airborne Ultrasound. IEEE Trans. on Haptics, 3 (2010) 155
Fig. 9. A sample setting photo and a measured electric field
distribution by scanning focused ultrasound.
4.結論
10) 星貴之:空中超音波触覚ディスプレイの可搬性の向
上. ロボティクス・メカトロニクス講演会講演論文
11)
本研究では、集束超音波による局所励振の走査技術と、
平板電極とロックインアンプ方式の低周波電界計測技術
― 76 ―
集,p. 1A1-A03 日本機械学会 (2012)
菊永和也,星貴之,山下博史,江頭正浩,野中一洋:
集束超音波と誘起電界を用いた非近接型静電気計測
技術の開発.静電気学会誌,in press
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