授業科目名 担当者 授業科目群 開講年次 履修条件 学習の目標 授業の

授業科目名
刑事法発展
担当者
授業科目群
派遣検察官、平田元、佐藤陽子
法律基本
必修・選択の別
必修
開講年次
2年次・後期
履修条件
刑法、刑事訴訟法、各Ⅰ・Ⅱの履修者(単位修得者)が望ましい。
学習の目標
典型的な犯罪類型に関し,刑法総論・各論上の論点の理解を深めるとともに,
刑事実務上の論点にも及んで総合的に検討を加えることにより,思考の枠組みを
発展させ、刑事法理論と刑事実務との融合的理解を図り、両者を架橋するための
基礎段階を構築する。
授業の計画
第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第10回
第11回
第12回
第13回
第14回
第15回
公務の執行を妨害する罪等の犯罪成立要件における理論上の問
題を取り上げ重点的に検討する。
公務執行妨害罪を題材に,令状呈示の趣旨や警察官職務執行法2
条1項の「停止」の意義及びその限界等について検討する。
放火の罪の犯罪構成要件における理論上の問題を取り上げ重点
的に検討する。
放火罪を題材に,ビデオ撮影の法的問題及び自白法則,違法集証
拠排除法則等について検討する。
殺人罪に関連する理論上の問題を取り上げ検討する。
殺人罪を題材に,共謀の成立時期及び訴因変更の要否等について検討す
る。
主要に特別法上の薬物事犯をめぐる刑法理論上の特殊問題を取
り上げ検討する。
薬物事犯を題材に,令状執行に関する刑訴法の原則,「場所」に対する
令状で身体,物を捜索することの可否等について検討する。
窃盗・強盗罪における基礎的概念を判例を中心に検討する。
窃盗・強盗罪を題材に,任意同行・任意取調べの意義・限界,現場
指示及び現場供述と証拠能力・証明力が及ぶ範囲等について検討する。
詐欺罪における基礎的概念について判例を中心に検討する。
詐欺罪を題材に,刑訴法323条が伝聞法則の例外である根拠・一般
的要件,刑訴法328条に関する問題について検討を加える。
偽造罪における基礎的概念について判例を中心に検討する。
逮捕に関連する問題及び裁判における当事者主義と真実発見の要
請について検討する。
総括、全体のまとめと補足
教科書
1
各自が使用している刑法総論,刑法各論及び刑事訴訟法の基本書
主な参考文献
1
ジュリスト増刊
2
各種コンメンタール等
3
さらに、各講義ごとにも摘示する
試験・成績評価
の方法
争点、判例百選
論述方式による定期試験(90%)及び平常点(レポートを含むことがある
。)(10%)により評価する。
科
目
刑事法発展
担
当
者
佐藤
陽子
第1回
全15回
公務執行妨害
Ⅰ
事例(授業内容)
(1)同僚ABは偶然の相客甲と飲食店内で口論となり、外に出て、Bが、甲を投げ付け、足蹴りに
するなどした。その間、Aはそのかたわらで甲に対し「Bに謝れ」と叫んだ。又、酩酊してそこに居合
わせたCも面白がって「もっとやれ」と叫ぶと共に、甲の腹部を踏み付けるなどして立ち去った。目撃
していた同店女給乙が交番所に届けた。甲はその後病院に搬送されたが内臓破裂による死亡が確認され
たが、その原因者を特定できなかった。(2)丙巡査部長が現場に駆けつけると、甲が倒れており、傍
らにABが立っており、「誰が殴られたのか」と聞くと、乙が甲を指したので、丙は事情を聞くためA
Bに同行を求めた。Aは何もしていないと言ったが、Bは逃げ出したので、丙は両者を暴行罪の現行犯
と思料し、急ぎ足に歩きだすAのオーバーをつかまえて追随し、Aの逮捕行為に移った。Aは「不当逮
捕だ」と言って丙を殴りその前歯1本折損させた。
要点
(1)公務執行妨害罪における職務行為の適法性
(2)公務執行妨害罪における職務行為の適法性の判断基準
(3)公務執行妨害罪における職務行為の適法性の錯誤
(4)警察官の現行犯逮捕と適法性
(5)罪数関係等
関係条文
刑法35、36、38、95、195条、刑事訴訟法212、213条、警職法7条等
キーワード
職務行為の適法性、適法性の判断基準、適法性の錯誤、現行犯逮捕
必ず予習すべき文献・判例
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
最決昭和41年4月14日判時449号64頁
最判昭和42年5月24日刑集21巻4号505頁
小田直樹「公務執行妨害罪における職務の適法性」刑法の争点246頁
中村勉「職務行為の適法性」刑法判例百選Ⅱ各論第6版236頁
武田誠「職務行為の適法性の判断基準」刑法判例百選Ⅱ各論第6版238頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
福岡高判昭和30年6月9日高刑集8巻5号643頁
最決昭和31年3月9日刑集10巻3号303頁
最判昭和32年5月28日刑集11巻5号1548頁
最決平成元年9月26日判タ736号111頁
村井敏邦・公務執行妨害罪の研究(1984)
科
目
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
第2回
全15回
公務執行妨害罪 Ⅱ
事例(授業内容)
【設問1】
司法警察員は,被疑者Aを逮捕し,A宅に対する捜索差押許可状を執行しようと考えたが,Aが独り暮
らしとの情報を得ていたため,近くに住んでいた雇い主Bを立会人として,同人に同許可状を示し,A
宅内に入った。すると,同所にいたXが司法警察員に対し,Aの友人である旨告げるとともに同許可状
の呈示と捜索の執行への立会いを要求してきたので,司法警察員数名がその両腕をつかむなどして力づ
くでXを排除しようとしたところ,Xは,司法警察員に対し数回足蹴りした。
Xの罪責について検討せよ。
【設問2】
警察官Xらが,パトカーで警ら中,ナンバープレートの番号を泥で見えない状態にしたA運転車両とす
れ違ったことから,同車両が盗難車あるいは無車検車ではないかとの疑いを抱き,これを追尾したとこ
