いちだい知のトライアスロン 国際学部1年 (受賞当時) 平井 千尋さん 「夜のピクニック」 「夜のピクニック」 恩田陸 新潮社 ⾼校⽣の間に読んでおきたかったなぁ。それが私の率直な感想です。解説にも書いてあ るように、何の事件が起きる訳でもなく、ただ全校⽣徒が学校⾏事である 歩⾏祭で⼀ ⽇中歩くというストーリーなのですが、こんなにも⾃分の⼼の奥底に眠っていた感情が 刺激される本に初めて出会いました。友⼈や恋⼈や周りの⼈たちに対して抱いてたけれ ど形容し難い気持ちを代弁してくれているようで、読み終わった後は⼼がただただ清々 しかったです。同年代だからこそ共感できる本だと思います。 いちだい知のトライアスロン 芸術学部1年 (受賞当時) 伊地知 鈴佳さん 「三宅一生 未来のデザインを語る」 他 「三宅一生 未来のデザインを語る」 三宅一生[述] 重延浩聞き手・編 岩波書店 さまざまな芸術⽂野で活躍されている三宅⼀⽣さんの⾔葉を著者がまとめられたもの。 ただ⽬の前の⼯業製品を⾒ているわけでなく、⽇本の未来や伝統、⼈間を⾒つめながら お仕事をなさっていることがよくわかります。デザインという⾔葉で読む⼈を選んでい るのがもったいない。未来のデザイン以上に、未来の⽇本、世界に語りかけている本で す。 いちだい知のトライアスロン 入賞 図書部門 国際学部4年(受賞当時)来田 卓哉さん 「ウェブはバカと暇人のもの」 「ウェブはバカと暇人のもの 現場からのネット敗北宣言」 中川淳一郎 光文社 ネット上での意⾒が原因でブログなどが炎上になり社会問題にさえなる。こうした現 象はもはや近年ではさほど驚くべきことではないが、さりとて、やはり問題が上がる度 にメディア・リテラシーを考えさえられる。 こうした問題を考えるにあたって本書のタイトルは少々過激だが、内実は、⾔い得て 妙だ。そう、僕たちはネットに依存するあまりにネットに過度に期待していないだろう か。本書はそうした社会通念に警鐘を鳴らすと共に、同時に次のようなことを指摘する。 それは、本来ネットは⾮ネット空間を補完する存在であるということを。つまり、リア ルあってのネットだ。相互補完し合う存在であるものに対し、⾮常に⼀⾯的に僕たちは ⾒ていないだろうか?考えさえられる⼀冊です。 いちだい知のトライアスロン 入賞 図書部門 情報科学部2年(受賞当時)安森 璃菜さん 「円周率1000000桁表」 「円周率1000000桁表」 牧野貴樹 暗黒通信団 円周率3.1415926535897932… さて、何桁続くだろうと考えてしまったら最後、πの迷宮にとりつかれてしまう。 けして終わらない数字達をおっていくと3の頻出が多いように感じたり1が少ないよう に感じたり。 プログラムで作る乱数表としてもつかえちゃうπ。 けして終わらないπ。 そして科学者の本質を注意書きで垣間⾒れる。 たった半ページもいかない注意書 正確な値になるよう⼗分注意を払いましたが、万が⼀掲載した値が間違っていたとして も、発⾏者は責任をとれません。 さて、作者はなぜこの本を作ったのか。 終わりのないπを何故正確な値になるよう求めたのか。 何故πは終わらないのか。 不思議が不思議を呼ぶ⼀冊です。 いちだい知のトライアスロン 入賞 図書部門 情報科学部1年(受賞当時)池田 翼さん 「我らクレイジー☆エンジニア主義」 「我らクレイジー☆エンジニア主義」 リクナビNEXT Tech総研編 中経出版 メディア、CG、ロボットなど様々な分野で世界的に活躍する⽇本⼈の「クレイジーエ ンジニア」を紹介している。初めて⾒るような技術もあり、最先端を⾏く⽇本の技術に 感⼼し、⽇本の技術に⾃信が持てるようになる。