振動の基礎知識 - 東京都環境公社

振動の性質、測定と評価
財団法人東京都環境整備公社
東京都環境科学研究所
門屋真希子
振動とは…
・日常生活を送る上で存在しない
揺れることは異常なこととして受け止められる
・媒介するものの影響を受ける
固体を伝わる波
波を伝えるものの影響を受ける
(発生源、地面、床といすの振動の合成したもの)
・人の感覚尺度がある
周波数、方向によって感じ方が異なる
・感覚尺度と不快さ
必ずしも一致しない
振動の性質…固体を伝わる波
振動波の種類
媒質粒子の振動
距離減衰
(振幅)
エネルギー
の割合(%)
伝搬速度
m/s
縦波
波の進行方向
1/r2 (地表面)
1/r(地中)
7
Cp>2.5Cs
横波
波の進行方向に鉛
直又は水平な面内
1/r2 (地表面)
1/r(地中)
26
Cs
レイリー波
波の進行方向を含
む鉛直な面内
1/√r
(全体として)
67
Cr≒Cs
• 地盤の種類と固有値
硬質砂礫
10Hz
砂礫・ローム層
3Hz
沖積層・埋立
1Hz
• 建物の振動特性
木造2階建て
3~7Hz
RC構造
19/(建物の階数)Hz
人体と振動
振動による人体応答の評価(全身振動)
・感覚閾値
・健康障害に対する評価
・乗り心地のよさ
・乗り物酔い
人体の振動特性
生理的な反応
心理的な反応
睡眠影響
感覚閾値(振動知覚)
振動を感じる、感じないの境目の値
立位、座席面の鉛直方向
0.01m/s2 (JIS C 1510の60dB)
健康障害
強い全身振動に長期間暴露された場合の健康障害
乗り心地の良さ
仕事やレジャーで活動中に暴露される健康状態での快適性
乗り物酔い
0.1~0.5Hz
乗り物酔いの発生に対する振動的な運動の影響
全身振動の受感軸座標系(環境ではxyz3軸)
人体の振動特性
姿勢、方向、体の部位により反応が異なる
仰臥位
Y
Z
X
ヒトの部位別 振動伝達と振動数の関係
(Szameitat 1976, Szameitat & Dupuis 1976)
イスから頭への振動伝達関数と振動数
Z方向のみの振動、座位
(Dupuis & Hartung 1980)
振動伝達関数と振動数
Y方向に移動中、座位
(Dupuis & Hartung 1980)
周波数重みづけ補正特性
(JIS C 1510)
JIS C 1510と ISO2631の比較
生理的な反応
刺激振動数(z方向、座位)と愁訴との関係
(耐えられない限界の振動を加えたときの愁訴)
Magit & Coerman(1960)
循環器系:血圧上昇、心拍数増加、心拍出量減少など
呼吸器系:呼吸数増加
代謝
:酸素消費量増加、エネルギ代謝率の増加など
体温
:体温上昇
睡眠への影響
加振器を用いた被験者実験(山崎1975)
測定の条件
鉛直方向の振動
60、65、69、74、79dBの5種類
睡眠深度 5段階(覚醒、睡眠深度1~3度、REM)
測定結果
心理的な反応
振動を感じて、不快に思ったり、不安に感じたりする
心理的な反応と振動との関係
・加振器上での被験者実験(音響心理学的評価)
単に振動に対する意識
・日常的に振動に暴露されている住民の意識調査と振動の関係
振動発生源に対する迷惑感を含んだ評価
振動暴露量と反応(5段階評価)
・
・
振動の大きさ(dB、m/s2等)
どの程度まで許容されるか?
周波数重み付け特性(周波数補正特性)
周波数による重み付け
振動の現状…
振動苦情の傾向…建設作業に対しては増加傾向
基準超過はごくわずか
工場・事業場
建設作業
道路交通
鉄道
その他
苦情件数
580
1458
213
65
224
基準超過
9
2
3
-
平成21年度振動規制法施行状況調査結果より
課題
・現在の苦情内容を精査して現状把握をする
・条例の施行状況を把握
・適切な振動評価方法の確立
・簡便な測定方法
・効果的な振動対策
振動の測定(振動規制法準拠)
測定機器 JIS C 1510 で示された振動レベル計
• 基準加速度a0 10-5m/s2
(諸外国では 10-6m/s2を採用している)
振動加速度レベル=20*log(a/a0) 周波数重みづけなし
• 周波数重みづけ特性(周波数補正特性)
鉛直振動特性(水平方向振動、平坦特性)
• 動特性(時定数)
0.63sec
• 振動レベル(周波数重みづけ特性、振動加速度の実効値a)
Lv=20 log (a/a0 ) (単位:dB)
・ウェーバー-フェヒナーの法則
刺激強度R ΔR/R=一定
人の感覚量E E=alogR (等比級数が等差級数的に対応)
・実効値…電流電圧と同様
互いの振動の位相によっては複合波形は異なる。
振動加速度の実効値 A =√(1/T ∫a2 dt)
振動レベルの測定…どこを見ればよいか?
波形の区分
変動が少ない場合
周期的又は間欠的に
変動する場合
不規則かつ大幅に
変動する場合
測定値の決定方法
その指示値
変動ごとの最大値の
平均値
5秒間隔100コ又はこれに
準じる感覚と個数の測定
値のL10
振動の記録
・レベルレコーダー(振動レベルの記録)
長時間の連続変化の様子
変動幅の大きい現象の記録
記録紙に測定時のイベントを記録できる。
・データレコーダー(振動レベル及び振動波形の記録)
長時間の連続測定(ファイルサイズに注意)
周波数及び振動強度の把握(周波数分析)
欠点:測定時の詳細なメモが別途必要
レベルレコーダー
データレコーダー
振動レベルの測定、評価、対策及びその検証
1
測定計画の作成
① 事前の現地調査
発生源だけでなく、伝搬経路まで把握する必要があるため、事前に現
地調査の上、測定データの活用方法を考えて、測定計画を立てること。
苦情者やその他住民に聞き取り調査、苦情者との位置関係、施設等の
稼働状況(開始、終了及び休止時間)
② 測定計画
測定位置、使用測定機器、測定時間などを決定する。天候にも注意。
2 測定調査の実施
苦情者や事業所等の同席での調査
抜き打ちでの調査
3 測定結果のとりまとめ
基準値との関係を整理
対策効果の効果を推計する
4 対策効果の検証
対策後の振動レベル等の測定による比較(効果がなければ再検討へ)
苦情者への聞き取り
振動防止対策
 発生源対策
機械設備本体の改善(発生しないように)
回転機械…バランス、回転数、軸受の構造変更
往復動機械…シリンダ数の変更、機械か基礎重量増
方向性を持つので、向きを変える
基礎の改善(地盤に振動を伝えないように)
防振ゴム、基礎の重量増、ダイヤフラム(空気ばね)
振動伝搬
距離減衰、防振溝(あまり効果はない)
受振対策
基礎から振動が伝わる場合(個体音)
軟弱地盤からコンクリート基礎に高調波は伝わりにくいが、
伝わった場合には減衰せずに建物全体に振動が伝わる。
建物全体
建物基礎が振動を受けて変形して固有振動を起こす。