ろ,Aは行き止まりの小道(車両のすれ違いは困難な道幅であった。)に入って停車した。警察官Xは
A運転車両の後部に続けてパトカーを停車すると,直ちにA運転車両の運転席に近づきAに職務質問を
開始した。Aは運転席に座ったまま,氏名,生年月日を答えたが,警察官が免許証及び車検証の呈示並
びにボンネットを開けるように求めるもこれを拒否し,再三エンジンをかけて,車を数十センチメート
ルずつ前後に移動させた。職務質問開始後約30分経過後,Aがボンネットを開けたため,警察官が車
体番号を確認し無線照会を行った結果,同車両は無車検,無保険車であることが判明した。そこで,警
察官Xは,Aに最寄りのY警察署までの任意同行を求めたが,Aは運転席に座ったまま,黙ったまま応
じようとせず,エンジンをかけては車を少し移動させるなどした。そこで,警察官はバッテリーの配線
をはずし,さらに,Aの顔見知りの警察官らが到着してAを説得したところ,約4時間後,Aは警察署
への同行に応じる旨答え,警察官の運転するパトカーの後部座席に同乗してY警察署に赴いた。その後
,Aの所持品から覚せい剤が発見され,Aは覚せい剤取締法違反で逮捕された。
当該手続について問題がないか検討せよ。
要点
【設問1】につき
(1) 職務行為の適法性に関する判断基準
(2) 令状呈示の趣旨と本問への当てはめ
(3) 捜索の執行への立会いの趣旨と本問への当てはめ
【設問2】につき
(1) 警察官職務執行法2条1項の「停止」の意義及びその限界
(2) 刑訴法上の原則との関係
関係条文
刑法95条1項,警察官職務執行法2条
キーワード
職務行為の適法性,警察比例の原則
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 大コンメンタール刑法第2版第6巻(青林書院)101頁
(2) 大コンメンタール刑事訴訟法第2巻(青林書院)352頁,376頁
【設問2】につき
(1) 大コンメンタール刑事訴訟法第3巻(青林書院)142頁
(2) 増補令状基本問題(上)(判例時報社)66頁,130頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
【設問1】につき
最高裁昭和41年4月14日決定(判例時報449号64頁)
【設問2】につき
(1) 最高裁昭和53年6月20日判決(刑集32巻4号670頁)
(2) 最高裁平成6年9月16日決定(刑集48巻6号420頁)
(3) 最高裁昭和51年3月16日決定(刑集30巻2号187頁)
科
目
刑事法発展
担
当 佐藤
者
陽子
第3回
全15回
放火罪
Ⅰ
事例(授業内容)
(1)Aは、映画会社撮影所で経理課係員として映画製作費の出納、保管等の事務を取り扱っている
うち、数回にわたり、その保管金から合計90万円を持ち出して友人に貸し付けまたは映写機購入等
費消し、帳簿上は映画製作の経費として支出したよう取り繕っていた。ところが、国税局から係官が
経理関係書類取調のため来所し、綿密な調査を行う旨聞知し非行の発覚を心配し、同課の帳簿類を焼
いてしまおうと考え、深夜、人気のない本館と渡り廊下で繋がるレンガ造りの会計倉庫内に立ち入り、
棚の上に積んであった伝票類に点火した。火は伝票類を焼き天井板50センチ四方を焦がして鎮火した
。(2)Aは、その後も、(イ)数回にわたり、保管金から合計200万円を持ち出して遊技に費消し
、帳簿上は前記同様の方法で取り繕っていたところ、(ロ)再び国税調査が行われる旨聞知し、関係書
類を車で持ち出し、河川敷で焼却したところ、強風にあおられて火の粉が飛散し近くのボート小屋に燃
え移りこれを焼損した。さらに、(ハ)事務所を焼いて帳簿も一緒に焼けてしまったことにしようと考
え、深夜、仮事務所となっていた演技部建物内元女優大部屋化粧台上の書類に点火した。その結果、同
建物から本館に延焼し、さらに隣接する住宅1個を焼損した。(3)第一審で、弁護人は精神鑑定を申
請したが、退けられた。控訴審では、精神鑑定が行われ、鑑定人はAは犯行時顕著な精神病状態にあり
法律的には心神耗弱の状態に相当すると述べた。しかし、裁判所は特に説明なくこれを退け、正常域に
あるとした。
要点
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
放火犯の特殊性
放火罪の故意
放火罪における公共の危険の認識
公共危険罪における主観的要件
責任能力判断と精神鑑定の要否
精神鑑定の拘束力
関係条文
刑法39条、108条、109条、110条、刑事訴訟法165条、318条、335条等
キーワード
未必の故意、公共の危険、犯罪阻却事由、処罰阻却事由、心神喪失・心神耗弱、精神鑑定、証拠説明
必ず予習すべき文献・判例
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
最判昭和60年3月28日刑集39巻2号75頁
東京地裁八王子支判平成8年9月11日判時1594号156頁
星周一郎「公共危険の認識」刑法判例百選Ⅱ各論第6版176頁
曲田統「放火罪における公共危険」刑法の争点222頁
廣瀬健二「精神鑑定」刑事訴訟法の争点第3版(2002)168頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)
(2)
大判昭和10年6月6日刑集14巻631頁
最判昭和24年2月22日刑集3巻2号198頁
(3)
(4)
(5)
(6)
科
目
名古屋高判昭和39年4月27日高刑集17巻3号262頁
東京地判昭和62年9月9日判時1252号140頁
中田修「放火並に放火犯の犯罪学的考察」刑法雑誌4巻1号86頁
稲田輝明「刑事鑑定の諸問題」現代刑罰法体系第6巻(1982)109頁
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