「クレイジーエンジニア」たちが研究 を始めるきっかけとなった出来事や⼤学時代の事も述べているので参考になるだろう。 また、未来を夢⾒て実現させようとするエンジニアの⽣き⽅、考え⽅に感化されること により、夢や⽬標に対する⾃分の考え⽅を変えてくれる。 いちだい知のトライアスロン 入賞 図書部門 情報科学部1年(受賞当時)後藤 郁佳さん 「ドラゴンラージャ」 「ドラゴンラージャ」 イ・ヨンド ホン・カズミ訳 岩崎書店 ファンタジーは好きですか?RPGは好きですか?どちらも⼤好きだ!そんな貴⽅。 読まないと損です。 決して静かなところで読んではいけない、思わず吹き出すようなエピソード。かと思 えば、本を閉じた後も考えてしまう、17歳の主⼈公と仲間たちとの会話。 初めは、「悪いドラゴンに囚われた村⼈を助け出すために、王都に⾝代⾦を調達しに ⾏く」といった、ファンタジーの王道のストーリーでした。しかし、巻が進むにつれ、 他国との戦争、他種族との考えの違い、⼈間とは?と、「読み飽きて⼿が⽌まる」な んて考えられないような怒涛の展開が待っています。 誰かにとっての「1番」になれる。そんな作品です。 いちだい知のトライアスロン 入賞 図書部門 芸術学部2年(受賞当時)梁谷 侑未さん 「池上彰の教養のススメ」 「池上彰の教養のススメ」 池上彰 日経BP社 理系は⽂系のこと好きですか? ⽂系は理系のこと好きですか? お互い⾒て⾒ぬふりしてしまっていませんか? 右脳はイメージ、左脳はロジック。お互いが納得してこそ本当に理解できます。そのた めには幅広く学ぶ教養が必要です。でもなあ…というあなたへ、まずは歴史から踏み⼊ れてみませんか、と池上さんがやさしーく教養の世界へと連れて⾏ってくれます。 いちだい知のトライアスロン 入賞 図書部門 芸術学部1年(受賞当時)真下 玉女さん 「逃亡くそたわけ」 「逃亡くそたわけ」 絲山秋子 講談社 物語は躁鬱患者の花ちゃんと鬱病のなごやんの精神病棟からの逃⾛劇。逃⾛⾞である古 いルーチェのカーステレオからは実在のバンドTheピーズががんがんにかかって物語を 突き動かす。 ⼈⽣に伏線や辻褄合わせはない。花ちゃんは何となくなごやんを逃亡に誘い、なごやん は何となくついてくる。 この『何となく』。とっちらかった、理由のつけようがない⾏為を理由をつけずに放り 出す所が嘘くさくなくて良い。汗臭くて泥臭くて良い。 「そのやけっぱちには⾎が通っている。ぶっきらぼうなのに、泣いてもいいよって⾔わ れているみたいに優しい」 この⾔葉は作中でTheピーズの曲について述べられたものだが、私はこの物語にも、そ の⾔葉を贈りたい いちだい知のトライアスロン 入賞 映画部門 国際学部4年(受賞当時)来田 卓哉さん 「天地明察」 他 「天地明察」 滝田洋二郎監督 熱く、しかし静かな映画、という表現がこの作品のイメージだ。時代は江⼾。主⼈公 は将軍に囲碁を教えるのが仕事で、趣味は算術と天体観測。ある時、将 軍・徳川家綱 の後⾒⼈である会津藩主の命によって、主⼈公は当時使⽤されていた暦を新しいものに 変えるようにするため、⽇本全国へ天体観測のため⾏脚する。 作品には、これといって派⼿なシーンはない。しかし、800年も使⽤されていた従来 の暦を変えるという作業は、想像するだけで壮⼤な計画だ。その過程で 主⼈公が何に 葛藤し、そして価値を⾒出すかに関して、主⼈公の成⻑はもちろん、当時の世相を伺い 知ることが出来る。⽇本史はもちろん、数学や天⽂学を勉強 する⼈にとって、そうし た学問の歴史の⼀端を学ぶことができると思う。 いちだい知のトライアスロン 入賞 映画部門 情報科学部1年(受賞当時)杉山 大貴さん 「桐島、部活やめるってよ」 「桐島、部活やめるってよ」 吉田大八監督 この映画のポイントは主⼈公が存在しないところです。 