Ⅲ.ケーススタディ実態調査

Ⅲ.ケーススタディ実態調査
12
コード No.
①
1−1
MM 応用技術
遠隔リハビリ支援
プロフィール
対象機関名
埼玉総合リハビリテーションセンター
所在地
埼玉県上尾市大字西貝塚 148−1/TEL:048-781-2222
設置・運営
埼玉県
施設規模
敷地面積:38,622m2、建物延床面積:32,525m2
施設概要
○
身体障害者更生相談
○
精神薄弱者更生相談
○
リハビリテーション病院(120 床)
○
リハビリテーション工学研究室
○
身体障害者更生施設
<内
訳>
・重度身体障害者更生援護施設<入所 70 人>
・視覚障害者更生施設<入所 20 人、通所5人>
・肢体不自由者、内部障害者更生施設<入所計 60 人>
②
○
補装具製作施設
○
同センターは、障害者(児)に対するリハビリテーション活動の県内中心施設とし
MM 応用概要
背景と目的
て、相談、判定を行うとともに医療から職業訓練までの総合的なリハビリテーショ
ンを目指し、併せてリハビリテーションの技術向上を図ることを目的に研究、研修
事業を実施している。
○
<沿
革>
・昭和 57 年 3 月1日
障害者リハビリテーションセンター開所
・昭和 59 年 10 月1日
・平成 6 年 3 月 1 日
身体障害者更生指導所を統合、後保護指導所を統合
総合リハビリテーションセンターに名称変更
リハビリテーション病院開設
○
同センターの機能は、①相談・判定部門、②医療部門、③ 訓練施設部門、④研究開
発・研修部門の概ね4部門に大別されるが、マルチメディア技術の応用を開始した
のは、①相談・判定部門の「地域リハビリテーションサービス」を行う障害相談課
である。「地域リハビリテーションサービス」とは市町村(埼玉県内)の福祉担当
課等と連携を図りながら、在宅で生活する障害者を対象として、介助の方法・家屋
改造・福祉用具の利用等に関する相談・援助をするサービスである。
○
地域リハビリテーションサービスを支援する障害相談課では、平成7年度∼平成8
年度の2ヶ年で厚生省からの補助金を得て、同センターと地域の保健センター(東
松山市、吉川市)と国民健康保険診療所(大滝村)の3ヶ所を TV 会議システムを装
備したパソコンで結び、遠隔リハビリテーションシステムの運用を開始した。また
その後特別養護老人ホームとつないだほか、平成9年度には新たに5∼6ケ所の保
健センターと試験的に2軒程度の患者を結ぶ計画もある。
実施期間
○
1996 年 5 月 1 日∼
13
使用対象者
○
同センター障害相談課のリハビリ専門療法士(OT:作業療法士、PT:理学療法士)
と市町村の福祉担当課(保健センター及び診療所の保健婦等)が使用。現在3ヶ所
の3システムとセンターを結んでいる。
使用内容
○
NTT の INS64 を介した遠隔リハビリシステムは2系統あり、ひとつがマルチメディ
ア情報システムとしてのマルチメディアサーバ(Web サーバ)とクライアントシス
テムがあり、もうひとつが TV 会議システムである。クライアント側の端末は1台の
Windows クライアントが TV 会議パソコンを兼ねている。マルチメディア情報システ
ムは Web サーバとしているため、いわゆるイントラネットとなっている。
○
マルチメディア情報システムの使用内容は以下の通りである。
・リハビリ方法照会
・リハビリ機器照会
・住宅改造照会
・保健センターとの連絡
○
TV 会議システムの使用内容は以下の通りである。
・遠隔リハビリ診断支援
○
○
マルチメディア情報システムの使用頻度は週1∼2回程度。
○
センター側のマルチメディア情報システム及び TV 会議システムは以下の通りであ
TV 会議システムは月1∼2回程度と頻度は低い。
使用頻度
る。通信インフラは INS64。
使用ハードウェア概要
・PC・・・日本 IBM「PC 750-P100(ペンティアム 100MHZ)」2 台
(MM サーバーとして1台、TV 会議用として1台)
・書画カメラ・・・ELMO「EV-400AF」1台
・スキャナ・・・エプソン「GT-6500WINZ」1台
・カラープリンタ・・・キャノン「BJC-600」2台
・OS・・・MS-Windows 3.1J
・TV 会議システム・・・ピクチャーテル「LIVE PCS50」
(上記 PC 及び OS をベースにして使用)
○
尚、平成8年度(∼1997 年3月)中に以下の TV 会議専用機をセンター及び4町に
設置する予定。センター側は設置済。
・TV 会議専用機・・・ピクチャーテル「S4000」
14
③
MM 応用における
課題点・要望
ハードウェア
○
現在マルチメディア情報システム及び TV 会議システムで使用している「リハビリ方
法照会・リハビリ機器照会・住宅改造照会」などのアプリケーションは、電話と FAX
だけでも可能であるが、機器の写真を選択・指示しながら相談を進めたり、住宅改
造時に建築士が図面を見せて、データを共有しながら相談する時には、格段に便利
である。遠隔地間でデータ(文字・静止画・動画)をほぼリアルタイムで共有でき
ることは、リハビリテーションの分野ではかなり有効である。
○