第4回
全15回
放火罪 Ⅱ
事例(授業内容)
【設問1】
木造住宅に三方を囲まれている甲駐車場で,3月3日,3月9日,3月19日の3回にわたり,いずれ
も早朝に,自動車のタイヤ付近に灯油が巻かれて放火され,車が炎上したり,一部焼損したりする事件
が起きた。3回目の放火がなされたと思われる時間帯に,A駐車場から走り去る黒いスウェットスーツ
上下を来た20歳くらいの男を目撃したとの新聞配達員からの情報を得て捜査したところ,近所に住む
A(21歳)と身体的特徴が一致することが判明した。さらに,近隣住民の聞き込みから,A方には石
油ストーブがあり,Aが定期的に灯油を購入していること,Aが,ほぼ毎日早朝,黒いスウェットスー
ツ上下を着てジョギングをしていることが判明した。そこで,警察官は,A方の向かいに住むBに協力
を要請し,B方の2階ベランダにA方玄関ドア付近を撮影するビデオカメラ①を設置し,さらに,甲駐
車場の所有者の許可を得て,甲駐車場全体を撮影するビデオカメラ②及び甲駐車場の入り口を撮影する
ビデオカメラ③を設置した。撮影時間は,これまで火事の起きた時間帯に前後一時間程度の幅を持たせ
た午前3時から午前7時までの間とし,一日ごとに不要な映像は消去していた。撮影を始めた一週間後
の午前5時ころ,甲駐車場で自動車1台が炎上した。そこで,警察官が上記3台のビデオテープの映像
を確認したところ,ビデオカメラ①に,午前4時35分ころ,ニット帽をかぶり,マスクをして,黒い
スウェットスーツ上下を来て,手にペットボトルを持って玄関を出るAの姿,ビデオカメラ②に,午前
4時50分ころ,炎上した車に近づき,タイヤ付近でしゃがみ込んでいる黒いスウェットスーツ上下を
着た男の姿,ビデオカメラ③に,同時刻前後,上記同様の服装をし,ペットボトルを持った男が出入り
する状況が録画されていた。
これらのビデオ撮影の適法性について検討せよ。
【設問2】
建造物放火事件の被疑者と目されるA(一人暮らし)を任意同行の上警察で取調中,警察官がA宅に行
ったところ,近くに住むAの姉Bがやってきたため,Bに断ってA宅に入り,犯行現場に遺留された燃
えかすの新聞紙と破断面の一致する新聞紙を発見し,Bから提出を受けた。Aは,当初犯行を否認して
いたが,A宅から押収された新聞紙と現場に遺留された新聞紙の破断面を見せられ,これが一致したこ
とを告げられるや自白に転じた。
この一連の捜査における問題点は何か。また,押収された新聞紙及びAの自白にそれぞれ証拠能力は認
められるか。
要点
【設問1】につき
(1) ビデオ撮影の性質,適法性
(2) ビデオ撮影の適法要件
【設問2】につき
(1) 自白法則の根拠
(2) 自白法則と違法収集証拠の排除法則との関係
(3) 派生証拠の証拠能力
関係条文
刑訴法197条,319条,322条1項
キーワード
強制処分と任意処分,違法収集証拠
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 最高裁昭和44年12月24日判決(判例時報577号18頁,百選20頁)
(2) 東京地裁平成17年6月2日判決(判例時報1930号174頁)
(3) 最高裁平成20年4月15日決定(判例時報2006号159頁)
【設問2】につき
(1) 最高裁昭和53年9月7日判決(判例タイムズ369号125頁,百選136頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
【設問1】につき
(1) 大コンメンタール刑事訴訟法第3巻140頁
(2) 増補令状基本問題上47頁
【設問2】につき
(1) 最高裁平成15年2月14日判決(判例タイムズ1118号94頁,百選140頁)
(2) 大阪高裁昭和52年6月28日判決(刑裁月報9巻5=6号334頁)
(3) 新実例刑事訴訟法Ⅲ95頁,109頁
科
目
刑事法発展
担
当
者
佐藤
陽子
第5回
全15回
殺人罪 Ⅰ
事例(授業内容)
(1)(イ)Aは、甲に対する恨みを晴らすため、馴染みのB組事務所に赴き組員C、D及びEに対し
甲殺害を依頼し、殺害した場合の成功謝金額につき、折衝を重ねていた。Bが傍らで「その位でやって
やれ、礼金は引き受けた。」と発言した。結局、実行正犯に200万円支払う約束でCDEは実行を引
き受け、Fから日本刀の貸与を受けた。(ロ)CDEは、夕方甲方付近の公園に至り様子を窺っていた
ところ、Aの真意を受けて駆けつけたGより、まずGの交渉を先行させ、交渉いかんによって突入する
よう求められ、了承し公園内でそれぞれ待機することになった。Gは甲方玄関先で交渉したがなかなか
埒があかず、CDは待ちきれず、Gの制止を振り切って甲に切りつけたが傷害するにとどまった。Eは
たまたま小用を足していてCDの決行を知らなかった。(ハ)甲は逃走中車に衝突して死亡した。(2
)Xは、甲女(7歳)を姦淫しようとして泣き声を立てられ、死亡するもやむなしと同女の頸部を締め
続けて同女が呼吸を停止した後、即時同女を姦淫し且つ窒息死させた。(3)Yは、回送電車に爆発物
を仕掛けて走行中爆発させ転覆させた。その結果、線路脇の住宅と衝突させ、運転手A及び住宅内にい
たBを死亡させ運転助手C及び付近を通行中のDに傷害を負わせた。
要点
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
条件付殺意と殺人予備
条件付殺意と共犯
殺意の認定
殺人の未必の故意と確定的故意
各種致死罪と殺意
関係条文
刑法38、60~62、125~127、181、199、201、204、205条等
キーワード
殺人罪の故意、条件付故意、未必の故意、確定的故意、共同正犯、幇助犯、予備の幇助、結果的加重
犯
必ず予習すべき文献・判例
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
最決昭和37年11月8日刑集16巻11号1522頁
