谷地頭温泉 - yayoizaka

谷地頭温泉売却方針の発表
年 12 月中旬、市営谷地頭温泉の民間売却方針が<突然>発表された。利用者数の減少に伴い、
赤字がかさむ(07 年で 5 千万円の赤字)一方だというのだが、問題はその先。
そもそも、谷地頭温泉の利用客低迷の背景には市内各所の最近数多く出来ているスーパー銭湯の
存在がある。従来の街の銭湯に比し規模も大きく設備も各段に優れているこうしたスーパー銭湯。
従来型の銭湯も軒並み経営不振のようだが、大規模浴場の谷地頭温泉もリニューアルすればよい
のにと普通に思われるところ。
温泉事業を管理する市水道局幹部もその点は認めていて、「採算性向上には大幅なリニューアル
が必要」だが、実際には新規設備投資は「民業圧迫の恐れもあり難しい」という。
ところで、なぜスーパー銭湯の料金が一般の銭湯と同じに抑えられているのかが疑問。ボーリン
グや設備にかなり投資をしているにも関わらず、街の銭湯、谷地頭温泉と料金は横並びでもやっ
ていけるというのはなぜか?どうも、これらが一括して公衆浴場法および関連条例で規制されて
いることに原因がありそうだ。
つまり、スーパー銭湯は、従来の銭湯とはまったく異なるビジネスモデルなのに、それらと同様
に、料金規制と引き換えに公的支援を受けられる(公共料金の減免など)ということのようなの
だ。
ひとことで言えば、スーパー銭湯は現行の法制度の隙間を突いた「優遇」によって経営がなりた
っているともいえよう。
ホテル・旅館の浴場はこうした規制の枠外なので(日帰り入浴などの)料金設定は自由だが、一
方で公的支援もなく、むしろ入湯税を支払うという立場。
法制度と現実がミスマッチを起こしている中で、もっとも弱い立場にあったのが実は「公営」の
浴場であり、真っ先に市場からの退出が求められたということのようだ。
新聞はこういう背景事情をきちんと調べて記事を書いてほしいものだ。
行政も「赤字でやっていけない、設備投資も出来ない。だから売る」などというような通りいっ
ぺんの説明に終わらせず、硬直化した行政運営にも責任があったということを率直に認め、かつ
情報公開をしていく中でどういう打開策が本当に市民の公共の利益を守ることになるのか真剣
に考えるべきではなかろうか。
一番電車でやってきて谷地頭温泉の朝湯を楽しむお年よりは今でも決して少なくない。函館とい
う街にしっかり根付いた存在の「市営」谷地頭温泉だ。その将来を軽々しく論じてはならない。
九州の別府では市営温泉「竹瓦温泉」を指定管理者に委託するなどして、民間の経営手法の導入
を図っている。こういう方法も含めた「経営改善」案をまずは示すべきであろう。