現状の TV 会議システムは PC ベースのため、端末を設置している地方の保健センタ
ーでは、必ずしも PC のキーボードや操作方法に精通しているとは限らないため、シ
ンプルな操作ボタンが望まれる。今後普及を図る TV ベースの TV 会議専用機の操作
ボタンでさえ、VTR リモコン以上に難しいと思う人も少なくない。使用者がいいか
に操作し易いかが大きなポイントである。
○
現状の PC ベース(Windows3.1J)の TV 会議システム(ピクチャーテル「LIVE PCS50」)
はアプリケーション共有を含めたデータ共有機能と H.320 国際標準準拠の互換性を
INS64 一回線ベースでできる。また、平成8年度(∼1997 年3月)後半から導入し
始めた TV 会議専用機(ピクチャーテル「S4000」)のインフラとしては、INS128 を
3本計 384 キロビットの回線を導入した。
○
97 年3月中に新しいサーバを導入し、web でデータベースをアクセスできる様なシ
ステムにする予定。
制度・習慣・
○
法規制
保健所は地域における保健活動の中心機関としての役割を持つ県の施設であるが、
市町村や地域医師会等の関係団体とより一層連携を強化するために、市町村の保健
センターに徐々に権限委譲されてきている。しかし、町レベルでは保健婦は2∼3
名いるものの、その職務領域は幼児の予防接種から高齢者・障害者の保健福祉活動
まで幅広いため、人手不足である。また、町村単位では、OT(作業療法士)・PT(理
学療法士)の専任スタッフがいないケースのほうが多く、埼玉県で OT・PT の専任ス
タッフがいる町村はわずか5∼6ケ所である。従って「埼玉県リハビリセンター」
の果たす地域リハビリ支援サービスの役割は大きく、マルチメディアを使用した遠
隔リハビリシステムは人材不足の補完やサービスの地域間隔差を解消する有力な手
段である。
○
TV 会議システム端末を設置している大滝村の国保診療所では、専任の PT・OT がい
ないほか、これまで脳卒中の後遺症などで麻痺が残った患者は、住民 1,700 人に対
したった1人しかいない保健婦にリハビリの助言を受けるしかなかった。また保健
婦はリハビリに関する専門知識を持ち合わせておらず、専門スタッフの不足が、寝
たきりの多発を招いていた。県から派遣できる職員の数にも限りがあるほか、その
数も月に1∼2回派遣できる程度である。理学療法や作業療法は、療法士が障害を
持つ患者に付き添い、マンツーマンで施すのが原則であるが、有資格者の不足もあ
って、病院で適切なリハビリを行った患者も、いったん退院するとリハビリを受け
15
る機会は急減する。こうした限られたスタッフでいかに効率的なリハビリを実現す
るのかの答えの一つが、マルチメディアの利用であった。
○
TV 会議システムを使用した「遠隔リハビリ診断支援」は、県が町村の保健センター
に訪問してリハビリ指導する業務を TV 会議によって相談・支援するサービスのた
め、制度・法規制上の問題(診療報酬・診断等)はない。
使用ソフト・コンテンツ
○
マルチメディア情報システムで使用している「リハビリ方法照会・リハビリ機器照
会・住宅改造照会」などのアプリケーションは、基本的に TEXT・図・写真で構成さ
れている。現行システム(Windows3.1J ベース)でも図・写真などの静止画はスト
レスなく見られる。動画は1ケ所あり、55 秒の QT ムービーである。2.6MB の容量で
秒 10 コマの疑似動画であるが、読み込む時間が5∼6分要するため、スムーズに見
ようとすることはできない。読み込み速度でストレスを感じないスピードが必要で
ある。また、秒 10 コマの疑似動画でも、リハビリ機器の使用方法を説明するだけな
ので、完全動画(秒 30 コマ)でなくても支障はなく、使用方法は充分に伝わる。
○
「リハビリ方法照会・機器照会」では実際に使っている姿を見せたほうがいいケー
スが多いため、本当は動画を多用したいが、容量・スピード等の性能以上の問題で
1サンプルだけにした。現在、使用頻度(問い合わせ頻度)の高い福祉機器に関し
ては、Web サーバで検索し、ムービー表示できる様にシステム構築中である。
○
リハビリ機器によっては、音声が出る様なソフトも必要である。具体的には日常生
活用具福祉機器の「携帯用会話補助装置」は音声が出たほうがよい。同装置は障害
者向けの音声応答機能があるため、単なる写真と文字では、同装置の特徴が理解で
きないからである。
① コスト
○
遠隔リハビリテーションシステムは、平成7年度∼平成8年度の2ケ年で厚生省か
らの補助金を含めて約 5,800 万円を投入して構築したが、ハード部分の費用は約5
割で約4割は患者のデータベース作成に要した。しかし、患者のデータベースは稼
働していない。
○
平成8年度後半から導入し始めた TV 会議専用機(ピクチャーテル「S4000」)は、
本体だけで 400 万∼500 万円と非常に高価である。8年度内には4町村(吉田町、
菖蒲町、長瀞町、鳩山町)に導入し、その後他町村にも普及させていくが、町村は
県からの補助と自主財源で導入するため、TV 会議専用機でも低価格化が望まれる。
16
コード No.