最判昭和59年3月6日刑集38巻5号1961頁
安達光治「条件付故意」刑法判例百選Ⅰ総論第5版76頁
川口浩一「殺人予備罪の共同正犯」刑法判例百選Ⅰ総論第6版166頁
奥村正雄「未必の故意と条件付故意」刑法の争点第3版60頁
吉田宣之「電車転覆致死罪の成否」刑法判例百選Ⅱ各論第6版182頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
科
目
大判大正11年12月22日刑集1巻815頁
最大判昭和25年7月19日刑集4巻1463頁
最判昭和25年8月9日刑集4巻8号1562頁
最判昭和33年6月24日刑集12巻10号2269頁
東京高判昭和45年8月11日高刑集23巻3号524頁
前田雅英「故意の認定と故意の種類」法学教室141号60頁
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
第6回
全15回
殺人罪 Ⅱ
事例(授業内容)
【設問1】
AとBは,暴力団甲組組員で組長Cの用心棒役をしていた者であるが,某日,Cが散髪のため理髪店に
向かうのに同行した際,その前に,同組事務所において,同組幹部Dから「これ持っていけ。」と言わ
れ,それぞれ弾が込められているけん銃を1丁ずつ渡された。そして,「何かあったら直ぐ俺の携帯に
連絡を入れろ。」と指示されたのでそれを了承し,Cとともに理髪店へ行った。Aは,このとき,それ
以前に何度かCの護衛をしていたので,A及びBとは別に,Dらが自動車に乗って理髪店付近の警護に
当たると分かっていた。しかし,組に入って間もなかったBは,Dらによる警護のことは知らず,これ
についてAやDからも知らされていなかった。
理髪店に到着して間もなくCの散髪が始まったので,AとBは,同店内の待合室で座っていたが,Bは
,前日から麻雀で徹夜した疲れや,どうせこんな日中には何も起きないだろうと考え,目をつむったと
ころ不覚にもうとうとしてしまった。ところが,甲組と対立関係にありCの殺害を企てていた暴力団乙
組組員8名が2台の自動車に分乗して同店前路上に乗り付け,降車すると同時にそれぞれけん銃を使っ
て同店へ向けて発砲を始めた。Aは,Dから渡されたけん銃を取り出して乙組組員に向かって数発発砲
してから,Bに向かって「こら,Dへ連絡しろ。お前もチャカ(けん銃)使え。」と指示した。Bは,
すぐに目を覚まし,対立する暴力団組員から襲撃を受けている事態を飲み込み,Aの指示に従って,持
っていた携帯電話でDと連絡を取り,応援を要請し,さらに,Dから渡されたけん銃を発射して反撃し
た。
Dらは,甲組組員数名とともに自動車に乗って同店付近を走りながら不審者のチェックをしていたが,
Bからの連絡を受けてから1分後,同店へやって来て,事前に用意していたけん銃を発射してAとBに
加勢した。Dらが加勢に入ったことに気付いた乙組組員は,乗り付けた自動車に飛び乗り,その場を後
にしたが,この銃撃戦の結果,乙組組員であるXとYの2名が死亡した。
後日,死体解剖や銃弾に関する鑑定等の結果,Xの致命傷がAのけん銃から発射された銃弾であったこ
と,Yの致命傷がB又はDのけん銃から発射された銃弾であったことが明らかとなった。ところが,そ
れらの致命傷となった銃弾は,A,B又はDが何発目に発射したものであったかは特定できなかった。
AとBの罪責について検討せよ。
【設問2】
検察官は,被告人を殺人罪で起訴したが,公訴事実の概要は「Vの顔面を右手拳や石塊で数回殴打して
転倒させ(第1暴行と呼ぶ。),憤激の余り殺意をもって,コンクリート塊や石塊で仰向けに倒れてい
るVの顔面・頭部を数回殴打した上,スコップの先でVの顔面を数回突き刺し(第2暴行と呼ぶ。),
Vを脳挫滅により死亡させて殺害した」という内容であった。被告人及び弁護人は,専ら第2暴行時点
における殺意の不存在を争った。裁判所は,第1暴行時点における未必の殺意を認定して,両暴行を含
めて一罪の殺人罪が成立すると認定したいが,この場合,訴因変更を必要とするか検討せよ。
要点
【設問1】につき
(1) 共謀の成立時期
(2) 積極的加害意思をもつ場合における正当防衛の成否
【設問2】につき
(1) 訴因変更の可否
(2) 訴因変更の要否(一般理論)
(3) 訴因変更の要否(当てはめ)
関係条文
刑訴法312条
キーワード
共謀共同正犯,正当防衛,訴因変更
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 最高裁昭和52年7月21日決定(最高裁判所判例解説昭和52年241頁)
(2) 京都地裁平成12年1月20日判決(判例時報1702号170頁)
(3) 大阪高裁平成13年1月30日判決(判例時報1745号150頁)
【設問2】につき
(1) 大コンメンタール刑事訴訟法第4巻(青林書院)770頁
(2) 東京高裁平成元年3月2日判決(判例時報1322号156頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
科
目
刑事法発展
担
当
者
佐藤
陽子
第7回
全15回
薬物事犯 Ⅰ
事例(授業内容)
(1)Xは、5回にわたりブラジルから、宿泊予約した都内のホテル等の自己充に国際エクスプレス
メールを利用して密売用のコカインを郵送させ、その交付を受けたホテル従業員らからこれを引き取っ
た上、都内の自宅に保管していた。(2)その後、Xは、A(麻薬捜査官から依頼されたその民間協力
者)よりヘロイン及び覚せい剤の入手方を勧誘されA方で引渡すことを約束し、これに応じた。(3)
Xは、ヘロインについては、タイから、宿泊予約した都内のホテルの自己宛に同様の方法で密売用のヘ
ロイン粉末を発送させた。これは、東京国際郵便局の検査で発見され、いわゆるライブ・コントロール
ド・デリバリーが実施された。Xは、郵送された同ヘロイン粉末を同ホテル従業員から引き取った直後