普通の映画や⼩説は主⼈公を視点に書かれていると思いますが、この作品は桐島の友達 の視点だったり、桐島の彼⼥の視点だったり、桐島の彼⼥の友達の視点だったり、桐島 の彼⼥の友達のことを好きな映画部だったりと とにかく視点がさまざまで、新しい観点からの作品です。なのでそれぞれの⼈が同じ時 間に違う視点にいることをしっかり描かれていて、またセリフ⼀つ⼀つに意味があり観 れば観るほど奥が深い作品だと僕は思いました。 いちだい知のトライアスロン 入賞 映画部門 芸術学部1年(受賞当時)向井 美貴さん 「アンダルシアの犬」 「アンダルシアの犬」 ルイス・ブニュエル監督 本当に奇怪でショッキングの⼀⾔につきます。 ⽩⿊の映像が、映る⼈々に⽣気を感じさせなくて不気味。何がなんだか分からないのに、 進んでいく世界に困惑。実写映画なのに、アニメーションのようなブラックユーモアで ⽣きている登場⼈物たちに不快感。 ⾒る⼈をかなり選ぶ作品だと思います。 いちだい知のトライアスロン 入賞 美術展部門 国際学部4年(受賞当時)来田 卓哉さん 「平和のカタチ」 他 「平和のカタチ」 広島県立美術館 会期:2014.7.2-2014.9.15 戦争について学ぶ⼿段は様々だ。経験者の話を聞く、本を読む、映像を⾒るなどがあ る。この美術展では、戦争を絵で表現し、その作品から様々なことを学ぶことが出来る。 作品は、第⼀次世界⼤戦を記録したものから、広島の原爆、そして戦後の⽇本を描い たものまである。芸術家たちが彼らの作品に投影されるような時代、社会そして⾃⼰を どのように⾒つめ、作品を⽣み出していったのか。そして、戦後の激動する時代で、何 を⾒出していったのか。 戦争を忘れないようにする試みは数多くある。本美術展を訪れて、芸術家たちがどの ように戦争を表現し、そこから僕たちが何を想像し、何を学べるかが問われているよう な気がした。 いちだい知のトライアスロン 入賞 美術展部門 国際学部1年(受賞当時)野田 庸后さん 「 20世紀100の椅子」 「20世紀100の椅子」 広島市立大学芸術資料館 会期:2014.5.26-2014.6.8 椅⼦の展覧会なんて珍しい、と思う⼈は少なくはないと思います。絵や彫刻をじっとみ つめるだけなんて退屈だ、という⼈にお勧めの展覧会です。実際に触って、座って、す わり⼼地やそこからみえる視界を楽しむことができます。よく⾒るような⼀般的な椅⼦ から、針がたくさん集まってつくられたような、座るのを⼾惑ってしまうようなたくさ んの椅⼦があります。学内で過ごす秋時間にでも、ぜひ、この機会に体験してみません か? いちだい知のトライアスロン 入賞 美術展部門 芸術学部1年(受賞当時)矢坂 知嗣さん 「スリーピング・ビューティー」 「スリーピング・ビューティー」 広島市現代美術館 会期:2014.5.17-2014.7.21 ⼊ってすぐ⽬に⼊るプロジェクションされた箱。 ガラスの割れる画⾯、海の景⾊。 タイトルの穏やかな雰囲気とは裏腹に、刺激的な作品が展⽰されています。 前述の箱の隣に、ひっそりとたたずむドレスがありました。 なんてことのない服に⾒えるのですが、よく⾒ると⽷の束の⾊が、茶⾊と⿊がまざって います。そしてどこか、質感も普通の⽑とは違ことに気がつきました。 それは、⼈の髪の⽑で、壁にはドレスを着た⼥性のポートレート。 元は⼈の⼀部であったことを意識すると、どこか怨念めいたものを感じるようで、⽺⽑ であったりしたら感じないであろう、このむずがゆい感じは、新鮮な感触でした。
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