①
1−2
MM 応用技術
遠隔カウンセリング
プロフィール
対象機関名
医療法人梨香会
所在地
千葉県鎌ケ谷市初富 808-54/TEL:0474-45-8321
代表者名
秋元
秋元病院
豊(理事長)/奥山
厚(院長)
設置規模
病床数:286 床
施設概要
○
診療科目・・・精神科・神経科・内科・歯科
○
診療時間・・・歯科(9:00∼17:00)
精神科・神経科・内科(9:00∼17:00)
○
医療法人梨香会グループ(下記のうち◆印が TV 会議システム設置先)
◆
東京神経科クリニック
千葉県松戸市上本郷 2207/TEL:0473-65-9368
◆
秋元クリニック
千葉県船橋市東船橋 3-33-3/TEL:0474-22-0221
◇
訪問看護ステーション
千葉県鎌ケ谷市初富 808-441/TEL:0474-45-2402
②
MM 応用概要
背景と目的
○
医療法人梨香会秋元病院は、精神・神経科の専門病院として、20 年以上心の病の治
療に当たって来た。同病院は、21 世紀の医療供給体制の変貌をにらんで、外科・内
科・放射線科等を加えた「インテリジェント・ホスピタル構想」の具現化に向けて
準備を進めている。
○
同構想は、ISDN1500 を使用し、秋元病院のグループや提携病院はもとより、学校機
関、企業、特別養護老人ホームなど医療の垣根を越えた各種の施設・機関などと回
線を結び、その回線を介してメンタルヘルスケアを実施していこうというのがこの
構想の根幹部分である。つまり、来院しなくても、学校や企業に居ながらにして精
神科医師によるコンサルテーションや慢性疾患のケアを受けられるようにするとい
うものである。
○
同院が同構想をもつようになった背景には、治療法の一つとして、精神疾患を抱え
る患者だけを治療するのではなく、家族をも含めたカウンセリングいわゆる「家族
療法」に積極的に取り組んできたことが関係している。家族療法に取り組む医療機
関は全国で 20 余りに過ぎず、学会に所属する会員が 1,000 を超えることを考えれ
ば、その取り組みは十分普及しているとは言えない。しかし同院では、専用の面談
室にモニターを設置し、面談内容を VTR に撮るなど、「家族療法」を治療の中心に
捉え、その結果、約 15 年間で収録された VTR は 1,000 本以上に及び、国内有数の実
績と治療効果を上げて来た。こうした実績により、ISDN 回線を利用したインテリジ
ェント・ホスピタル構想を展開する素地が構築されていた。
実施期間
○
1996 年 4 月 24 日∼
17
使用対象者
○
精神科医師とカウンセリング治療を受ける患者。TV 会議システムを導入しているの
は、秋元病院と系列の3病院(秋元クリニック、東京神経科クリニック、東京メデ
ィカルサービス)。
使用内容
○
精神科の治療法の一つである「家族療法」で主に使用している。同療法は精神疾患
を抱える患者だけをカウンセリング治療するのではなく家族をも含めたカウンセリ
ング治療を行う手段である。患者は TV 会議システムを導入している秋元病院や系列
の3病院のいずれか最寄りの病院で、担当医師が不在でも他病院の医師のカウンセ
リング治療を受けることができる。
○
モニター上の小型テレビカメラ、送受信端末で画像と音声の双方向送受信ができ
る。カメラの向きや画像のズームアップも自由に行え、音声による問診に加え、医
師が患者の表情を判断できため、カウンセリングに大きな効果を発揮するという。
○
「家族療法」とは患者の精神疾患の原因は本人だけでなく、家族との関係、家族そ
のものにあるとの考え方から、患者だけでなく家族の会話・姿勢・表情・呼吸方法
などから、原因を探り治療していく方法である。
使用頻度
○
TV 会議システムを使用した遠隔カウンセリング治療は、月1∼2回程度。
使用ハードウェア概要
○
NTSC モニターを使用した TV 会議システムは以下の通り。通信インフラは INS1500。
・ビデオ会議システム・・・富士通「VS-700S」
(モニターは SONY 製)
○
将来的には、NTT の TV 会議システム「フェニックス」を使用して、訪問護ステーシ
ョンと訪問看護婦の間で利用する計画。また企業の健康診断用として産業医とノー
トパソコンでネットワークを組む計画もある。
③
MM 応用における
課題点・要望
○
ハードウェア
現状の TV 会議システム(富士通製)は NTSC 方式ベースであるが、通常の外科治療
等と違い、カウンセリング治療での使用のため、名刺をカメラに近ずけて読める程
度の解像度で満足している。TV 会議を介したカウンセリング治療は、患者(家族も
含めた)の会話、姿勢、表情(目の動きなど)、肌の色、呼吸方法などから判断す
るため、NTSC ベースの解像度で充分である。ただし、肌の色などを見るためのディ
スプレイの色調は最初に実物に近い様に設定することが必要である。
○
今後ノートパソコンを使用した健康診断を行う場合は、現状の液晶ディスプレイの
鮮明度(精細度)が問題である。現状の液晶ではボヤけている印象があり、ハード
またはソフト技術によって、皮膚の色等が鮮明に映ることが必要である。
18
コスト
○
現在の TV 会議システム(富士通・VS ー 700S)は1システム約 300 万円と高価である。
従って梨香会グループでは同会議システムだけで約1千万円の負担となり、現状の
同システムを使用した遠隔カウンセリング治療の稼働率(月1∼2回の使用頻度)
から考えても、短期的コストは見合っていない。ハードウェアの低コスト化が望ま
れる。
○
将来的にはより安価な TV 会議システムである NTT「フェニックス」を使用して、訪
問看護ステーションと家庭に端末(パソコン+カメラ)を持ち込んだ訪問看護婦の
間で利用する計画である。同システムはハードウェアが約 23 万円と遠隔カウンセリ
ング治療で使用している大型ディスプレイタイプに比べて1桁安価である。鎌ケ谷
訪問看護ステーション(秋元病院の隣接地)と北松戸訪問看護ステーションの2ケ
所で使用する方針である。
○
TV 会議システムを使用した遠隔カウンセリング治療では、患者は通常のカウンセリ
ング料と同様に実費を支払っている(概ね1人当りの治療費は1時間5千円。家族
療法を院長が行う場合は約3万円とのことである)。
制度・習慣・
○
今後の計画のひとつとして、企業や学校機関がかかえる産業医と当病院をネットワ
ーク(INS64 を想定)で結んでの健康診断や遠隔カウンセリング治療を進めていき
法規制
たいが、診療報酬の問題等の法的整備が必要である。また、将来的には上海やニュ
ーヨークにも事務所を設置し、回線を結ぼうという計画もあり、国内だけでなく国
際的の法的整備、ルールづくりが課題である。
○
学校の場合、主に先生のカウンセリングが必要であり、精神疾患にかかってしまう
比率(精神的疾現率)は、5∼6%と言われる。これは先生と生徒の問題ではなく、
先生と学校組織・家族との問題が多いと言われている。そのため、学校・塾を含め
た幅広い教育機関と年契約ベースでカウンセリング治療を計画している。さらに特
別養護老人ホーム等にもネットワークを拡げたいが、制度面がまだ未整備であり、
営業体制の未整備と併せ、今後の検討課題としている。当病院としては、患者相手
の診療の場合は、医師法が遠隔診療を想定していないため、拒食症やいじめ、アル
コール依存症などのカウンセリングにとどめる予定である。
19
コード No.