に警察官に逮捕された。(4)覚せい剤については、Yにその入手とZ宅への発送を依頼した。Yは、
麻薬MDMA錠剤を覚せい剤と誤認して、オランダ王国内の郵便局において、MDMA錠剤60グラム
を隠匿した国際航空小包郵便物1個をZ宅X宛に発送した。(5)それは成田空港で機外に搬出された
が、同じく東京国際郵便局の検査で発見され、いわゆるクリーン・コントロールド・デリバリーが実施
された。Xは、そのとき勾留中であり、MDMAと置き換えられた代替物は配達先でZが受け取った。
要点
(1)
薬物事犯における薬物の錯誤と故意等
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
薬物の輸入罪の実行の着手および既遂時期
薬物事犯における所持の意義
薬物事犯と罪数関係
薬物事犯と囮捜査
薬物事犯といわゆるコントロールド・デリバリーの実施
関係条文
刑法19条、38条、麻薬及び向精神薬取締法12条、64条、64条の2、69条の3、覚せい
剤取締法13条、14条、41条、41条の2、41条の8、麻薬特例法4条、関税法109条、11
1条等、関税定率法21条等
キーワード
薬物の錯誤、囮捜査、輸入禁制品、既遂時期、所持、コントロールド・デリバリー
必ず予習すべき文献・判例
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
最決昭和54年3月27日刑集33巻2号140頁
最決昭和61年6月9日刑集40巻4号269頁
最決平成9年10月30日刑集51巻9号816頁
最決平成13年11月14日刑集55巻6号763頁
最決平成15年11月4日判タ1143号267頁
最決平成16年7月12日判時1869号133頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
科
目
最決昭和28年3月5日刑集7巻3号482頁
最判昭和29年11月5日刑集8巻11号1715頁
山口厚「薬物の錯誤と没収」法学教室73号126頁
団藤重光「わな(エントラップメント)の理論」刑法雑誌2巻3号26頁
佐藤隆之「コントロールド・デリバリー」刑事訴訟法の争点第3版86頁
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
第8回
全15回
薬物事犯 Ⅱ
事例(授業内容)
【設問1】
甲ら警察官5名は,Aに対する覚せい剤取締法違反被疑事件につき発付された捜索差押許可状を所持し
てA方に赴き,玄関のドアが施錠されていたことなどから,A又は在室者に内側からドアを開けさせよ
うと考え,甲が玄関のチャイムを鳴らし,「宅急便でぇーす。」と声を掛けた。この声を聞いたAが宅
急便の配達人が来たと誤信し,玄関ドアの錠及びチェーンをはずしてドアを内側から開けたため,甲ら
警察官は,「警察だ。切符(令状の意味)が出ている。」などと言いながら素早くA方屋内に入った。
そして,甲は,玄関横の台所を通り抜け,その隣の居間(A方のほぼ中央)まで入り込んでからAに対
して令状を示し,一斉に捜索に取りかかった。そして,数分後には,寝室の棚に置かれた小物入れの中
からビニール袋入り白色結晶粉末1袋,注射器等が発見され,結晶粉末につきAの承諾を得て予備試験
を行ったところ,覚せい剤の陽性反応を示した。そこで,甲らは,Aを覚せい剤所持の現行犯人として
逮捕し,これに伴う処分として,前記ビニール袋入り白色結晶粉末1袋等を差し押さえた。
この設例につき,考えられる問題点を指摘して検討するとともに,裁判官としての判断を示せ。
【設問2】
甲ら警察官5名は,Aに対する覚せい剤取締法違反(所持)被疑事件につき発付された捜索差押許可状
(同令状には,捜索の場所を「A方住居」,差し押さえるべき物件を「被疑事実に関係のある覚せい剤
,注射器,取引メモ,小分け道具類,住所録」と記載されていた。)を所持してA方に赴いた。そして
,【設問1】の経緯で,Aに令状を示してその執行に着手したが,Aは,回りをきょろきょろながめた
り,居合わせた内妻Bと目配せをするなど落ち着きのない様子を示しており,右手をズボンの右後ろポ
ケット内に入れたまま,ポケットから手を出そうとしなかった。また,内妻Bは,ボストンバッグを右
手に提げて警察官の動きを気にしており,居間から台所に移動する際にもボストンバッグを離そうとし
なかった。こうした様子を見ていた甲は,まず,Aが捜索の目的物をポケットに隠しているとの疑いを
強め,その呈示を求めた。すると,Aがポケットから右手を握りしめた状態で出し,その手を口にあて
て何かを飲み込もうとしたため,甲は近くにいた他の警察官とともにAの右手を押さえ,指をこじ開け
たところ,手の中からビニール袋入り白色粉末を発見した。そこで,同粉末につきAの承諾を得て予備
試験を行ったところ,覚せい剤の陽性反応を示したので,Aを覚せい剤所持の現行犯人として逮捕する
とともに同白色粉末1袋を差し押さえた。他方,この様子を途中まで見ていたBは,ボストンバッグを
持ったまま玄関方向へ小走りで向かい,玄関から外へ出ようとした。そこで,甲は,Bに対し,外へ出
ることを禁ずるとともに,先程からのBの様子から,ボストンバッグ内に捜索の目的物を隠している疑
いが非常に強くなったため,Bを居間へ戻らせた上,同バッグを提出するか,ファスナーを開けて中身
を見せるよう求めた。しかし,Bが拒否し,バッグを両手で胸に抱え込んだため,やむを得ず,両腕を
つかむなどしてバッグを取り上げ,女性警察官乙をして捜索させたところ,大きなビニール袋入り白色
粉末,多数枚のビニール袋,電子計量器などが発見され,同様に予備試験を行うなどして,Bを覚せい
剤所持の現行犯人として逮捕し,覚せい剤等を差し押さえた。
この捜索差押えに際しての甲の措置について検討せよ。
要点
【設問1】につき
(1) 令状執行に関する刑訴法の原則
(2) 処分の実効性確保の必要性
