虎 - 永田

一言覚え
その 101
今年は「寅」=「虎」年、干支について触れないわけに行
きません。
12支の中でもとらほど人間との関わりが多い干支は外に
ありません。まずは「寅」と「虎」の違いにちょっと触れ
てみましょう!
寅=12支の3番目の「とら」のことで年の方向・時刻(寅
の刻、午前4時前後)などに使われてきました。
虎=ネコ科の哺乳類動物であの威厳を持つ「トラ」のこと。
虎と寅と不思議にも腸苦節の関係は見あたりませんでした。
(せめて両方とも怖いことぐらいかな?)今日は動物の「ト
ラ」に触れることにします。虎は威厳があり、人間を諌め
る象徴的な動物である証しでもあるのでしょう!「虎視
眈々」=相手の隙があればつけ入ってやろうとジっと様子
こ
し
えもの
をうかがう。「虎視」は虎が獲物 を狙うときの鋭い目つき、
たんたん
「眈々 」はジっと見下ろすこと。かって酒は「ささ」とい
われることがあり、そこから「笹」笹の字を賭けた。古来
より笹には虎がつきものと考えられ、笹(酒)の中には虎
が沈む・・・ということから生まれたそうです。ちなみに
おおとら
そぼう
酔いのほどがひどくなると「大虎 」となる。暴れる粗暴 さ
を虎に重ねた思いからでしょう。参考書、解説本などに目
ととう
ま
を通すと、その中の「虎饀の巻 き」には兵法の奥義が記さ
しんずい
とらのまき
れており、兵法の真髄を伝えるような蜜伝書なる「虎の巻」
が出てきます。一方「虎の子」とは宝物、蜜贓品のこと、
虎は自分の子供を大事に守り、非常に大事に育てる。同じ
く子を思う親の強い情愛を表す言葉としてあるのが
い
「虎は千里往 って千里帰る」虎は一日千里ほどの遠方まで
行ける力を持つが、置いてきたわが子を思いその千里の道
を帰る動物でもある。ほかにも虎にまつわることわざを拾
ってみました。
こけつ
こ じ
§「虎穴の入るらずんば虎子を得ず」
虎の子はとらの棲む穴に命がけで入らないかぎり手に入れ
ることはかなわない。労を惜しんでは成功はかなわない。
もんぜん
こうもん
§門前の虎・後門の狼
ひとつの渦から逃れても、さらに他の渦に遭遇するたとえ。
とら
つばさ
§虎に 翼
虎に羽を持ってさらにパワーアップした様子、タダでさえ
強いものが更に威力をつけること。
い
きつね
§虎の威を借りる 狐
実力者の威光を借りて虚勢を張ること。
§虎を野に放つ
危険なものを放置してその後に起こる大惨事、大事件を起
こす原因を作ってしまった。
か
かま
§虎を飼って虎に噛る
可愛がりすぎて養った虎に噛まれたさま。
§張子の虎
虚勢を張る人、見かけ倒しの人など、軽蔑して示す言葉。
§虎は死して皮を留め、人は死して名を残す
いい言葉ですね!
人それぞれに自分をいましめ、励まし、熟慮して進め!と
いう虎の力を借りた文言ですが、日本の文化には「場所や
しゅうぞく
さいし
地域、地名」
「習 俗」
「伝説」
「祭祀」などにまつわる語源・
名言がいっぱいあります。今年もその「言語廊」を追っか
けて「一言覚え」を創って行きます。お楽しみください。
平成22年2月1日
東京都大田区田園調布本町在住
永田武光