①
②
1−3
MM 応用技術
遠隔福祉支援
プロフィール
対象機関名
金沢市/福祉保健部長寿福祉課
所在地
石川県金沢市広坂 1-1-1/TEL:076-220-2288
代表者名
山出
保(市長)
世帯数
17 万 1,599 世帯(平成9年4月1日現在)
人口規模
年齢構造
45 万 3,739 人(平成9年4月1日現在)
○
高齢化率(65 歳以上):13.7%(平成7年 10 月国勢調査)
○
生産年齢人口率(15 歳∼64 歳):70.6%(平成7年 10 月国勢調査)
○
年少人口率(0∼14 歳):15.7%(平成7年 10 月国勢調査)
○
金沢市は以前から高齢者対策に熱心な自治体として知られ、その背景には「善隣館」
MM 応用概要
背景と目的
という住民主導による相互扶助システムが確立していたという土壌があった。「善
隣館」は地域住民が土地・建物を提供して設立した社会福祉法人で、母子福祉、児
童福祉、高齢者福祉を自主的に運営する地域福祉施設であり、現在小学校区に1ケ
所、計 12 ケ所ある。
○
「金沢情報長寿のまちづくりモデル実験」は、郵政省が厚生省との協力のもと開催
した「高齢化社会における情報通信の在り方に関する調査研究会」(座長:斎藤忠
夫東京大学工学部教授)の最終報告(平成7年1月)における提言を受け、情報長
寿社会の実現に資することを目的に、高齢者福祉に力を入れている金沢市をモデル
都市として、高齢者のための保健・医療・福祉分野にまたがる情報通信アプリケー
ションの実験を行った。
○
同実験では関係施設、高齢者宅等に総計 85 台のテレビ電話やパソコン等を長期間設
置し、高齢者・福祉施設等が実生活・実務の中で活用することにより、ユーザサイ
ドからのシステムの有用性の検証、実用化に向けての改善点の把握を行い、今後の
高齢社会における情報通信の検討及びその実現のための施策に反映させていくこと
を目的とした。
実施期間
○
○
第1次実験(テレビ電話実験)
…
第2次実験(パソコン通信実験) …
*
平成7年7月∼平成9年3月
平成7年 11 月∼平成9年3月
当初は平成7年度1年間の予定であったが、実験そのものが好評だっ
たので1年間延長し、平成8年度も行った。
実施主体
○
金沢情報長寿のまちづくり協議会(会長:山出金沢市長/構成員は別添)
使用対象者
○
第1次実験(テレビ電話実験)…
テレビ電話 50 台
福祉関係施設(福祉サービス公社、デイサービスセンター、特別養護老人ホーム、善隣館等)、
保健・医療施設(保健所、医院、訪問看護ステーション等)、高齢者宅などに設置
○
第2次実験(パソコン通信実験)
…
パソコン.ワープロ 50 台
主に趣味のグループやシルバーボランティアグループなどの高齢者宅
20
●
使用内容
システム名称
テ レ ビ 電 話 利 用
遠隔健康相談
・介護支援
システム
施設間連携支援
システム
交流・参加
シ ス テ
システム
遠隔家族交流
システム
機能・利用方法等の概要
要介護高齢者(独居の虚弱高齢者)の自宅6世帯を選んで、介護
・生活支援を行う各施設にテレビ電話を導入し、訪問日以外の安
否確認や状態確認、生活指導、健康指導、栄養指導、リハビリテ
ーション指導などを行った。また、高齢者からのテレビ電話によ
る各種相談を受け付けた。特に保健所の栄養士からは栄養相談等、
医師からは投薬相談(薬の量の問い合わせ)などの医薬補完の指
示・相談を行った。
現在、善隣館で開催している趣味(謡)の講習について、善隣館
の会場と講師宅をテレビ会議システムで結ぶことにより遠隔講習
を実現した。
特別養護老人ホームと入居者の家族宅にテレビ電話を設置し、遠
隔地の家族と入所者とが必要に応じて映像による連絡をとれるよ
うにした。
ム
市内の商店(八百屋1店舗)にテレビ電話を設置し、善隣館など
の介護支援施設や在宅高齢者からの注文を定期的にテレビ電話で
受け付けた後に、注文品を配達した。
(6世帯)
高砂大学 OB 等で作っている高齢者の趣味サークル(短歌、俳句)
趣味ネットワーク
のメンバーをパソコン通信で結び、作品の発表や日常的な交流を
システム
行った。
システム
パソコン通信利用システム
支援システム
施設間連携
支援システム
広域交流
システム
使用頻度
入
先
要介護高齢者宅
(21 世帯から抽出)、
病院、保健所、善隣館
福祉サービス公社
訪問看護ステーション
福祉活動推進員
実験に参加している各種高齢者支援施設間で、テレビ電話により
実験参加各施設
随時必要な情報の交換、活動の相互調整、相談、指導などを行った。
シルバー買い物
シルバーボランティア
導
第四善隣館講師(謡)
特別養護老人ホーム「万陽苑」
入居者の家族(3家族)
商店、第三善隣館
在宅高齢者
サークルのメンバー(12 名)
保健所の指導を受けて活動しているボランティア・グループのメ
ンバーをパソコン通信で結び、活動状況の発表や活動に必要な情
報交換、保健所からの指導等を行った。
ボランティアグループのメンバー(19 名)
泉野保健所
市内の3保健所をパソコン通信で結び、相互の情報交換を行うと
ともに、実験参加者への健康情報の提供を行った。
3保健所(駅西、元町、泉野)
インターネット等を利用した他地域の高齢者、ボランティア・
グループ等との交流を試みた。(接続料等は利用者の自費参加を
想定)
実験参加者のうち希望者
○
用途・目的によって多様であるが、多い人は毎日使用するケースもあり、少なくと
も週1∼2回、1回当り 10∼20 分使用するケースが多かった。従来、受けていた保
健・福祉サービス(訪問看護サービスのホームヘルプサービス等)の付加的使用が
多いため、週1∼2回使用という頻度が多かった。
使用ハードウエア
○
概要
テレビ電話システム(デジタル・アナログ)提供メーカー
… NTT、日立製作所、NEC、富士通、三菱電機、三洋シルバーシステム
○
パソコン通信用 PC 提供メーカー
…
富士通、三菱電機、日本電気、東芝、日立製作所、松下電器