(3) 実務における運用状況
【設問2】につき
(1) 「場所」に対する令状で身体,物を捜索することの可否
(2) 「捜査の必要性・実効性」と「個人の人権やプライバシーの保護」との調和
(3) 実務における運用状況
関係条文
刑訴法110条ないし113条,218条,219条,102条
キーワード
令状の執行
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 大コンメンタール刑事訴訟法第2巻(青林書院)352頁,360頁
(2) 注釈刑事訴訟法(新版)第2巻(立花書房)199頁
【設問2】につき
(1) 大コンメンタール刑事訴訟法第2巻(青林書院)327頁
(2) 注釈刑事訴訟法(新版)第2巻(立花書房)192頁
(3) 最高裁判所判例解説刑事篇平成6年度110頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
【設問1】につき
(1) 大阪高裁平成6年4月20日判決,高等裁判所刑事判例集第47巻1号1頁
(2) 東京地裁昭和58年3月29日判決,刑裁月報15巻3号247頁
【設問2】につき
(1) 最高裁平成19年2月8日判決(刑集61巻1号1頁)
科
目
刑事法発展
担
当
者
平田
元
第9回
全15回
窃盗・強盗罪 Ⅰ
事例(授業内容)
(1)甲は、同じマンションに住んでいるAが他から盗んできたデジタルカメラをもっているのを知
り、これを1泊旅行の記念撮影のため一時借用しようと思い、旅行の前日、Aの留守をねらってその部
屋に入り、このカメラを持ち出し、翌日、これを持って旅行に出かけ、旅行先で写真を撮影し、旅行か
ら帰った日に、このカメラを元の場所に戻しておいた。
(2)甲は、Aの財布のなかから現金を窃取したところ、それに気づいたAから追呼されて逃走し、現
場からおよそ80メートル離れた地点で、その追呼に応じて追跡してきたBに対して逮捕を免れるため
に暴行を加えた。
(3)甲は、同僚の売上金を強取しようとA運転の自動車の助手席に乗り込み、出刃包丁を突きつけ
て脅迫し売上金の入っているビニール袋を奪い取ろうとしたが、Aは袋を離すことなく運転を続け、し
ばらくした後、「反抗できないこともないがこれ以上抵抗すれば危害を加えられかねない」とおもい、
甲がビニール袋を持ち去るのを黙認した。
要点
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
不法領得の意思
使用窃盗
財産罪の保護法益
窃盗と暴行・脅迫との接着性
事後強盗の既遂、未遂
強盗罪における暴行・脅迫
関係条文
刑法235条、236条、238条
キーワード
不法領得の意思、本権説、占有説、事後強盗、暴行・脅迫
必ず予習すべき文献・判例
(1)川端博「窃盗罪における不法領得の意思」刑法の争点第3版164頁
(2)曽根威彦「窃盗罪の保護法益」刑法の争点第3版162頁
(3)小名木宏明「強盗罪の要件たる暴行脅迫(1)」刑法判例百選Ⅱ各論第6版74頁
(4)長井長信「事後強盗の成否」刑法判例百選Ⅱ各論第6版82頁
(5)最判昭55年10月30日刑集34巻5号357頁
(6)最決平元年7月7日刑集43巻7号607頁
(7)最判昭23年11月18日刑集2巻12号1614頁
(8)最決平14年2月14日刑集56巻2号86頁
(9)最判平16年11月30日刑集58巻8号1005頁
(10)最判平16年12月10日刑集58巻9号1047頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1) <特集>「財産犯論」現代刑事法2巻4号
(2) 山口厚『問題探求 刑法各論』(有斐閣)93頁以下。
(3) 朝山芳史「窃盗犯人による暴行が窃盗の機会の継続中に行われたものとされた事
例」最高裁時の判例Ⅳ 刑事法編146頁
(4)最決平16年8月25日刑集58巻6号515頁(窃盗罪における占有の意義)
(5)林幹人「刑法244条1項(親族相盗例)の適用を否定した事例」平成18年度重判167頁
科
目
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
第10回
全15回
窃盗・強盗罪 Ⅱ
事例(授業内容)
【設問1】
大学生Aが自宅で朝食をとっていたところ,F警察署の警察官2名が訪ねてきて,「君が中古パソコン
ショップMに処分したパソコンについて聞きたいことがあるからF署まで来てほしい。」などと同行を
求められ,Aは警察車両に同乗してF署に出頭した。そして,直ちに刑事課の部屋で取調べが開始され
,昼・夕食時に各1時間と合計3回の短時間の休憩をはさんで取調べが続いた後,Aは午後9時半ころ
になって,Mに売却処分したパソコン5台は友人2名と一緒にH株式会社の事務所から盗んできたもの
であることなどを自白した。この間,部屋には取調べ担当警察のほかに立会人1名がおり,Aがトイレ
に行くときは立会人が付き添った。同日の午後10時ころ逮捕状が請求され,Aは同日午後11時半こ
ろ通常逮捕され,翌日の午後に建造物侵入及び窃盗の罪名で検察官に送致され,同日の夕方,勾留請求
された。
本件における問題点,そして,問題点判断のため更に調査・捜査すべき事項があれば,その内容につい
て述べよ。
【設問2】
Aは,被害者Vの腕をナイフで切り付けて傷害を負わせたとして逮捕・勾留され,捜査の過程において,
Vに被害状況を再現させた実況見分調書及びAに犯行状況を再現させた実況見分調書が作成された。こ
れら実況見分調書には,V(A)が,捜査官を相手方に見立てて被害状況(犯行状況)を再現している
写真が添付され,立会人であるV(A)の説明として,「Aから,右手に持ったナイフを振り下ろされ
て腕を切り付けられました。」「右手にナイフを持って,Vの腕をめがけて振り下ろし,切り付けまし
た。」などの記載がある。