21
③
MM 応用における
○
テレビ電話システムのうち、デジタルタイプでも秒2∼3コマ程度の静止画コマ
課題点・要望
送り画像であるが、独居老人・虚弱老人にとっての安否確認やコミュニケーション
ハードウェア
を目的にするのであれば充分活用できる。また商店(八百屋1店舗)と高齢者宅を
結んだTV電話による「シルバー買い物システム」では、秒2∼3コマ程度の画像
でもかなり好評であった。「シルバー買い物システム」は高齢者宅からの買い注文
に、店舗(八百屋)側が配達するシステムである。
○
医師への投薬相談(薬の量や種類の問い合わせ)などの医療の補完として、または
保健所の栄養士による栄養相談、「善隣館」の看護婦による安否確認など、在宅の
ひとり暮らしの要介護高齢者(虚弱老人)にとって、テレビ電話システムは通常の
電話に比べて非常に好評であった。ただし、アナログタイプのテレビ電話システム
は、数秒に1コマ程度というほぼ静止画に近い画像のため、音声と映像がズレてし
まい、多少異和感・ストレスが溜まる感じがした。
○
駅西保健所の作業療法士(OT)と高齢者間で使用した大型TV会議システム(三菱
電機製:28 インチ画面)による在宅遠隔機能訓練の実験では、14 インチタイプの小
型 CRT に比べ、通信者が立った時に全身が映るため、手首の動かし方等がよくわか
り、効果的だった。ただし、システム自体が大き過ぎて、家屋内に設置場所がない
ことが問題であった。
○
第四善隣館と高齢者宅間で行われた実験(三洋シルバーシステム提供)は、パソコ
ンとバイタルセンサーを電話回線で結び、血圧データ等を個人情報とともに端末の
IC カードに記録し、後で善隣館で IC カードの記録情報を見るシステムであり、IC
カードの携帯性の評判はよかった。
○
高齢者特に、手足・指の機能が低下している要介護高齢者にとって、手がふるえて
機器のボタンを2つ押してしまうこともあるため、ボタン・スイッチ類はなるべく
大きく、わかり易く、ボタン同士が隣接していない方が望ましい。また、パソコン
画面で画面スクロールする場合に、希望するところにうまく止らないことも多いの
で、スクロールスピードを調整できたり、または全く別の方法で画面選定できるこ
とが望ましい。
○
大容量性から CATV を使用した実験も当初モデル実験の構想にあったが、CATV の普
及率が低かったので中止した。
○
テレビ電話システムのスイッチ類も多いが、パソコン通信になるとさらに高齢者に
とっては複雑になり、きめ細かいフォローアップが絶対必要である。メーカー側は
導入時に1週間の研修を行ったが、それ以上のきめ細かいフォローアップはやって
もらえず、結局市役所の長寿福祉課が対応せざるを得なかった。こうしたフォロー
アップの時間・コストを誰が負担していくのかが、今後実用化する場合の問題であ
る。また、Windows ベースでもハードそのものはメーカーそれぞれ使い方が少しず
つ異なるため、高齢者に指導する側(市役所の職員)が大変であった。また、高齢
者が電子メールによるパソコン通信で交流する場合は、パソコンよりワープロの方
が使用し易く、ワープロで充分目的は果たせた。
22
コスト
○
デジタル回線を使用する場合、INS64 を家庭に引き込むが、2回線使うので3分間
20 円と、今後実用化する場合には家計の負担が大きくなると懸念される。特に在宅
高齢者側からの相談(日々の栄養相談、投薬相談等)で1日何回も使うケースでは、
家計の負担が大きくなり、このことが普及のネックになると考えられる。
○
モデル実験期間中は、テレビ電話システムやパソコン通信システム等のハード(機
器)はメーカー側から提供され、通信コスト(電話使用量)は金沢市が負担した。
通信コストは同モデル実験では、1年で約 600 万円、2年で約 1,200 万円を負担し
た。
○
モデル実験終了後の平成9年度は、パソコン通信システムは全量引き上げたが(一
部財団法人マルチメディア振興センターが2つの善隣館に5台ずつ寄贈して、イン
ターネットの学習センター機能を持たせた)、テレビ電話システムは財団法人金沢
市福祉サービス公社が郵政省、金沢市の補助(2ケ年で 1,200 万∼1,300 万円)に
より買い取り、継続させている。
制度・習慣・
○
金沢市の場合、「善隣館」(現在 12 館)という住民主導による相互扶助シ
ス テ
ムが根づいていたことと、高齢者を対象としたボランティアによる「金沢こころの
法規制
電話」が 20 年も続いていること、行政側も1人の民生委員に2人の福祉活動推進員
(ボランティア)を1チームとして要援護高齢者の安否確認(ひと声運動)を推進
するなど、高齢者福祉に対して熱心に取り組んできた背景があったため、マルチメ
ディアを受け入れられる土壌があった。情報機器などマルチメディアによる福祉支
援は、フェイストゥフェイスの福祉サービスの補完的位置付けにして始めて効果を
発揮するものと考えられる。主従逆転してしまっては長続きしないと思われる。金
沢市では民政委員は 800 人、ボランティアである福祉活動推進員は 1,600 人いる。
○
「善隣館」は母子家庭の託児所・保育所などの母子福祉・児童福祉の施設として機
能してきたが、高齢者福祉にも注力してきており、現在 12 館のうち9館でデイサー
ビスを行っている。また市内のデイサービスセンター25 ケ所のうち、11 ケ所が地域
福祉で運営されている。また、デイサービスは週1∼2回通所するのが普通である
が、金沢市は降雨量が多いため、在宅にいるケースが多く、在宅福祉の充実が課題
であった。
○
訪問看護ステーションと在宅高齢者をテレビ電話で結んだケースは、対象者は重度
の高齢者4人で、医療の経過観察や訪問日の確認など、訪問看護業務の補助的な形
で使用した。テレビ電話システムはあくまでも補助的システムであるが、センター
側のリモートコントロールで、カメラの首ふり・ズームアップが可能なため、遠隔
看護の重要な補助システムとなった。
○
センター側からのリモートコントロールによるテレビ電話操作は、高齢者のプライ
バシーの問題があった。具体的には高齢者側が風呂上がりだったり、おむつ交換を
していたり、間違い電話だったりの場合は、何らかの制度作り、ハードの機能によ
るプライバシー保護が必要である。
23
使用ソフト・コンテンツ
○
導入当初の Windows 3.1 を平成8年6月に Windows 95 にインストールし直し、イン
ターネットを始めたが、海外のシニアネットと交流する場合(ハワイ大に視察後、
グリーティングカード交流を行った。)、英語の理解力が問題となった。将来的に
は、方法として機械翻訳の精度を上げてもらうことが望ましい。しかし現状では在
宅福祉にインターネット映像は必要ないと考えている。
今後の方針
○
高齢社会にマルチメディアを活用して情報長寿社会を築いていくため、平成9年度
も事業実施主体である「金沢情報長寿のまちづくり協議会」を、郵政省・厚生省・
関係機関・各メーカー等の協力のもと継続させ、保健・医療・福祉分野での情報化
を推進する方針である。具体的には金沢を実験フィールドとする郵政省新規事業
に、「金沢情報長寿のまちづくり協議会」が協力し、対応する。また、平成7・8
年で実施した実験の成果を踏まえ、地域福祉活動支援システム等の有用性が実証さ
れた利活用システムを継続、発展させることにより、福祉分野からの地域情報化に
向けて先導的な役割を果たしていく方針である。
○
俳句や短歌、ボランティアといった高齢期の生きがい活動が、パソコン通信を活用
することでより活性化することから、高齢者パソコン通信を福祉における生きがい
支援施策の一環に位置付け、金沢の協議会が中心となった支援体制を確立する。具
体的には、財団法人マルチメディア振興センターの協力を得て、高齢者パソコン通
信の学習センター機能を第三善隣館および第四善隣館に新設し、利用者へのサポー
ト体制を整備する。また、インターネットを通した高齢者同士の広域的な交流を進
めていく。なお、電話回線及び通信料については、個人負担へと切り替える。
○
東京の「高齢者・障害者支援情報通信提供開発協議会」(メーカー20 社で構成/平
成8年2月発足)が提案する実験へ協力していく方針。そのひとつがミニ VOD(ビ
デオ・オン・デマンド)実験で、テレビ電話を利用して、在宅で介護を担う家族に
対して、福祉、保健に関する映像情報を提供する実験である。映像情報(ソフト)
は厚生省・長寿いきがいセンターの既存ビデオソフト(介護の基本等)10 本をサー
バーに映像情報としてストックし、家庭にある端末(NTT のシステム)に配信する。
24
コード No.
①
1−4
MM 応用技術
遠隔福祉(在宅保健)
プロフィール
対象機関名
富山県山田村/企画調査室情報センター
所在地
富山県婦負(ねい)郡山田村湯 880 番地
代表者名
山崎
施設規模
施設概要
建築延べ床面積(鉄骨造り):639m2/山田村中央公民館に併設
○
吉一(山田村長)
情報センターは村民の情報活用技術やマルチメディア機器活用の研修や開放オフィ
ス、情報ライブラリー機能等の場として設置。インターネットサーバを置き、イン
ターネットのプロバイダと結び、2次プロバイダの機能を持つ。
②
○
1F:情報ライブラリー室、書庫、情報センター本部事務室
○
2F:開放オフィス室、通信制御室
○
3F:情報研修室
世帯数
458 世帯
人口規模
年齢構造
2,085 人(1995 年4月末時点)
産業構造
第1次産業:第2次産業:第3次産業=21%:39%:40%
高齢化率 22%
MM 応用概要
背景と目的
○
山田村は、富山県南西部に位置し、飛騨山系に連なる牛嶽山麓を南北に貫流する山
田川を挟み、標高 100m∼1,000mの山峡に散在する 23 集落で形成されている山村
である。気候は典型的な日本海側気候で、積雪量は通常2mから最高4mに達し、
12 月中旬∼4月上旬までの約4ケ月間が積雪期間となる豪雪地帯である。富山市か
らの距離は約 25km、バスで 40 分の通勤圏内にある。
○
村の基幹産業である農業において、田 250ha・畑 40ha は農用地開発で造成されたも
のであり、水稲を中心に花、大根、馬鈴薯、串柿等を生産する二種兼業農家主体の
農家である。また他の主要な産業として、年間5万人が訪れる温泉(山田温泉、牛
込温泉)と年間 30 万人が訪れるスキー場がある。
○
山田村の情報化のきっかけは、平成7年4月に山田中学校の先生が生徒にパソコン
通信をさせたいという要望に対して、同年8月に役場と中学校が NTT 富山の協力の
もとにインターネットを導入し、同時に県内の市町村に先駆けてホームページを開
設し、情報発信したことに始まる。さらに同年 12 月に国土庁の「地域情報交流拠点
施設整備モデル事業」の指定を受け、村全体への情報化へと発展していった。その
後、平成8年7月より希望する各戸にパソコンを配布(貸与)した。また村の情報
化の影の仕掛け人として、平成4年に大手機械メーカーから山田村に U ターンし、
コンピュータを使用した機械設計事務所を設立した経営者の熱意もあった。
○
同整備モデル事業の目的は、村民が自由に情報機器に触れ、マルチメディアが体験
できる環境を整備し、生涯学習体制の充実、地域産業の活性化・定住化のための生
活条件の向上及び情報格差の是正を図り、豊かな人づくりを目指すことにある。
25
実施期間
使用対象者
使用内容
○
○
○
○
ホームページ開設:
○
一般家庭・・・325 世帯(山田村全世帯 458 世帯の約 71%)
○
平成7年8月∼(山田村及び山田中学校)
パソコンの家庭配布:平成8年7月∼
パソコンによるTV会議システム開始:平成8年 12 月∼
在宅健康管理システム実験:平成9年1月∼同年2月
現時点での具体的な利用計画は以下の通りである。
◆
テレビ電話システム
カメラや受信器を通して自分の顔や音声を送信し、人情的なコミュニケーションの実