Aは,公判で犯行を否認し,「Vを脅そうと思ってナイフを示したところ,Vからナイフを取り上げら
れそうになり,揉み合っていたところVの腕に当たって切ってしまったのであって,故意に切り付けた
のではない」旨の弁解をしている。
公判において,上記各実況見分調書の取調べが請求されたが,弁護人は「不同意」の意見を述べた。な
お,上記各実況見分調書に,V・Aの署名押印はない。
上記各実況見分調書の証拠能力を検討せよ。
要点
【設問1】につき
(1) 任意同行・任意取調べの意義・限界
(2) 任意同行が違法である場合,その後に行われた逮捕を前提とする勾留請求の適法性
【設問2】につき
(1) 実況見分調書と刑訴法321条3項の適用の可否
(2) 現場指示及び現場供述と証拠能力・証明力が及ぶ範囲
関係条文
刑訴法198条1項,321条
キーワード
任意捜査,現場指示と現場供述
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 大コンメンタール刑事訴訟法第3巻(青林書院)166頁
(2) 刑事訴訟法判例百選〔第四版〕12頁
【設問2】につき
(1) 注釈刑事訴訟法新版第5巻(立花書房)331頁
(2) 刑事訴訟法判例百選(第五版)186頁,189頁
(3) 最高裁平成17年9月27日決定(判例時報1910号154頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
【設問1】につき
最高裁昭和59年2月29日決定,判例時報1112号31頁
科
目
刑事法発展
担
当
者
平田
元
第11回
全15回
詐欺罪 Ⅰ
事例(授業内容)
(1)A信販会社の会員である甲は、代金を支払う能力も意思のないにもかかわらず、自己名義のク
レジットカードを使用して、A信販会社の加盟店であるB宝石店で、500万円のダイヤモンド指輪を
購入した。
(2)甲は、容易に入手可能なあんま器を一般には入手困難な特殊、高価なものと偽って、ほぼ相当価
格でこれをAに売った。
(3)甲は、Aに対して通貨を偽造して大もうけをする計画があるので、その準備金を出してほしいと
虚偽の事実を述べて、Aから準備金として金銭を詐取した。
要点
(1)クレジットカード犯罪の成否と理論構成
(2)詐欺罪における財産的損害
(3)詐欺罪と不法原因給付
(4)誤振込みと詐欺罪の成否
関係条文
刑法246条、民法708条、民法90条
キーワード
三角詐欺、欺罔行為、財産的処分行為、財産的損害、全体財産、個別財産、不法原因給付
必ず予習すべき文献・判例
(1)東京高判昭59年11月19日判タ544号251頁
(2)最決昭34年9月28日刑集13巻11号2993頁
(3)最判昭25年7月4日刑集4巻7号1168頁
(4)長井圓「クレジットカードの不正使用」刑法の争点第3版178頁
(5)酒井安行「詐欺罪における財産的損害」刑法の争点第3版182頁
(6)町野朔「不法原因給付と詐欺・横領」刑法の争点第3版184頁
(7)最決平16年2月9日判時1857号143頁
(8) 最決平15年3月12日刑集57巻3号322頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)菊池京子「詐欺罪の諸問題」現代刑事法2巻4号52頁
(2)葛原力三「不法原因給付と詐欺罪」刑法判例百選Ⅱ総論第6版90頁
(3)大塚裕史 「詐欺罪と財産上の損害(1)」刑法判例百選Ⅱ各論第6版94頁
(4)荒川雅行「クレジットカードの不正使用」刑法判例百選Ⅱ各論第6版106頁
科
目
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
第12回
全15回
詐欺罪 Ⅱ
事例(授業内容)
【設問1】
検察官は,詐欺罪で起訴した被告人が共犯者に分け前として現金を渡した事実を否定したため,共犯者
の証人尋問を実施したが,現金授受の事実がないと証言したので,この現金授受の際,犯罪の報酬であ
ることを隠ぺいする目的の下,共犯者が被告人に交付した領収証について,「被告人と共犯者との間に
おける金銭授受の事実」という立証趣旨で取調請求したところ,弁護人が不同意意見を述べた。裁判所
は,共犯者の証言内容を参考にしてこの領収証を採用決定することができるか検討せよ(領収書を証拠
物として用いる場合については検討を要しない。)。
【設問2】
Xは,換金目的で電化製品を交付させた詐欺罪で起訴されたが,公訴事実を否認したため,同罪の幇助
犯として有罪判決を受けたWに対する証人尋問が行われた。Wは,捜査段階において「Xは,取り込み
詐欺用に実体のない会社を設立してMDコンポなどを購入し,バッタ屋に廉価で売却した後,現金を遊
興費等で使い切った。私は,電化製品の運搬を手伝い,分け前をもらった。」旨供述していた。ところ
が,Wが公判廷において,Xの設立会社が実体を伴うもので電化製品の購入が正規な取引であった旨証
言したため,検察官は,その証言後,Wを取り調べた。すると,Wは,「世話になったXの手前正直に
言えなかった。本当は,捜査段階で述べたとおりです。Xは,取り込み詐欺を行い,私はそれを手伝っ
たのです。」と述べたため,検察官調書が作成された。
この検察官調書の証拠能力について検討せよ。
要点
【設問1】につき
(1) 刑訴法323条が伝聞法則の例外である根拠・一般的要件
(2) 領収証と刑訴法323条2号及び3号の適用の可否
(3) 刑訴法323条該当性に関する判断資料
【設問2】につき
(1) 補助事実と証明の種類
(2) 補助証拠と刑訴法328条の適用の有無
(3) 証人尋問終了後に作成された検察官調書と刑訴法328条の適用の有無
(4) 証拠能力に差異が生じる場合の立証趣旨の拘束力
関係条文
刑法246条,刑訴法328条
キーワード
伝聞法則,補助事実,立証趣旨,自白法則