現と遠隔操作で高齢者の顔色等健康状態を確認し、健康管理に活用するとともに、人
と人の「絆」「信頼」「連帯社会」のかん養に努める。
◆
インターネットサーバ
観光情報、特産品情報等の発信、外部地域の情報の受信を始め、村民が自由に外部情
報を入手したり、自ら情報発信することで「地域間交流」「情報交流」の実現を目指
す。
◆ メールサーバ
生活情報や産業情報等のデータベースを蓄え、村民が必要なデータの検索を可能に
し、メールのやりとりや広報案内をはじめ、各町内の回覧板等の利用に提供し「新た
な産業育成」を図る。
◆
住民情報サーバ
情報センターに設置する複数のマルチメディア端末を活用し、動画情報をはじめとす
るマルチメディアコンテンツの利用を図る。また、貴重な体験談等を音声・映像を用
いて後世に伝えることにより「世代間交流」「文化遺産保存」に努める。
◆
情報センター
マルチメディア工房としての入出力・編集の他、動画・画像・音声・文字を統合し、一つ
のマルチメディアコンテンツの作成や、インターネットホームページの作成、研修を通じ
「人材育成交流」「新産業交流」を図る。
○
また、農林水産省の「ハートフルプラン 21」事業に取り組むため、パソコン配布を
希望しなかった高齢者や福祉関係の約 100 世帯(取扱い方法が理解できない、工事
費等が負担であるといった理由)に対して、「在宅健康管理システム」の実験を行
った。同システムは健康測定端末機(バイタルセンサ)にテレビ電話をセットした
もので、健康測定器により7項目を測定・入力し、情報センターに送信、送信デー
タを保健婦がチェック、必要な指導ほか健康メッセージを送信するシステムであ
る。と同時にテレビ電話をセットで設置することで、高齢者に安心感を与えるなど
の心のケアもできることを狙った。平成9年1月から2月まで、高齢者宅に設置・
運用したが、テレビ電話を使用した遠隔保健システムというレアケースとなった。
26
使用ハードウ
ェア概要
○
情報端末機器(一般家庭)
・PC・・・・・・・・・①
②
アップル「Power Macintosh 7100」270 台
日本 IBM「Aptiva J31」
・TV 会議システム・・・①
55 台
NTT「フェイスメイトシリーズ FM ー A71」
*アップル「Power Macintosh ベース」
(CCD カメラ、マイク、TV 会議用 SW 等をパッケージした
オールインワンセット)
②
ユニコシステム「Vision Time やまだ村」
*
AT 互換機(DOS/V 機)ベース
*
Windows95 対応アプリケーション
(CCD カメラ、マイク、Video For Windows 対応のビデオ
キャプチャカード、サウンドボード等)
○
情報センター機器(情報センター内)
・インターネットサーバ
…
日本 IBM「RS/6000」1台
・電子メールサーバ
…
日本 IBM「RS/6000」1台
・住民情報サーバ
1台
・通信ルーター等
1式
・パソコンデスク型
16 台
・パソコンノート型
3台
・インパクトプリンター
1台
・レーザープリンター
1台
・カラープリンター
2台
・ドットプリンター
1台
・A0 版プロッタ
1台
・CDーROM ライター
1台
・デジタルカメラ
○
…
…
Aptiva 6台、Mac10 台
日本 IBM「ThinkPad」
3台
インフラ・・・・・・NTT 一般回線及び INS ネット 64
(山田村までは INS1500、村から各家庭までは INS64 を引き込む)
(INS64 の導入希望者は約 300 世帯)
27
③
MM 応用における
課題点・要望
ハードウェア
○
村でパソコン設置希望者を募ったところ約8割が Mac を希望したが、
これは Windows
機より操作が簡単らしいと口コミで拡がったためである。Windows 機(IBM・Aptiva)
を選択した人は、勤務先で既に Windows 機を使っている人や、Mac を既に保有して
いるからといった理由である。つまり PC のビギナーは圧倒的に Mac を選択した様で
ある。Mac 版の TV 会議システム「FM-A71」は ISDN をベースとしており、動画もス
ムーズであるが(秒 24∼30 コマ)、Windows 版の TV 会議システム「Vision Time や
まだ村」は、一般電話回線でも使用できる反面、動画はぎこちない(秒 10∼20 コマ
程度)。一般 TV 放送を見慣れている一般ユーザにとっては、動画がスムーズで当た
り前という感覚である。
○
各家庭に配布した PC は、Mac と IBM・Aptiva と2種類の異なったプラットフォーム
であるが、情報センターが PC のプラットフォームに依存しない、いわゆるイントラ
ネットのシステムとなっているため問題はない。つまり、デファクトスタンダード
な技術の TCP/IP を用いて、Web サーチや E-Mail などのインターネットサービスを
シームレスに利用できる様にするとともに、比較的導入時にコストメリットが出や
すいシステムを構築するという目的で採用された。
○
各家庭に配布した PC のうち希望者の約 80 台が、マウスの代わりの入力手段として、
タッチパネル方式を採用している。タッチパネル方式はマウスでポインタを使うよ
り、指で直接的にさし示すため、特に高齢者にとって使い易く、楽であると好評で
ある。
○
TV 会議システム自体は、リアルタイム系の動画サービスのため、非常にトラフィッ
クが上がることと、パソコンの能力の問題も重なって、必ずしもスムーズには運用
されていない。山田村情報センターは、上位のプロバイダーに 128Kbps で接続して
おり、同センターのリモートアクセス・システムは、同時に 23 クライアントの同時
アクセスが可能となっている。つまり、23 人の利用者が情報センター内のリソース
を利用している分には、トラフィックの問題は起きない。全員が INS64 でアクセス