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 東京地裁昭和56年1月22日決定(判例時報992号3頁)
(2) 新実例刑事訴訟法304頁
【設問2】につき
(1) 条解刑事訴訟法増補補正第2版(弘文堂)603頁,697頁
(2) 註釈刑事訴訟法新版第5巻(立花書房)370頁,374頁
(3) 最高裁昭和43年10月25日判決(判例時報533号14頁)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
【設問1】につき
刑事証拠法の諸問題(上)198頁
担
科
刑事法発展
目
当
第13回
平田
元
全15回
偽造罪 Ⅰ
者
事例(授業内容)
(1)甲は、借用書を交付するに際して、代理権がないのに、借り主欄に「乙代理人甲」と記載した。
(2)甲は、市役所市民課職員として印鑑証明書の発行事務に当たっていたところ、自宅新築のために
自己宛の証明書が必要となり、所定の申請書提出、印影の照合、手数料納付、市民課長による決済とい
う正規の手続を踏まないまま、印影が正しく押捺された市長名義の証明書を作成した。
(3)県地方事務所の建築係として、建築進行状況に関する文書の起案などの職務を担当していた甲は
、行使の目的(融資金詐取)で、まだ着工していない住宅の現場審査申請書に虚偽報告を記載し、情を
知らない地方事務所長に提出して、内容虚偽の現場審査合格書を作成させた。
要点
(1)代表名義の冒用と私文書偽造罪
(2)補助公務員の作成権限
(3)虚偽公文書作成罪の間接正犯
関係条文
刑法155条1項、156条、157条、159条
キーワード
有形偽造、無形偽造、作成者、補助公務員、名義の冒用
必ず予習すべき文献・判例
(1)安田拓人「代理名義の冒用」刑法の争点第3版226頁
(2)大塚裕史「補助公務員の作成権限」刑法の争点第3版222頁
(3)奥村正雄「公文書無形偽造の間接正犯」刑法の争点第3版224頁
(4)最決昭 45 年9月4日刑集24巻10号1319頁
(5)最判昭51年5月6日刑集30巻4号591頁
(6)最判昭32年10月4日刑集11巻10号2464頁
(7)最決平15年10月6日刑集57巻9号987頁
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)<特集>「文書偽造罪論の現代的課題」現代刑事法4巻3号
(2)臼木豊「補助公務員の作成権限」刑法判例百選Ⅱ総論第6版190頁
(3)髙山佳奈子「代表名義の冒用と私文書偽造罪」刑法判例百選Ⅱ各論第6版194頁
(4)照沼亮介「虚偽公文書作成罪の間接正犯」刑法判例百選Ⅱ各論第6版192頁
科
担
第14回
目
刑事法発展
当
者
派遣検察官
全15回
逮捕手続。当事者主義と真実発見
事例(授業内容)
【設問1】
内ゲバによる傷害事件が発生し,犯人の服装等につき無線連絡を受けて逃走犯人を検索中の警察官が,
本件犯行後約1時間40分後,犯行現場から直線距離で約4キロメートル離れた路上で,着衣が泥まみ
れになっていたAを発見し,職務質問をするため停止を求めたところ,Aが走って逃げ出したので数十
メートル追跡して追いついた。Aの靴も泥まみれで,Aの顔面には新しい傷跡があったことから,警察
官は,Aを傷害事件の準現行犯人として逮捕した。その際,警察官は,Aが所持していたスポーツバッ
グを差押えようとしたが,Aがバッグを抱え込んで放さず,強い拒否の態度を示したことから,警察車
両にAを乗せて,直線距離で逮捕現場から約3キロメートル離れた警察署まで連行した上,バッグの差
押えを実施したが,差押えを実施した時には逮捕から約1時間が経過していた。この差押えは適法か。
Aがバッグではなく,警棒を手に持っており,それを差し押さえた場合,着衣のポケット内に大麻の種
を持っており,それを差し押さえた場合についてもそれぞれ検討せよ。
【設問2】
検察官は,併合罪関係に立つ無免許運転罪3件を起訴した被告人の公判において,警察本部作成の照会
回答書(被告人が無免許である旨の内容)を証拠請求し,証拠等関係カードにおける立証趣旨欄の公訴
事実欄に「全」と記載せず,特定の公訴事実のみを記載してしまった。被告人及び弁護人が全く争わず
自白調書を含めて検察官の請求書証にすべて同意したため,第1回公判期日で結審し,一週間後に判決
期日が予定されていた。裁判所は,判決当日,回答書の立証趣旨に明示されていない公訴事実に関し,
被告人が無免許である客観的事実を立証するため,検察官から弁論の再開を請求されたが,これを却下
した後,補強証拠がないことから一部無罪判決を言い渡した。
刑訴法上含まれる問題点について検討せよ。
要点
【設問1】につき
(1) 準現行犯人の要件
(2) 逮捕にともなう無令状捜索差押え
【設問2】につき
(1) 無免許運転罪と補強法則
(2) 立証趣旨の拘束力・同意の効果が及ぶ範囲
(3) 裁判所による釈明義務
(4) 弁論再開と裁判所の裁量権限
関係条文
刑訴法212条,220条
キーワード
準現行犯人,無令状捜索差押え
必ず予習すべき文献・判例
【設問1】につき
(1) 増補令状基本問題上136頁以下,275頁以下
(2) 大コンメンタール刑事訴訟法3巻486頁以下,555頁以下
(3) 最高裁平成8年1月28日判決刑集50巻1号1頁
【設問2】につき
(1) 広島高裁平成14年12月19日判決(高等裁判所刑事裁判速報集平成14年162頁)→事前配布
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
科
目
刑事法発展
担
当
者
派遣検察官
平田 元
佐藤 陽子
第15回
全15回
事例(授業内容)
これまでの授業のまとめ、補足を行う予定である。
要点
(1)
(2)
(3)
関係条文
キーワード
必ず予習すべき文献・判例
(1)
(2)
(3)
参考資料(さらに理解を深めるために学習するのが望ましい文献等)
(1)
(2)
(3)
総括