していたとして、約 1.5M バイトであるが、全員がインターネットを利用しようとし
たら、インターネットへの専用線の帯域は 128Kbps しかないため、利用者1人当り
約 5.6Kbps のスピードとなってしまい、動画転送はもちろん、マルチメディアデー
タの情報を扱うには実用性に乏しい。そのため、当村では「NETScout」というネッ
トワーク・マネジメントシステムを導入して運用管理しているが、利用状況の把握・
解析は今後の課題である。
○
現在インターネットはパソコンを設置した全戸が入っているわけではなく、約 100
世帯しかインターネットに入っていない。山田村がインターネットという情報イン
フラを電気・ガス・水道などと同じ様に公共の社会的インフラとして整備するため
には、現在の普及率約 20%強を上げなければならない。そのため将来的に、さらな
るインフラの整備やシステムの拡張が必須となっている。
28
○
本村の地域情報交流拠点施設整備モデル構想では、地理的条件により、無線の赤外
線通信を利用して、村の通信ネットワークを構築する「光ハイウェイやまだ村」の
計画があり、一部山田村役場と情報センター間の直線距離約 200m 間に実験的に設置
した。赤外線通信による通信ネットワークは、地形に起伏がある山間部に光通信ケ
ーブルを引くことに比べてコスト低減になることと、地滑りを起こし易い土地柄で
あること、豪雪地帯であること、通信装置のメンテナンスを村内でやりたいことな
どの理由で検討が進められた。そこで山田小学校に赤外線 LAN の納入実績のあった
(株)エルテルに開発依頼がなされ、実用通信距離最大 200m で、10Mbps の通信速
度が可能な「OPLAN-L200」を納入した。現在、同通信方法の課題としては、降雪、
降雨、谷すじに発生する霧などの気象条件、夏季の日射や高温、冬季の雪面の反射
光・散乱光や低温などの環境条件、及び人工的な煙・粉塵などの条件に対して、い
かに信頼性を高め、かつ伝送距離を長距離化することであり、今後1年を通じて、
問題の摘出と改良を予定している。
コスト
○
「山田村地域情報交流拠点施設整備モデル事業」の予算内訳は以下の通りである。
情報モデル事業の概算所要額
財源内訳
・情報センター建設費
1億 5,900 万円
・国庫補助金(1/3) 9,917 万円
・情報センター機器費
7,710 万円
・県補助金 (1/10)2,900 万円
・情報端末機器費
計
1億 2,390 万円
3億
6 千万円
*
使用ソフト・コンテンツ
○
・村起債
計
2 億 3,183 万円
3億
6 千万円
機器費は全てソフトウェア込みの金額である。
ユニコシステム(株)が米国の Specom Technologies 社と業務技術提携し、業界標
準的技術を取り組み開発した Windows 95 対応の TV 電話システムは、そのまま
「Vision Time やまだ村」という商品名で市販している。「Vision Time やまだ村」
の特徴は高齢者・子供など初めてパソコンを使う人達でも使用できるという条件
と、ISDN 回線、一般電話回線、インターネットでも使用できるシステムというコン
セプトで開発された。アイコンに関しても、意味不明の絵文字の使用は極力避け、
できる限りひらがなを使用し、その大きさもできるだけ大きくした。最近の TV 会議
システムはより高機能を目指し、動画、ホワイトボード機能、アプリケーション・
シェアリング機能がふんだんに取り組まれているが、高機能・多機能を求めるアプ
リケーションは、必ずしも初心者に使い易いとは限らない。「やまだ村」では一番
重要な機能である TV 電話機能をメインにレイアウトを行った。
○
「Vision Time やまだ村」のユニコシステムに象徴される様に、山田村としてはい
かにオーダーメイドに応えてくれるかが、ソフトハウス選定の基準と考えている。
NTT をはじめ大企業は、住民のレベルに合わせたきめ細かいサポート体制や小回り
がきかないことが問題である。
○
本村のホームページの更新は、その都度更新するイベント等を主管する担当課が主
に更新しており、これまで教育委員会の職員が新成人全員の紹介を、また保健所の
保母さんが小学校の新入生をホームページで紹介・更新している。今後は、動画を
交えた情報や英語バージョン、または多くの住民の紹介と村のイベント・出来事を
素早く交信するなどのソフト作りを進めていく方針である。
29
制度・習慣・
○
一般家庭しかも農山村型世帯に一度に 300 台以上のパソコンを導入するに当たっ
て、一番のネックは村民にパソコンの操作方法を教える指導者の問題であった。も
法規制
ともと PC の知識・環境がない実質的な PC ビギナーに対して、役場職員や一部先行
ユーザーだけの指導ではほとんど人手が足りないため、各集落・地区毎にパソコン・
リーダーを養成するとともに、各集落・地区の公民館などで村民を対象に月1回の
予定でパソコン講習会も開催していった。ディスプレイや本体の配線方法に始ま
り、電源の ON・OFF、初期画面の立ち上げ、マウスの使い方等から少しずつペース
に合わせて普及させていく形である。96 年 12 月に情報センターが竣工、サーバー
が稼働し、97 年4月に行政側の体制(企画調整室情報センターの設置)ができたば
かりなので、10 年スパンで考えて活用を図っていく方針である。
○
インターネット導入後、国内外からのアクセス(平成7年8月∼平成8年 12 月まで
で約 50 万件)や新聞・ラジオ・テレビ等のマスコミ、自治体・企業・個人からの問
い合わせと来訪、また専門誌や企業の機関紙に掲載されるなど、大きな反響ととも
に観光資源の知名度も大きくアップしたことだけでも、一つの目的は達成できたと
考えられる。また「地域間の情報格差」と同時に「地域内の情報格差」も全世帯の
PC 配布で縮められると考えている。
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